日下部保雄の悠悠閑閑

ウェット円旋回

ナイトスポーツのスキルアッププロジェクト。お互いのドライビングを見るのも得るところが大きい。自分の学生時代、他の人のドライビングを見るのもとても参考になった

 わが家のエアコンコワレタ事件は1週間の酷暑の後解決し、交換した新型エアコンは最少機能のシンプルなタイプ。されど省エネ仕様できっと電気代に反映してくれると信じている。ウチのエアコンはいずれも古くて交換時期を迎えている。次はどこのエアコンから温風が噴き出すのか。頼むから暑い夏はやめてネ……。

 話はガラリと変わって夏らしく水しぶきを上げるウェット円旋回。タイヤのウェットグリップを測るためにも行なわれるテストで、ドリフトの練習にもなるのでAJAJの仲間たちもウェット円旋回は好物で喜々としてやっている。

 よく使われるのは磨かれた路面に15R、20R、30Rといった円を描き、中心から散水できるようになっていて、その円周を走る施設。普通はラップタイムを計測するが、滑りやすい円なら何でもよく、氷上ではパイロンのまわりをグルグル回ったりしている。

 今回は6Rほどの小さな円に盛大に水を撒いて円旋回を作ってもらった。練習するのはいつものナイトスポーツのメカニックさんたちでドライビングスキル向上プログラムの一環。車両は1.5リッターのNDロードスターを使う。

即席のウェット円旋回路。池から汲み上げた水を盛大に撒いてもらった。ついでに池の魚も汲み上げられてしまい跳ね回っていたが、帰してあげました。元気です

 午前中はいつものミニサーキットを走って勘を取り戻してもらったが、前回から2か月半も経ってしまったので忘れているところも結構ある。日常の何気ない運転でも練習が大切ですよ。

 ウェット円旋回でドリフトの練習をするのは、今後目指すサーキットランでの危険回避技術向上のため。高速でリアが滑って対処するのでは大抵は修正舵が間に合わなくなる。流れる瞬間をとらえて修正舵やアクセルワークができるようになると安全率がグンと上がる。

 と言いながら、ウェット円旋回でドリフトするのは久しくやっていない。先生としてはお手本を示さなければならない。変な汗が出る。

 円が小さいのとギヤが1速使用なのできっかけが難しくてフロントが逃げてしまう。「お、ヤバイ」ぞ。この感覚。

 ロードスターはLSDが入っており押し出しが強く、横スライドを始めるとスピンしそうになる。そして今回の路面は平坦ではなく、下りと上りがある。感覚的には上りの方がコントロールできる感じだ。この癖を頭に入れて再度ウェット円旋回に挑戦。

 アクセルを踏み込んですぐに中途半端に維持していると、リアがユックリ流れて何とかドリフト姿勢を作れた。修正舵をわずかに入れる程度にしてアクセルで旋回できたと思う。よし! ボロの出ないうちに交代しよう!

 早速、興味津々で取り組むがアクセルコントロールに苦戦している。アンダーの次はスピン、スピンの後はアンダーと繰り返しでドリフトと呼べる姿勢にならない。

 しかし誰も諦めないでドリフトのきっかけを見つけようと必死だ。滑り出す感覚がつかみにくいのだ。グルグル、グルグル見ている方が目を回しそう。

ドリフトする微妙なアクセルワークに手こずってスピンしてしまうのは常。1速なので大した速度じゃないが、それはそれで大変

 ウェット路面を1時間以上走っていると左フロントタイヤのショルダーが摩耗してきた。そのころになるとリアが流れるきっかけをつかみ、微妙なハーフアクセルも使い分けてドリフトらしい姿勢になった。落ち着いてステアリングとアクセルを連動して動かして、さらに積極的に自らの姿勢を作ることができるようになったときはこちらもうれしかった。

 他の生徒さんもあと一息できっかけをつかめそうだ。こんな練習もときには織り交ぜながらステップアップしている。運転って面白いのです。

日本自動車大学校の生徒さんが作ったCarsたち。見事な出来栄えです

 ところで最後に自車のノート オーラ 4WDも試してみた。ウェットに強いADVAN dBを履き、ショックアブソーバーオイルにKYBのサステナブルオイルを使っているノート オーラ 4WDは以前紹介した同じスペックだ。スタビリティコントロールを外して円旋回に挑む。その速さはあきれるばかり。同乗していたナイトスポーツのセン君は目を真ん丸にして「なんですか、これは!」と悲鳴を上げる。安定した円旋回の早さは自分でもびっくりした。練習にはならないので早々に引き上げたけどネ。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。