日下部保雄の悠悠閑閑

アイオニック5と桜

常磐道、中郷SAでの充電。今回のアイオニック5での旅で初めての充電。本当にこれでいいのかな、と思いながら充電できたときはホッとした

 ヒョンデ・アイオニック5と桜を見に行った。目黒川や東工大(旧名)の桜はタイミングがわるく花見ができなくてガッカリしていた。折からニュースで飯館の桜が満開と伝えていた。ちょうど休みに猪苗代に行く日程を組んでいたが、もしかしたら桜が見られるかもしれないと、花見ツアーに変更。東北は今が春。「山の桜は乱れ咲く」という。桜は花吹雪となって散るときも華やかだ。

 ヒョンデの中でもアシの長いアイオニック5 Loungeを貸してもらった。84kWhのバッテリ容量があり、航続距離はWLTCモードで703kmと長い。

 ヒョンデが再進出したときの第1弾がアイオニック5。キュービックデザインの斬新さとBEV専用設計ならではの室内の広さに感動し、スポーツモデルのNはその痛快さに強い刺激を受けた。アイオニック5でのロングドライブは初めてでちょっとワクワクする。

 宿はネットで予約した猪苗代の中ノ沢・沼尻温泉にある大阪屋。ルートは常磐道を北上し、いわきJCTから東北道に抜ける磐越道に乗り換えて、途中三春滝桜に寄るプランにした。といっても全てスマホに入力してアイオニック5のモニターに映すだけなのでスマホ任せ。ちょっと前から考えると楽なものだ。

 東京を出たときのバッテリ残量は79%。「みなとみらい」のヒョンデでは92%で貸してくれたが都内を走り回っているうちに13%ほど消費した。この間の電費は6.4km/kWhだ。

 天気は快晴。最初に急速充電器を使ったのは常磐道の中郷SA。172km走行して残56%。ほぼ高速だけだったが電費は6.8km/kWh。エアコンも使っているのでわるくない。

 ちなみにアイオニック5はシートヒーター/シートベンチレーター、ステアリングヒーターのほかに、エアコンをドライバーのみに集中させるボタンもある。電気を節約するBEVならではの装備だ。

 ダッシュボードにあるSEARCHボタンからは近くの充電ステーションを簡単に探せる機能もあり、なにかと不安にならないように配慮されている。マップは更新されるはずだが確認するのを忘れた。

 中郷SAは90kWの急速充電器が2口ありすぐに86%まで充電。急速充電器は基本的に80%までが限度で使用時間も30分に限られる。充電には十分な時間だ。決済はポピュラーなe-Mobilityカードを使った。

 有名な三春滝桜を見るために田村スマートICで降り、街道を走る。桜の巨木は1週間前が満開だったが、強い風ですっかり花びらは散っていた。それでもたった1本の桜の巨木は周囲を睥睨するように堂々として圧倒された。やはり来てよかった。満開だったらすごいだろうな。

よく写真で見る三春滝の一本桜。すでに花は散っていたがその威容に圧倒された。柚餅子が名産らしい

 アイオニック5のサイズは全長4655mm、全幅1890mm。視界は広く、シンプルで明るく広いキャビンはナビシートに座った家人からも評判がいい。ラゲッジルームの床は高いが520Lの容積があり、フロントには後輪駆動は57L、4WDでは24Lの広さのトランクも備わっていて意外と使える。

 常磐道は東日本大震災の後遺症から路面がうねっている箇所もあり、周期が合うとピッチングが残る。しかし基本的に微振動がないので疲労感はあまりない。

 パワーステアリングの操舵力は少し重い。もう少し軽くて滑らかなステアリングフィールならもっと楽に走れそうだ。

 約2tの重量に対してタイヤはミシュラン・PRIMACY 4。235/55R19の大径サイズ。当初少しぎこちなかったが、空気圧を冷間基準の250kPaに合わせると本来の軽快さと乗り心地を取り戻した。

 宿は猪苗代の中ノ沢・沼尻温泉にある大阪屋さん。街道筋に突然現れる温泉街で、加水も匂いもない白濁したお湯が特徴だ。日によって透明になることがあるという不思議な温泉で身体にも優しい。

猪苗代の中ノ沢・沼尻温泉の大阪屋の温泉。白濁した温泉は匂いもなくちょうどいい熱さ。日によって透明なお湯になるという不思議なお湯だった

 宿には充電設備はなかったが138km走ってバッテリ残量は56%。勾配のきつい峠道を走ったので5km/kWhの電費はこんなものかな。

 温泉と食事を満喫した翌日は峠を下った途中にある「ふれあい牧場」に寄った。期待どおり桜は満開。やっと桜に出会った気分だ。

郡山石筵ふれあい牧場に隣接した桜の林。ウサギやヤギ、馬もいて家族連れの多い憩いの地

 牧場内はよく整備されピンク色に染まる桜林の中、馬やヤギ、ウサギたちが遊び、心が和む。そよ風が吹くたびに桜の花びらがヒラヒラと散っていく中を歩くのは本当に気持ちがよい。

足の太い働き者(?)の元気な馬がニンジンをせがんで長い顔を向けてくる
牛舎から見た桜並木。両脇は牧場になっており乳牛が放牧されている。柵まで行くと好奇心旺盛な牛が寄ってきた

 帰路では磐越道の阿武隈SAで充電する。199km走って残量は43%。約30分かからずに77%充電できた。ここも90kWの急速充電器が2口ある。

 NEXCO東日本では90kWの充電器を主体に電気の消費が多いルート、例えば関越道の赤城SAには150kWの充電器も配置している。

 ここからはどちらかといえば下りが多い。常磐道のいわき勿来ICで降り、念願だった勿来(なこそ)の関を左目の端に見て国道6号を南下する。勿来の関は意外なことに考古学的な実証はなく、伝承に基づいた公園が残っている。海岸にあった鳥居は何だったのだろう? 先を急いでしっかり見なかったことが悔やまれる。

 国道6号は残念ながら海岸沿いからは離れており、正直、単調。で、やっと日立創業の地、日立市に入る。太平洋に面した日立は「おさかなセンター」が多く、魚市場のようで新鮮な魚が安く売っている。もちろんお土産に刺身を切ってもらった。

 再び常磐道に戻り、友部SAで最後の充電。このまま余裕で東京まで帰れそうだが、残量50%で充電したくなるBEV初心者である。

 交通量の多い友部SAには90kWが6口あり、2台が充電していた。ガソリン車に紛れてBEVが増えているのがわかる。ここでも30分で77%まで充電できた。

最後の急速充電は常磐道友部SA。90kWが6口あり、土曜日の上り線は充電器にひっきりなしにクルマがやってくる

 都心に近くなると故障や事故で渋滞にハマってしまった。全車速ACCはストップ&ゴーでも立ち上がりトルクの大きいBEVは楽で、前車への追従性が高い。

 やっと渋滞を抜けて帰宅したときの残量は62%。この間の電費は7.5km/kWh。阿武隈SAから自宅まで273kmだから充電なしでも余裕で届いた。

 ヒョンデに返却するまでトータルの走行距離は703km。今回の旅は1回の充電で行けそうだが、逆に休憩を取りながらのバランスのいい旅ができた。いつもは目的地に向けて一気に走るので家族からは評判がわるい。

 BEVはバッテリが高価で補助金がないとまだまだ価格も高く、日本でのシェアも低いがトヨタの本格的な参入で増加しそうだ。トヨタ販売店でも充電設備が整い、公共の充電ポイントも着々と増えている。PAごとにもクイックチャージの青い看板が出ているのに気づいた。充実した桜ツアーはあっという間に終わってしまった。

 初めてのBEVでのロングツーリング。アイオニック5は強い個性はないが、誰でも安楽に移動に付き合ってくれる守備範囲の広いクルマだった。静かで余裕たっぷりの室内はやはり疲れない。

 今度は旅の途中ですれ違ったヒョンデのコンパクト、インスターに乗って出かけてみよう。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。