日下部保雄の悠悠閑閑

ロードスター

今回の目玉、ロードスター特別仕様車PS(Pure Sport)。特別色のジンクグリーンメタリックは遅れて販売される

 英国発祥のライトウェイトスポーツカー。1950年代から60年代にかけて、豊かな国アメリカが大きな受け皿となって新しい自動車文化が花開いた。MGAやトライアンフ・TR3、そしてさらに次の世代では、小さなMG・ミジェットやトライアンフ・スピットファイアなども生み出された。

 白眉は、その後のスポーツカーに大きな影響を与えた天才、コーリン・チャップマンがバックヤードから作り出したロータス・エランだろう。マツダ・ロードスターにも大きな影響を与えたモデルである。

 そんなことをつらつらと思い出しながら、箱根に向かった。ロードスター最新の「PS」グレードのハンドルを握るためだ。

 PS(Pure Sport)はハンドリングに振ったモデル。MAZDA SPIRIT RACING(マツダ・スピリット・レーシング)のテイストを取り入れながら、エンジンは1.5リッターを踏襲する。トランスミッションは6速MTのみという潔さだ。

 サスペンションはバネレートを高め、ショックアブソーバーの減衰力を変更するという、オーソドックスな手法で走りの質を変えている。

 装着されるショックアブソーバーはビルシュタイン。単筒ガス式でレスポンスに優れていることから、スポーツモデルに好まれて使われる。減衰力は微小な可動域でも反応がよく、圧側はこれまでのロードスターよりかなり低く設定されている。

 そのため、荷重をバネで受ける割合が大きくなり、バネレートは高くされている。それでも車体を抑え込むような動きにはならず、ロードスター本来の軽快さは失われていない。

PSのシルバー色の対向ピストン・ブレンボブレーキ。レイズの軽量ホイールもPSオリジナルだ
こちらはRSのブレンボブレーキ。いつも鮮烈なレッドが目に付く。ビルシュタイン・ショックアブソーバーも装備
Sの片持ちブレーキ。軽量でバネ下が軽くなるメリットもあり、オーソドックスだがパワーと重量のバランスがちょうどいい

 ロードスターに乗り込むと、沈んでいた気持ちも上向きになる。いつもよりクラッチのつながりがスムーズに感じる。路面の細かな凹凸は、新開発の静音タイヤが包み込むように吸収してくれる。ファーストコンタクトは優しかった。

静音タイヤは2メイクあるうちの横浜ゴム・ADVAN。パターンはこれまでのV105と同じロードスター専用タイヤだが、構造もコンパウンドも新開発で、若干浅溝でパターンノイズも低い。ソフトコンパウンドだが摩耗はこれまでと同じという。サイズは195/50R16

 まだなじんでいないシフトフィールは硬いが、キレのある感覚は心地よい。タイヤからの音もかなり抑えられていて驚いた。「ロードスターって、こんなに静かだっけ」と思うほどだ。

 PSに限らずNDロードスターはこれから始まる通過音規制に対応するため、タイヤノイズだけでなく、吸気音、排気音もデバイスの容量を上げることで低減している。出力は変わっていないのがミソである。

 ステアフィールはこれまで以上に応答初期がスッキリしていて気持ちいい。コーナリング中の保舵力も軽く、タイヤの特性に合わせた微妙なチューニングへのこだわりが嬉しい。ちなみに音とステアフィールは全グレードに共通して改良されている。

 乗り心地では、コーナーに設けられたスピードブレーカーを通過した際、他のグレードにはなかったリアからの突き上げがあり、バネの硬さを感じた。ただ、それ以外は不快ではなく、個人的には気にならない。

 一方、ハンドリングはさらに磨きがかけられ、ライントレース性が高く、コーナーでの安定性もピカイチだ。ハンドルを切り返したときも素直で正確な動きに気持ちがいい。一体感の点では試乗後に聞いた説明で納得した。

 静音対策でサイレンサーのボリュームが大きくなったため、ハンガー形状を変更し、サイレンサーの前後方向への動きを抑えているという。

 急な加減速時のピッチングの遅れが小さくなり、またさらに人馬一体に近づいた。このような地道な努力によって、ロードスターの精度が進化していると思うと頭が下がる。

 RSは王道の進化でますます乗りやすくなったし、シンプルなSはRSやPSに比べると、コーナーでロールが深くなったときのリアの動きがややピーキーだが、ロードスターらしい軽快感があって、素の楽しさがある。

 NDロードスターは日本の誇りだ。

素のロードスター S。リアスタビもLSDもなく、加飾もないが、走りの楽しさは満喫できる
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。