日下部保雄の悠悠閑閑

柳行李バッグ。大切に使わせていただいてます。年月を経て色合いも落ち着いたいい感じになりました

 旅をするのに鞄は必需品。最小の手荷物で飄々と世界を駆けまわっている人もいて、それはそれで羨ましいけど、振り返ると学生時代から整理がわるくて、いつも余分なものを持ち歩いていた。その習い性で今でも旅先でいつもと同じ備品がないと不安になる。

 実は鞄に入っているモノで絶対必要なものはほとんどない。毎日ダンベルを持ち歩いて筋トレをしているようなものだが、万が一必要だったときに困ると思いながらせっせと運んでいるのである。

 鞄の世代は変わってもサイズは同じパターンで繰り返される。最初は最小限を選ぶが、あれも入れたい、これも必要だと徐々にパンパンになってしまい、サイズを大きくする。とうとうこれ以上は無理と思ったときに次の鞄にバトンタッチ。

 思い出してみると最初は薄いアタッシュケースだった。当時は多くのサラリーマンがアタッシュケースで出勤していた。そのアタッシュケースもだんだん厚くなり、これ以上は無理なんじゃ? と思うころにフライトバッグに替わっていた。確かに機能的で床に置いて上からものが取り出せるので重宝した。したのだがパイロットほど飛行機に乗るわけでもなく、クルマでの置き場所もなんとなく中途半端。そもそも通勤電車には大きすぎたので使わなくなってしまった。

 次に便利なビジネスバッグが現れた。ショルダーにもなるし便利に使っていたが、例によって大型化。どんどんモノが入る。すると大きく重くなってカタチが崩れておさまりがわるい。なんと懲りないことか。

 そして時流に乗ってビジネスリュックへ。最初は小型を使っていたが、またもや大型に移行。ポケットもいっぱいあって容量も大きい。PCから書類、本、電子デバイス、何なら着替えまで入る。しかもリュックなので重さを感じない。ただあまりも大きすぎて混雑した電車で前掛けできないのが難点。それにもう1つ、ブラックホール化していることに気がついた。

 確かに入れたはずのサングラスやスペアバッテリ、そして充電器などなど……捜しても出てこない。開口部から手探りで探してみるものの見つからない。忙しいときこそ出てこない。挙げ句すべてを引っ張り出すと底に沈んでいたのを発見する。これはヤバイ。デスクの脇でうずくまっているビジネスリュックがなんでも飲み込む不気味な存在に見えてくる。

 こんなときは気分転換に鞄を変えようと思った。柳行李を大型アタッシュケースにしたような素敵な鞄を思い出したのだ。随分前に竹岡圭さんから何かの記念にもらったもので、ときたま引っ張り出しては旅に使っていた。圭ちゃんらしく「ハレ」の鞄だ。開けるとガランドウなので使いやすいし、そして何しろ夏らしく態がいい。

丈夫でなんでも入り、気分を変えたいときに出動してます。ハレの鞄です

 もっともくたびれたオッサンが柳行李バッグを手に旅していると、フウテンノトラさんに申し訳ない気がする。チョイっと悔しい。

引き出しから出てきたムクさん。何か?
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。