イベントレポート 東京オートサロン 2025

スバル藤貫哲郎CTO、「電動と組み合わせても十分スバルの味は出していける」と未来の姿を語る

2025年1月10日~12日 開催

SUBARU&STIブース

 スバルとSTI(スバルテクニカインターナショナル)は「東京オートサロン2025」(幕張メッセ:1月10日~12日)に出展し、世界初公開となる「S210プロトタイプ」や「SUBARU BRZ STI Sport PURPLE EDITION STI performance」をはじめ8台を展示した。

 1月10日の午前中のプレスカンファレンスで2025年のモータースポーツ活動計画、および世界初公開となる「S210プロトタイプ」の発表を行なったスバルとSTIは、午後から2度目のプレスカンファレンスを行ない、今シーズンのスーパー耐久シリーズ参戦について、そして展示されている特別仕様車「SUBARU BRZ STI Sport PURPLE EDITION STI performance」について解説した。

「Team SDA Engineering」によるS耐参戦について

 スーパー耐久シリーズ(以下、S耐)参戦について解説したのは、「Team SDA Engineering」代表の本井雅人氏。内燃機関で使える燃料の選択肢を広げる挑戦がこのS耐参戦であり、短いサイクルで仮説と検証を繰り返すことができるモータースポーツは素早い開発が必要で、エンジニアの育成という点においても有効な取り組みとのこと。2025年シーズンはバッテリEV(電気自動車)を含め、これまで同様、将来の市販車へのフィードバックを目的とし、カーボンニュートラル社会の実現を目指していくと語った。

スーパー耐久シリーズ参戦について解説する「Team SDA Engineering」代表 本井雅人氏

 参戦体制はチーム代表に本井雅人氏、チーム監督は伊藤奨氏が務める。ドライバーは井口卓人選手、山内英輝選手と社員ドライバーの伊藤和広選手、花沢雅史選手の4名。マシンは昨シーズンに引き続きHIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPTで参戦し、水平対向エンジンとAWDを鍛えていく。

 搭載エンジンは市販の2.4リッターエンジンをベースとし、カーボンニュートラル燃料に対応しながら325PS、475Nmを発生。AWDについては前後に加え左右の制御もテストしているのこと。

 また、リアウイングにはSUBARU航空宇宙カンパニーの協力による航空部品の廃材を利用した強度の高い再生カーボンを採用し、同じS耐に参戦するMAZDA3 バイオコンセプトのボンネットにも同様の素材が使われており、メーカーを超えた協挑体制もとっている。

 この取り組みは今シーズン別のチームからのリクエストもきているとのことで、さらなる広がりがありそうだ。なお、1月15日~19日までSUBARUの恵比寿ショールームには、スバル、マツダの両マシンが展示されるので、足を運んでみてはいかがだろう。

左から花沢雅史選手、伊藤和広選手、本井雅人チーム代表 、伊藤奨チーム監督

SUBARU BRZ STI Sport PURPLE EDITIONについて

SUBARU BRZ STI Sport PURPLE EDITION

 オートサロンで公開された限定車「SUBARU BRZ STI Sport PURPLE EDITION」については、SUBARU 商品事業本部 プロジェトクトゼネラルマネージャー 小林正明氏が登壇し解説を行なった。

 スポーティなBRZにシックな内外装を組み合わせた今回の限定車は、S耐の参戦で得た知見を盛り込んだスポーツモードを採用しているMT車のDタイプをベースにしているとのこと。

 このスポーツモードMTは現行BRZのAタイプ~Cタイプユーザーにも利用できるアップデートプログラムが「SUBARU Sport Drive e-Tune」として用意され、既存ユーザーにもS耐由来の最新の走りが楽しめることとなる。

 ちなみにAT車用のプログラムは、ダウンシフトの際の許容回転数を上げている。これはジムカーナやスポーツ走行の際にダウンシフトがはじかれてしまうというユーザーの声に応えたもので、MT車用は5万円程度、AT車は3万円程度の価格で今春の発売を目指している。

株式会社SUBARU 商品事業本部 プロジェトクトゼネラルマネージャー 小林正明氏

電動化と組み合わせても水平対向エンジンの持ち味は出せる

株式会社SUBARU 取締役専務執行役員CTO 藤貫哲郎氏

 カンファレンスの後半には、SUBARU取締役専務執行役員CTO 藤貫哲郎氏がこれからのスバルについて語った。スバルが長年鍛え上げてきた水平対向エンジンをについて藤貫氏は、「直列4気筒エンジンの力強さとは違う、高回転時の気持ちよさがあるので、水平対向ゆえの克服しなければならないことはたくさんあっても、頑張って乗り越え残していこうと強く思っている」と語った。

 高回転時の気持ちよさを残しつつも環境に対応させていくことを考え、電動と組み合わせても十分スバルの味は出していけるとのことだ。「いい道具って使っていて気持ちいい」、そういったアナログ的な道具感は今も研究開発しているそうだ。また、個人的な想いと前置きしながらも、「なくしちゃダメですよね、高回転のパーン! っていう気持ち」と語る藤貫氏。スバルはこれからも、乗っていていいもの感があるクルマ、今のクルマがやってきたと思う刺激のあるクルマで、単なる移動の道具を超えた運転の楽しさを追求していきたいと語りカンファレンスを締めた。

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員