長期レビュー
高橋敏也のトヨタ「86(ハチロク)」繁盛記
その18:「ハチロクをオートクルーズ付きのスロコンで快適に」
(2014/11/25 00:00)
「敏也さん、スロコンとかオートクルーズとかに興味はありますか?」と、Car Watchから電話がかかってきた。いや、興味があるとかないとかではなく、そもそも最初のスロコンというのは何でございましょう? スパコン(スーパーコンピュータ)ならばコンピュータ繋がりで、多少の知識ある。だが、スロコンというのは聞いたことも見たこともない。
「そもそもスロコンとは何ぞや?」。だいたい想像できるのは、スロコンがスパコンと同様、何かを短縮した言葉らしいということだ。恐らく後半の「コン」はコンピュータか、コントローラだと見当をつけてみる。問題は前半の「スロ」である。Car Watchが私に電話をしてきたということはクルマがらみ、ハチロクがらみであることは間違いない。だが、スロなんとかというパーツや機能がハチロクにあっただろうか?
ここでタイムアップ。とりあえずCar Watchには「スロコンがいったい何か、ということに興味があります」と返答。するとその製品のURLを送るので見てほしい、そして興味があるようなら私のハチロクに取り付けて試してみましょうとのこと。メールは数分で届き、私はスロコンの正体を知ることになる。
そうか! スロットルコントローラであったか!
編集部から送られてきたメールのURLへ飛ぶと、そこは株式会社ピボット(以下、ピボット)の製品ページだった(http://pivotjp.com/product/3dr/3dr.html)。製品名は「3drive・REMOTE AUTO CRUISE & THROTTLE CONTROLLER(以下、3DR)とある。このスロットル・コントローラーの部分を省略して「スロコン」と呼んでいた訳だ。ただしこの3DRにはオートクルーズ機能も搭載されている。さすがにオートクルーズ機能に関しては私も知っているし、使ったこともある。
さて私が分からなかった方のスロコン、スロットル・コントローラーの方だが、これは要するにスロットルバルブのコントロール特性を変更できるものだという。3DRにはレスポンスモード、スポーツモード、そしてエコモード、3つのコントロールモードが用意されていて、ここにノーマルが加わるので4つのモードを使い分けることが可能だ。さらにレスポンスモードは5段階、スポーツモードは7段階、そしてエコモードは5段階にその特性レベルを設定できるという。
各モードに関しては、それこそ名は体を表す状態。レスポンスモードでは低中域のレスポンスを向上させ、マニュアルによればワイヤー特性に近い乗り味となるらしい。スポーツモードはその名のとおり、スロットル全域にわたってレスポンスを向上させるため、スポーツ走行に最適とのこと。エコモードはレスポンスモードとは逆に低中域のレスポンスを下げ、燃費を向上させるという。
もともとハチロクには走行モードがいくつか用意されていて、私のGTではVSC SPORTモード、そしてSPORTモード、SNOWモードなどが用意されている。SPORTモード系はもちろん、スロットル特性やギアチェンジのタイミングをコントロールし、スポーツ走行に適した特性が得られる。果たして3DRの特性コントロールは、それを超えるものなのだろうか? 実に興味深い。
一方のオートクルーズ機能に関しては、以前乗っていたプリウスにも搭載されていたので、その概要は理解している。ドライバーが設定した任意の速度をキープし、アクセルやブレーキに触れることなく走行できる機能だ。高速道路での長距離ドライブでは非常に重宝する機能であり、さらにアクセルワークが安定するため、燃費向上にも効果がある。残念ながら私のハチロクには搭載されていない機能であり、3DRを取り付ければ追加できるのである。
ハロチクに乗るようになってから、スポーツ走行的なことをする機会も増えたし、長距離ドライブをする機会も多くなった。そういった環境であれば、この3DRがかなり便利だと思うのだが、果たしてどうだろうか? 何はともあれ、取り付けてみよう。
取り付けはプロにお任せした方がよいと思います!
3DRはさまざまな国産車から外車まで、実にさまざまな車種に対応している。もちろん私のハチロク、オートマにも対応しているのだが、取り付けのために必要なハーネスは車種別に用意されており、ある程度の知識と技術があればオーナー自ら取り付けることも可能である。が、しかし。ここで私の個人的な意見を書いておくと「車種別専用ハーネスがあるといっても、取り付けはプロに任せましょう!」である。
今回、私は3DRの取り付けをプロにお願いしたのだが、その作業を見ていて「あー、こりゃ私には無理だわ」と思った。3DRのようなパーツを取り付ける場合、配線をなるべく外に出さないようにするのが美しい取り付けのツボ。だが、そのためにはパネルやナビを取り外したり、どう配線を取り回すかのスキル、すなわち経験値が必要になる。私にはそんなスキルはないし、実際の作業を見ていてただただプロの手際に感心するばかりだった。しかもスロットルコントローラにしろ、オートクルーズにしろ、クルマを走らせる上で重要な部分に触れることになる。そんなところで間違いは出来ないというのも、正直なところ。わるいことは言わないから、プロに任せましょうよ。
さて、3DRと車種別ハーネス、アクセル用ハーネスとブレーキハーネスを持って向かったのは、東京都三鷹市にある「スーパーオートバックス三鷹店」。担当してくださったスタッフは電装関連のプロ、飯田さん。ピボットの製品は定番なので何度も取り扱ったことがあるとのこと。今回の3DRを取り付ける場合、初期設定も含めて作業時間は1.5時間から2時間とのことだ。また、先ほども書いたがピボットの製品は人気の定番商品なので、ハーネスも含めて在庫があることも多いという。まあ、作業時間や在庫状況に関しては、取り付けをお願いするショップへ実際に聞いてみてほしい。
さっそく作業に取りかかる飯田さん。先ほども書いたが、この作業はやっぱりプロに任せるべきだと思う。手際よく剥がされる運転席周りのパネル。最初から決めてあったかのように迷い無く通される配線。少なくとも私には無理! という訳でプロに任せて大正解である。ちなみに3DRは配線を除くと、内部に隠れてしまう本体ユニット、そして外部にあって操作を行うコントローラとリモートスイッチで構成されている。コントローラとリモートスイッチは操作を伴うものなので、レイアウトが重要になってくる。飯田さんも「どこか取り付け位置で、ご希望はありますか?」と聞いてくれたのだが、いかんせん私はノープラン。「お任せします。いい場所に取り付けてください」とお願いした。
実は取り付け依頼の多くで、お客さんから「ここ」という希望はないそうだ。「いい場所に」というのが基本的に多く、最大公約数的なベストポジションへ取り付けるとのこと。ちなみに3DRのリモートスイッチは、ワイパーレバーやシフトレバーに取り付けることも可能だ。リモートスイッチによる操作はオートクルーズ機能を使用する際に発生する。このため取り付け位置は操作しやすさを優先するのだが、飯田さんはハチロクのキーホール部分に取り付けた。実際に操作してみると、これが理にかなった場所であることが体感できた。
一方、コントローラの方は各モードの表示を行ったり、スロコンのモード切り替えを行うユニットだ。このため操作しやすさはもちろん、見やすいということも重要になってくる。コントローラは最終的にカーナビの左に取り付けられたが、見るのも操作するのもスムーズなベストポジションだ。
取り付け作業が終わったら、最後に初期設定を行って完了。初期設定はアクセル開度と車速パルス設定、そして再始動時のモード設定で構成されている。この初期設定に関してはマニュアルをじっくり読んで間違えないようにすれば、誰にでもできる内容だ。今回は飯田さんがサッサと終わらせてくれたので、結局私は何もせずに済んでしまった。スーパーオートバックス三鷹店さん、そして飯田さん、ありがとうございました。
3DRを取り付けた我がハチロクは、低速のテスト走行で正常動作を確認しつつ、スーパーオートバックス三鷹店を後にした。
使って便利なオートクルーズ
取り付けた3DRを、いろいろと試してみたい。はやる気持ちを抑えつつ、まず向かったのは中央自動車道。平日の昼間なら混雑もないだろうから、一般道よりはるかに安全な状況で3DRを試すことかできる。また、高速道路となれば最初に試す機能は決まっている。そう、オートクルーズ機能だ。充分に車間距離を確保できる状況の高速道路なら、オートクルーズ機能はドライバーの疲労を軽減し、なおかつ燃費向上に役立ってくれる。
ちなみに3DRのオートクルーズ機能は30km/hから、140km/hの間で設定可能だ。しかしまあ、制限速度が100km/hの高速道路なら、余裕があって快適なのは80km/hぐらいの設定だろう。高速道路に入って80km/hに達したら、前後の車間を確認してからリモートスイッチの下側を押す。リモートスイッチはシーソータイプになっていて、上を押すか下を押すかだけの操作だ。オートクルーズのセットは下を押して行う。オートクルーズにセットされるとコントローラーの表示が「Acc」となる。これ以後、ハロチクはアクセルとブレーキ操作無しで、80km/hの定速走行に入る。
オートクルーズ機能で重要なのは、その解除方法だ。状況の変化に応じていつでも簡単に、解除できなくてはならない。その点、3DRは優秀である。まずオートクルーズのもっとも標準的な解除方法、ブレーキペダルを踏む方法が使える。さらにコントローラのMODEスイッチを押しても解除されるし、リモートスイッチの下側を1秒長押ししても解除が行われる。
さて、実際に使ってみた印象はどうか? これがとにかく便利! まず何よりオートクルーズを使用中に、例えば前方にいる低速車を追い越したいとする。その際は当然、アクセルを踏んで車速を上げる訳だが、追い越しを終えてアクセルを離すと、オートクルーズで設定した速度まで車速が自動的に落ちるのである。解除はあくまでブレーキを踏んだとき(さらにほかのスイッチ操作が行われた場合)。高速道路ではオートクルーズ中に前方の低速車を追い越すというのは、ごく普通に行われることなので、これがスムーズに行えると気持ちがいい。また、車速をリモートスイッチで変更することもできるし、いったん解除されたオートクルーズに復帰することも、リモートスィッチで簡単に行える。
気になったのは坂道などでの速度維持がどうなっているかだが、圏央道に入ってからそれを実際に体験することができた。まず上り坂で車速が落ちた場合だが、自動的にゆるやかな加速があり、車速が維持された。逆に下り坂で車速が上がった場合だが、こちらはエンジンブレーキがかかった状態(アクセルを離した時と同じ)となり、やはり車速が維持された。ただしマニュアルにも書いてあることだが、急な下り坂などではエンジンブレーキの範囲でしか減速はできないので、任意にオートクルーズを解除した方がいいだろう。
いずれにしてもこのオートクルーズ機能があれば、長距離ドライブがグッと楽になることは間違いない。後はドライバーが正しく理解して、正しく使えばいいだけである。
使って楽しいスロコン
オートクルーズを充分堪能したところで、いよいよスロットルコントローラ、スロコンの出番である。マニュアルにはざっと目を通してあり、コントローラの表示が「nor」になっているのは、ハチロク本来のセッティング、すなわちノーマルモードだということは把握している。この時、コントローラーのMODEスイッチを押すと「Ec1(~5)」、「rP1(~5)」、そして「SP1(~7)」とモードの表示が変化する。ちなみに「SP1(~7)」でもう1度MODEスイッチを押すと、元の「nor」に戻る。
各モード表示、最後の数字はレベルを示している。例えばスポーツモードはレベル1から7まで用意されており、レベル1の場合は「SP1」となり、レベル7の場合は「SP7」という表示になる。レベルを上げるとそのモードでの特性がより強くなる訳で、スポーツモードの場合は「SP1」より「SP7」の方が、よりスポーティな走りに向いたスロットル調整が行われるという訳だ。なお、レベルの調整はコントローラのLEVELスイッチで行う。こちらもやはりロータリー式になっていて、「SP7」の状態でスイッチを押すと「SP1」に戻る。
さっそくノーマルモード(nor)から、スポーツモードの「SP7」に切り替えてアクセルをややラフに踏んでみる。いや、ちょっと驚いた。もともとスポーティな出力特性になっているハチロクが、さらに荒々しく加速するようになった。エンジン回転数の上昇スピードもかなり速く、なるほどスポーツ走行に向いたセッティングだと実感する。しかしまあ、この「SP7」はかなり極端なセッティングで、公道ではあまり使う機会はないだろう。「SP3」とか「SP4」とか、そのあたりなら普通に楽しめると思う。
レスポンスモードは低中域のレスポンスを高めるモードなのだが、アクセルとスロットルバルブがワイヤー接続されているような特性だという。残念ながら私はワイヤー接続されたクルマに乗ったことがないので、どれぐらい再現されているかは分からなかった。ただ中低速のレスポンスが高まっているということで、極端ではないところ、例えば「rP3」あたりなら峠などで使えそうだという印象を持った。
3DRのスロコンが持っているモードで、私が一番使いそうなのが、実はECOモードである。このモードでは全域のレスポンスを落とし気味にして、燃費を向上させるという。実際、ピボットでの計測によるとノーマル状態で400mを走行した際の燃費が、ノーマルだと107ccだったのに対し、「Ec5」だと58ccで済んだという(アクセル開度30%固定、ホンダステップワゴン使用時)。逆に「SP7」だと157ccを消費したという。このECOモード、ハチロクで通勤する私にとってはかなり役立ってくれそうだ。そう、渋滞が頻発する都内の幹線道路では、高いレスポンスより、高い燃費性能が重要だからである。
実際に「Ec5」に設定して走ってみると、加速がかなり緩慢になったという印象を受けた。というか私は普通のファミリーカーにもよく乗るのだが、そちらの出力特性に近くなり、「Ec5」ではさらにまったりとした加速感になったのである。「どこかで似たような感覚を体験したなあ」とか思っていて気づいたのが、ハチロクの「SNOWモード」に近いのだ。SNOWモードでは後輪がスリップしないよう、緩慢な加速にあえてするのだが、その感覚に近いと思う。マニュアルをチェックしたところ、確かにECOモードは「滑りやすい路面」に向いているとのこと。また、「渋滞走行」にも向いていると書いてあった。
ちなみにアクセルを踏み込んだ際に、3DRはそのアクセル開度をコントローラに表示する。例えばアクセルを踏み込んで「A40」という表示なら、アクセル開度が40%ということだ。もちろんアクセルから脚を離した状態でゼロ、一杯まで踏み込んだ状態で100%である。ここで一つ興味深いチェック項目がある。キーをONにした状態でエンジンをかけずにノーマルモードで「A40」、すなわちアクセル開度を40%にする。そしてそのままスロコンのモードを変更するのである。すると「SP7」の場合は「A65」となり、「Ec5」では「A20」、「rP5」では「A50」となるのである。ノーマルのアクセル開度がスロコンの機能によって、さまざまにコントロールされていることがよく分かる。
使って便利なオートクルーズ、使って楽しいスロットルコントローラ。一石二鳥の3DRを装着した私のハチロクは、レベルアップに成功したと言っていいだろう。エアロパーツのように派手ではないが、ドライバー自身が実際に使って便利だったり、楽しかったりするパーツは本当にいいと思う。もちろん3DRはハチロク専用という訳では無いので、興味のある人は是非、ピボットのサイトで適応車種を調べてみてほしい。それと最後に一つ、取り付けはやっぱりプロに任せた方がいいと思いますよ、私は。