日下部保雄の悠悠閑閑

日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025

日本カー・オブ・ザ・イヤーのロゴ。読み解いてください。味があります

 今年もカー・オブ・ザ・イヤーの季節になり、11月に10ベストカーが選ばれ、袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗会が行なわれた。

 イヤーカーは12月5日にBoschの新社屋を借りて発表された。配点方法は10ベストカーの中から59名の選考委員が3台のクルマを選ぶ。自分が一番推薦するクルマには10点、以下4点、2点となり、その集計でカー・オブ・ザ・イヤーが選ばれる。2023年はプリウスが独走したが今年は混戦が予想され、事実そうなった。そしてこの時期になると選考委員は今年の1台に大いに悩む。59人がそれぞれの選考基準で悩み選ぶのだから選ぶクルマはバラバラ、のはず。そこが面白い。

袖ヶ浦フォレストレースウェイでの10台の試乗を終えて、おなじみの竹岡圭さんとフジトモこと藤島知子さんと一緒に10台をバックに写真を撮ってもらった

 既報のように220点の最高得点を得たのはホンダ・フリード。196点でマツダ・CX-80が続き、以下MINI・クーパーが172点、スズキ・フロンクスが110点、レクサス・LBXが70点となった。

 フリードとCX-80を一番に推した人はフリード16名、CX-80は15名。そして2番目に推薦したのはそれぞれ11名と8名、3番目が8名と7名。この2台が拮抗していたのは配点を見れば一目瞭然。

 開票で最後に残った2台。ホンダとマツダの面々の緊張感は察するに余りある。お祭りとはいえお疲れさまでした。

大画面に映し出された開票結果に一斉にカメラが向けられた。なかなか興味深いではないですか

 自分はCX-80とフリード、フロンクスの3台を挙げたが、正直どのクルマが日本のイヤーカーになってもふさわしいと感じた。10点、4点、2点という配点が決められている中で、共通しているのは3列シートがあるというだけで、性格の異なる両車を選考委員がどこにプライオリティを置いて選んだかが分かれた結果、誰かが迷った末なのかも……。

 インポートカーは「どこから見てもMINIだけど新しい」を継承したMINIが獲得した。イチオシに挙げた人が10名いることでもMINIが愛されていること、そして優れたインターフェースが推奨されていたことでもMINIの先進性を物語る。

 テクノロジーはホンダ独自の量産燃料電池車CR-V e:FCEVが、デザインは圧倒的な存在感をもつ三菱・トライトンが選ばれた。三菱は2023年のデリカミニに続いての受賞だ。

 自分の挙げたのはテクノロジーにヒョンデ・アイオニック 5 N、デザインではBYD・シールだが、CR-V e:FCEVとトライトンも説得力があります。

 今年の1台となったフリードはコンパクトミニバンの枠の中で実用性のある3列シートを備えたパッケージや、長距離でも疲れないことなど身をもって体験した。ADAS系やロードノイズは次の課題になると思うが、コストの限られたコンパクトミニバンに与えられた課題を見事に解いたモデルだ。子育て世代はもちろん、今の日本にふさわしい1台に違いない。

実行委員会特別賞はマツダのe-SKYACTIV R-EV。ロータリーエンジンを発電機としたレンジエクステンダーを加えたMX-30の主査、岡留さんがFERRARIのスパークリングワインを受け取った
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。