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米GM、ドライバー向けサービス「OnStar Go」にIBMの「Watson」を採用

車内での操作でガソリン代の精算やコーヒーのオーダーなどが可能

2016年10月24日(現地時間)発表

講演で息の合った様子を見せる米ゼネラルモーターズのMary Barra CEO(右)と、米IBMのJinny Rometty会長兼社長兼CEO(左)

 米ゼネラルモーターズは10月26日(現地時間)、新たにドライバー向けサービス「OnStar Go」を提供すると発表。同サービスに米IBMのコグニティブコンピューティング「Watson」を採用することを明らかにした。

 この連携については、米IBMが米ネバダ州ラスベガスで10月24日(現地時間)から開催した「IBM World of Watson(WoW)2016」の会期3日目となる10月26日に実施された、米GMのMary Barra CEOと米IBMのJinny Rometty会長兼社長兼CEOの基調講演のなかで発表された。自動車業界でコグニティブコンピューティングを採用するのはこれが初めてになるという。

操作はダッシュボードの「OnStar GO」から行なうことができる

 OnStar Goは2017年後半から提供を開始する予定する新サービスで、初年度には4G LTE接続が可能な200万台以上のクルマで利用できるようにする。現時点では、シボレー、キャデラック、GMCなどの27車種に搭載する計画であることも明らかにした。また、OnStar Goに対応したモバイルアプリを利用することで、スマートフォンからも利用できるようになるという。

 OnStar Goは、提供開始からすでに約20年の歴史を持ち、1200万台で利用されている「OnStar」をさらに進化させたもので、よりパーソナル化したサービスを提供できるのが特徴だ。

ガソリン代の支払いもダッシュボードからできる

 Barra CEOは「OnStarのサービスを提供してから20年が経過。この間、安全性とセキュリティを追求してきた。例えば、事故が発生してエアバッグが作動したら、それと当時に助けを求める情報を発信できる。OnStar Goではパーソナルアシスタントしての役割が強化され、今までのサービスをさらに1段引き上げることができる」とする。

 例えば、通勤時にガソリンが足りなくなるような状況になると、クルマが給油する必要性を警告。これと同時に渋滞を避けながら、最寄りのガソリンスタンドまでのルートを教えてくれる。さらにダッシュボードからの操作によって、ガソリン代の支払いまで可能になる。また、忙しいワーキングマザーが帰宅する途中で、子供のために薬を購入しなくてはならない場合には、高速道路を走行中に次の出口を出ると薬局があることを教えてくれて、薬を購入することをうながす。

 また、コーヒーショップで売っている季節限定のコーヒーを飲みたいという場合には、クルマのなかからオーダーして、その店に到着したらコーヒーが出てくるといった使い方も可能だ。このほかにもパーソナライズされたコンテンツを配信し、ユーザーの好みにあった最適なコンテンツを楽しむことができる。

薬局に薬が届いていることを知らせる表示

 米IBMのRometty会長は、OnStar Goを「コグニティブモビリティプラットフォーム」と表現。「米国人は、1日平均46分をクルマのなかで過ごしている。人生のうち、クルマのなかで過ごす時間は3万7000時間にものぼる。その時間をいかに快適に過ごすかは重要な要素である」と指摘する。

 また、Barra CEOは「OnStar Goはドライバーの生活全体を支援するものになり、安全性も高めることができる。OnStarという強力な基盤の上に、インターネットに接続してWatsonと組み合わせることで、テーラーメイド型のサービスを提供して個人の生活を豊かにする支援ができる。クルマに乗ってどこに行きたいのか、なにがしたいのかをクルマが理解し、時間を節約しながら効率的に目的地に到達できる。運転の仕方が変わるサービスになる」とする。

 操作はクルマに搭載されたダッシュボードを通じて行ない、直感的なタッチスクリーンインタフェースを採用。これはIBMが開発することになるという。GMではこれらのサービスを実現するため、エクソンモービル、Glympse、アイ・ハート・ラジオ、マスター、Parkopediaなどと提携することを発表した。

食べ物や飲み物の注文も行なえる。あとは受け取りに出向けばいいだけ

 エクソンモービルでは、ドライバーが素早くエクソン、モービルのガソリンスタンドを見つけられるようにコグニティブモビリティプラットフォームを使用。Glympseは位置情報技術を活用することで、リアルタイムの位置情報を共有して各種サービスに活用する。アイ・ハート・ラジオは、個人カレンダーやソーシャルグラフ、場所、好みなどの情報をもとに音楽などの最適なコンテンツを提供。マスターは「マスターデジタルイネーブルメントサービス(MDES)」により、デジタル決済サービスを提供する。また、Parkopediaは詳細な駐車スポット情報を提供し、ボタンをクリックするだけで駐車場の支払いを完了できるという。

 そして、プライバシーの観点にも言及。「GMとIBMはプライバシーを守るという点で共通の認識を持っている。2社が力をあわせれば、安全な環境で、コグニティブなサービスを実現できる」(Rometty会長)と述べた。

 サービスの提供においては、顧客の同意を得て、Watsonが提供している運転者の好みを学習する機械学習を適用。これによって、プライバシーを保護しながら個別の細かいニーズに対応できるようになるという。

 Barra CEOは、「今後5年間の自動車業界は、過去50年よりも大きな変化が訪れると考えている。それは、個人を中心にしたモビリティの変革が訪れるからだ。コネクティビティ、電気化、自動化、シェアリングといった動きがあるが、いずれも個人を中心にした、新たなモビリティの実現においては欠かせないものになる。OnStar Goはそれを支えるものになる」と解説している。