長期レビュー

正田拓也の中古「サンバー」生活

最終回 タイミングベルトを交換。そしてこれからもサンバーは走る

 トヨタ自動車から「ハイラックス」が復活するなど、「もしかしてトラックはやってる?」と思う今、サンバーは今日も快調に動いている。夏の間はイベントの荷物運びに大活躍。2016年の夏のように壊れもしなかった。そして、まもなくサンバーがやってきて2年。レポートの最後に少し大掛かりな整備をしてみた。

夏のイベントにも活躍!

 トラックの何がよいかと言えば、オープンでフラットな荷台だ。何を載せる場合にしてもポンと置いておけばよく、汚れたものでもあまり気にならない。軽トラックでも、バリバリの新車でメタリック塗装ならば荷台に載せる物に注意しなければならないが、適度にボロければ何も気にすることはない。ちなみに、新しいトヨタ・ハイラックスの積載量は500kg。サンバーは350kgなので、あれだけの大きさと価格の差がありながらたった3割しか減っていない。コスパの高さではサンバーの圧勝だ。

 今年の夏は、近所の夏祭りのために資材やテントの運搬をしたほか、終了後の片付けにも大活躍。最後に清掃工場にゴミを運ぶ必要があったが、汚れた汁が出るかもしれないお祭りのゴミを運ぶのは、普通のクルマに積むのは気が引ける。その点、軽トラックなら汚しても荷台ごと洗ってしまえばよい。

 幸いにしてゴミの運搬中に液体が漏れ出すということはなかったが、日ごろの汚れが溜まっていることもあり、荷台とゴムシートの丸洗いを行なった。

 洗い方は、デッキブラシでゴシゴシとやるだけ。しっかり洗い流したら、放っておけばすぐ乾く。オープンな荷台のありがたさを実感する瞬間である。

イベントに必要なものを無造作に積めるのもトラックならでは
荷台が汚れた場合でもデッキブラシがガシガシ洗ってしまえばOKだ

 秋になれば、今度はお彼岸でお墓参り。今回はお墓参りをサボってしまったため、先に墓参りに行った家族から「軽トラがあるなら墓のメンテナンスをすべし」というありがたいお言葉をいただいた。しかも、お墓に玉砂利を補充しろという指示もあった。

 軽トラならスコップなど道具を積み放題。ホームセンターに寄って玉砂利を買って積み込むのも簡単だ。砂利や砂を買ったことのある人なら分かると思うが、ホームセンターのガーデン売り場は雨ざらしで、ビニール袋入りの砂利や砂は雨水を含んでいることも多い。クルマの中に泥水を撒き散らした経験からすれば、砂利や砂の購入にはオープンな荷台のトラックがベストだ。

 幸いにして我が家が借りている霊園はクルマで前まで乗り付けられるので、軽トラでご先祖さまの待つところまで一直線。造園業者の軽トラに混じって、無事、お墓の草刈りと玉砂利の補充が完了した。

墓地に石を運んだあと。ホームセンターなどで袋入りの玉砂利を積んで水が出ても問題なし

今年の夏は乗りっぱなしで無問題

 2016年の夏は最後のほうでエアコンが故障したが、2017年の今年はエアコンに問題は起こらなかった。冷え方も十分で、狭い室内空間もあってすぐに冷える。屋根は鉄板1枚と簡単な内装材が付いてるだけだが、白いボディカラーのためかあまり暑くなっていない。

 あまりに極楽なカーライフを過ごしたため、整備も少し手抜きぎみ。気づいたのはタイヤの空気圧が少なくなっていたことと、バッテリーのへたり程度のものだ。

空気圧が下がっていた。特に荷物を積む前には確認したい

 タイヤの空気圧の補充は簡単で、タイヤが小さいためもあって自転車用の手押しポンプでもすぐ空気圧が上がってくる。前後とも180kPaくらいまで落ちていたが、フロント220kPa、リア250kPaまで上げると一気にクルマの動きが軽くなった。ステアリングの軽さももちろん、クラッチを切って空走したときの転がりもひとまわり上がったようだ。

 ここまで変化するなら燃費にも影響があるので、もう少し空気圧に注意を払っていればよかっと後悔している。タイヤの外見では空気圧の低下も分かりにくく、空気圧計を積極的に使わなければならないことを痛感した。

 また、バッテリーは数日動かさなかった後のセルの回りが弱かったため交換。適合の40B19Lサイズはバッテリーの基本ラインアップのなかでも最安の部類で約3000円から。今回は最安品から数百円奮発して、点検窓有りのボッシュ PSR-40B19Lを使った。ただ、交換後に気付いたことだが、サンバートラックは構造上、点検窓を覗くことができず無駄になってしまった。交換後は5日間放置してもセルは元気に回るようになった。

新しいバッテリーを用意し、古いバッテリーを外す
点検窓付きで状態がよく分かるはずだが……
サンバーに装着すると点検窓は見えない

 そして、懸案だった室内灯もLED化した。これは電球に替えてチップLEDが付いた基板を付けた。眩しいほど明るくなったが、消費電流は電球の0.7AからLEDは0.15Aへと大幅に減り、夜間にエンジンをかけずに室内灯を点けておいても安心。室内灯が関係するバッテリー上がりの可能性も大幅に低くなった。

チップLEDが付いた基板を室内灯カバーの内側に貼り付ける
明るい室内灯になった

そうだ、タイベル変えよう

 夏が終わればサンバーがやって来てから2年近くになる。そこで、大掛かりな整備の1つと言われるタイミングベルト交換にチャレンジしてみようと思った。オドメーターはもうすぐ17万kmに到達するかというところで、10万kmごとの交換タイミングまでは距離があるが、そろそろリフレッシュしてみようと思ったからだ。

夏の終わりにオープンツーシーター同士のライバル、マツダ「ロードスター」と2ショット

 タイミングベルト交換というと大掛かりに感じるかもしれないが、サンバーは簡単な部類で慣れた整備士なら1時間以内に終わるものだそうだ。それでも、間違えばタイベル切れと同様にバルブやピストンをはじめエンジン内部を壊す恐れがあり、大掛かりな修理が必要になる。注意すべきことは位置合わせを確実にすること。ネットの情報では2003年式のエンジンにはバルブリセスがあるらしいが、エンジンを開けて確かめたわけでもないので間違えないように慎重に作業するしかない。

 やり方はジャッキアップして右リアタイヤを外し、ダンパーの上のボルトを外し、エンジンカバーを外す。そして、Vベルト、クランクプーリー、タイミングベルトカバーと外し、タイミングベルトを交換する。その際、テンショナー、ウォーターポンプ、クランクシャフトオイルシール、カムシャフトオイルシールも同時に交換する。ウォータポンプはタイミングベルトの寿命と直接関係ないが、別々に交換すると二重の手間となるため慣例的に同時交換されている。今回はウォーターポンプも含めてサンバー用5点セットとして販売されているものを購入した。通販サイトでは7000円以下から入手できる。

ネットショップにオーダーして届いたタイミングベルト交換セット

 交換の詳しい説明はほかに譲るが、とにかく慎重に確認しながら行なうことが重要。苦労した点といえばクランクプーリーの固定ボルトが緩まず、セルモーターを外してリングギヤの歯に大径のソケットレンチを引っ掛けてクランクシャフトの軸を固定して緩めたことくらいだ。セルモーターを外す場合はエアクリーナーボックスを外してからでないとアクセスしづらく、タイミングベルト以外にも分解の手間がかかった。

右リアタイヤを外す
エンジンカバーを外せばクランクプーリーが見える
クランクプーリーボルトを外すには、セルモーターを外してリングギヤに引っ掛かるよう大きめのソケットのコマをはめてシャフトを固定する
タイミングベルトを外す前にはマークを合わせ、このあとは絶対動かさないことが重要。カムシャフト側もあるので合わせる
ベルトを外し、ウォーターポンプ、シールをすべて交換したところ。これからタイミングベルトをはめ込む
ベルトにマークが付いているので合わせる
途中の写真がないが、新しいタイミングベルトを装着したところ。マークを合わせてテンショナーで張りを与えたら、手で回して当たっているものがないか確認。このあと、元に戻すほか冷却水の交換作業が必要
使用済みのタイミングベルト。約7万km近く使ったが目立った劣化はなし。10万km使っても大丈夫そうだ

 また、5点セットで交換する場合はウォーターポンプを外すため、同時に冷却水の交換作業まで行なう。さらに、サーモスタットの交換をする場合もあるが、水温の上がり方や安定性に問題はなさそうなので今回はパスした。なお、ネット上で見たサンバーのウォーターポンプ交換時の画像は水路が錆だらけという個体が多かったが、幸いにも水路に錆や堆積物はなくきれいだった。

 途中、クランクプーリーボルトを緩めるために悩んだ時間があるが、作業時間的には半日ほどで終了。エンジンも問題なくかかった。

リコール発生! クランクプーリーを交換、そしてオイル交換も指導

 タイベル交換を検討していたとき、ちょうどリコールの情報が入ってきた。外すのに苦労したクランクプーリーに分離しやすい部品が混ざっているとのことだ。振動防止にクランクプーリーは中心部とプーリー部分の間にゴムが挟まっているが、問題点はゴムが剥がれて空回りやプーリー脱落が発生するというものだ。

スバルからリコールのお知らせが郵送されてきた

 このトラブルはほかのクルマでも昔からよくあるもので、冷えたあとにエンジンを始動したときベルトが擦れる音がするクルマがあるが、ベルトのスリップではなくクランクプーリーの防振ゴムが空回りするという今回のリコールと同じ症状のものもある。筆者自身、過去に乗っていたクルマも同様の症状が出て交換、その後あらためてリコールになったことがある。

 今回は症状は出ていないが、その恐れのあるプーリーだった場合は交換してくれるということで最寄りのスバルディーラーへ。残念なのか幸いなのかプーリー交換となり、真新しいプーリーに交換された。なお、今回のリコールとともにサービスキャンペーンとしてエンジン点検が行なわれた。

 サンバーとその同型エンジンを使っているクルマで、オイル管理を怠りすぎるとエンジンから火が出てクルマが全焼する事態があったという。エンジン点検は異常なしだったが、オイル交換など整備の重要性の説明を受けることまでがサービスキャンペーンとなっており、説明を受けて一連のリコール処置は完了した。

新しくなって黒光りしているクランクプーリー

 あらためて説明されたオイル交換のインターバルは、2003年式以降のサンバーでは標準で6カ月または1万km、オイルフィルターが1万kmだが、シビアコンディションではその半分の3カ月または5000kmごとのオイル交換と5000kmごとのオイルフィルター交換が求められるという。メーカーの推奨がこの距離だから、実際にはもう少し高い頻度で交換したくなる。

 シビアコンディションとは悪路や登坂走行が多いほか、1回の走行が8km以下の短距離走行を繰り返すことも該当する。近所の足として使うとシビアコンディションになりかねず、多めのオイル交換が求められそうということになる。

ドアを開けたところにオイル交換の注意が書かれたシールが貼られていた

とにかく、軽トラは楽しい!

 サンバーがやってきてもうすぐ2年。サンバーとの生活紹介は今回で一区切り。軽トラの楽しさや便利さを実感しているつもりなので、しばらくはサンバーに乗るつもりだが、もしかしたらどこかで別の軽トラに買い換えることもあるかもしれない。

 そして、2年間の自分の経験から軽トラを以下のような人にお勧めしたい。

・ミニマムなクルマを楽しみたい
・自転車や室内に置きたくない荷物運びの機会が多い
・2人乗りでも問題なく、室内に置かなければならない荷物は少ない
・フォーマルなところへ乗っていく必要がない

 セカンドカーやサードカーとして増車する場合は上記の条件どおりでなくてもよいが、軽自動車だからといって維持費用は登録車と大きく変わるわけではないことに注意してほしい。例えば維持費のうち、車検時にかかる自賠責保険や通常の任意保険の負担は、普通の登録車とあまり変わらない。駐車場を借りる必要があるなら、軽自動車専用の小さいスペースを借りるのでなければ安くならない。大幅に安くなるのは毎年の自動車税と車検時の重量税程度なので、軽自動車だから安く済むという幻想を抱かないほうがいいだろう。

 燃費についても2年間の平均が街乗りメインでほぼ13.5km/L。燃料費やオイル交換費用についてはハイブリッドカーのほうが安いくらいだ。

 でも、それ以上にミニマムなクルマを楽しみたいという気持ちがあるならぜひ軽トラ乗りになってみてほしい。購入に際しては第5回で触れたように、少々の難があっても格安車を自分で整備し磨き上げて楽しんでもいいし、長く乗るなら新車を購入してもコスト的にはあまり変わらないかもしれない。

 中古で購入する場合は、まず第一にクルマを慎重に選ぶこと。サンバートラックの場合はエンジンやフレームが重要で、ボディは二の次。とくにフレームが錆びやすいと言われるので、ボディがピカピカでも下に潜り込んでフレームの錆確認は前から後ろまで厳重に。そして、オイルキャップを外してエンジンオイル管理の状態、冷却水の状態などもしっかりチェックしたい。

 クルマ選びについては第1回で書いたように、選択眼のある店と店主に委ねる方法もある。そのおかげか、ボディはボロでもきちんと整備頻度されてエンジンは快調、フレームは構造に関わる錆なし、冷却ラインの錆は皆無、というサンバーに巡り会えたことも事実である。

「軽トラおもしろい」という話をしたことがあるなら、ぜひ、次のクルマ選びに軽トラックを加えてみて、その楽しさを体験してみてはいかがだろうか。

正田拓也