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パナソニックとスマートドライブ、ETC2.0システムを利用した運行管理サービス「ETC2.0 Fleetサービス」説明会
2021年9月7日 14:37
- 2021年9月7日 発表
車両の稼働状況や業務状況を可視化
スマートドライブとパナソニックは9月7日、物流車両を所有する企業を対象に、ETC2.0システムを利用した運行管理サービス「ETC2.0 Fleetサービス」の申し込み受け付けを開始した。
ETC2.0車載器を利用して手軽に運行管理を可能とすることで、業務効率化につなげることができる。まずは、提供する社数を限定した実証サービスとしてキャンペーン価格で提供。両社では、今回の取り組みを「助走事業」と位置づけており、2022年3月までに3社~10社を対象にサービスを提供。2022年4月から事業を本格化する。
ETC2.0 Fleetサービスでは、ETC2.0システムに対応した路側機を通過した時の車両位置を把握し、渋滞情報などと組み合わせながら到着時刻を想定することで、荷待ち時間の削減などにつながる「車両の位置把握」、Googleストリートビューとの連動で、急ブレーキをかけた地点を表示し、危険な場所の把握やドライバーごとに最適な安全運転の指導に活用できる「安全運転管理」、過去の走行履歴を把握し、手書きでの日報作成などでの抜け漏れを防ぐ「運転日報の作成補助」、月間の拘束時間累計が上限の293時間に近づくと注意を喚起する「ドライバーの拘束時間管理」、過去の走行ルートや速度も分かりやすく表示し、ドライバーの管理や配車計画の検討に活用できる「運行履歴管理」を提供する。
パナソニック モビリティ事業戦略室の森俊彦プロジェクトリーダーは、「デジタコを搭載していない車両を所有しているため、業務管理ができていない運送会社や、運用管理コストを下げたいと考えている企業を対象に提供したい。運送会社の9割以上が中小企業であり、社長自らがドライバーという運送会社も多い。デジタルを活用することで、物流業界の課題解決を図る」としている。
今回提供する運行管理サービスのETC2.0 Fleetサービスは、2021年6月からスマートドライブとパナソニックが共同で行なってきた実証実験がベースになっている。
スマートドライブが提供している法人向けクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」や、さまざまなデバイスから収集したモビリティデータを利活用できる「Mobility Data Platform」をベースに開発。同時に、パナソニックが開発、販売しているGPS機能を搭載した事業者向けETC2.0車載器の実績や、ITSスポットの設置、保守事業などのノウハウを活用した。
ETC2.0車載器に搭載されている乗用車の経路情報や急ブレーキを把握する機能と、高速道路および直轄国道の合計で約4100基が設置されている路側機を連携。運行管理の実施により、クルマの稼働状況や業務状況を可視化できる。
走行履歴も見える化できるため、複数のドライバーの走行ルートを把握して、配車の最適化や、ドライバーの業務効率化を実現。保有車両の台数や形態の最適化による業務改善が行なえるという。
パナソニックの森プロジェクトリーダーは、「スマートドライブでは、すでに600社、3万台の営業車両、配送車両の運行管理を行なっており、車両の業務効率化の実績がある。ドライバーが活用しやすいUIにもノウハウを持っている。また、パナソニックは、ETC2.0車載器ではトップクラスのシェアを持ち、ITSスポットの設置、保守も行ない、ETC2.0においては、業界リーダーの役割を担っている。ETC2.0のデータを活用することで、安全対策や交通インフラ管理に役立つ社会インフラを構築することで、住民、事業者、地域、社会によい暮らしを実現したい」とし、「今回のサービス提供によって、物流業界の効率化の後押しをしたい。貨物量の急増、高齢化などによるドライバー不足、エンゲージメントの課題、2024年4月に導入される労働基準法の年間残業時間規制など、過酷で厳しい事業環境における課題をデジタルで解決したい」と語る。
堅牢性、信頼性の高い国のインフラを活用して収集したデータを利用するサービス
ETC2.0システムは、2015年から導入が始まり、これまでに約639万台の車載器が普及している。また、高速道路には約1800か所にITSスポットが設置されているのに加えて、国交省の直轄国道にも約2300か所へ設置。全国各地に拡大している。
時刻や緯度経度、進行方向変化、急減速など、最大80km分の経路情報を車載器のメモリに蓄積。ITSスポットを通過時に、国交省などのサーバーにデータが送信、蓄積される。
パナソニックの森プロジェクトリーダーは、「ETCは、高速道路料金の決済機能のために利用している人が多いが、ETC2.0は料金収受に特化した従来のETCとは異なり、速度や急ブレーキ、走行履歴などのデータを国が収集し、物流支援や渋滞予測、料金制度の見直しなどに活かしている。国がインフラを支えているシステムである。また、国交省ではデータ活用のオープン化を目指しており、高速バスやトラックの運行管理、一般ユーザーのデータを活用して、民間による新たなサービスを創出し、産学連携でのモビリティサービスの強化にもつなげようとしている。ETC2.0 Fleetサービスは、堅牢性、信頼性の高い国のインフラを活用して収集したデータを利用したサービスになる」とする。
また、スマートドライブ 営業部の稲垣亮太部長は、「ETC2.0によって収集されたデータは、道路インフラ投資への活用、渋滞や事故削減、長距離利用者の優遇、物流企業の事故削減や業務の効率化などに活用されており、いくつかの事業採択が行なわれ、さまざまな企業によるデータ活用事業が開始されている。一方、ベースとなったSmartDrive Fleetは、シガーソケットタイプのデバイスやドライブレコーダーを活用し、物流業界で多くの実績がある。小売りのベルクでは、位置情報を把握して配送ルートの最適化に活用し、渡辺建設では、配車の効率化や報告業務軽減、運転境域などの成果があがっている。ETC2.0 Fleetサービスにおいては、ETC2.0から得られるデータだけでなく、さまざまなデバイスから収集するデータも組み合わせた利用も可能になる」などと述べた。
ETC2.0 Fleetサービスは、利用中のETC2.0車載器からデータを取得するため、新たな専用デバイスを用意する必要がなく、初期設定や費用の負担が軽減できること、国が公共データとして収集した車両の位置情報を民間活用するため、低コストで運用できること、スマートドライブが持つ600社以上のユーザーの声を反映したユーザーインターフェースを採用することで使いやすさを実現していること、ドライバーの業務拘束時間の累計を簡単に把握し、中小企業でも働き方改革の推進をサポートできることを特徴に、物流業界に提案していくという。また、パナソニックでは、サービス提供にあわせて、ETC2.0車載器のリース利用の提案も行なう考えも示した。