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NVIDIA、自動車のデザイン作業などを企業レベルでネット共有可能な「Omniverse Enterprise」

NVIDIA Omniverse Enterpriseのデモ

 NVIDIAは、4月12日8時(米国太平洋時間、日本時間4月12日0時)から同社の年次プライベートカンファレンス「GTC 2021」を開催しており、同社のAIに向けた各種ソリューションに関して多くの発表を行なっている。

 GTC 2021の最初のセッションとして開催された同社 CEO ジェンスン・フアン氏の基調講演では、新しいデータセンター向けのCPU「Grace」や、1000TOPsの性能を持つ車載半導体「DRIVE Atlan」などの注目すべき発表を行なった。

 それと同時に発表されたのが新しいプロフェッショナル向けのグラフィックスソリューション。NVIDIAは2020年仮想コラボレーションツール「Omniverse」を発表したが、今回のGTC 2021ではそのビジネス向けバージョンとなるOmniverse Enterpriseを発表した。

 また、同時にAmpereアーキテクチャのプロ用デスクトップGPUとなるNVIDIA RTX A5000/A4000が発表されたほか、ノートPC用のNVIDIA RTX A5000/A4000/A3000/A2000が追加され、データセンター向けGPUのA40の廉価版となるA10、VDI用のデータセンター用GPUとなるM10の後継となるA16が発表された。

遠隔地にいるエンジニアが3D CADツールなどのデータを共有化して遠隔コラボレーションできるOmniverse Enterprise

Omniverse Enterprise

 NVIDIAが発表したOmniverse Enterpriseは、すでに発表されているOmniverseの大企業向けバージョンとなる。Omniverseはコンテンツクリエイターが利用できる仮想化プラットフォームで、レンダリングやコミュニケーションを機能をクリエイターが利用するアプリケーション(3DS Max、MAYA、MathWorks、Photoshopなど)でほかのクリエイターと3Dのデータをネットワーク共有してリアルタイムに情報を更新しながら作業できる。

 例えば、3D CADのソフトウェアを複数のクリエイターで利用すると、ほかのクリエイターが物体を回転させればほかのクリエイターの画面も連動して回転したり、明るさのパラメーターを誰かが変えればほかのクリエイターの画面も更新される、そのようにプロユースのツールを使いながら、ほかのユーザーと一緒に作業することができる。そのためのプラットフォームになる。

Omniverse Enterpriseのメリット
新しいデマンド
対応しているアプリケーション

 今回発表されたOmniverse Enterpriseはその大企業版という位置づけになる。クラウドでも利用可能だし、オンプレミスのサーバーにOmniverse EnterpriseのコアサーバーとなるOmniverse Nucleus Serverを導入して運用することもできる。クライアントからはCreate/View AppsをインストールしてノートPCやワークステーションから利用する形になる。

 このOmniverse Enterpriseにより、例えば自動車メーカーのデザイナーが日本、米国、欧州の各拠点にいる場合でも、全員がOmniverse上で同じツールを利用することで、同じデータを共有して共同作業が可能になる。日本のデザイナーがちょっと直したポイントが、米国のデザイナーのアプリにすぐに反映され、いちいち保存したデータを開くという必要がなくなり、生産性が向上することになる。

採用を決めている企業
Omniverse Enterpriseのデモ

 NVIDIAによれば、Omniverseはすでに自動車メーカーBMWのファクトリーで採用されているほか、同じく自動車メーカーであるボルボの製造やマーケティング、顧客体験の向上などに利用されているという。

 NVIDIAによればOmniverse Enterpriseはこの夏に利用可能になる予定で、NVIDIAのパートナーとなるリセーラーなどからサブスクリプション形式で提供される予定だ。

ノートPC向けAmpere、デスクトップWS向けA5000/A4000、データセンター向けのA10、A16を発表

新しいプロ向けGPUが多数発表される

 NVIDIAはプロ向けGPUの最新製品を投入した。ノート型ワークステーションPC向けにはNVIDIA RTX A5000(16GB)、NVIDIA RTX A4000(8GB)、NVIDIA RTX A3000、NVIDIA RTX A2000という新製品を投入した。従来のノートPC向けのプロ向けGPUは、Quadroブランドで提供されてきたが、アーキテクチャがAmpereベースに切り替わっており、ノート型ワークステーションPC向けに熱設計と性能のバランスをとった設計を実現するMax-Qに対応しており、薄型ノートPCに搭載することも可能だ。

 また、従来のアーキテクチャであるTuringベースのNVIDIA T1200、NVIDIA T600というノート型ワークステーションPC用GPUも同時に発表されている。こうしたノート型ワークステーションPC用GPUは第2四半期にOEMメーカーの製品に搭載されて市場に登場する見通しだ。

ノート型ワークステーション向けGPU(出典:NVIDIA)

 2020年10月に行なわれたGTCではAmpereベースのデスクトップ型ワークステーションPC向けGPUの「NVIDIA RTX A6000」が発表された。

ルノーが採用表明 NVIDIAの新型CAD/CAE向けGPU「NVIDIA RTX A6000/A40」、「Quadro」の名称が消える

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1280967.html

 NVIDIAは今回、その下位バージョンとなる「NVIDIA RTX A5000」と「NVIDIA RTX A4000」の2製品を発表した。

NVIDIA RTX A5000とNVIDIA RTX A4000(出典:NVIDIA)

NVIDIA RTX A5000とNVIDIA RTX A4000のスペック

NVIDIA RTX A5000NVIDIA RTX A4000
FP3227.8TFLOPS19.2TFLOPS
メモリ24GB GDDR6/ECC16GB GDDR6/ECC
PCIeGen 4Gen 4
出力DP1.4×4DP1.4×4
Quadro Sync対応対応
NVLink2way
vGPU対応対応
スロット2スロット1スロット

 いずれの製品も従来世代の同等製品と比較して、FP32の性能は最大2倍に、AIの処理能力は5倍になり、AmpereのSparsity機能を利用すると10倍になる。またレンダリング性能は2倍で、メモリはA5000が1.5倍に、A4000は2倍になっている。

 NVIDIAによれば両製品とも、NVIDIAのチャネルパートナーやOEMメーカーなどから4月中に提供開始される見通しだ。

 また、NVIDIAはこれまでNVIDIA A40として提供されてきたAmpereベースのデータセンター用のPCI Express版GPUの廉価版としてNVIDIA A10を発表した。A10はA40に比べて性能は劣るものの、廉価に設定されているほか、電力辺りの性能で優れており、PCI Expressの拡張カードとしてはシングルスロットとして提供されるため、より密度の高いGPUサーバーなどを構成する場合などに適している。

NVIDIA A10とA16

A10のスペック

NVIDIA A10
FP3231.2TF
TF32 Tensor Core62.5TF/125TF*
BFLOAT16 Tensor Core125TF/250TF*
FP16 Tensor Core125TF/250TF*
INT8 Tensor Core250TOPS/500TOPS*
INT4 Tensor Core500TOPS/1000TOPS*
RT Cores72
Encode / Decode"1 encoder
1 decoder (+AV1 decode)"
GPU Memory24GB GDDR6
GPU Memory Bandwidth600GB/s
InterconnectPCIe Gen 4: 64 GB/s
Form Factor1スロットFHFL
Max TDP Power150W
Secure and Measured Boot with Hardware Root of Trust対応
NEBS ReadyLevel 3
Power ConnectorPEX 8-pin

**sparsity利用

 NVIDIA A16は、従来はM10として提供されてきた製品の後継製品。VDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ基盤)のvGPUとしてGPUを利用する場合に適しており、M10に比べて格納できるユーザー数が倍になり、TCO(Total Cost of Ownership、導入~運用までライフサイクルすべてにかかるコストの総計)が20%改善される。

A16のスペック

A16
CPUNVIDIA Ampere GPU×4/ボード
メモリ64GB GDDR6 (16 GB/GPU)
vGPUプロファイル(GB)1/2/4/8/16
メディアアクセラレータ4x NVENC, 8x NVDEC
ビデオコーデック(エンコード)H.264/H.265 (+4:4:4)
形状FHFL Dual Slot
最大消費電力250W
バスPCIe Gen 4
NEBS対応対応
電源コネクタ8-pin CPU

 NVIDIAによれば、A16、A10ともにOEMメーカーのシステムなどに搭載されて5月から順次出荷される計画だ。