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日本自動車工業会、「自動車税に対する減税要望」の説明会レポート

自動車ユーザーの負担をできる限り増えないようにするための活動とは

2020年11月24日 開催

 自工会(日本自動車工業会)は11月24日、令和3年度の税制改正要望活動について、モータージャーナリストや自動車メディアに対し、常務理事・事務局長の矢野義博氏と総合政策領域 領域長の高橋信行氏の2名がオンラインにて概略説明を行なった。

 まず2020年に行なわれたJAF(日本自動車連盟)のアンケート調査によると、98%のJAF会員が自動車にかかる税金に負担を感じているという。このアンケ―トでは自家用車ユーザーは年間の概算で11万3900円の税金(保有段階+走行段階)を支払っているとされていた。むろん、排気量や走り方などによって変動するので一概には言えないが、自動車にかかる税金でかなりの負担をしていることを実感する。

説明会はコロナ禍につきオンラインで行なわれた

 さらに言えば自動車は取得、保有、走行の各段階で9種類の税金があり、総額で9兆円もの税金となる。国、地方の租税の約1割を自動車ユーザーが負担していることになる。9兆円の内訳は車体課税と燃料課税の約半分ずつの比率になっている。

9種類9兆円にも及ぶ自動車関係諸税

 自工会からの要望説明の前に、自動車にかかる車体課税についておさらいしておこう。2019年10月より消費税が10%に上昇したのを機に車体課税も取得税が廃止された。その代わりに新車、中古車問わず購入の際に燃費性能によって取得額の0~3%の環境割の税金が導入された。これは令和3年3月までの時限軽減措置が講じられ、それぞれの税率が1%軽減されている。

自動車税・軽自動車税の環境性能割

 また、毎年春に通知書がくる自動車税では、1950年に制度創設以来初めて恒久的な減税が実施された。これは画期的なことだ。排気量の小さい車種ほど減税率が大きくなっているが、軽自動車は据え置かれた。

 さらに話題に上るエコカー減税は、所得税にかかる税金だったが、2019年9月で廃止されたので重量税のみに適用されている。2020年燃費基準の+40%~+90%の小型車とEV(電気自動車)は免税されるが、それ以下の達成率によって段階的に減税率が変わる仕組みになっている。

自動車重量税 エコカー減税

 このように車体課税を取り上げただけでも複雑な税制税率になっており、例えば創設時は道路などの社会資本整備などの道路特定財源だったものが、一般財源化されるなど変更が行なわれている。

 緊急の課題としては、これまで暫定的に期限付きで軽減措置が決められていた税制が、令和3年3月で期限が切れる。このコロナ禍での増税は生活、経済に対するインパクトが非常に大きく、自工会として自動車ユーザーの不利にならず、経済の活性化も踏まえて軽減措置の継続などを要望するという。

車体課税の変還

要望は大きく3点に絞られる

自動車税、軽自動車税の環境性能割の凍結、ないしは軽減措置

 これは前段階で取り上げたように環境性能割は取得額に対して最大3%の課税が行なわれる予定だが、現在特例措置として各段階で1%下げられている。しかし、特例措置は2021年3月末で期限切れとなるため、4月以降も継続することを要望していく。

自動車税の税率引き下げ
エコカー減税や環境性能割の減税対象は絞り込まず延長する

 この主旨は将来予定される2030年度燃費基準は、2020年度の燃費基準に対して平均44.3%の改善が求められており、その達成度合いによって減税をしていくものだが、現時点では非常に厳しいターゲットとなっており、ガソリン車はほぼ難しくなる。

 そこで現在想定されている2030年度燃費基準から、マイナス40~45%の範囲まで減税対象を広げるよう要望をする。

 自工会から要望する範囲だとガソリン車でも燃費のよい多くの車種が減税対象になるが、そのまま実施となるとHV(ハイブリッド)、PHEV(プラグインハイブリッド)などの次世代車でなければ達成は難しい。また、経済に直結する商用車も減税対象の維持を要望する。

EV・PHEV・FCV・クリーンディーゼルなどの次世代車の免税処置の継続

 次世代車は政府の掲げた2050年カーボンニュートラルに不可欠の存在で、免税措置に継続して普及を目指す。議論の中では、使う電源構成によって“Well to Wheel(国の電源構成を加味して、発電時のCO2や発電所から車両への送電ロスを踏まえた評価)”を考慮して発電時のCO2の発生などを踏まえた減免税制度をとの意見もあったが、消費者への表示方法も決まっていないために、車体の構造要件で免税を維持するという方向に固まった。

 この他にも中長期的な展望として、重量税などの道路補修などの当初の目的からの根拠を失った税制の廃止なども視野に入っている。こと自動車は裾野が広く、さまざまな分野に波及する。自動車単体の税金も当面の課題として重要だが、自工会として2021年度以降多くの意見を取り入れて、また他の団体と連携しながら活動していきたいとの発言があった。

 冒頭にも記したが、自動車に関連する税は複雑に絡み合っている。税の重要性は理解するがもっと分かりやすくしてほしいものだ。

今後の車体課税のスケジュール