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トヨタの自動運転車にADAS用「R-Car H3」、車載制御用マイコン「RH850」を提供するルネサスのソリューション
自動運転機能「Highway Teammate」用の主要半導体ベンダーに
2017年11月2日 00:00
- 2017年10月31日 発表
ルネサス エレクトロニクスは10月31日、トヨタ自動車が2020年に実現を計画している自動運転機能「Highway Teammate」用の主要半導体ベンダーとして同社が選定されたことを発表した。採用された製品は、ルネサスが開発したADAS用チップセット「R-Car H3」と、車載制御用マイコン「RH850」。
また、同社はカメラやセンサーによるセンシング、AI(人工知能)による認知・判断、車両制御、クラウドサービスといった自動運転時代に不可欠な要素を「トータルで提供」するコンセプト「Renesas autonomy」(ルネサス・オートノミー)も紹介。自動運転に準じるADASや高精細に情報表示可能な3D CGインストルメントパネルなどをエントリークラスの車両にも搭載できるようにする、コストパフォーマンスに優れた製品を提供していく考えを示した。
自動運転のための認知・判断、車両制御を担う
Highway Teammateへの採用について解説があったのは、自動車関連企業を対象にしたルネサス主催のイベント「Renesas R-Car Consortium Forum 2017」の会場内で開いた記者会見。同社執行役員常務 兼 オートモーティブソリューション事業本部長の大村隆司氏が説明した。
トヨタとデンソーが2020年の市販車導入を目標に開発を進めるHighway Teammateは、自動車専用道路向けの自動運転技術。専用道の入口から出口まで、合流、レーンチェンジ、追い越しなどの必要性を車両が判断し、ドライバーの承認の後、実行するものとなっている。自動運転レベルとしては3、もしくは4に相当する。
このHighway Teammateに採用する「R-Car H3」および「RH850」は、トヨタ車のデンソー製ECUに搭載。外部センサーやカメラからの情報を元に自車位置や周囲の環境を認識し、Highway Teammateで実現が予定されている自動運転のための認知・判断から、それを受けた車両制御までを担う。
自動運転に向けた開発コンセプト「Renesas autonomy」
大村氏は、自動運転時代になると、クルマのあり方がユーザー自ら所有し運転する「オーナーカー」と、自動運転による移動主体の「サービスカー」という2つの大きな潮流に分かれるとする。これにより、市場においては「顧客・キープレーヤー」「品質に対する考え方」「クルマ作りそのもの」の3つが変化にさらされると予測。EV、コネクテッドカー、自動運転という技術トレンドの進展とも合わせ、従来の車両制御にクラウドサービスやセンシングも加えた、「堅牢な自動運転ソリューション」の必要性が高まっていると訴えた。
こうしたなか同社が提案するのが「Renesas autonomy」だ。Renesas autonomyは、自動運転に不可欠な要素を網羅した「エンド・ツー・エンドのトータル・ソリューション」を実現する同社の開発コンセプト。コネクテッドカー化やクラウド連携(つながる)、センサー・カメラによる「センシング(見る)」、コグニティブコンピューティング(AIなど)による「判断(考える)」、それに従来の車両のブレーキ操作、ステアリング操作などの「車両制御(操作する)」という4つの要素からなる。
同社はすでに、Renesas autonomyのコンセプトのもと多数のソフトウェア開発環境を用意し、R-Car Starter Kitなどに見られるリーズナブルな開発用試験機の提供も進めている。これまでの車両制御ソリューションにおける同社の豊富な実績も強みとして活かし、Renesas autonomyについてはすでに220社以上とパートナーシップを締結。今回の「R-Car H3」と「RH850」のHighway Teammateでの採用も、その流れのなかで実現に至ったものと言える。
リッチな3D CGのインストルメントパネルをエントリークラスに
R-CarシリーズやRH850は、10月から販売が開始された日産自動車 新型リーフの「プロパイロットパーキング」でも採用済み。もちろんほかのメーカーとも量産計画や商談が進められているが、海外企業による採用がおよそ7割を占めているという。大村氏は、セキュリティ、センシング、コグニティブ、HMI(Human Machine Interface)、車両制御といったさまざまな分野で今後も採用例が増えていくと語った。
また、記者会見では、同時に発表された別の2件の内容についても説明があった。1つは、エントリークラス車両向けの3Dグラフィックスクラスタ(インストルメントパネル表示用)チップセット「R-Car D」。現在各車両メーカーが主にフラグシップグレードの車種に搭載を進めているフルカラーディスプレイのインストルメントパネルを、コストダウンを図ることで低価格帯の軽自動車やコンパクトカーなど、下位グレードの車種にも広げるソリューションとなる。
もう1つは、11月1日より中国・北京に新たな拠点「新エネルギー自動車ソリューションセンター」を設置する件。今後EV化の大きな波が押し寄せると見込まれる中国市場にフォーカスしたインバーターソリューションやチップセットの開発、普及に積極的に取り組んでいくとしている。