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フォルクスワーゲン、燃費・排出ガス抜取検査における不適切なデータの取り扱いに関する記者会見
シェア社長「原因は人的ミスであり、改ざんや意図的な見過ごしではありません」
2018年12月6日 00:15
- 2018年12月5日 発表
フォルクスワーゲン グループ ジャパンは12月5日、国土交通省へ12月4日に報告した完成検査における燃費・排出ガス抜取検査に関する調査報告について記者会見を実施。この記者会見に同社 代表取締役社長 ティル・シェア氏と、法規・認証 ジェネラルマネージャーの青木徹氏が出席した。
記者会見の冒頭で、シェア氏は「燃費・排出ガス抜取検査に関して、データの不適切な取り扱いがあったことが判明して、昨日、弊社より国土交通省に報告しました。今回の事案によりお客さまには大変なご心配をおかけすることになり、心よりお詫び申し上げます」とお詫びの言葉を述べた。
今回の事案について、シェア氏は「今回の事案は、日本に出荷する前にドイツのエムデン工場、南アフリカのユイテンヘーグ工場で行なわれた車両の抜取検査の中で、規定条件を逸脱した環境で行なわれたテストデータを、本来、無効とすべきところを有効として処理していたものです。原因は人的ミスであり、改ざんや意図的な見過ごしではありません。しかしながら、エラーがあった場合においても車両の測定結果については正規に測定された他の数値と同等の範囲内に入っており、燃費・排出ガス値への影響はありませんでした」と説明した。
今後の対策について、シェア氏は「本来、行政に代わって生産の適合性を検査するテストにおいてこのようなミスは許されるものではありません。すでにフォルクスワーゲン グループ ジャパンから両工場に対して、強く適正化を求めています。両工場ではチェック体制の強化策を講じており、今後もシステムの自動化を導入することにより人的ミスを完全になくす対策を講じる予定です」と説明した。
シェア氏に続いて、青木氏から国交省へ提出した調査結果の詳細が報告され、2012年8月~2018年6月の期間に行なった抜取検査の実施車両1113台のうち83台(7.5%)について、燃費及び排出ガスの抜取検査において試験条件を逸脱した無効な測定を有効なものとして処理していた事案を確認したという。内容としては、運転が測定モードに合わせられず失敗(トレースエラー)した測定が75台。また、測定室内の湿度が規定範囲外であった測定(規定範囲は30%~75%)が8台あったとしている。
同調査では、2012年8月~2018年6月の期間に実施した計1113件すべての排出ガス抜取検査結果の見直しを実施。試験や車両条件設定のログデータが規定された値かどうかを精査(油温、試験室温、湿度、シャシーダイナモメーター負荷設定、速度トレースエラー、機器較正記録など)。抜取検査データを一括管理する中央データベースにアップロードされた燃費・排出ガス値が、管理基準を満たしているかどうかをチェックした。
この事案の発生原因としては、測定結果を精査した後にデータを手動でシステムに伝送する際、プルダウンメニューで「無効」を意味する「nOK」を選択しなかったために起きた人的ミスが原因という。試験レポートについても複数名でのチェックを実施していなかったとした。なお、試験室湿度の許容範囲逸脱については、発生原因は特定できなかった。
再発防止策して実施済みの暫定プロセスとしては、従来は燃費値や排出ガス値などの測定データのみを複数のオペレーターでチェックしていたものを、走行ログを含めたすべてのデータを複数のオペレーターでチェックする仕組みにするとともに、データ伝送前のシステムにおいては、10月29日の週よりモニター上の測定結果判定表示のデフォルト設定を、従来のOK(有効)からnOK(無効)に変更して、無効と有効を取り違えるような選択ミスを未然に防ぐ仕組みを導入した。さらに、エムデン工場の施設においては追加の試験環境設備を導入して空調を改善した。
今後のプロセスとしては、エムデン工場の試験室に湿度と温度を表示するデジタルディスプレイを新設。速度トレースエラーや試験条件の許容範囲逸脱が発生した際に、システム上で測定結果そのものを自動的に無効と判断し、記録する新機能を追加するといい、2019年中ごろまでの導入を目指すという。
青木氏は「今般の不適切事例の発生を真剣に受け止め、ドイツ本社のプロセスを見直し、このような事態が2度と起こらぬよう改善活動を開始しました。このため試験室では少なくとも2人のオペレーターがすべてのデータをチェックすることとし、無効なテストがデータベースに有効なものとして伝送されないよう、システムが当該データを自動的にチェックする仕組みを取り入れる予定です」との見込みを示した。