日下部保雄の悠悠閑閑

春の沖縄と厳冬の安宅旭川で

 久しぶりに沖縄に行ってきた。東京では雪の予報もあったのに沖縄は20℃を軽く超える春の気候だ。ココロウキウキしないわけはない! 手袋+ダウンの世界からTシャツなのだ!! 機窓に沖縄の青い海が見えた瞬間から気持ちが溶けていく……。

 沖縄は海外からの観光客に人気だと聞いていたが、実際に空港に飛び交う中国語や韓国語、英語などで実感した。さらにレンタカー会社での混雑ぶりに圧倒される。彼らが借りるレンタカーには、海外ドライバーが運転していることを示すステッカーが貼ってあるので、こちらも気を配ることができる。北海道で遭遇した雪道を恐る恐る走るレンタカーにも貼ってあったので大手は全国的に統一されているのだろう。

 名護の先、本部からフェリーで渡った島ではさらに空気が緩く、そんなのどかな空気に浸って海を見ていると、すぐそこでクジラが潮を吹いて潜っていった……。人生初“ナマクジラ”である。感動を通り越して唖然である。当然写真どころじゃなかったのである。感激の瞬間であった。

 時間がゆったりと流れて行く。豊かで贅沢な時間だ。あ~~ずっと居たい、この島に~~~~と心を沖縄に残しながら、一路羽田へ帰る。

 さて翌々日には北海道 旭川へ。旭川周辺にはテストコースがたくさんあり、特にこの季節は行くことが多く、関係者とは旭川空港でばったりと会うことが少なくない。この冬は例年以上に雪が多く、東シナ海の機窓からは一変して、ホワイトチョコを並べたような景色が広がっている。青い海とは違ってそれはそれで美しい。767のエンジンは凍ったように白く硬質に見える。

 今回の旭川行きは、ホンダのオプションパーツを開発、販売するホンダアクセスが、コンプリートカーとして販売するモデューロXを雪上試乗するためだ。Tシャツから一気に氷点下の世界に直行したが、意外と身体が旭川の寒さを覚えているから不思議なものだ。厳しい自然は人の動きを鈍くするが、それなりに効率のよい行動をするようになる。凍結した歩道を歩くのも慣れたし、クルマの運転も雪道に順応した操作に切り替わる。ただ、時折吹くホワイトアウトになる地吹雪は何度遭遇しても慣れない。

 モデューロXではフリードとステップワゴンで公道からプルービンググラウンドの特設コースまで雪道を存分に走らせてもらったが、4輪のタイヤを接地させてクルマを安定させたいという意図はよく分かった。サスペンション交換からはハイスピード用の硬いアシを連想するが、モデューロXはより身近な存在で、滑りやすい雪道でもフットワークのよいサスに仕上がっている。現役時代、ラリー車を仕上げるにも同じような考え方でセッティングしていたのを思い出した冬の旭川である。

 それにしても、もう1回クジラを見てみたいもんである……。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。