日下部保雄の悠悠閑閑

2台のプレミアムコンパクト試乗会

ビッグマイナーした「CX-3」

 ビッグマイナーされたマツダ「CX-3」とMINIの試乗会に行ってきた。

 CX-3はスタイリッシュなコンパクトSUVとして人気はあるものの、このところ「C-HR」などの強力なライバルに押されて苦戦気味だった。そのテコ入れも兼ねて、ガソリンエンジンやFFの投入などで巻き返しをしていこうとしているところだ。

 マツダのプレゼンはいつも丁寧で、たっぷり時間をかけてくれるので嬉しい。

 今回のビッグマイナーではデザインの小変更、サスペンションの見直し、エンジンラインアップの変更など結構大きなものになっている。CX-3のイメージはキビキビ走るが乗り心地が硬いというものだったので、どう変わっているか?

 サスペンションではダンパ―径がフロントストラットは45mmから51mmに、リアは38mmから45mmにアップされたこと、特にリアのダンパーのトップマウントがラバーからウレタンに変更されたことでレスポンスが上がっており、ダンパーの減衰力特性も余裕ができた。さらに、タイヤのスペックもクルマとのマッチングを進化させ、サスペンションとのトータルバランスを合わせている。

CX-3のダンパー

 結果、マツダが狙った乗り心地の改良はかなりの成果を収めていた。乗り心地だけでなく、ハンドリングも従来型よりしなやかさを重視した形になっている。四隅が張っているようなキビキビとしたものから、ハンドル操作とクルマのロールが穏やかになっていた。乗りやすくなったと思うが、これまでのキビキビした味を好むユーザーには物足りないかもしれない。

 エンジンもディーゼルは1.5リッターから1.8リッターになり、さらにトルクの余力ができたし、ガソリンエンジンもピストンの抵抗低減などでトルクアップなどが図られている。

 エクステリアからインテリア、サスペンション、エンジンに至るまで大きな変更で、マツダが目指すプレミアムコンパクトSUVのポジションを確かなものにしたいという強い意志が表れている。

 プレミアムコンパクトと言えば、MINIもマイナーチェンジを受けて試乗会が山梨県笛吹市で行なわれた。MINIもCX-3がそうだったように、エクステリアに大きな変更はないが、ちょっとエスプリの効いた細工が施され、テールランプにユニオンジャックが浮き出るようになっている。ユニオンジャックは左右対称だと思っていたが、実は対角線に入ったラインの位置が微妙に異なっており、MINIもそれを忠実に再現していた。英国国民に申し訳なかったが、MINIのテールランプの説明を受けるまで左右非対称だとは知りませんでした。

ミニのテールランプ。ユニオンジャックが浮き出る細工が施されている

 しかしMINIはMINI。クラシックMINIの時代から受け継がれているゴーカート感覚のドライブフィールには磨きがかかっている。グリップが太いハンドルを切ればグイっとそしてズッシリと旋回する。左右に切り返す時などMINIの本領発揮で、スイスイと駆け巡るので楽しくなる。その代わり乗り心地は硬めで、特にリアは締め上げられて、突き上げは決して小さくない。特に試乗したのがスポーツバージョンの頂点になるジョン・クーパー・ワークス(JCW)だったのでなおさらだ。JCWはSPORTモードに入れるとさらに挙動にメリハリが効き、エナジードリンクを飲んだように元気になっていく。ドライバーもポジティブになってないとJCWに負けてしまいそうだが、山梨のカラリとした天気にも助けられ、こちらも気持ちよく試乗できた。

 トランスミッションは8速AT、SPORTSモードではパドルシフトを積極的に使って無用にエンジンブレーキを使ってみたが、室内では結構大きなエキゾーストノートが響き、勇ましい。1290kgの車両重量に170kWの2.0リッターターボだから、そりゃあ力は有り余っている。

 ちなみに、JCW以外のガソリンエンジンのMINIは7速のデュアルクラッチトランスミッションになるが、残念ながらこちらは乗りそこなった。

 新しいMINIはMINI Connectedもウリの1つで、iPhoneにアプリを入れると車外からエアコンを作動させたり、ヘッドライトをフラッシュさせたり、検索した目的地をスマホからナビに転送できるなどのサービスを利用できるという。ただし試乗会ではアプリが間に合っていなかったが……。

MINIとリニア

 2台のプレミアムコンパクトはそれぞれ個性的だ。コンパクトはシニア層からも需要が高く、これからどんなクルマが登場するか、なかなか興味深い。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。