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ゴッパのカーチャージャーが取得した「USB-IF」認証

安心してUSB PD機器を利用するには“USBロゴ”が目安

2017年11月29日 開催

上が従来のUSB端子(Standard-A)、下が新しいUSB Type-C

 ゴッパは、日本初のUSB-IF認証品でUSB PD規格準拠のACアダプター&カーチャージャーとなる「Energear」シリーズを発表した。本記事では、11月29日に行なわれた製品発表会の会場で同時に行なわれたUSB-IF(USB Implementers Forum)認証に関するセミナーの模様をお伝えする。

 ゴッパの機器のUSBロゴ取得を担当したグラナイトリバーラボ・ジャパンの仲丸直江氏によれば、現在「USB PD」(USB Power Delivery)に対応した機器のなかにはUSB(Universal Serial Bus)の規格に準拠しきれていない製品も多く、場合によっては製品が熱くなったりするなどの問題が出る場合があるという。それを避ける意味でもUSB-IF認証を取得することが重要であり、一般消費者も購入時に“USBロゴ”が製品にあるかどうかを目印にすべきだと指摘した。

「USB BC」「USB PD」「USB Type-C」など複数の規格が用意されているUSB規格

 USBは、1996年にIntelやMicrosoft、NECなどのPC関連企業が策定した標準規格で、当初はPCに周辺機器を接続する規格としてスタートした。ロイヤリティフリーで利用できるため、その後PC以外にも用途が広がっていき、スマートフォンやタブレットといったPC以外のIT機器でも採用。今では自動車や飛行機といった乗り物の標準的なインターフェースとして採用されるに至っている。自動車でも、2000年代の後半あたりから携帯電話を充電するポートとして、そしてカーナビゲーションに動画や音楽ファイルなどを転送するポートとして搭載されるようになっており、現在では普及価格帯の自動車にもUSBポートが標準装備されるようになるほど普及している。

 USBの特徴は2つあり、最新の規格である「USB 3.1」では10Gbpsという高速なデータ通信が可能であること、そしてもう1つは機器に対して給電が可能なことだ。このため、例えばスマホやタブレットを充電する手段としてUSBが一般的に利用されており、USBポートを備えるACアダプターやバッテリーを利用して、それらの機器を充電するというのはもはや当たり前の光景だろう。

種類名称内容
総合規格USB SpecificationUSBの基本的な仕様。プロトコルなどを規定している。最新の規格はUSB3.2
端子USB Type-C新しい端子USB Type-Cの規定
給電USB-BC(Battery Charging)7.5Wまでの給電拡張仕様
給電USB-PD(Power Delivery)100Wまでの給電拡張仕様

 上の表はUSB規格の種類をまとめたものだ。USBでは複数の規格が並立しており、それぞれ総合的な規格(USB Specification)、それとは別に端子の形状(USB Type-Cなど)、給電の規格(USB-BC、USB PDなど)などがオプションとして用意されている。

 当初のUSB規格では、5V/0.5A=2.5Wしか給電できなかったが、その後「USB 3.0」という規格で5V/0.9A=4.5Wまで拡張された、しかし、近年はスマホのバッテリーも容量が大きくなる一方で、これだけの給電量では充電に時間がかかって実用的ではなくなっていた。そこでUSBの規格を策定するUSB-IFは、新しい充電の仕様としてUSB BC(Battery Charging)という規格を策定し、最新の規格では5V/1.5A=7.5Wまで給電可能になって、より短い時間での充電が可能になっている。

従来のUSBの給電環境(仲丸氏のプレゼン資料)

 しかし、それでもノートPCのように30~65Wといった給電量の大きなACアダプターを必要とする機器の充電には十分ではない。そこで2013年に策定された規格がUSB PDで、最大で20V/5A=100Wまでの電力を給電できる仕様になっており、ノートPCのようなデバイスでも充電できるようになっている。

USB PDの考え方

 そのUSB PDと同じような時期に登場した新しい端子の規格が、USB Type-C(USB-Cと省略されることもある)だ。このUSB Type-Cは、それまでUSBポートで一般的に使われてきた「USB Standard-A」に変わって導入された端子で、USB Standard-Aとは異なり決まった方向がなく、表裏どちら側を挿しても使えるという特徴を備えている。また、USB PDにも対応可能で、USB PDに対応しているUSB Type-Cの場合には、最大で100Wまで給電が行なえるようになっている。

 現在の自動車に搭載されているのはUSB Standard-Aだが、スマホやPCなどは急速にUSB Type-Cへと置き換えが進んでおり、今後は自動車側もUSB Type-Cに置き換わっていくことが予想される。するかしないかではなく、それがいつなのかが課題となっているのが現状となっている。

互換性に不安を抱えるUSB PD。心配を回避するにはUSB認証ロゴが目安の1つに

グラナイトリバーラボ・ジャパン株式会社 仲丸直江氏

 ゴッパが新たに発売するEnergearシリーズは、このUSB Type-Cの端子を採用してUSB PDに対応するACアダプターとなる。ゴッパが開催した記者会見にはグラナイトリバーラボ・ジャパンの仲丸直江氏が参加して、USB Type-CとUSB PDの現状についての説明を行なった。

 USBロゴとは、前出のUSB-IFが行なっている認証プログラムで、認証テストに合格した製品に対して製品のパッケージなどにロゴを掲載することを許可する仕組みになっている。つまり、その製品がUSB-IFが定めたUSB規格に合致していることを保証するという仕組みだ。

Energearシリーズの製品パッケージにはUSB認証のロゴが印刷されている。これが一般消費者にとっては安心の目安になる

 仲丸氏によれば、USB Type-Cでは機器同士が接続された後、お互いに情報をやりとりして給電量などを決定するという。特にUSB PDを利用するためにはケーブルでも対応が必要で、どれだけの電力を流せるかの情報となる「Eマーカ」を格納しているケーブルの利用が必要となる。このため、USB PDに対応した機器を揃えれば、大電流を安定して流すことが可能になり、より短い時間で機器の充電が可能になるという。

 しかし、よいことだけでなく、現状のUSB PDにはいくつかの課題があると仲丸氏は説明する。「機能が複雑すぎて一般消費者にとって理解するのが難しい。また、ケーブルの組み合わせによっては動かないなどの問題がある。なかにはUSBの規格に準拠していない動きをする製品があり、そうした場合には機器が熱くなったり、場合によってはコネクタが熱で溶けてしまうことが起こりうる」(仲丸氏)との説明のとおりで、登場したばかりの規格であるUSB PDはそういった互換性の問題が常に指摘されている。

USB PDはいいところだけでなく、課題もある

 そこで重要になってくるのがUSB認証ロゴだ。基本的にはUSBの規格に沿って作られていれば仲丸氏が指摘したような問題は発生しない。今回ゴッパが発売するUSB PDに対応したACアダプター、そしてケーブルはいずれもグラナイトリバーラボ・ジャパンが協力してUSBロゴを取得しており、USBの規格に適合した製品であることが保証されているという。

「意外と忘れられがちなのが、ケーブルのロゴ取得。USB PDの場合にはケーブルの認証も必要になり、ケーブルが粗悪品だと大きな電流を流すことができない。今回のゴッパの製品では、ACアダプターだけでなくケーブルも(USBロゴを)取得している」と仲丸氏は説明し、USBロゴがついているかどうかが、消費者にとって粗悪品かそうでないかを見分けるポイントの1つになると指摘した。

USBロゴ

 デモでは、グラナイトリバーラボ・ジャパンがUSBロゴの取得テストに使っている機器を利用して、きちんと規定どおりの動きをしているかをチェックする様子を公開。Energearシリーズがきちんと認証テストに合格していることがアピールされた。

USB PD機器をテストしている様子
仲丸氏のプレゼン資料