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トヨタとWWF、自動車業界初となるグローバル・コーポレート・パートナーシップを発表

「生きているアジアの森プロジェクト」を支援、2016年は100万米ドルを助成

2016年7月20日 発表

東京都内で会見したトヨタ自動車株式会社 環境部長 根本恵司氏(左)とWWFジャパン 事務局長 筒井隆司氏(右)

 トヨタ自動車とWWF(世界自然保護基金)は7月20日、生物多様性保全の取り組みとして「生きているアジアの森プロジェクト“Living Asian Forest Project”」への支援など、自動車業界として世界初となるWWFグローバル・コーポレート・パートナーシップを開始したと発表した。

 今回のパートナーシップにより、WWFとトヨタは「持続可能な事業活動の実現」「社会への環境コミュニケーション」「WWF自然保護プロジェクトへの資金支援」の3分野で協働を行なっていくとともに、トヨタは「生きているアジアの森プロジェクト」に対して2016年は100万米ドルを助成、同プロジェクトへの支援を5年間継続する予定。

生きているアジアの森プロジェクト

 同日、東京都内でトヨタ自動車 環境部長 根本恵司氏とWWFジャパン 事務局長 筒井隆司氏が会見して、今回のパートナーシップに関する狙いについて話した。

WWFジャパン 事務局長 筒井隆司氏

 会見の中で、WWFジャパンの筒井氏は「我々の業界の中では、自動車産業に対しては、モータリゼーションの発達とともに環境負荷を与えているのは事実であり、そういう産業界と連携することに懐疑的な意見もあった。実際、去年の秋にフォルクスワーゲンの事件があり、この時期に自動車産業とグローバルパートナーシップを結ぶのかという意見もあった」と明かすとともに、2015年10月14日に開催された「トヨタ環境フォーラム」にWWFインターナショナル事務局長 マルコ・ランベルティーニ氏が招かれたことを紹介。

 筒井氏は「内山田会長をはじめとする経営幹部と話し合いをして、トヨタさんの環境チャレンジは本気であって、しかも、ただCO2排出ゼロに向かって突き進むだけでなく、環境にプラスに働く活動をしたいというお話を頂いて、そういう信念を経営トップの皆さまからいただき、これなら説得できる自信があると踏んで、内部を説得することができた」と話した。

 今回、トヨタが支援する生きているアジアの森プロジェクトでは、東南アジアの熱帯林とそこに生息する生物の保全に向けて、WWFが世界で最も優先して保全するべき地域の1つに指定している、インドネシア共和国のボルネオ島(カリマンタン)とスマトラ島で活動を実施する。将来はインドネシアでの活動を踏まえ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム等にまたがるメコン地域への活動拡大も検討していく。

 そこで行なわれる保全活動では、対象地域における生物調査・森林再生・森林周辺に住む人々の暮らしを支える諸活動が含まれるとともに、各地で熱帯林破壊や絶滅危惧種の個体数減少の主たる原因となっている木材、紙パルプ、パーム油、天然ゴム等の産品について、サプライチェーンに関わる企業等と連携し、生産、調達、消費を持続可能なものに改善するための活動を実施するという。

 特に、タイヤなどの主要原料である天然ゴムについては、今後需要が一層拡大することが予想されており、森林生態系を保全するためには、天然ゴムの持続可能な生産と利用が求められている。トヨタでは、天然ゴムの環境・社会課題を理解して、産業界・他のステークホルダーとも協力して、WWFが推進する天然ゴムの持続可能性に関する国際基準の策定等へ積極的に貢献していくことを目指すとしている。

 そのほかにも、気候変動の分野においては、トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」における「CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けて、WWF等が推進する気候変動問題の取り組みである「Science Based Targets」に参加登録を完了しており、WWFとトヨタは脱炭素社会の実現を目指して継続的に協働していく。

トヨタ自動車株式会社 環境部長 根本恵司氏

 会見の中でトヨタの根本氏は、今回のパートナーシップにおける支援などについて、2015年10月に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の実現に向けた重要な取り組みの1つであることを示すとともに、「トヨタではこれまでもNGOを通じてさまざまな支援をさせていただいているが、価値ある活動をしている方々の悩みとして、どうやったらこの価値が見えるのだろうと苦労している」「それら1つひとつの活動を支えるものとして、データの蓄積が必要」と話し、トヨタにおいてもこれら環境保護活動に対する社会の知見の積み上げに寄与していきたいとの考えを示した。

今回の支援は「トヨタ環境チャレンジ2050」の実現に向けた取り組みの1つであることを示した
今回のパートナーシップに対するトヨタの狙いを示したスライド