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【SGT×DTM交流戦】記念すべき特別交流戦初戦の勝者は37号車 KeePer TOM'S LC500のニック・キャシディ選手

DTM勢の最上位はアウディのブノワ・トレルイエ選手

SUPER GT×DTM 特別交流戦の初戦に勝利した37号車 KeePer TOM'S LC500のニック・キャシディ選手

 11月22日~23日の3日間にわたり「SUPER GT×DTM 特別交流戦」(以下、特別交流戦)が、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。この交流戦は日本のSUPER GTと、ドイツのシリーズであるDTMが長い時間をかけてレギュレーションを統合してきた成果として初めて両シリーズが日本で戦う歴史的なイベントとなる。ドイツからはアウディが4台、BMWが3台の合計7台が来日し、SUPER GTからエントリーしている15台のGT500マシンと同じフィールドでレースを行なう。

 11月23日(土)には第1レースの予選と決勝が行なわれ、記念すべきSUPER GTとDTMの特別交流戦の勝者が決まった。予選でポールポジションを獲得したのはニック・キャシディ選手で、そのままポールトゥーウインを決めた。2位は塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)、3位は山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)となった。

2位は塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)
3位になった山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)。表彰台はSUPER GT勢となった

 DTM勢の最上位はこのレースにアウディ・ジャパンの後援で特別参加となったブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)で、6位に入った。

予選ではSUPER GT勢のキャシディ選手がポール。2位はDTM勢トップのアウディ・デュバル選手

インディカー形式の密集形式で始まったSUPER GT×DTMの特別交流戦
密集したスタートは迫力のあるもの

 記念すべき特別交流戦の初ポールポジションを獲得したのは、ニック・キャシディ選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)。DTMの最終戦に参加したことで課題となっていたハンコックタイヤのワンメイクタイヤに関しての経験を得ていたキャシディ選手は、今週末走りだしから調子がよく、予選でもポールを獲得した。

 これに続いたのは、DTM勢最上位となったロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)。SUPER GTの2010年のGT500チャンピオンであるデュバル選手は圧巻の走りを見せて、予選2番手を獲得した。このレースに向けては、DTM勢はDRSやプッシュトゥーパスなどのDTMだけで許されているデバイスは封印されてしまい、空力やエンジン開発の自由が許されているクラス1規定ではまだないSUPER GT/GT500勢に比べると車両のパフォーマンスはやや厳しい状況になっていた。

 しかし、その状況を大きく覆したのが天候だった。ドライタイヤではSUPER GT勢もハンコックのワンメイクタイヤの使い方をある程度理解できていたのに対して、ウェットタイヤではまだDTM勢に一日の長があるという状況で、車両の不利を補うことが可能になっていたのだ。

 予選が行なわれた午前中は雨はほぼ上がっているのの路面はウェットのままで、ブルーのハンコックロゴが入ったウェットタイヤが使われることになった。この状況では、DTM勢もSUPER GT勢と互角に戦えていたのだ。なお、チームメイトのマイク・ロッケンフェラー選手(99号車 Akrapovic Audi RS 5 DTM)は5位、DTMチャンピオンのレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)はやや苦戦し14位、久々の日本でのレースとなったブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)は16位に終わった。

DTMチャンピオンのレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)は14位

 3位はホンダ勢の最上位となる山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)、ニッサン勢の最上位は4位のロニー・クインタレッリ選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)、BMW勢の最上位は小林可夢偉選手(00号車 BMW M4 DTM)の18位となっている。

BMW勢最上位は、小林可夢偉選手の00号車 BMW M4 DTM

予選2位のアウディ・デュバル選手がスタートできず。ポールのレクサス・キャシディ選手が順当なスタート

 14時半のスタートに向けてレコノサンス・ラップが行なわれる中、場内のモニターに映し出されたのは衝撃的な映像だった。予選2番手を獲得したロイク・デュバル選手(28号車 BMC Airfilter Audi RS 5 DTM)がダンロップコーナーの外側のタイヤバリアに左フロントから刺さっていたのだ。デュバル選手の車両はすぐに排除され、ピットに戻されて修復が行なわれたが、結局レースまでの短い時間で修復することはできず、デュバル選手はスタートすることができずそのままリタイアになってしまった。

 また、BMWの1台となるアレッサンドロ・ザナルディ選手(4号車 BMW M4 DTM)は、マシントラブルでレコノサンス・ラップに参加出来ず、ピットで修復を行なっていたが、レースのスタート直前にピットロードエンドにマシンを停めることができ、フォーメーションラップで隊列の最後方に加わることができた。

 スタートでトップに立ったのはポールからスタートしたニック・キャシディ選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)がトップを維持。これに続いたのは予選3位、つまりデュバル選手がいなくなったことで実質2位からスタートした山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)だが、スタートの混乱で予選4位からスタートしたロニー・クインタレッリ選手(23号車 MOTUL AUTECH GT-R)が抜いて2位に上がる。

 しかし、その翌周に山本選手はクインタレッリ選手を抜き返し、さらに塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)もクインタレッリ選手もクインタレッリ選手を抜いて3位にあがる。クインタレッリ選手はその後もずるずると順位を下げていく。順位を下げたのはクインタレッリ選手だけでなく、他のニッサン勢も同様で、昨日のインタビューで松田選手がドライに不安があると話していたが、それが的中した形だ。

 その後はキャシディ選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)が徐々に2位以下を話していく一人旅の展開に。その後ろでは山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)と塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)のバトルになり、塚越選手が山本選手をオーバテイクして2位にあがる。これで、キャシディ選手、塚越選手、山本選手の1-2-3という展開になった。

 その後ろでは、SUPER GT勢とDTM勢による中段勢の抜きつ抜かれつのデッドヒートが展開されていた。このレースではタイヤは同じハンコックタイヤを利用しており、タイヤの違いによる車両パフォーマンスの差が無くなっており、その意味では全車イコールコンディションとなっている。このため、各車とも車両のパフォーマンスを最大限利用して他社を追い越そうとトライしており、各種で熱いバトルが展開されることになったのだ。ただし、年2回富士スピードウェイでレースをしているというSUPER GT勢は各種のデータなどを持っており、この点でもDTM勢に対して有利になっていた。特に空力の自由度が高いSUPER GT勢ではセクタ-3で速かったほか、ストレートでは明らかにDTM勢を引き離していく速さを持っていた。

終盤に.jpg

が入りレースは振り出しに。キャシディ選手が抜群のリスタート

52分経過したあとでリスタート
終盤のリスタートでジャンプアップに成功し、DTM勢最上位の6位となったブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)

 55分+1周という形で行なわれる今回のレースは折り返しの23分までには全車がピットストップを終えると、ほぼ順位は確定し、1位ニック・キャシディ選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)、2位塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)、3位山本尚貴選手(1号車 RAYBRIG NSX-GT)という上位の顔ぶれは変わらなかった。かつ、1位、2位、3位ともに徐々に離れていっており、終盤に向けてレースはやや膠着という状況になっていた。

 そのままレースが終わるかと思われた残り8分程度の段階で、佐々木大樹(12号車 カルソニック IMPUL GT-R)がエンジンとみられるトラブルでストレートでスローダウン、ピットレーン出口のコース側に車を停めてしまう。その結果、なんとこのタイミングで誰かが筋書きでも書いたのではないかというタイミングで.jpg
が出動し、その結果上位の差はぐっと詰まることになった。今回のローリングスタートは、SUPER GTで行なわれている1列でのローリングスタートではなく、インディカーなどで行なわれている2列でパックになったローリングスタートとなった。これにより、終盤に向けて再度各車はぐっとつまる状態からの残り3周での再スタートになり、サーキットは緊張感に包まれることになった。

 2位を走っていた塚越広大選手(17号車 KEIHIN NSX-GT)はリスタートでアウトに振って1コーナーで追い越しをかけるそぶりを見せるが、ニック・キャシディ選手(37号車 KeePer TOM'S LC500)がインをがっちりキープして塚越選手を完璧にブロックしてトップを維持したまま、2コーナー、コカコーラと抜けていき勝負あった。その後も塚越選手は激しい追い上げを見せたののの、結局キャシディ選手はそのままトップを維持したままチェッカーを受けた。その直後にほぼテールツーノーズで2位の塚越選手がゴール、それに山本尚貴選手が3位で続いた。

 この残り3周のスプリントレースで大きく順位を上げてきたのが、このレースにアウディ・ジャパンの後援で参加したブノワ・トレルイエ選手(21号車 Audi Sports Japan RS5 DTM)。トレルイエ選手はリスタート前には10位以下だったのに、このインディカー形式のローリングスタートでの混乱をうまく利用して、ベテランらしい確実な走りを見せて、アウディ勢の中で最上位となる6位でチェッカーを受けた。なお、DTMチャンピオンのレネ・ラスト選手(33号車 Audi Sports RS 5 DTM)は8位。

 ニッサン勢の最上位はフレデリック・マコヴィッキ(3号車 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R)の11位、BMW勢の最上位は小林可夢偉選手(00号車 BMW M4 DTM)の14位となった。