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マツダの東京でのブランド発信拠点、「首都圏ブランド旗艦店」が完成

関東マツダ板橋本店が完成し都内4店舗のネットワーク

2019年8月3日 オープン

関東マツダ本社および板橋本店リニューアル・オープンお披露目会が開催された

 関東マツダは本社社屋をリニューアルさせ、併設する関東マツダ板橋本店を8月3日よりオープンする。7月17日には竣工式典が行なわれ、報道陣向けに板橋本店が事前公開された。

 板橋本店は、同じく関東マツダの洗足店、目黒碑文谷店、高田馬場店に続く“首都圏ブランド旗艦店”となり、板橋本店の完成をもって、首都圏ブランド旗艦店のネットワークが完成した形となる。首都圏ブランド旗艦店とは単に1つの販売会社としての取り組みではなく、マツダの東京におけるブランド発信の場としての役割を担っており、さらにこれからのマツダブランドのスタイルを担う店舗として、店舗デザインにおいても、マツダのデザイナー陣が監修した特別な店舗となっている。

関東マツダ「板橋本店」

・所在地:東京都板橋区大山西町3-12
・営業時間:10時~18時20分(サービス受付は~17時)
・定休日:火曜日(不定水曜日定休あり)
・電話番号:03-3973-8431

マツダが期待する東京におけるブランド発信のショールーム

 そうした背景もあって、新社屋お披露目会にはマツダの常務執行役員 国内営業担当の福原和幸氏も出席した。福原氏は今回のリニューアルに期待することが3つあると言う。

 関東マツダは、東京・埼玉・神奈川・群馬と関東の一都三県をカバーしていて、販売台数においても昨年度で3万台を越えるなど、マツダとしてもっとも大きな販売会社であると紹介。その本店がリニューアルすることで「首都圏でのマツダのプレゼンスをさらに上げていただきたい」と1つ目の期待を述べた。

 さらに、現状におけるマツダ車は、個々の製品や技術の魅力といった部分で選ばれているが「マツダというブランドで選ばれ続けていきたい」とこれからのマツダの求めるあり方を言及。そのために必要なのは「お客さまに直接接する店舗スタッフが一番大切」だと言い、板橋本店には「量だけでなく質の面においても、全国の販売会社の模範になるような店舗にしてほしい」と2つ目の期待を語った。

 そして、3つ目の期待が今日の本題だと言い、東京にメーカーのショールームを持っていないマツダにとって板橋本店を含む首都圏ブランド旗艦店について、「日本だけでなく世界にもマツダの情報を発信できる、そういったスペースができた」という期待を語った。

 最近のマツダの顧客層の変化として、輸入車と比較検討する人が増えているという。社内調査によれば、輸入車と国産車を同時に比較する人の割合もっとも多いのが首都圏とのことで、「われわれが目指している姿でいえばまさに東京が情報発信の場としてもっとも大事な市場だ」との考えを述べた。

 首都圏ブランド旗艦店とは、もともとは2012年の「CX-5」を皮切りにした第6世代商品の登場から、東京にマツダのメーカーショールームを作りたい、独自のブランド発信拠点を作りたいというプロジェクトが発端となっている。関西においては「マツダブランドスペース大阪」というブランド発信基地が作られたが、都内では立地やコストといった条件などに見合う場所が確保できず、関東マツダの4店舗がその発信拠点としての役割を担う形になったのだ。

 マツダブランドスペース大阪において「われわれメーカーの方から開発陣が行って、いろいろなお客さまとのコミュニケーションの場、情報発信の場としてやっています。いままでに37回実施しているが東京にもそういう場ができた。一緒に活用させていただいて同様のイベントをしていきたい」と首都圏ブランド旗艦店に対する考えを述べた。

マツダ株式会社 常務執行役員 国内営業担当の福原和幸氏が登壇
マツダが目指す顧客体験の実現
中期経営方針
国内市場で実現したいマツダの独自性
具体的な取り組みとして、店への投資、人への投資が今回の店舗リニューアルにあたる
福原氏が新しい関東マツダに対して期待すること
東京の人は輸入車と国産車の間に隔たりなく自身のこだわりでクルマを選ぶという
東京は情報発信の場として重要だという
4つのブランド旗艦店により首都圏におけるブランド発信ネットワークが完成
関東マツダの洗足店、目黒碑文谷店、高田馬場店、本社&板橋本店がブランド旗艦店となる
ブランド発信ネットワークの狙い
2016年に大阪で開設したマツダブランドスペース大阪
マツダブランドスペース大阪での取り組み
ブランド発信ネットワークに期待すること
マツダの販売会社を働く人にとっても魅力的な場所にしてほしいと語った

カーデザイナーが店舗デザインを監修するという新たな挑戦

 このプロジェクトには、マツダ 常務執行役員 デザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏も大きく関わっている。前田氏によれば「一番最初のきっかけとなったのが、われわれの作品であるクルマをいかに美しく見せるか。そういう想いがあって、クルマをここまで作り込んだんだからクルマを愛でる箱(店舗)も美しいスタイルになって欲しいなと思ってスタートさせた」と言い、「私のほうからいろいろな人を説得してまわってようやくできた」と当時を振り返った。

板橋本店の監修を行なったマツダ株式会社 常務執行役員 デザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏
板橋本店を設計した建築家、サポーズ デザインオフィスの谷尻誠氏(左)と吉田愛氏(右)

 カーデザイナーが店舗のデザインを監修するというのは異例だとしながらも、「クルマをどう見せるのが効果的かを熟知しているわれわれデザイナーが監修するというのはあながち間違っていないのではと思う」とした。また、様式を作っていきたいという想いが強いといい、「大きな販売店を作るということは様式の方向性も見えてくるということもあって4店手がけてきた」と言う。

 最初に手がけたのは2013年10月に完成した洗足店のインテリア(現在は外観も完成)。続く碑文谷店では、外観もマツダ車のフォルムと同じような“動き”を作ることをテーマにしたと言い、高田馬場店は大きな通りに面しているので、通りを歩いている人が気がついたら店舗の中にいて、くつろぎながらクルマを見ていただく。心地よい、かつハードルの低い店舗を目指したと、それぞれの店舗、立地条件に合わせて独自のコンセプトでデザインしてきたことを説明した。

 今回の板橋本店については「そういった販売ショールームの機能もありながら、ワークスペースでもあり、社員が働く場としても機能しなければならないので、クルマを見せるだけでなく働いている人たちが心地よく働ける店舗を目指した」と言う。

 実際の建築デザインは、広島出身で世界的に活躍する建築家、サポーズ デザインオフィスの谷尻誠氏と吉田愛氏が行なっている。谷尻氏はこれまでにもオフィスの建築を行なったことが何度もあるが「いつも思うのがせっかくのガラス張りの建物なのに実際に使うときにはブラインドを閉めているということ。板橋本店では、ブラインドを開けたまま、周りの風景を感じながらのびのびと働ける建物を作れないかと思い、外壁を壁とガラスを屏風状にしたデザインとして、日射の遮蔽をしながら開放的なオフィス環境を作った」と板橋本店のコンセプトを語った。

 さらに吉田氏によれば「これまで碑文谷店を皮切りに3店舗やらせていただいたが、マツダさんのクルマ作り、クルマのフォルムが美しくて、それを建物側でも感じられるようにデザインしてきた」とした。板橋本店においても、インテリアではクルマが主役の空間だと思っているとしながらも「今回はこの空間をリビングを設計するように作っている」と説明。

 クルマのデザイナーと建築デザイナー、同じデザイナーでも畑が違えばやり方も違うもので、とくに大きな違いとして感じたのは「“1分の1の模型”を作れないということ」だと谷尻氏。建築模型を用意して見せても「こんなに小さいのじゃ分からない」となる。そこでCADでデータを作り、巨大なスクリーンに映し出して、この場所から見るとこんな感じに見えます、と打ち合わせを進めたそうだ。

 これについては前田氏も「ちょっとこだわり過ぎましたね」と笑ってみせた。天井の梁の部分を指さして、「僕らはあの梁の向こう側がどうなっているのかにまでこだわってしまう。でも実際にできてみるとあんな遠くの細かいところまで気にしませんよね」と、建築とクルマの違いを語った。

天井には梁などを設け奥行きを演出。リビングのような落ち着いた空間にした
デザインは店舗によって異なるが、黒やグレーといったモノトーンと木目というのが基本的なコンセプトとして共通する
あくまで主役はクルマ、ということで空間全体は暗めでクルマにスポットライトが当たる空間を演出
クルマを照らすのに最適な照明を選んだという。さらに斜めに切られたフードは、光が梁に当たらないため。あくまで照らすのはクルマだけというこだわりだ

関東マツダが提供する3つのポイント

 関東マツダの山口滋己社長は、首都圏という日本でもっとも重要なエリアを扱っている同社がブランド発信拠点を活用して何を提供するのかということについて説明がなされた。要素として「豊富な試乗機会の提供」「保有する歓びの提供」「個客に寄り添ったカーライフの提案」と3つのポイントを挙げた。

 まず試乗機会の提供については、「すべてのお客さまに対して最新の技術、最新のデザインのマツダ車にご試乗いただきたい」という想いを述べ、そのためにたとえば点検や車検といった機会にディーラーを訪れるユーザーに対して、年次改良による最新のマツダ車を味わう機会を提案したいとした。

 あるいはサービス代車も年次改良車を準備することで、車両を預かるような機会にも、修理期間中にアップグレードした商品を味わっていただく。あるいは他メーカーのユーザーには、「モニターカーというものを準備したい」と言い、「1日もしくは数日間じっくり運転していただき比較試乗していただければ」と考えを述べた。

 保有する歓びの提供については、「これがまさしくこのブランド発信拠点の真骨頂だと思う」と言い、すでにこれまでも多くのブランド体感、イベントを実施してきたと言う。そして「参加された皆さんはマツダ車を保有していることに歓びを感じ、マツダを選んでよかったと思われて帰られる姿を見てきた」という。特に今回も出席した前田氏の会は人気が高く、定員を上回って抽選になることもあるとした。

 一方で、そうしたイベント以外でも、「毎日お客さまと接するのは関東マツダのスタッフです。このスタッフがマツダブランドを愛する気持ちをどれだけ持てるかマツダブランドをどれだけ熱く語ることができるかがポイントだと思う。そこの研鑽をしっかりと重ねていきたい」と語った。

 最後の個客に寄り添ったカーライフの提案については、たとえばメンテナンスパックの提案、残価設定クレジットの提案、保険の提案など、クルマというユーザーの資産を守るための提案は当然として、さらに利用者のライフスタイルや環境の変化によって、最適なタイミングで乗り換えの提案をすることが重要だと言う。こうした提案力はトレーニングで一定レベルはつくとしながらも、「それ以上はいわば人間力の問題になると思う。他人の気持ちに本当に寄り添うことができるスタッフを育てるべく会社として取り組みたい」と意気込みを語った。

株式会社関東マツダ 社長 山口滋己氏
関東マツダがお客さまに提供したい価値
関東マツダの会社概要
関東マツダ3か年計画ではこの3年は地盤固めになるという
首都圏でのブランド発信ネットワークが完成
ブランド旗艦店で提供したいこと
最新のマツダ車を体験できる試乗機会の提供
イベントを実施し、保有する歓びを提供
マツダブランドを愛する社員の育成
それぞれのユーザーに最適なカーライフの提案
次の時代の飛躍に向けて

地上8階建ての新本社兼板橋本店

 今回竣工された新社屋は、地上8階建てで敷地面積が1293.96m 2 、建物の延べ床面積が7684.67m 2 。1~5階が板橋本店、6~8階が本社オフィスが入る形になる。

 外観の最大の特徴は、3階より上の屏風型になった外装だ。一方をガラス、一方を壁とすることで外光の入り方をコントロールしている。そのため見る角度によってエクステリアの意匠が大きく異なる。

屏風状の外壁により見る角度によってガラス面がよく見えたり(左)と黒い壁ばかりが見えたり(右)する

 1階部分はショーケースと駐車場、受付となっており2階がショールームになる。ショールームには計6台の展示車両が置かれ、14卓のテーブル、4つの商談スペース、カウンター席も合わせると84席が用意される。

通りに面した部分
ショーケースとして最新モデルが展示される
1階の一部が駐車場となるが他にも駐車場は用意される
1階の受付
2階のショールーム
計6台の最新モデルが展示される
14卓のテーブルやカウンター席がある
半個室になった商談スペースは4ブース
商談スペース
キッズスペースもある

 3階には納車ルームがあり、一生の内にたくさんの機会はない納車という瞬間を演出。さらに乗り換えの場合は、これまで乗ってきたクルマと新しいクルマを並べて記念撮影できるスペースも用意される。他にも板橋本店では、フォトブックをプレゼントするといったサービスも検討中とのこと。

3階の納車ルーム
納車されるクルマが置かれるスペース。エアコンダクトなどがむき出してメカニカルな雰囲気
新オーナーが座るスペース。ゆったりとしていてそれでいて特別な空間を演出
こちらに新旧マイカーを並べて記念撮影ができるとのこと

 4階はサービス工場。2機のエレベーターによって車両の出し入れが可能となっていて、リフトは8つ、そのうち1つが、特殊な作業もできるよう2柱リフトになっている。室内のサービス工場ということで空調が完備されており、24時間換気も行なう。また、マフラーに取り付ける排気ダクトも用意される。また車検のラインも用意される。最近のマツダ車では4WDが人気ということもあって4WDにも対応するタイプだ。測定したデータはすべてパソコンに記録される。また検査室にはエアシューターがあって、書類などを1階の受付との間でやりとりできるとのこと。

全8つのリフト
1つはエンジン脱着といった特殊な作業もできる2柱リフト
マフラーに取り付けられる排気ダクト
1階のタンクから送られてくるエンジンオイルノズル。ディーゼル用1つとガソリン用が2つ
抜いたオイルも配管が繋がっていて1階の廃油タンクに送られる
換気用ダクト
車検用の検査ライン。手前がローラーになっていて4WD車にも対応する
洗車設備もある
クルマ用エレベーターは2台

 5階は駐車場。3階も納車ルームの他は駐車場となっていて、サービス工場の上下を駐車場ではさむことで、2階のショールームや6階の本社オフィスに音が漏れないよう配慮されている。