日下部保雄の悠悠閑閑

賀詞交歓会

自動車5団体賀詞交歓会は片山自工会会長のあいさつから始まる。自動車業界の持つ危機感が素直に伝わってくるあいさつだった

 2025年の仕事始めは自動車5団体の新春賀詞交換会から始まった。100年に一度の変革期を迎えたと言われて久しい自動車業界は年を追って現実味を帯び、パワートレーンはもちろん、自動車の概念を根底から覆すSDV、直近ではBEVの普及期に、現状とそぐわなくなっている税制改革などやらなければならないことが多い。今年も自動車業界は多くの変化が起こりそうな予感。

 そして翌日には日本モータースポーツ記者会(JMS)が主催するモータースポーツナイトが開催された。こちらはグンと身近である。2024年のモータースポーツ界で活躍した人をノミネートし表彰するイベントで、モータースポーツ界の賀詞交歓会となっている。

JMS会長の高橋二郎さんとは実は長い付き合い。お互い駆け出しだったころ、オートテクニックの原稿を取りに来てくれたこともあった。そういえばボクのホンダトライアルを譲ったのは君じゃなかったっけ?

 で、昨年の暮れにJMSへの入会をお願いしたら、今年からJMS会員となった。いまさら入会もないだろうという声も聞こえるし、自分でもあきれるのだが、年々複雑になるモータースポーツのルールの変化を知りたいというのも理由の1つだ。今の時代、望めば情報は得られるが、生の声が聞けるのはやはり大きい。全日本ラリー選手権に行くことも増えたことも大きな動機だ。ということで今年はもう少しモータースポーツが近くなりそう。

 JMSナイトでは2024年に活躍したルーキーとして野村勇斗選手と小田優選手がクローズアップされた。2人ともカート出身で今年の飛躍が期待される若手だ。

 そして今年のJMSアワードに輝いたのはTOM'Sの坪井翔選手だ。スーパーフォーミュラとSUPER GTでチャンピオンの2冠を獲得したノリにノっている若手だ。何年か前、坪井選手もルーキーとして紹介されたのをよく覚えている。その他にもこの場で紹介された多くのルーキーが活躍している。長年、レースを見ている選考者の目は確かだ。

 特別賞はその坪井選手を輩出したTOM'Sの創業者、舘信秀さん。2024年はトムス創業50年を迎えた。トヨタ一筋に多くの時代でモータースポーツの危機を乗り越え、TOM'Sを育てあげた特別賞にふさわしい人だ。

特別賞の舘信秀さん。昨年トムス創業50年を経て大きく飛躍した年でもあった。そしてSUPER GTとスーパーフォーミュラのチャンピオンを獲得した坪井翔選手を排出したのもトムスだった

 もう1人は僕にとってはダートトライアルの達人、スバル/STIの辰己英治さん。スバル一筋の現場の人で55年のサラリーマン人生を過ごして2024年に勇退された。同じダート出身なだけにいろいろな場面で一緒だった。継続は力とコメントされていたがまさにその通りだ。監督として最後のレースは2024年のニュルブルクリンク24時間をクラス優勝で飾った。太い指を見るたびに辰己さんらしい生き方を感じてた。

 いろいろな方に会えた素敵な夜でした。

いつも気さくに声をかけてくれた辰己さん。スバル一筋55年で昨年ニュル24時間クラス優勝を最後に勇退された。僕にとってはダートラのチャンピオン。筑波9時間耐久でのレガシィも懐かしい思い出です
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。