日下部保雄の悠悠閑閑

CX-80 PHEV

赤いPHEVと3.3リッターターボディーゼルの2台のCX-80。マツダはデザインもさることながらカラーも抜群だ

 秋にディーゼルとマイルドハイブリッドに試乗したがさらにPHEVにも乗る機会があった。CX-80のトップモデルで価格も639万1000円からとなる。PHEVに採用したバッテリ電力量は17.8kWhでEVでの航続距離は67kmとしている。このクラスの他社のPHEVに比べると少し短い。

 例えば22.7kWhのバッテリを搭載したアウトランダーPHEVは106km(Mグレード)でWLTCモードで100km超えを達成した。バッテリの電力量は価格に跳ね返るがマツダは約18kWhあたりが航続距離と重量、価格、そしてパワーのバランス点だと判断したようだ。

ロングノーズが特徴のCX-80。フロントフェンダーにはPHEVエンブレム

 エンジンはCX-5やCX-8に搭載しているロングストロークの直列4気筒2.5リッターエンジンを低中速トルク志向の出力特性として、その後ろにクラッチ置き129kW/270Nmのモーターとプラグインハイブリッドのユニットを配置、さらにその後ろにクラッチを置いてトルコンレスの8速ATを介して動力を伝える。

 トルコンレスでパワートレーンは軽く短くできるがクラッチ制御が難しく、モーターとの統合制御は複雑そうだ。しかし試乗中はパワートレーンがギクシャクすることもなく自然体で乗れた。トルコンのような滑らかさだ。

 加速も大出力モーターが力強い。エンジンとモーターの総合出力でかなり速いし、NAエンジンは低速トルクがありハイブリッド向きだ。

 バッテリが十分なら基本的にはEV走行で静粛性は高い。CX-80のディーゼルエンジンは走り出しで聞こえる独特なノイズもない。スッと前にでる。

 そのかわりに減速して停止する寸前でヒュルヒュルヒュイ~ンと聞こえる不思議な音はインバーターノイズだろうか?

 乗り心地は柔らかいが工事中のウネリなどを通過すると大きな上下動があり、伸び側の減衰をわざと緩くしているように感じた。個人的にはもう少しサスペンションストロークがほしいなあ。

 3120mmもあるホイールベースだけにゆったりと乗るクルマだが、走りにこだわりのあるマツダらしく、一体感のキビキビとした走ると大きな居住空間を活かした豊かな走りをバランスさせる努力をしているのが見て取れる。

 明るく質感の高い室内はタン内装でソフトパッドに囲まれて落ち着く。ドラポジにこだわるマツダは足がスッと伸び、広々と感じるが右足を少し左気味に置く癖がある自分にはブレーキとの距離が遠くなり最初は戸惑った。乗り慣れると規則正しく乗れそうだ。

タンの内装は美しい。足下もタップリしている

 インターフェースはできることも多いが表示されるアイテムとともにもう少し整理した方が使いやすくなる。

 難癖付けているように見えるがそうではない。何かとインスパイヤしてくれるCX-80だけに余計に気になるのだ。

 CX-80はいくつかのバリエーションがあるが、実は素の3.3リッターターボディーゼルが一番気楽に乗れて好きだ。

 しかしそれだけでなく多彩な技術に向き合っているところがいつの時代も変わらないマツダらしさを支えている源流だ。

南の海。凪というのだろうか? 鏡のような湘南の海はボーっと見とれていたい気がする
大きな音に空を見上げるとヘリコプターが2機ホバリングしていた。何かの練習だろうか。やがて気が付いたように飛び去ってしまった
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。