日下部保雄の悠悠閑閑
2台のオフローダー
2021年12月13日 00:00
ランドローバー・ディフェンダーとトヨタ・ランドクルーザーを試乗した。どちらも大型SUVでしかもワークホースをルーツとしている点では似ているが別の進化をした。
ディフェンダーは2.0リッターのガソリンターボだけだったが、今回引っ張り出したのは48Vマイルドハイブリッド+3.0リッター直列6気筒のディーゼルターボで初乗り。興味深い。
ランクルは20インチタイヤを履いた3.3リッターV6ディーゼルターボ。車両を受け取りにトヨタへ行ったら「GR86」の間に停めてあったため、やはり巨大だ。
300系ランクルは昨今の盗難対策として、イグニッションをONにするには指紋認証が必要で、他人では簡単にエンジンが掛からない。さらに昔からある社外品のハンドルロックとタイヤの輪留めも渡された。これを見ただけで緊張する。もちろん家に帰ってからハンドルロックをかけて、心配なので夜もことあるごとに見にいった。
かなり前の話だが、友人が大事にしていたフェラーリをシャッター付のガレージに入れ、さらにその前に足替わりの乗用車を置いて保管していた。ところがある朝、起きてシャッターを開けたらフェラーリだけが忽然と姿を消しており、狐に化かされた状態でパニックになった。盗難にあったのだ。ご丁寧に足グルマはシャッターを閉めた前、つまり元の位置にあり、フェラーリだけなくなったというから巧妙だ。そんな昔のことを思い出してビクビクしていたのでした。確かにランクルは走っていても、止まっていても注目される……。
ランクル搭載のディーゼルターボは国内久々。レスポンスもよく低速トルクも強い。最大トルク700Nmで2.5tの重量をグイグイと運ぶ。WLTCモード燃費は9.7km/Lとなっている。
フレームボディでモノコックのような応答性や直進性とは違うが、200系とは明らかに異なり、ランクルらしくゆったりした動きでも手応えがある。
2か月ほど前に試乗した岩場での走破性はフレームボディのランクルの実力を垣間見た。岩登りもガンガン行けるのだ。操作系も使いやすくなってディスプレイから深堀しないで操作できるので、使いやすい。スイッチがあるべきところにある。
一方のディフェンダー110は直6のディーゼルターボで48Vマイルドハイブリッド。ディーゼル6気筒は振動も小さく、ディーゼル特有の音もよく抑えられている。さらに発進時には48Vのマイルドハイブリッドの効果が絶大で粛々と動き始め、発進時のサポートでガソリン車のような静粛性を得ている。WLTCモードでは9.9km/Lの燃費だ。高速道路は堂々と、ピタリと路面を捉えて走る。旧型ディフェンダーとは全く違うイージーなラフローダーだ。
街中に乗り出してみるとサイズはランクルに比べるとひとまわり小さく感じるが、実際には4945mm×1995mm×1970mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース3020mmと結構大きい。ランクルは4985mm×1980mm×1925mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mmだから、ランクルの方が全長を除いてわずかに小さいのだが、高いボンネットフードなどデザインでそう感じさせるに違いない。ちなみに両車ともオフロードがルーツらしくさすがに見切りはよく、ランクルはボンネットセンターのくぼみでセンターが分かりやすく、ディフェンダーは伝統のコマンドポジションとフラットなボンネットでこちらもサイズ感が分かりやすい。
ディフェンダーはシュルシュルと音もなく速度が伸びてゆき、ハンドル応答性も位相遅れなくクルマとの一体感が高い。内外装のデザインも洗練されてオフロードを連想させるのがスマートだ。
乗り心地もフラットで荒れた路面でも上下収束性よく快適だ。ランクルはユルユルと路面ギャップをいなしながら走り、ドライブモードによっても大きく変わる。お勧めはノーマルでオールマイティだ。
ランドクルーザー、ランドローバー、いずれも一級のオフローダーだが、目指すのは前者はデザートやタフなグラベル。後者は都市化が進められながらルーツに立ち戻ることで存在感のあるSUV。オフロードクルーザーという世界観は同じでもそれぞれ手法が異なっていた2台だった。