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CES 2022で自動車産業向けにオープンしたLVCC西館を紹介 最も目立っていたベトナムの新興自動車メーカー「ヴィンファスト」
2022年1月11日 06:11
1月3日(現地時間)から1月7日に、米国ネバダ州ラスベガスで開催されたCES 2022は、元々はデジタル家電の展示会として開催されてきたイベントだが、近年は自動車のIT化、そして電動化という流れを受けて自動車関連の展示が年々増えていっている。2021年のCESは、COVID-19のパンデミックによるデジタル開催に切り替わったため、2022年のCESは2年ぶりに対面のリアルイベントとしての開催になった。
これまで自動車関連の企業が集中していたのは、メイン会場のラスベガスコンベンションセンター(LVCC)の北館(ノースホール)だったが、2022年のCESから自動車関連の展示は新しく新設された西館(ウエストホール)に移動され、より多くの企業が展示できるようになった。しかし、開催直前の2021年11月末から12月にかけて米国でもオミクロン株の感染拡大が始まったことにより、多くの大手企業が従業員の安全確保を目的にデジタル参加へと切り替えたことが影響し、自動車メーカーの展示が減り、寂しい状況になってしまった。
しかし、そうした中でも対面による展示を続行したメーカーもあり、米国ではクライスラーブランドで事業を行なっているステランティス、韓国のヒュンダイ、さらにベトナムからバッテリEVをひっさげて米国市場に参入を表明したヴィンファスト(VinFast)などが展示を行なった。特に米国市場に初登場となったヴィンファストは注目されており、西館の中央辺りで目立つ存在となっていた。
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LVCCに新しく西館が登場し、自動車関連のメーカーは移動
2022年のCESは、LVCCに新しく西館ができたことで、展示ホールの構成が大きく変わっていた。2020年までは主に以下のような構成になっていた。
2020年の主な展示場所
北館:自動車
中央館:デジタル家電
南館:デジタルヘルスなど
サンズ・エクスポ:スタートアップ
しかし、今年からは西館ができたことで、以下のように変わった。
2022年の主な展示場所
西館:自動車
北館:デジタルヘルスなど
中央館:デジタル家電
南館:閉鎖
ベネチアン・エクスポ:スタートアップ
分かりやすく言うと自動車関連が北館から西館へ移動し、デジタルヘルス関連が北館に移動。デジタルヘルス関連があった南館は何も使われず閉鎖という形になっていた。なお、サンズ・エクスポとベネチアン・エクスポは基本的に同じベネチアンホテルの宴会場(ボールルーム)とコンベンションセンターで、名前が変わっただけになる。設立されたばかりのスタートアップ企業が1階に、スタートアップでも設立以来時間が経過している企業などが2階に位置し、2年前と同じ構造になっている。
新しくできた西館だが、実際に行ってみると不必要に広い「空き地」があることを確認できた。この空き地は、本来なら自動車メーカーやティアワンの部品メーカーなどが出展するハズだった場所。というのも、2022年のCESは2年ぶりの対面イベントとして開催されることになったのだが、イベント開幕前の2021年12月末には全米で1日の感染者が約48万人(CDC発表)達するという状況になったこともあり、ドミノ倒しのように大企業の多くが出展を取りやめたのだ。
2022年1月5日に基調講演を行なったGMもその1社で、本来はラスベガスの講演会場で行なうはずだったメアリー・バーラCEOの基調講演は、急きょデトロイトからの中継に切り替えられた。
GM メアリー・バーラCEO、自動運転機能「ウルトラクルーズ」をクアルコムと共同開発
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1378951.html
こういう状況では企業が従業員の安全を確保できないと判断して出展を取りやめるのは尊重されるべきだ。ただ、そうした結果、現地での展示会場には空き地ができてしまい、ちょっと寂しい感じになってしまったのは否めなかった。
なお、LVCCの北館や中央館からの西館への移動は、主に2つの方法がある。1つは北館と西館を隔てるパラダイス通りの上にかけられたブリッジで、CESの会場内のまま移動でき移動後に再び荷物検査などを受ける必要はない。
もう1つはVegas Loopで、こちらは会場外に一度出て乗ることになるため、西館や中央館などでCESの会場に再度入るときには荷物検査などを再び受ける必要がある。荷物検査を受けてもVegas Loopを使った方が移動時間を短縮できるのでお勧めだ。
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対面展示をした自動車メーカーの中で最も目立っていたのはベトナムのヴィンファスト
このような状況の中、感染対策をして展示を行なった自動車メーカーもある。FCAとPSAが合併してできたステランティスはその1つ。韓国のヒュンダイもブースを出していた(ヒュンダイは関連会社のヒュンダイ重工業も出展)。
この西館で2022年に最も目立っていたのが、ベトナムの新興自動車メーカーのヴィンファスト(VinFast)だ。ヴィンファストは2017年にベトナムで創業された自動車メーカーで、ベトナムの財閥であるヴィン・グループがその母体になっている。
ヴィンファストは今回のCESで内燃機関車両の生産を2022年末に停止し、今後はバッテリEV一本でビジネスを展開していくと明らかにした。今後はテスラのようにバッテリEV専業メーカーとなり、東南アジアの「テスラ」のようなメーカーになっていくということだ。今回CESで展示されたモデルはいずれもバッテリEVだという。
ヴィンファストは、CES2022の新モデルとしてVF 8とVF 9というSUVのバッテリEVを発表した。VF 8とVF 9はレベル2+のADAS版とレベル3~4のプレミアム版の2つのラインアップが用意され、車載情報システムが充実しているのが特長。さらにAセグメントのVF 5、BセグメントのVF 6、CセグメントのVF 7なども2021年のロサンゼルスオートショーで発表済み。そうしたヴィンファストのバッテリEVは、まずは米国、ヨーロッパとベトナムで販売が開始される計画で、VF 8の米国での価格は4万1000ドル(1ドル=116円で、約476万円)、VF 9の米国での価格は5万6000ドル(同、約650万円)という価格設定が明らかにされた。
今回展示されていた車両を見る限りでは、質感もよく感じたが、クルマとしては走らせてみないと分からないため、会場で見ただけではなんとも論評のしようはない。ただ、今CESの西館で最も目立っていたのはこのヴィンファストであったのは間違いないだろう。