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ヤマハ、初の「車載向けヤマハブランドオーディオ」採用。アクセル操作に応じた「加速音技術」搭載

2021年発売予定の吉利グループ Lynk & CoブランドのEVに搭載

2020年9月28日 発表

北京モーターショーで発表されたLynk & CoのEVコンセプトカー「ZERO Concept」。その量産車両に「車載向けヤマハブランドオーディオ」が採用される

 ヤマハは9月28日、「車載向けヤマハブランドオーディオ」が、吉利グループ(ジーリー)のLynk & Co(リンクアンドコー)ブランドのEV(電気自動車)に採用されることが決定したと発表した。「CASE」に象徴される新しい時代の自動車にふさわしいサウンド体験を追求した車載向けヤマハブランドオーディオの初受注事例になるという。

 EVは車室内の静粛化をもたらし、自動運転技術の発達は余裕ある移動体験をもたらすとして、ヤマハでは、CASE時代の車室空間におけるあるべきサウンドの形を追求。この度、“音楽が生まれた瞬間の感動を届けたい”という想いのもと「CLOSER TO THE ARTIST」 をユーザー体験に掲げ、音楽の世界に浸れるスピーカーシステムとアンプモジュールを開発した。

 アンプモジュールに搭載した独自の加速音技術は、アクセル操作に応じたサウンドを作り出すことでスポーツドライビングに興奮をもたらす。「OTA(Over The Air)」による購入後のサウンドデータ更新にも対応することで、より豊かで新しい体験が求められる現代の価値観に応えるとしている。

 今回、車載向けヤマハブランドオーディオを採用した吉利グループ Lynk & Coは、ボルボやロータスなどを保有する浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)において、モビリティを変革し続ける自動車ブランドとして2016年に誕生。洗練された車両デザインに加え、積極的なコラボレーションによるブランディングが注目を集め、同ブランド初のモデル「01」は、オンライン販売で137秒のうちに6000台を受注している。

 車載向けヤマハブランドオーディオが搭載される車種は、同社初のEVプラットフォーム「SEA(Sustainable Experience Architecture)」を用いて開発が進められているもの。9月26日から開催されている北京モーターショーで発表されたLynk & CoのEVコンセプトカー「ZERO Concept」の量産車両として2021年に発売予定で、中国のみならず欧州などへの展開も予定されていると言う。

オーディオシステム詳細

 スピーカーユニットは、あらゆる楽器、ボーカル音を深く鮮明に表現するため、振動板からエッジに至るまでスピーカーユニットの素材を厳選。振動板の動きに着目した設計により、歪みを抑え、楽器の倍音を美しく響かせるという。車載専用に配分されたユニットの再生帯域は、ボーカルを目の前に浮かび上がらせ、ベース楽器の躍動感を深く豊かに届ける。スピーカーの配置や向きについても、自動車メーカーと検討を重ね、クリアな音質を実現した。

 アンプは、オーディオ信号の伝送技術である「A2B」に対応。アナログ変換を介さずにそのままデジタル信号をアンプに送ることで、よりクリアな音を再現する。また、自社製のオリジナルオーディオDSPを搭載し多彩な機能を実現する。

 車内は複雑な音響空間であり、すべての座席に最高のサウンドを届けるためには高度な信号処理が必要となる。そこでPA機器やレコーディング機器の開発や製造で培った技術をもとに独自開発した信号処理技術「Phitune(ファイチューン)」を自社製DSPチップに搭載。曇りのないサウンドをあらゆる座席に届けることを可能にした。

 加えて、加速音技術によって、伝統あるエンジン音から全く新しいEV加速音まで、走りに連動した多様な加速音を提供する。クルマのコンセプトを徹底的にヒアリングし、ヤマハエンジニアがシンセサイザーを使ってゼロから音源を制作。走行における音源再生プロセスでは、電子楽器で培った技術を応用し、アクセルペダルの動きやクルマの速度情報から波形データをつなぎ合わせ、シームレスな加速音を車内に響かせる。

 また、無線通信でソフトウェアをアップデートする「OTA(Over The Air)」にも対応。クルマを停めている間に、オーディオ設定データや加速音コンテンツがアップデートされ、次にクルマに乗ると新しいサウンド体験が始まる。所有から体験へと変化する現代の価値観に応える機能だという。

「車載向けヤマハブランドオーディオ」

 ヤマハ 執行役 IMC事業本部長 藤井茂樹氏は「ヤマハは約130年に渡って、楽器、PA機器、Hi-Fiオーディオなどを開発してきました。お客さまに感動をお届けする中で培われてきた技術は、変革期にある自動車産業においても生かすことができると考えています。車載に向けては、以前より信号処理LSIを開発・販売してきました。そこに、ヤマハが得意とするスピーカーやアンプの技術を融合させ、車載向けのオーディオシステムを完成させました。お客さまの感動体験を意味するブランドプロミス「Make Waves」を車の中でも実現すべく、事業を展開してまいります」と述べている。