利用者の声を聞いてサービスを進化させる通販型保険
難しい保険だからこそ、シンプルを目指した三井ダイレクト


 自動車保険は、似たような条件であってもその補償内容やサービス内容は異なるもの。選ぶ際には、ついつい保険料を優先してしまうものだが、自分にとってその自動車保険の補償内容が必要にして十二分であるかどうか、そして、サービスを含めたそれら内容が、保険料に見合っているかどうかも忘れてはならないポイントだ。

 今回お話をうかがったのは、三井ダイレクト損害保険の朝倉治俊さんと相川淳之介さんだ。三井ダイレクトは、代理店を介さずにインターネットなどで販売を行っている通販型(ダイレクト系)自動車保険会社。もちろん、コストを抑えた分、リーズナブルな保険料を特徴としているが、それだけではなく、シンプルであること、分かりやすさ、そして不足ないサポートもアドバンテージとしている。

三井ダイレクト損害保険 事業部 企画グループのグループマネージャー朝倉治俊氏(写真左)と相川淳之介氏(写真右)

顔の見えない通販型ならではのサービスの進化
 通販型(ダイレクト系)と聞くと、保険料の安さばかりがクローズアップされ、万が一の時に不安だと思っている人も少なくないだろう。その点についてうかがうと、三井ダイレクトでは、同社の保険を利用した人にアンケートを実施していて、そのアンケート結果からさらなる品質の向上に努め、サービスを充実させているとのこと。その結果、最新のアンケート(2010年10月~2011年3月調査)では利用者の95.8%の人が、普通~満足と答えており、その内72.8%の人が「満足と回答している」と言う。ではどの辺りに利用者の声が反映されているのだろう。

「例を挙げますと、事故対応にあたっては、これまでは専任となる1名を決め、対応させていただいていました(1事故1担当制)。これは、たらい回しにしないという意味合いからお客様にはたいへん好評のシステムなのですが、担当者がたまたまデスクから席を外していたり、お休みをいただいていた時に、その場ですぐに対応ができないこともあります。そこで、現在では1事故専任担当制に変更し、お客様専任のスタッフが不在の時などには、チームスタッフがしっかりと対応できる体制にしました。万が一のための商品ですので、お客様が不安に思われることのないよう、努力しています」と朝倉氏。

「もちろん、事故報告の受け付けは、昼夜を問わず24時間365日『三井ダイレクト損保事故受付センター』でご連絡をお受けしています。また、ご契約者様にご用意している『Myホームページ』上のお客様専用連絡ツール『安心メッセージボード』では、お客様と専任スタッフ間のご質問、ご相談の双方向のやりとりが可能です。たとえば、夜、寝る前に考え事をしてしまったような時、深夜であってもメールで疑問を投げかけていただければ、翌朝にはスタッフが対応して返信できるようなシステムを作り上げています。事故後は、加害者、被害者どちらであっても、細かなことが気になり、そして不安になってしまいますから」(朝倉氏)

 Myホームページと呼ばれる専用のWebサイトでは、登録情報の変更はもちろん、事故対応についての経過状況など、細かなサービスを提供している。さらにここでは、保険を使った場合の翌年の概算保険料も確認できるのだと言う。これは利用者にとってはありがたいサービスだ。また、2010年9月からは、クルマ生活応援サービスを展開。これは全国約7万5000店舗における優待サービスを提供するもので、使いやすさも手伝って利用者からは好評で、この手のサービスとしてはとても利用率が高いのだと言う。

三井ダイレクトWebサイトMyホームページでは、継続手続きや契約内容の確認、事故の経過報告の確認、それに対する質問などができる契約者向けの割引サービス 三井ダイレクトの「クルマ生活応援サービス」。宿泊やレンタカー、映画チケットなどで特別割引が受けられる

保険は分かりにくい。だからこそシンプルに
 冒頭から、リーズナブルというダイレクト系自動車保険のポイントではなく、そのサポートの充実ぶりが聞こえてきたが、しかし、三井ダイレクトでは、さらにシンプルであることを追求しており、それも同社の保険の大きなアドバンテージとなっていると言う。

「たとえば、走行距離や運転免許証の色等によって保険料を変えることはしていません。これは、商品を分かりやすく簡素化したいという考えによるものです。それでいながら、ダイレクト系ならではの保険料水準で商品をご提供できるよう、努力しております。弊社では、代理店を介さないというダイレクト系のメリットを生かしながら、さらにテレビや新聞といったマスメディアでの広告を極力抑え、ネットに集中させることで、そこに掛かる広告費を大きく抑えております」とは相川氏。

 「自動車保険の保険料見積もりについても、これまで以上に気軽にご利用いただけるようにと、新たに『かんたん見積もり』機能を追加いたしました。もちろん、正確な保険料を出すためには、多くの条件を入力していただく必要があるのですが、そうすると途中で見積もりを止めてしまう方が多かったため、『かんたん見積もり』をご用意して、自動車保険の等級、運転者の年齢条件、車種といった数項目を入力するだけで、概算とはなりますが条件に近い保険料をご提示しています。是非とも、お試しいただきたいですね」(朝倉氏)

 シンプルであることは、分かりやすさを生み、そして、結果として保険料を下げることもできる。そんなコンセプトも三井ダイレクトの大きなポイントと言える。ちなみにサポートの面でも、シンプルさを追求している。他社と比較するとアピール度は少ないかもしれないが、ロードサービス内容を過度にしないことで、経費を無用に上げずに商品を提供しているのだと言う。

保険の状況、クルマの型式、初度登録と使用目的、運転者についてと大きく4つの項目で見積もりできるかんたん見積もりプリウスで見積もってみたかんたん見積もりの結果。3つのパターンで見積もりが出る

7月から保険料が値上げ!?
 さて、関連記事でも取り扱っているように、自動車保険の料率を算出している「損害保険料率算出機構」が、保険料の基本となる参考純率を全体で5.7%ほど上げたことを受け、各報道などをみると各社保険料値上げの傾向となっているようだ。三井ダイレクトでも、この7月1日の始期契約より、自動車保険の内容を大きく改定しており、契約内容によっては保険料が引き上げになっている。しかし、安易に値上げするのではなく、商品を今一度見直すことで、先に触れたシンプルさと分かりやすさを極め、さらに保険料値上げを極力抑えられるような商品改定を行っているとのこと。

「今回の改定においてシンプルという面では、たとえば、ABS・エアバッグ割引を廃止しています。その理由は、最近では多くの車種で標準装備されているため、差がなくなってしまったことによります。また、長期優良割引の廃止も行っております。これまでは20等級、無事故、業務目的ではないこと、年齢条件を満たした場合に割引をしていました。しかし、等級別割増引率を見直して、20等級以上の割引を拡大することで対応し、ひとつでも項目を少なくしています。こういった割引を目的とした項目は、お客様にとっては喜ばしいものではあるのですが、その分、複雑さを生んでいました。今回は、その割引感はそのままにしながら、項目を減らすことでよりシンプルにすることができました」(朝倉氏)

 分かりやすくという面では、運転者年齢条件の適用範囲も見直したと言う。これまでは、自動車を運転する人全員に年齢条件が適用されたため、運転する中でいちばん若いドライバーの歳に合わせる必要があった。しかし、改定によって、友人、知人、別居の親族や子供などには年齢条件を適用しない、つまり年齢条件に関係なく補償するようにしている。たとえば、大学生などの同居していない子供がいて、夏休みなどに帰省してクルマを運転するような場合、これまでだとその子供の年齢に合わせて運転者年齢条件を決める必要があったが、その必要がなくなったわけだ。これによって従来あった臨時運転者特約が廃止され、一方ではさらに保険料を下げられる本人限定特約を新設するなど、分かりやすさと保険料セーブの両方をうまくバランスさせたと言う。

 もちろん、時代の流れに沿った改定も行われており、これまでは設定がなかったハイブリッドモデルやEVといった“エコカーに対する割引”や、“軽乗用車に対する新車割引の拡大”など、ニーズに応じた改定もポイントと言えよう。そのほか、車両危険限定補償特約(限定タイプ)にいたずらによる損害を追加したこと、さらには等級カウントルール(等級すえおき事故)に、窓ガラスの破損、いたずら、そのほか偶然な事故までを含めたこともポイント。こうした補償内容を充実させたことを考えると、今回の保険料の見直しを安易な値上げとは受け取れなくなってくるはずだ。

 そのほか、改定内容についての要チェック項目としては、身の回り品補償特約の改定がある。補償対象外となるものについて、自転車や水上バイク、ノート型パソコンなどの携帯式電子事務機器、携帯電話、ポータブルナビといったものがあらたに追加されている。これらは身の回り品補償特約を付帯するかどうかの大きな要因になるので、他社も含め、よく確認することをオススメしたい。

事故現場に最も近い会社だから、無事故を願うムジコロジー
 三井ダイレクト損保では、自動車保険とは直接的には関係がないと思えるMUJICOLOGY!(ムジコロジー)というプロジェクトを展開している。

MUJICOLOGY!研究所のWebサイト。元F1ドライバーの片山右京氏の対談ブログや運転にまつわる100人アンケートなどが掲載される

「数多くの事故を見てきてた我々だからこそ、交通事故の悲惨さを痛感しております。万が一のための商品をご提供しておりますが、『本気で事故をなくしない』という現場の想いからスタートしたプロジェクトです。そのためには、交通事故の原因に着目して、その原因を取り除くことが必要と考え分析してみますと、事故の約75%が交通安全義務違反によるものであり、また、発生状況を見ると『市街地』『クルマ対クルマ』『30km/h以下』といった、ドライバー同士の意思疎通不足に起因するものが多いと想定されることがわかりました。そこで、クルマ環境への配慮というECOLOGYとMUJICO(無事故)という観点からMUJICOLOGY!という言葉を掲げ、より多くのドライバーにルールだけではなく、マナーも心掛けて無事故社会を実現しようと呼びかけています。ハンドルを握った時や運転中にMUJICOLOGY!という言葉を思いだしていただけるよう、浸透させたいですね」と相川氏。

 このMUJICOLOGY!コンセプトに対する同社の想いや考え方を知ると、実は自動車保険という商品にも展開されていることが見えてくる。自動車保険をよりシンプルにして分かりやすくして、そして、それをリーズナブルに提供していることもその表れと言えるし、もちろん、必要にして十分のサポートもそれに含まれる。

 最後に三井ダイレクト損保の自動車保険は、どんな人にオススメなのかを聞いてみた。

「ダイレクト系が不安だと思っている人や、ブランドや価格だけでなんとなく保険会社を選んでいた人にこそ、オススメしたいです。1度、見積もっていただければ、意外な保険料と充実した内容に驚かれるはずです」(朝倉氏)

(Photo:高橋 学 / Photo:高橋 学)
2011年 8月 1日