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小窓が新幹線と同じ!? コペン クーペの裏話も語られた「COPEN Coupe Owner's Party」レポート

開発陣、オーナーが「コペン ローカルベース鎌倉」に集結

2019年4月20日 開催

「COPEN Coupe Owner's Party」がドライバーズカフェ「コペン ローカルベース鎌倉」で開かれた

 ドレスフォーメーションという特徴を生かしてローブ、X-PLAY(エクスプレイ)、セロと3つのスタイルを持つダイハツ工業「コペン」に、200台限定で追加されたクーペモデルの「コペン クーペ」。1月11日から専用サイトで商談権の募集を行なったが、なんと1666件という募集枠を大きく越える応募があったということだ。そして厳正な抽選の結果、幸運を引き寄せた200名の方に当選が伝えられ、当たった方はその権利を持ってダイハツディーラーで商談から契約。現在は納車を心待ちにしているという状態だ。

 そんな幸運なコペン クーペ購入者にさらにすてきな案内が届く。4月20日、ダイハツはコペン クーペ購入者を対象に実車の展示はもちろんのこと、製作に携わったエンジニア、デザイナーも出席し、トークショーや購入者とのフリートークなどを行なう「COPEN Coupe Owner's Party」を、コペンオーナーにはおなじみの「LOVE LOCAL」を実践するドライバーズカフェ「COPEN LOCAL BASE KAMAKURA(コペン ローカルベース鎌倉)」で開催した。

コペン ローカルベース鎌倉で開催された「COPEN Coupe Owner's Party」には16名(2人組も含む)のコペン クーペ購入者が参加
展示されていたコペン クーペ コンセプト。ボディカラーはパールホワイトIIIで、この色の実車は初の展示となる。コペン クーペにはブリティッシュグリーンマイカも用意されている
コンセプトモデルではリアフードとフェンダーの合わせ目が広いが、市販モデルでは他の部分同様に間隔が詰められるとのこと
BBSホイールが標準装備される
細部の仕上げは試作レベルだが、市販車に近い仕様とのこと。トランクの中も見ることができた
ルーフからリアハッチまでは一体成型のカーボン製。インフュージョン成型という技術で製作されている
「スタイル重視でデザインした」ということで、リアハッチ開口部は大きくはない。しかし、短期旅行用のスーツケースは入る間口で内部は十分広いので、2名分のスーツケースを載せて旅行に行くのは余裕でこなしてくれる
MOMO製ステアリングを標準装備。そのほか、インテリアにオープンモデルのコペンとの違いはない
トランスミッションはCVTのほかMTも用意された。展示車はCVT。フロントウィンドウは曇りにくい性能を持った新開発のフロントガラス「eXeview(エグゼビュー)」を採用する
天井にはキャッチが残っていた。ハッチが小さいので後方視界はそれなりという感じ
車名とシリアルナンバー入りのプレートが装着されるという
屋外にはHKSのコペン ローブが展示してあった。このクルマについているサスペンションキットとマフラーは、コペン クーペにオプションとして設定されている
「eXeview」の製品紹介(1分29秒)
【ダイハツ公式】コペン×HKS スポーツマフラー&サスペンションキットの製品説明(1分6秒)

小窓は新幹線のガラスと同じものだった

 COPEN Coupe Owner's Partyは、実車を見ながら開発に携わったメンバーから開発に込めた思いやエピソードを聞くことで、コペン クーペへの愛着を深めてもらいたいということから開催されたのだが、同時にコペン クーペのオーナー同士での交流も深めてほしいという願いもあるイベントだ。そこで、開会のあいさつのあとは購入者全員とダイハツ関係者全員による自己紹介タイムを設けて、クルマより先に「人を知る」ところから始まった。

開会のあいさつのあとに乾杯(アルコールはなし)。それから自己紹介タイムとなった
コペン クーペスペシャルセッションに登場した開発メンバー。ここでしか聞けない内容のトークとなった

 続いてはコペン クーペスペシャルセッションと称したトークショーがスタート。参加したメンバーは5名で、まずは2代目コペンのチーフデザイナーである和田広文氏。次にローブ、X-PLAY、セロの開発にも関わり、2016年に発表されたコペン クーペのデザインを担当した荒木栄吏氏。そしてD-FRAME設計、クーペの設計を行なった松下和彦氏。コペン クーペの広報を担当している和田秀之氏。最後に自動車ジャーナリストの石川真禧照氏だ。

2代目コペンのチーフデザイナーである和田広文氏

 最初に発言したのは和田氏。和田氏はまず「私と横にいる荒木の2人で絵を描いて、そのクルマが2016年の東京オートサロンにコンセプトカーとして出展されました。本日、ここに展示している白のコペン クーペは私も初めて見るもので、印象は“かわいいな~”という感じです。デザイナーは自分の手がけたクルマに愛情を持ちたいのですが、たまに少し気持ちが入りにくいクルマもあったりします。でも、コペン クーペには大きな愛情が持てます。そんなクルマなので、皆さんにも愛情を持って受けとってもらえたらいいなと思いました」と、展示してあるコペン クーペ コンセプトの印象を語った。

 そして「ご存じかもしれませんが、2代目のコペンは“D-FRAME”と呼ぶ骨格を持っているクルマで、いろいろなデザインが作れるところが特徴です。デビュー当時は3つのデザインを用意しましたが、その後“もう1つ何かできないか”ということになり製作したのが、東京オートサロンに展示したシューティングブレークとクーペでした」。

「2台ともボディの形状が大きく違いますが、これこそD-FRAMEのコペンだから可能な、ボディ外板を付け替えできるドレスフォーメーションです。そして2台のうち、お客さまからの人気がとくに高かったクーペが、その声に応えるカタチで限定200台ですが市販されることになったのです」と、コペン クーペが発売された経緯を紹介。

 また、東京オートサロンに展示したとき「ある外車メーカーの社長さんがお忍びできてコペン クーペのことを絶賛してくれて、“いつ出すんだ”と聞いてくれたんです」という裏話も聞かせてくれた。

コペン クーペのデザインを担当した荒木栄吏氏
荒木氏が描いたデザイン画。今回はこのデザイン画をパネルにして参加者に配られた

 次は荒木氏にマイクが渡った。荒木氏は「コペン クーペはまったく新しいクルマではなく、ベースの車両があってそこから作り出したものです。つまり、ボンネットの前部からフロントガラスまではベース車と同じで、それから後ろのデザインで勝負するというものでした。とくに難しかったのはCピラーの部分で、ここはいかにきれいに流しつつトランクとの結合部分をまとめるか、というところでした。クーペのこの部分は本当に難しいところでして、ポルシェでも苦労していると聞きます。それだけに、実車ではとくにCピラーの部分を見ていただきたいです」とデザイン面での苦労と見どころを解説した。

2代目コペンのキーであるD-FRAME設計とクーペの設計を行なった松下和彦氏

 今度は松下氏がカーボンルーフの設計について話を聞かせてくれた。松下氏は以前、2代目コペン用のハードトップを作る機会があり、そこで実はクーペ用のカーボンルーフの原型が考案されていたという。トークショーではそのときのデザイン画と設計図面の一部も公開された。

 松下氏は「まず、普段からダイハツのクルマの製造に協力してくれているメーカーさんでもこれほど大きなカーボンルーフを作ったことはなかったので、これを製作してくれるところを探すことが大変でした。レーシングカーなどで使われるオートクレーブという製法もありますが、とても高額になるので車両価格と釣り合いません。そこでいろいろ探したところ見つけたのがインフュージョン成型技術というものでした。これだと必要とするクオリティと予算が釣り合ったのです」と、カーボンルーフの製作秘話を教えてくれた。

 また、コペン クーペにはフロントウィンドウにAGC製の曇りにくいガラスの「エグゼビュー」を採用したこと、BピラーとCピラーの間の小窓には新幹線のガラスと同じものを使っていることも明かしてくれた。

松下氏は図面や開発時の資料なども使って本格的な解説を行なった
商品企画の和田秀之氏

 続いては、もう1人の「和田氏」である商品企画の和田秀之氏。和田氏からはコペン クーペの実車化が決まるまでの話を聞かせてくれた。

 ダイハツでは、東京オートサロンにコンセプトカーを出すたびに市販化についての質問を受けてきたそうだが、コペン クーペについては今までよりもはるかに大きな反響があった。そこで和田氏は「これは会社として動くべきなのではないか」と強く感じたという。

 そして話は動き始めたものの、コペン クーペの販売に関しては初めてのことばかりで大変なことが多かったという。さらに「オープンカーとしてユーザーに愛されているコペンをクーペ化して発売しても本当に売れるのか? という社内からの声もありました」といった発言もあった。そのことからも、コペン クーペの発売までには企画の面でもいろいろな苦労があったことがうかがえる。

 そんなことを経て、2019年の東京オートサロンと大阪オートメッセでコペン クーペが展示されたのだが、軽自動車のサイズ感でクーペというクルマはこれまであまりなかったので大きな注目を浴び、見に来た人からも「こういうクルマを待っていた」という声を掛けてもらい、とても嬉しく思ったといったエピソードを語ってくれた。

自動車ジャーナリストの石川真禧照氏

 最後は自動車ジャーナリストの石川真禧照氏だ。石川氏は「皆さんの話を聞いていましたが、話の内容も面白いし、図面やデザイン画など外部に見せられないようものを平然と見せてしまう開発陣の気前のよさには驚きました(笑)。でも、そんな大きな気持ちを持っている人たちだからこそ、こんなクルマが作れたのではないかと思います。それにコンセプトモデルであった個性的なこのクルマを“本当に作って売る”という最終判断をしたダイハツの経営陣もすごいですよね。僕はコペン クーペに対してそんなところにも感銘を受けました」と語った。

 続けて「あるときダイハツの工房に呼ばれて行ってみると、コペン クーペが置いてあったんです。その時点ではまだ走れませんでしたが、ならばとシートに座ってみたところ、クルマが身体にとてもフィットする感覚を受けました。そして“このクルマでジムカーナやラリーといったモータースポーツをしたら楽しそうだな”という考えがアタマに浮かび、そこからさらに装備やカラーリングのことなどがアタマにどんどん湧いてきたんです。座っただけで楽しみが想像できてしまうクルマなんです、コペン クーペは」とコペン クーペの印象を語った。

 トーク終了後は、コペン ローカルベース鎌倉自慢の料理でランチ。このときは開発陣も参加者のテーブルに混じって一緒に食事しながらコペン クーペ談義を行なった。そして約3時間にわたるCOPEN Coupe Owner's Partyは終了。最後に松下氏のデザインパネルとさらにもう1つ、コペン クーペのシリアルプレートと同じデザインのキーホルダーが参加者全員にプレゼントされた。

トーク終了後はランチタイム。その準備の間はコペン クーペのまわりに人が集まり、たった今聞いた話に出てきた部分などをチェックしていた
コペン ローカルベース鎌倉のストアマネージャー 佐藤亨氏があいさつ。用意されたカリフォルニアをイメージしたオリジナルの料理について解説した
食事のときは開発陣も参加者のテーブルに座ってコペンの話をしながら一緒に食事。こんな機会は滅多にあるものではないので、どのテーブルも話が弾んでいた
これがお土産に渡されたデザインボードとシリアルナンバープレートキーホルダー。大好評だった