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パイオニアとHERE、業務に加え資本提携で結びつきを強化
IoTを利用した保険会社向けの事故リスク予測プラットフォームをグローバルで提供
2017年9月20日 12:44
- 2017年9月19日 発表
パイオニアとオランダの地図ベンダーHERE Technologiesは9月19日、東京都内で共同記者会見を開催し、自動運転時代に向けた高精度3Dマップなどを含むグローバルなデジタル地図サービスの協業などを含む業務提携や、資本提携に関する合意書を締結したと発表した。
パイオニアとHEREは、2月8日に業務提携したことを発表しており、今回の業務提携の内容は基本的にはその時に発表されたものとほぼ同じだ。しかし、今回はそれに加えて、HEREがパイオニアが新たに発行する普通株式1111万7500株(発行済み株式総数のうち3%に相当)を取得し、その代わりにパイオニアはHEREの持ち株会社の1%未満の株式を同額分取得するという形となる。
発表会にはパイオニア 代表取締役 兼 社長執行役員 小谷進氏、HERE Technologies CEO エザード・オーバービーク氏が登壇し、パイオニアとHEREの提携の意味などについてのプレゼンテーションを行なった。
「業務提携に加えて資本提携を行なうことで、両社の結びつきはより強くなる」とHEREのCEO
冒頭では、HERE Technologies CEOのエザード・オーバービーク氏がHEREの紹介を行なった。HEREはオランダに本社がある地図サービスをグローバルに提供する企業として知られている。元々はフィンランドのノキアの傘下企業として、ノキアのスマートフォンやそのパートナーなどに地図データを提供する企業として運営されてきたのだが、ノキアが端末ビジネスを米マイクロソフトに売却した後、HEREに関しても売却することになり、ドイツの自動車メーカー連合(BMW、フォルクスワーゲングループ、ダイムラー)に売却された。その後は、自動車向けのナビゲーション、そして自動運転向けの高精度3Dマップを提供する企業として知られており、現在はドイツの自動車メーカーだけでなく、IntelやNVIDIAといったIT系のベンダーも投資を進めているという注目の企業となっている。特に自動運転向けの高精度3Dマップに関してはグローバルで先行している企業とみられており、自動運転の話をする時には欠かせないプレイヤーの1社だ。
HEREのオーバービーク氏は「パイオニアとは18カ月前から話を始め、当初は高解像度地図での提携の話を進めた。それで、お互いの将来のビジョンを話し合ったところ、同じところを見ていることが分かったので共に歩んでいこうとなった。当初は高精度3Dマップを相互に融合する話をしたが、今回事業提携に加えて資本提携を行なうことに決めた。これにより両者の結びつきはより強化され、エキサイティングな提携になる」と述べ、従来から決まっていた両社の業務提携に資本提携を加えることで両社の関係は強化されるとした。
新たな業務提携として、パイオニアのIoTを利用した保険会社向け事故リスク予測プラットフォームを欧州でHEREが提供
続いて、パイオニア 代表取締役 兼 社長執行役員の小谷進氏が今回の資本提携に関しての説明を行なった。小谷氏は「昨日は台風で今日の発表もどうなるか心配だったが台風一過で今日はとてもいい天気になった。今の私は外の天気のように晴れやかな気持ちだ」と述べ、今回の資本提携などが決まったことを喜んでいると天気になぞらえて表現した。
小谷氏は、パイオニアは近年、リソースをカーエレ市場に集中していて、市販事業、OEM事業、地図事業の3つの事業から構成されており、最近では自動運転には必須のキーデバイスとなる3D-LiDARなどにも取り組んでいる現状を説明し、なかでも子会社となるインクリメントPを中心とした地図事業は日本だけでなく、ASEAN地域で強い地図ビジネスを展開していると説明した。そうした地図事業での業務提携に関しては「両者がそれぞれの強みを生かすことになる。例えば、パイオニアは日本の地図をHEREに提供する」と述べ、両社それぞれが強みを発揮できる部分で提携していくのだと説明した。
また、地図だけでなく、自動運転やIoT(Internet of Things)時代に向けて、ほかにも提携できる部分はあるとして、パイオニアがこの春に東京海上と事業を開始しているIoTを利用した保険会社向けの事故リスク予測プラットフォームを、HEREに提供し、HEREが欧州などで顧客にサービスを提供していく計画だと説明した。
なお、質疑応答ではインクリメントPも出資者として参加しているダイナミックマップ基盤株式会社(DMP)との関係に関しても質問が出たが、インクリメントP 代表取締役社長の神宮司巧氏は「弊社は出資者として参加しているが、DMPを利用する日本のお客様もグローバル展開を求めており、HEREとは様々なコラボレーションをやって協力していきたい」と述べ、今回の提携がDMPを利用する日本の自動車メーカーにとっても意味があるものだと強調した。