日下部保雄の悠悠閑閑
ラッコとドライブ
2026年8月24日 00:00
日本の国民車、軽自動車は市場の3割を占めている。スポーツカーから2ボックス、ワゴンまで多種多様なクルマが選べる。海外から来た人から見れば日本だけしか見られない「あのチッチャイのはなんだ?」となるだろう。
4年前、中国から視察にきたBYDの王会長が興味を持ったのは当然だ。しかし軽自動車は日本メーカー5社がしのぎを削っている厳しい市場。生産コストも1車種では厳しい。
BYDはこの厳しい市場への挑戦を決めてわずか4年、実質的には2年少々で初の軽自動車ラッコを作り上げ、日本メーカーからも大きな注目を集めた。
発表会の模様を紹介したが、今回は実際にラッコで郊外路から峠道、高速道路と走ってみた。ポイントはX-PACKと呼ばれるコントロールユニットをコンパクトにしてバッテリの前に収めたことで、ボンネット内はモーターと補機類だけで対歩行者のクラッシャブルゾーンも大きく取れている。
デザインは見ての通り。どこかで見たことがあるトールルーフ軽自動車だが、面がスッキリしていてインテリアもシンプルにまとめられている。
試乗したのはRacco 300。2種類あるバッテリの大きいほうの35.8kWhのリン酸鉄リチウムイオンを搭載したモデルだ。車重は1220/1230kg。
ラッコは全グレードで電動スライドドアを装備した。WLTCによる航続距離は320km(300Plus/300Premium)。仮に実行動半径120kmとしても使い勝手はかなりよい。
シートクッションは前後ともソフト。特に後席はたっぷりとした感じで長距離でも疲労は少なそうだ。
タイヤは165/65R15。一般的な軽自動車サイズ。床下にバッテリを敷くBEVの一般的なレイアウトだが、専用プラットフォームでフロア高は低く抑えられ、ドラポジも自然だ。
発進は電気らしくグイっとスマートに走り出す。アクセルレスポンスも過敏なところはなく、欲しいときに必要な力が出せる。試乗コースに選んだかなり急な峠道でも苦もなく走れ、タイトコーナーで速度が落ちてからもすぐに力強く加速できる。振動は皆無で、音はインバーターノイズが伝わってくるだけ。一番大きいのはタイヤのロードノイズぐらいである。
全高1800mm、トレッド1295/1305mmの狭くて背の高い軽にもかかわらず、ロール量が小さくドライバーの視線もずれない。
ステアリング応答性はタイヤの特性もあり穏やか。アンダーステアは強めだが、重心高の低さがラッコの安定性を決定づけている。
低重心高と2520mmのロングホイールベースがピッチングの少ない軽らしからぬ乗り心地としている。小型車と比較しても遜色ない。
ちなみに高速道路ではシンプルなADAS系もなかなかの出来栄え。前車追従性とレーンキープも正確だった。
欲を言えばもう少しタイヤも含めたダンピングが欲しいところだ。
車両価格は200の214万5000円から300 Plusの239万8000円、さらにアラウンドビューモニターもついた300 Premiumの249万7000円となっており、すべて新開発で装備も考えるとおどろくべき価格設定だった。
軽自動車という決められた枠の中で日本市場向けに開発、スタートしたBYDの挑戦。なかなか手ごわい。






