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ヤマハ、スポーツツーリングモデル「TRACER9 GT ABS」 スポーツ性能と実用機能を両立
2021年6月23日 06:00
- 2021年7月28日 発売
- 145万2000円
ヤマハ発動機は、高いスポーツ性能と実用機能を備えたスポーツツーリングモデル「TRACER9 GT ABS」を7月28日に発売する。価格は145万2000円。
TRACER9 GT ABSは、“Multirole fighter of the Motorcycle”をコンセプトに開発。エンジン・車体ともに大幅に進化・軽量化した「MT-09 ABS」をベースに、高いスポーツ性能とツーリングなど多用途に使える実用機能を磨きながら、軽量化技術を織り込み、同クラス最軽量級の車両重量を実現した。また、新しい「TRACER」の世界を提唱するスタイリングを採用している。
外観はMT-09 ABSが持つ凝縮感のあるプラットフォームをもとに、スクリーン、フロントカウル、ブラッシュガードなど最適なウインドプロテクションのための機構をコンパクトにまとめ、専用設計した灯火器を採用。意匠のための要素をなるべく取り除き、旅のための機能を最優先にしたデザインとした。
また、スクリーン高を5mm単位で10段階に調整可能な新デザインの大型フロントスクリーンやフロントカウルで、目的地へ向かう推進力を表現。コンパクト設計ながら防風効果も併せ持つブラッシュガードやフローティングさせた3.5インチダブルTFTメーターは、広い視界やハンドル切れ角の可動範囲の確保に貢献するとしている。
加えて、シート高を従来の「TRACER900」より40mm低い810mmに抑えることで、疲れにくいライディングポジションを実現。フットレストとハンドルバー、メインシートはそれぞれ2ポジションから選べ、ライダーの好みに合わせて調節が可能となっている。
MT-09 ABS 2021年モデルをベースとした軽量化や機能向上
TRACER9 GT ABSのパワートレーンは、MT-09 ABS 2021年モデルと同様に、平成32年排出ガス規制適合のCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)となる水冷4ストローク3気筒 DOHC 4バルブ 888cm 3 エンジンを搭載。ピストンやコンロッドなどの多くの主要パーツを新設計して軽量化が図られた。
燃料供給系も一新し、インジェクターは従来のシリンダーヘッド直付けからスロットルバルブ側に取り付け位置を変更。噴射はバルブ傘裏方向とし、優れた燃焼効率を引き出した。こうした燃焼改善と軽量化により燃費の改善を実現し、さらにクラッチレバーの操作荷重を低減することでスポーツツアラーとしての機能が高められた。
フレームは2021年モデルのMT-09 ABSのフレームをベースに、TRACER9用に専用チューニングを施した新フレームを採用。ヘッドパイプ手前のステーや、シリンダーヘッド左右のエンジン懸架ブラケットをチューニングし、剛性バランスをスポーツツアラーとして最適化している。また、リアフレームを専用設計し、高速安定性やタンデム居住性を確保。リアアームも専用設計され、アルミパネルを溶接したボックス構造で高い剛性と軽量化を両立することで、トラクションをライダーに伝え、高速走行時や旋回時の安心感に寄与している。
そのほかにも、ステーやブラケットの専用チューニングと合わせ、積載時の直進安定性、旋回性も向上。純正アクセサリーのサイドケース用のステーを装備し、独自の制振技術を応用してサイドケースの振動を減衰することで、サイドケース搭載時の高速安定性と旋回性を高次元で両立。トップケースを含む計3バッグを搭載可能とし、積載性を向上させた。
TRACER9 GT ABSには、MT-09 ABS 2021年モデルと同じく新開発の「IMU」(Inertial Measurement Unit)を搭載。2015年モデル以降の「YZF-R1」で実績のあるIMUの基本性能を維持しつつ、センサー構成を見直すことで50%の小型化、40%の軽量化を実現した。
ECUには、バンクの深さも反映するTCS、旋回をサポートするSCS、前輪の浮き上がり傾向を抑止するLIFの3種の制御システムが織り込まれ、個々の制御は相互に連動して運転操作を支援し、マシンのポテンシャルを効率よく引き出せるようになっている。各システムとも介入レベルの調整、およびON/OFF設定が可能で、新装備となるコーナリングランプや電子制御サスペンションの制御にも使用されている。
足下は独自のアルミ材の開発と工法の確立により“鋳造ホイールでありながら鍛造ホイールに匹敵する強度と靭性のバランス”を達成した独自の“SPINFORGED WHEEL”技術による軽量ホイールを採用。TRACER900より前後で約1000g軽量化するとともに、慣性モーメントをフロント11%、リア15%低減させたことにより、アジャイルな運動性能に貢献している。タイヤには、ブリヂストンと共同開発したドライ性能、ウエット性能、耐摩耗性、高速走行時の直進安定性に優れる専用チューニングの新タイヤ「BATTLAX SPORT TOURING T32」を採用した。
サスペンションにはスポーツ性と乗り心地の両立を図るため、KYBと共同開発した電子制御サスペンション「KADS(KYB Actimatic Damper System)」を採用。IMUとECU、「HU(Hydraulic unit)」の情報にもとづき、「SCU(サスペンションコントロールユニット)」が、減衰レベルを最適化する。減衰力の調整機構には、ヤマハ初となるソレノイド駆動を用いており、素早く、かつ大きく減衰力を調整できるため、優れた接地感やスポーツ走行時の高い路面追従性を実現。ドライのスポーティな走りを主体にウエットにも対応できるモードと長距離走行時などでの快適な乗り心地を狙ったモードの2モードが用意されている。
スポーツツアラーとしての快適性と機能性をさらに高める充実装備として、車速約5km/h以上でバンク角が7度を超えると点灯する新作コーナリングランプを採用し、夜間走行でのライダーの負担を低減。新作のグリップウォーマーは、指の触れるグリップ部に薄いラバーを用いることでヒーターの暖かさを伝わりやすくしたほか、リングスイッチで10段階に調整ができ、極寒季から夏季の早朝まで、環境変化に対して細かなレベル調整を可能としている。