日下部保雄の悠悠閑閑
下山テストコース
2026年5月18日 00:00
トヨタの下山テストコースは豊田市のトヨタ本社からクルマで30分ほどのところにある岡崎市と豊田市にまたがる広大な開発試験施設。通称「シモヤマ」と呼ばれている。通常は門外漢は入れない機密満載なのが開発施設でありテストコースだが、その一部を見学できる機会に恵まれた。
トヨタは国内だけでも東富士と北海道・士別に大きなテストコースを持っているが、いずれもトヨタ本社から離れており、作ってすぐに走らせ、問題点を明らかにし、次の課題に取り組むには時間がかかりすぎる。論点もずれてくる可能性もある。
30年前から構想された「シモヤマ」は、2024年からフル稼働を始めた。それまでの悩みを解消することになる施設だ。
コースと試験棟はマスタードライバーを務める豊田章男さんのドライバー目線からの意見も反映されており、スローガンの「もっといいクルマ作り」を実現する施設を目指している。それが色濃く反映されているのは第3周回路。圧巻だった。1周5.3kmのミニ・ニュルブルクリンクはアップ・ダウンがきつく、クルマにかかる入力も大きい。荷重が抜けるコーナーもいたるところに設けられたトリッキーなコースだ。本場のニュルよりコース幅は狭く、速度は出ないがさすがに巧みなコース設計で安全に疑似体験ができる。
このコースで大型バスでのサーキットサファリができた。試験中のGRヤリスやGR GT3といった実験車も並走するなどサービス精神旺盛である。感謝。
普段設定されている制限速度では安全に試験車の持つ“兆候”を味見できるが、許可を得た上でたどり着ける制限速度を超えた領域では、弱いところはすぐに露呈されそうだ。
クレスト後にある下りコーナーでは簡単にフロント荷重が抜け、その荷重変化に応じてコントロールしやすいのか、あるいはボトムから上がる先のコーナーでリアが突然嫌な挙動を示さないか、その姿勢変化をクルマが知らせてくれるか。いろんなことが短時間で試せるのがミニ・ニュルの特徴だ。
しかも問題点をすぐに整備棟で確認できて対応策を講じられる。まさによだれの出るほど整った施設だ。
少し離れたところにあるグラベルコースは整備棟のテラスから全景を見ることができる。路面はハードで砂利が薄く入っている状態。このコースをGRヤリスが走り回る。ここではラリー車はもちろん、GR車両のテスト、時にはモリゾウさんがレクサス車を走らせることもあるという。
羨ましいのはGRに抜擢されたラリードライバーもここで訓練できるという。グラベルが少なくなっている今、この環境は羨ましい限りだ。グラベルで大変なのは路面を維持することだが、コースわきにはグレーダーなどの整備車両が準備されている。ホントに羨ましい!
高速周回路も見せてもらったが、大きなRで構成され、長い直線路とともに通常のオーバルコースとは一味違うテストができそうだ。
「シモヤマ」にはGRとレクサスのエンジンを除く開発部隊と製品企画なども交えて約3000名が働いている。ちょっとした街である。
そして最新施設らしく環境保全にも注意が払われ、650万m 2 の敷地の6割の森林を保全し、希少種の動植物を保護している。施設内の水田では毎年稲刈りが行なわれおいしい米が食べられるという。また最近、豊田市と災害支援に対する協定を結び、危急の際にはヘリも使った救援活動を行なう、クルマの開発だけでなく地域に根ざした「シモヤマ」を目指している。






