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日野、2020年度第2四半期決算説明会 グローバル販売台数は前年同期比31.3%減

台数依存しない収益基盤を構築し、電動化ではBYDやTRATONとの協業も説明

2020年10月29日 発表

グローバル販売台数

 日野自動車は10月29日、2020年度第2四半期決算を発表し、決算説明会をオンラインで開催した。2021年3月期第2四半期連結(2020年4月1日~9月30日)での売上高は6662億7900万円(前年同期比29.6%減)、営業利益はマイナス116億7100万円、経常利益はマイナス128億1900万円、親会社株主に帰属する当期純利益についてはマイナス96億2400万円となった。

Q2はすべての市場で回復、着実な回復傾向

オンラインで決算説明会を開催、登壇した代表取締役社長CEO 下義生氏(左下)、取締役専務役員 コーポレート本部長 中根健人氏(右下)、取締役専務役員 佐藤真一氏(左上)、先進技術本部長 通阪久貴氏(右上)

 説明会ではまず、取締役専務役員 コーポレート本部長の中根健人氏が決算説明を行ない、販売台数から説明した。グローバル販売台数では前年同期の9万3831台から今期の6万4436台まで31.3%減少しているが、前年同期は排ガス規制前の駆け込み需要で販売台数が増加していたことに対して、今期は新型コロナウイルスの影響が大きかったと説明した。

 その一方で国内トラック・バス市場の総需要は前年同期比でも落ち込んでいるもの、日野の販売シェアでは上期として過去最高を記録したことも強調した。

国内トラック・バス市場の状況
インドネシア・米国・タイ販売台数
トヨタ向け車両・ユニット売上

 海外市場についても「すべての市場で回復し、着実な回復傾向にあるとみている」と延べ、インドネシアで商談が増加していること、タイは新型コロナウイルスの影響が少なく回復が早いなどとアジア市場での明るい見通しが示された。

 また、トヨタ向けの車両は前年同期の台数ベースでマイナス43.2%となるものの、8月から通常に戻っていることや、トヨタ向けのユニット売上もほぼ前年並みまで回復していることも発表された。

 売上など連結損益についても「上期としてはリーマンショック以来の赤字」とするものの、第1四半期から収益は大きく改善。営業利益については第1四半期がマイナス106億円だったことから、第2四半期単体でみれば、営業利益はマイナス11億円まで改善していること。車両の販売台数が減少するなか、トータルサポート(TS)収益についてはコロナ禍のなか、物流や人の流れを支えるため車両整備にしっかりと対応したため、ほぼ前年レベルの収益を維持したことも発表された。

連結損益の状況
連結損益の変動要因
所在地別セグメント 売上高・影響利益
連結損益の状況

 2020年度通期(2020年4月1日~2021年3月31日)の目標についてはトヨタ向けの受託生産台数を見直し、7月29日に公表していた8万8800台から10万9700台へと修正、グローバルでの販売台数は合計で14万2500台に変更はない。トヨタ向けの受託生産台数が増加見通しとなったことから、売上高は1兆4300億円、営業利益30億円と上方修正、第1四半期の段階では新型コロナウイルスの影響で先行き不透明で未定だった経常利益と当期純利益についても発表され、経常利益はマイナス20億円、当期純利益はマイナス30億円と示された。

年間販売15万台レベルで安定的に収益確保へ

 続いて、代表取締役社長CEOの下義生氏が「Challenge2025」の実現に向けた取り組みと、構造改革について説明した。下氏は3つの方向性として、「安全・環境技術を追求した最適商品」「最高にカスタマイズされたトータルサポート」「新たな領域へのチャレンジ」を挙げ、それぞれで実現した取り組みを紹介。さらに、コロナ禍で販売台数と収益が大幅減したことで、Challenge2025の取り組みをさらに加速させるともに「従来以上に環境の変動に左右されにくい事業構造の構築を加速する必要がある」とした。

Challenge2025
Challenge2025における3つの方向性
環境認識
3つの時間軸

 そのなかでロードマップを示し、時間軸については3つに区切った。2022年までに年間販売台数が15万台レベルでも安定的に収益確保すること、2025年に向けてChallenge2025具体化のスピードを上げ、2025年以降には顧客ごとにビジネスにおける課題解決に向けた取り組みをソリューションビジネスとして事業化するとした。

 これらをやりきるため、構造改革50のプロジェクトを投入、あらゆる領域において、「自社での競争力にこだわる部分」「パートナーと連携する部分」を見極め、選択と集中を行なうとした。

 具体的には取り組みとしては、2022年までにトータルサポート(TS)で競争力を磨き、整備入庫率50%実現などで、整備入庫率を上げるには人材不足やコロナ禍で稼働率が上がっていないなどの問題もあるが、それを実現するために販売店のサポートをする専任組織の立ち上げやなどを行ない来年の早い時期から進めていくという。

ロードマップ
2022年までに
2025年に向けて
2025年以降

 2025年に向けては「お客様目線による最適商品の提供」をしながら販売店では顧客との接点をひろげるとともにコネクテッドサービスでライフタイムコストの最小化を進め、車内では全社横断的なデジタル化の加速を実施。その上で2025年以降には顧客との接点を生かし車両ライフサイクルを通じ1台1台に寄り添った価値を提供し、新しい領域へサービスを拡大していく。

 また、DXの加速も実施、自社によるソリューション開発と、データプロバイダとして外部パートナーと協業機会の積極活用の両輪で実施していくとした。

 なお、販売台数については2023年ぐらいにコロナ前に戻ると予想。しかし、台数に依存せず収益が出せるように、原価低減とTSで収益基盤を確立すること優先するとした。

電動化はパートナーと協業を進め、2025年までに電動車ラインナップを展開

 電動化戦略は先進技術本部長の通阪久貴氏が、FCV、HVを含めた電動化の考え方や取り組み、他社との協業、電動車の展開などを説明した。

 通阪氏は「CO2に関しては、バスやトラックが40%弱のCO2排出量を占めている。輸送におけるトンベースの分担率は90%をトラック輸送が占めている。このような状況から、商用車の電動化は大変重要な課題と認識」と延べ、電動化の必要性を訴えた。

電動化の基本方針
商用車の電動化の考え方
電動化の取組方針
足元のCO2削減の現実解

 また、電動化の基本方針としては「地域ごとのニーズや法規制・インフラ等の動向を踏まえ地域軸・技術軸・時間軸で最適なパートナーと連携し、お客様のビジネスに貢献できる電動商用車をより早く実現していく」と示した。

 今後は商用車において2027年から2030年にかけて世界のCO2の規制が予定されていることから、その時期を境として、それまでは普及拡大期として電動車の市場投入、その後は本格的普及機として、電動車に最適なプラットフォーム開発に向けパートナーと協業するとした。

米国でのProject Z
BYDとの協業
TRATONとの協業
トヨタと連携して水素社会を牽引

 パートナーとの協業はトヨタとFCVにおける連携のほか、BYDとはアジア市場におけるニーズ最適な商用EVのスピーディーな投入を目指し、TRATONとは、28日に電動化における協業契約を締結、商用車メーカーならではの強みをかけ合わせ、電動車の一括企画を行ない得意分野で開発分担、TRATONとのアライアンスの拠点はスウェーデンに置く。

 その結果、2025年までに小型から大型トラック、バス、電動車を、日本・北米・アジア市場に展開する。そのなかでも超低床・前輪駆動の小型電動トラックについては2021年度に公道実証実施、2022年に市場導入を目指すとした。

電動化車両の投入予定