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HW ELECTRO、多用途小型商用EV「ELEMO(エレモ)」発表会 年内に軽自動車サイズの発表を予告

2021年7月12日 実施

多用途小型商用EV「ELEMO(エレモ)」

物流問題の解決を目指して国内へ導入

 HW ELECTROは7月12日、多用途小型商用EV(電気自動車)「ELEMO(エレモ)」を使った事業戦略発表会を行ない、JFTD花キューピットとカーボンニュートラルな社会構築実現に向け、エレモを用いた生花通信配達を行なう実証実験を開始すると発表。同時に7月24日よりエレモの予約注文を開始し、11月ころから納車することも発表した。価格は218万9000円~330万円。

 発表会で登壇したHW ELECTRO代表取締役の蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)氏は、6月24日に日本防災教育振興中央会と業務提携を行ない、防災備蓄品を装備したエレモを木更津市へ寄贈したことを紹介しつつ、「エレモは平常時は貨物トラックとして働き、非常時は動く蓄電池として活用できるなど、環境問題、物流改革、災害支援といったたくさんの可能性に満ち溢れている車両」とコメント。

HW ELECTRO株式会社 代表取締役 蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)氏
千葉県木更津市に災害用の支援車両としてエレモを寄贈
100V給電ができることで災害時やイベント時に活用可能

 今回正式に販売が決まったエレモは、リチウムイオン電池の搭載数により「エレモ-120」(バッテリ容量13kWh)と「エレモ-200」(バッテリ容量26kWh)の2つのグレードが設定され、リチウムイオン電池を2個積むタイプには100Vの給電ポートが標準装備される予定だという。また、荷台のカスタマイズの多様性についても言及し、先行して「フラットベッド」「ピックアップ」「ボックス」の3タイプを標準仕様として用意する。最大積載量は荷台のタイプで異なるが400~650kg。

 すでに海外では消防車や給水車、ワクチン配付車両としての使用実績もあり、蕭社長は「今後は貨物運送だけでなく、キッチンカーやピープルムーバー、ツールキャリアをはじめ、移動トリミングカー、移動美容室など幅広い展開も視野に入れている」と明かす。また「サービスを受けに行く時代からサービスがやってくる時代は、そう遠くないかもしれません」と持論を述べた。

2グレードの違い
3タイプの荷台設定
スペック表
海外での使用実績
アメリカのワクチン配付車両
今後の展開想定

 また、エレモの市場投入と並行してIoTについても解説。エレモを中心にEVプラットフォーマーを目指すと宣言。まずは車両アプリケーションとして、クルマの状態や充電量、走行距離の確認、エアコンやキーの操作などを可能にする機能を実装。その後は荷室の空調管理などを行なえる機能を開発するという。ワクチンや生花、生鮮食品といった温度管理の厳しいものでも、しっかり管理しながら配送できるようにするという。さらに、運送業では「ラストワンマイル問題」や「人材不足」など課題が山積していることから、RFタグを使い、配送ルートの最適化や自動化も実現も目指すとしている。

 また、エレモは全幅1450mm(ボックスタイプ)、全高1905mmと、幅と高さは軽自動車の車格に収まっているが、全長が3910mmと軽自動車の基準である3400mm以内より500mmほど長く、日本では軽自動車としては登録できない。そこで蕭社長は、日本の個人宅配業は軽自動車しか認可がおりないことを踏まえ、「物流問題の改善を目指す一環として、エレモの軽自動車サイズ版を開発している」と明かし、年内に発表する予定だという。

エレモ専用アプリ(開発中のイメージ)
荷室の室温・湿度管理をアプリで行なえるようにするという
センサーで積んだ荷物のタグを読み取り、配送ルートが自動的に最適化されるシステムも開発予定という

 エレモは、アメリカと中国を拠点に商用EVや超小型モビリティを手掛けるセントロの「METRO」がベースとなっていて、輸入後にサスペンションやブレーキを日本製のものに交換して日本仕様にしている。発表会ではセントロ・オートモティブ・グループのCEOであるピーター・ウォング氏もビデオメッセージで登場。「HW ELECTROとは2017年から業務や開発のパートナーで、エレモは日本市場において物流に革新をもたらすと確信している」とコメントを寄せた。さらに2023年には、エレモベースではなく、まったくの新規で軽自動車サイズのEVを開発する予定もあるという。その他にも、エレモを充電基地局としてドローンによるラストワンマイルの配送を実現する計画もあり、現在ドローンメーカーと協議している段階だという。

 続いてHW ELECTRO常務執行役員/経営企画本部の高橋智行氏が、エレモの性能について解説。航続距離120kmのエレモ-120と、航続距離200kmのエレモ-200を設定し、小型商用車の部類で4ナンバーカテゴリーになると解説。充電時間は急速充電は装備せず、普通充電のみ200V(15A)を使い、夜のうちに充電する使い方を想定しているという。充電時間はエレモ120で6~8時間、エレモ200で10~12時間としている。また、最大出力は24kW(定格出力10kW)、最大トルクは120Nmとなっている。

HW ELECTRO株式会社 常務執行役員/経営企画本部 高橋智行氏
受注から納品の説明

 最後に、今回エレモを用いた実証実験の実施を発表したJFTD花キューピットの澤田將信会長が登壇。ちなみに花キューピットは1953年から生花通信配達を実施していて、現在日本全国4300以上の生花店が加盟。注文が入ると最寄りの店舗が配達することで新鮮な生花が届けられるだけでなく、遠距離配達を行なわない点でCO2排出の削減に貢献しているという。実証実験は1店舗にて走行距離や使い勝手など、3か月間に渡りテスト運用が行なわれる。

一般社団法人JFTD花キューピット 会長 澤田將信氏
協力してEV商用車の普及を目指すという

 澤田会長は「この近所の加盟店が届けるシステムは68年前からやっているが、これまでは自分たちもあまり感じていなかったが、今の時代に適したビジネスモデルではないかと思っている。現状で70%ちかくの加盟店が軽自動車で配達を行なっているが、10年後にはCO2排出をゼロにしたいという想いがあり、そのために何が必要かと考えた時、エレモのようなクルマだった。エレモのようなクルマが街中、山間部などのデリバリーに活用されれば最高だなと思った。今回、実証実験という機会を与えてくれてありがたい。精一杯協力したいし、CO2排出ゼロに向けて頑張りたい。農産物の配達などにもぜひ活用してほしいと思う」と期待と想いを述べた。

エレモに実際に乗ってみた

 発表会の後、屋外の駐車場にて試乗会も行なわれた。特設コースを2周走るだけだったが、ストレートは50mほどあり、アクセルを全開にしなくてもスーッと滑らかに加速していき、気が付けば40km/hほど出ていた。ブレーキは普通に効くが2名乗車で荷物満載だったら大丈夫かなと思い高橋氏に聞いてみたところ「ブレーキに関してはまだ調整中なんです。効きが甘いことは認識しています。ブレーキパッドやローターを変更しますが、あまり効きすぎてブレーキパッドやローターがすぐに擦り減って交換なんてことになればコスパがわるいですから、ベストなものを探しています」とのこと。

 また、サスペンションを交換した理由も聞いてみたところ「ちょっとノーマルのサスペンションは段差などで跳ねてしまうので、普段いいサスペンションを知っている日本のユーザーには厳しいと判断して交換しました」という。テストコースに大きな段差がなかったのでそれは確認できなかったが、確かに加減速もコーナリングもしなやかなイメージだった。まさしく近距離圏内をサクサクと走りながら配達するのにピッタリなクルマだと感じた。

ボックスタイプ
フロントビュー(ボックスタイプ)
リアビュー(ボックスタイプ)
荷室
ほぼ軽自動車サイズの運転席
シートを前にずらせば若干のリクライニングも可能(リクライニングレバーは中央側に配置)
助手席前には小物を入れられるネットを装備。スピーカーも左右に1個ずつ装備する
頭上に小物入れを配備
サイドブレーキはレバー式
アクセルペダルとブレーキペダル
中央のインパネにエアコンスイッチ、ハザード、シガーソケット、ドリンクホルダーを完備
シフトはD(ドライブ)、N(ニュートラル)、R(リバース)のみ
イグニッションONで中央のメーターが点灯。エアバッグのマークが消えれば走行可能な状態になる。ちなみにドアが半ドアだと走れないようにもなっている
ヘッドライトはハロゲン、5つならんだポジションランプはLED、ウインカーは電球
ドアの下にサイドのウインカー
テールランプ
ルームミラーは装備せず基本はバックモニターを完備する予定
サスペンションはRS★R製を採用
タイヤはGOODRIDEのエコタイヤRP28。サイズは175/65R14
荷台は6個のネジで取り外せる。大人4人で10分程度で交換が可能としている
100V給電で扇風機を動かすデモンストレーションを実施
100V給電ポート(エレモ200のみ)と充電ポート
フラットベッドタイプ