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JAF、FIAレースの開催や外国人選手の入国に向けたモータースポーツ業界全体の取り組みを説明
2021年9月30日 21:15
- 2021年9月30日 発表
JAF(日本自動車連盟)は9月30日、オンライン記者会見を開催し、JAF モータースポーツ部 部長 村田浩一氏が、JAFが取り組んでいる様々なモータースポーツ振興策などに関して説明を行なった。
2020年の3月末からのコロナ禍の中で、日本で開催されているFIAの国際レース(F1日本GP、WEC富士6時間レース、WRCラリージャパン)は、2020年、2021年と2年連続で中止になっており、JAFや各イベントのオーガナイザー(一般的にはサーキットの運営会社)などが開催実現向けてどのような取り組みを行なってきたのかなどを説明した。
感染症対策とモータースポーツイベントの開催、ライセンス発行について
村田氏:2020年以降政府や所管省庁、地方公共団体などの支持・要請・勧告に従ってきた。また、JAFのメディカル部会の助言に基づいて開催に関する基本的な感染対策のあり方なども議論してきた。この間に競技会が延期になり、中止になった場合には手数料の減免などに取り組み、16回リリースを出してきた。8月3日付けの報告では競技会の延期・中止に関わる手数料の減免措置に関しては10月末が期限になっているが、今後も柔軟に取り扱っていきたい。
コロナ禍以前は、年間で850の競技会が行なわれていたが、2020年には537競技会と、前年比63.9%に減っている。2021年には1月~8月で426競技会となり、前年同期比で147.9%と大幅に増えている。しかし2019年比では77.2%と依然としてコロナ前の状況には戻ってきていない。
ライセンス(筆者注:JAFは国内カテゴリーに参加するためのライセンスを発給している)の四輪とカートを合わせた発給数は7万1180件だったが、2020年には7万710件、2021年は1月から8月までで6万9285件と前年同期比102.1%と微増になっている。
2020年に増して対面型の講習会をオンラインにした開催し、競技会を小規模にすることで、コロナ禍の影響を大きく受けず感染対策を講じて開催していることが功を奏している。その一方、地元の地方公共団体からの要請などにより苦渋の決断を強いられる主催者もいた。
来年以降も完全に収束するという見通しはなく、感染症と共存したあり方を現在にも増して検討していくことになる。ラリー、ジムカーナ-は、ボランティア団体が多い。参加される選手も別の職を持つ人が多く、本業に影響を与えないように開催参集していくことが肝要。そのため、感染症防止対策と競技会活動の両立のセミナーを10月以降に開催していく計画だ。
FIA世界選手権 3大会などの外国籍選手の参加に関わる統括団体としての対応
村田氏:2020年はFIA管轄の三大会すべてが中止になり、本年もそれは同様になった。また、スーパーフォーミュラ、SUPER GTなどの国際レベルの国内レースの外国人選手の参加対応などに関してだが、2020年4月以降COVID-19の感染拡大による水際強化により、14日の隔離と、外交官や日本に家族が居る、公益性があるなどの特段の事情がない限りは外国人の上陸が拒否されている。
国内で行なわれるモータースポーツイベントへの参加に関しては、管轄省庁であるスポーツ庁の責任下で関係省庁との協議を経た上で、モータースポーツに公益性の有無を個別事案ごとに判断していく状況。
所管省庁への相談として、2021年の春先に、JAFからスポーツ庁に関して、国際競技会には、チーム関係者が多く日本に入国する予定になっていること、乗率拒否対象国からは特段の事情が認められない状況、14日間の自宅帯域を強いられ、検疫措置に従うと、対象競技会が複数の国で開催される場合もあり、前後の大会との関係上、14日は難しい。しかるべき措置を行なうことで、緩和措置を認めてほしいという相談を行なった。
その時点では、オリンピック、パラリンピック、野球やサッカーのように特例をできる場合もあるが、それをモータースポーツに適用するのは難しい。特に変異株により厳しい感染状況になっており、特段の事情による入国も厳しい目で見られるという状況だと確認した。
4月14日に自由民主党モータースポーツ振興議員連盟総会の総会が行なわれ、そこでGTA、MFJ、JRP、KYOJO、WRC、JRCA、STOなどから構成されているモータースポーツ連絡会として「2021年国内各シリーズの外国人選手・スタッフの入国制限に対する特例措置適用に関する要望書」を同連盟の古屋会長に提出した。その時には古屋会長からは個社個人として対応するのは難しく、組織団体が一括して要望するのが重要で、スポーツ庁に要望してほしいという助言があった。
そこでスポーツ庁への相談を行なったが、外国籍ドライバーの参加に関しては、自民党議連の助言に基づいて、組織団体が一括して対応することにした。スポーツ庁と話をするなかで、14日待機などに関しては水際対策に関しては個別に緩和措置は難しく、現在可能とされている待機期間中に練習や大会に参加するという形の代替措置を適用する事への支援はあり得るということと、嘆願書には公益性を担保するための具体的な内容を記載することという助言を頂いた。このため、当初は緩和措置を目指していたが、代替措置があり得るということになった。
7月には関係20団体(日本自動車工業会、FIA国際自動車連盟、WEC、F1、WRC主催団体、トヨタ自動車、NISMO、本田技研工業等)の総意として、「モータースポーツ競技会の開催・参加に伴う水際強化措置等の代替・特例措置適用」についての嘆願書をスポーツ庁室伏長官宛てに提出。公益性に関しては、IOCにも加盟しているFIA、ならびにJAFの公認により開催されるイベントであること、さらに開催場所の自治体の活性化、それは開催地内外への投資効果や経済効果が認められること、そしてわが国の重要政策である2050年にカーボンニュートラルを実現するためにも、わが国の自動車産業の発展に資すること、それらをしたためて嘆願書を提出した。
スポーツ庁では、今の内容をご理解していただき、JAFが主催団体と一緒に、特段と事情、公益性があること、水際措置の代替措置を講じることを前提に検討していただいた。その後、個別協議用の嘆願書、大会概要やどのような選手がなぜ入国するかなどを、作成して提出した。嘆願書別紙、入国対象者の誓約書、JAF主催所管団体が名前を連ねて、提出した。それに別の別紙として対象の個人の誓約書などを添付した。
また、入国14日間の活動計画書、待機緩和の計画書、外国籍ドライバー、感染対策ガイドライン、主催と所管団体が作成する。ガイドライン補足も、主催と所管団体が作成し、ガイドラインはオリンピックのプレイヤーブックに準拠しているものとした。
もっとも重要なものが入国者リスト。氏名、旅券番号、性別、到着便、滞在開始日、滞在終了日、受け入れ責任者などのリスト作成して提出。必要書類に関して期日までの対応が必須になり、不実記載や制約に違反した場合は、受け入れ責任団体が公表され、今後制約した団体が招聘するものは、本邦入国が認められないことを承諾する必要があり、それを誓約して提出した。
スポーツ庁はそうした内容をご理解いただき、関係各省を説得する形で動いていただいていた。そしてそれと平行して個別協議を進めてきた。
①WEC富士6時間レース(9月24日~9月26日予定だったが中止)
WEC富士大会に関しては、報道も含めて約1500名の関係者の入国が見込まれていた。課題対応を4月から進め、6月にスポーツ庁と取り組みを進めてきた。しかし、感染拡大の時期や物理的現実的な時間上の誓約もあり、WECのプロモーターとも協議の上、個別嘆願書を含めて個別資料を提出する前の段階で主催団体が中止を判断し、7月7日に中止を発表した。
②F1日本GP(10月8日~10月10日予定だったが中止)
日本GPも選手、関係者、メディアなどを含めて1500名が入国するイベントだった。主催団体(筆者注:鈴鹿サーキット)と三重県で準備を進めてきた。コロナの感染状況などが高い直前まで変化することもあるし、入国する関係者の人数もオリンピック、パラリンピックを除けば例のない規模での入国となるので、それに対する処置を進めてきた。入国希望者にはそれぞれの査証発給日、場所を進めることとした。
しかしながら、開催中止の判断をしなければならないという期日に達して、関係者の入国が確実という状況にならなかったため、主催団体が中止を決め、8月18日に発表した。
③WRCラリージャパン(11月11~14日予定だったが中止)
400名の関係者、ドライバーの入国に向けて6月から準備を進めてきた。入国者の人数も多いが、一部公道を利用する競技形態で、防疫措置をどのように講じるかなどについて議論してきた。入国希望者のリストを作成する段階で、公道を利用する特色なども加味し、WRCのプロモーターとも話し合い、9月7日に中止を発表した。
なお、スポーツ庁からは「他のスポーツとまったく同様の手続きを進めていた。ただしF1とWRCに関しては他に例をみないきわめて多数の関係者の入国ということもあり、他の大会に比べて手続きに関しては多くの作業が必要だったのは事実だが、役所側が中止を決定したとかビザ発給を認めなかった、モータースポーツの開催を認めなかったという事実はなく、そうした報道が行なわれて現在も放置されている状況で、少なくとも関係者間では共有してほしい」という申し入れがあった。
④スーパーフォーミュラ/SUPER GTの外国人選手の入国
スーパーフォーミュラ、SUPER GTの外国人選手の入国に関しては、10月16日~10月17日に行なわれるスーパーフォーミュラの第6戦ツインリンクもてぎへの選手入国に向けて個別協議が行なわれ、対象者が少なかったこともあり、本日以降対象選手が入国できる予定になった。スポーツ庁や関係者、サーキットなどに敬意を表したい。
(筆者注:スーパーフォーミュラ、SUPER GTのレギュラードライバーであるサッシャ・フェネストラズ選手は開幕以来査証が発給されず入国できない状態が続いていたが、昨日にTwitterを更新し日本入国が可能になる査証が発行されたと明らかにしている)
(1/3 ) みなさまこんにちは、お元気ですか。
— Sacha Fenestraz (@sachafenestraz)September 29, 2021
このごろ僕は書類作成や準備などでとても忙しく、気づいたら全然ソーシャルメディアで投稿していませんでした。申し訳ないです。
今日はいつも応援してくれている皆さまに久しぶりに大変良いお知らせがあります
JAFモータースポーツサイトの更新やSF最終戦でのMSJの併催などモータースポーツ振興にも力を入れていく
村田氏:このほか、サーキットのFIA査察が難しくなっており、JAFが代理でFIAから委託されて査察を行なっているほか、救急自体発生時のセミナーなどに関しては感染症対策を講じた上で行なっている。
環境対策に関しても進めており、2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に関わる対応として、各専門部会の個別検討(電気、ハイブリッド、燃料電池車両等の環境対応車両導入促進、環境配慮・対応タイヤ導入・使用本数制限、合成燃料導入等)を行なっている。また、電気・ソーラーカー部会が主管部会となり、FIAの環境計画も参考に対応車両導入の横断的な環境対応計画を策定中。来年からは全日本カート選手権に電気カート(EV)部門を導入する計画。これから様々なことを決めて行くことになる。
モータースポーツ振興にも引き続き力を入れていく。10月30日~10月31に鈴鹿サーキットで行なわれるJAF GP(スーパーフォーミュラの最終戦)では、JAF主催振興イベント(MSJ:モータースポーツジャパン2021 in JAF鈴鹿グランプリ)が開催される計画。オールドフォーミュラカーの展示や体験などが行なわれる予定になっている。
JAF GP(鈴鹿サーキット)
https://www.suzukacircuit.jp/superformula/日本一速い・活躍したドライバーとして、「ドライバーオブザイヤー」を設定する。モータースポーツ振興委員会が国内外で活躍するドライバー9名(筆者注:勝田貴元選手、小林可夢偉選手、佐藤琢磨選手、ジュリアーノ・アレジ選手、角田裕毅選手、中嶋一貴選手、野尻智紀選手、平川亮選手、山本尚貴選手)をノミネートし、11月8日までの期間でJAF会員によるWeb投票を行なう。こうしたJAF会員による投票は今回初めての取り組みになる。
2021年ドライバー・オブ・ザ・イヤー投票開始!!(JAF)
https://motorsports.jaf.or.jp/lp/campaign/2021/drivers-awardまた、JAFモータースポーツのWebサイトは8月3日にリニューアルを行ない、モータースポーツに関心を持っていただいているファン向けのコンテンツを拡充し、新規ファンを獲得するサイトを目地して運営する。現在はリザルトの更新などで遅延が発生しているような状況だが、今後ボトルネックを取り除くような処置を行なっており、今後は正常化していく見通しだ。