日下部保雄の悠悠閑閑

プラモデルの世界

KEGANI RACING M3 Evo B-ing号。1990年INTER-TECの再現モデル。Gr.A人気はすごくて富士スピードウェイには10万人と言われる観客が来てくれた

 ゴールデンウィークの真っただ中、吉祥寺で開催されていたプラモデルの展示会に伺った。

 自分でプラモデルを作ったのは中学生まで。もっぱら第二次世界大戦中の戦闘機ばかりで自動車はほとんど作ったことはない。田宮模型が発売したホンダF1(RA273)を何とか購入したが、あまりの精巧さに加えて塗装技術が全くなく、以来プラモデルには手を出していない。眺めるのが専門だ。

 数年前、青島文化教材社のコーナーに1984年の英国RACラリー出場車が出品されており、模型王国の静岡まで見に行った。美しくカラーリングされたADVANランサーターボは、当時は新橋にあった横浜ゴムの受付に飾られていた。コ・ドライバーでの参加で、都合8回通ったRACラリーはいろいろな体験ができ、WRCのスケールの大きさに感動した。

 展示会はプラモデルの同人会、ZMC(ZEITAKU MEETING CLUB)が開催する「心のクルマ展」。例年、ゴールデンウィークに開催され、今年で4回目となる。小さなギャラリーだが展示されているプラモデルは半端な完成度ではない。市販のプラモデルをベースに自作したと言った方が正確だ。時代を超えて心に響くクルマばかりで、写真でしか見たことないクルマが詳細に再現されている。

 KEGANI RACINGのB-ing号は1990年のINTER-TECのDiv.2で優勝したときのもの。製作してくれたのはいすゞのデザイン部の仙波徹也さん。仙波さんは他にカマロも展示しており、4バレルの巨大なキャブの下にある7リッターOHV V8エンジンやブレーキのマスターバックも丁寧に再現されている。淡いイエローは1960年代~1970年代にかけての時代感のある優しい色だ。

カマロは今にもV8の図太い音が聞こえそう。7リッターはレース由来のスペシャルモデル。限定で市販されたヒストリーがある

 他の作者のモデルカーも見ていて飽きないモノばかり。タイミングがいいと作者から説明を受けることができる。想像を絶する作業をいとも簡単に言うのだけれど……つくづくプラモデルは奥が深い。

 第4回日本GPにピート・ブロックが持ち込んだ日野サムライは世界一美しいと言われたレーシングカー。日野コンテッサの1.3リッターエンジンを搭載したマシンは今見てもユニークで魅力的だ。

日野サムライとコンテッサ。日野を北米で走らせていたデザイナーでもあるピート・ブロックが製作した1.3リッターミッドシップのレーシングカー。後方はリアエンジンのコンテッサ1300クーペ。北米で珍しかった日本のレーシングカーの名を広めた

 マトラは1970年代のル・マンの覇者。自動車メーカーというよりもプロトタイプ・スポーツという新たなレギュレーションに特化した、マシンづくりが巧みなコンストラクターだが、経験豊富で資金力の大きなメーカーチームを圧倒できた時代でもあった。

マトラ・シムカ MS670Bは1973年のル・マン優勝車。髭のおじさんH.ペスカロロとG.ラルースの2人とも職人芸の光るドライバーでした。3リッターのV12エンジン

 また、手のひらサイズの精巧なフェラーリF40やトヨタ87Cも見応えがある。どれだけの根気と時間が注がれたのか驚くばかりだ。

超精密なミニチュア。フェラーリF40の下まわりも見せるなんてなかなかです。トヨタ87Cも超カッコよかった

 説明していただいた皆さま、ありがとうございました。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。