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ピレリ、新スタッドレスタイヤ「アイス・ゼロ・アシンメトリコ」発表会 氷上性能の向上に注力し従来よりブレーキ性能を5%、発進性能を12%向上

2022年6月10日 開催

新スタッドレスタイヤ「アイス・ゼロ・アシンメトリコ」の発表会をイタリア大使館で開催

 ピレリジャパンは6月10日、イタリア大使館において新スタッドレスタイヤ「ICE ZERO ASIMMETRICO(アイス・ゼロ・アシンメトリコ)」の発表会を開催した。15インチ~20インチの計44サイズを用意し、7月から順次発売する。価格はオープンプライス。

 ピレリは2022年1月に創立150周年を迎えており、会場となったイタリア大使館には「ピレリ:情熱と革新の150年」と銘打った写真展示が行なわれるとともに、同じイタリアメーカーであるフェラーリ、ランボルギーニ、ドゥカティ、ピナレロ(Pinarello)の製品も展示されて150周年を祝った。

イタリア大使館のエントランス
ピレリ150周年を祝して各イタリアメーカーのモデルが並べられた
アイス・ゼロ・アシンメトリコ

 今回発表されたアイス・ゼロ・アシンメトリコは日本の冬に向けて開発された新しいスタッドレスタイヤ。コンパクトカー、中・大型セダン、ミニバン、SUVなど多様なモデルに適合するサイズを用意し、降雪地域在住のユーザーはもとより都市部に住みながらウインタースポーツを楽しむために降雪地域へドライブするユーザーもターゲットにしているという。メインターゲットは日本になるが、一部サイズは中国やカナダなどでも販売される。生産は中国で行なわれるが、生産・輸送ともにロシアによるウクライナ侵攻の影響はないとのこと。

 アイス・ゼロ・アシンメトリコでは、最新技術の採用によって氷雪路面での高いブレーキング性能、凍った路面での優れたトラクション性能、雪上での優れたハンドリング性能、ドライ路面での快適な乗り心地と高い静粛性を特徴とする。

 具体的には従来の3Dサイプをさらに進化させ、トレッドブロックの剛性を向上させた新3Dサイプと通常の2Dサイプを組み合わせたハイブリッドトレッドブロックを用い、優れたアイスブレーキ性能を実現。また、スクエアブロックとダブルサイド・トゥ・サイドグループによるユニークな非対称トレッドパターンにより、氷雪路やウェット路面など幅広い路面状況に対応するという。

アイス・ゼロ・アシンメトリコでは氷雪路面での高いブレーキング性能、凍った路面での優れたトラクション性能、雪上での優れたハンドリング性能、ドライ路面での快適な乗り心地と高い静粛性を特徴とした

アイス性能でトップレンジのタイヤ

在日イタリア大使館 経済商務部長のステファノ・ストゥッチ氏

 発表会ではまず、在日イタリア大使館 経済商務部長のステファノ・ストゥッチ氏が登壇してピレリ150周年に対しての祝いの言葉を述べるとともに、「個人的な意見ですが、イタリアはもはやファッションとフードの国ではありません。ちょっと前までフットボールも数に入れていましたが、今はちょっとまずいかもしれません(笑)。イタリアは“3F”の国ではなく技術と研究とイノベーションの国です。それを裏付けるのがピレリの存在で、ジョバンニ・バティスタ・ピレリ(ピレリ創業者)は1872年に会社を設立したとき、おそらく150年後、今のように先端技術を駆使する世界的に有数の会社になると思っていなかったでしょう。イタリアの誇りだと私は確信しています」とコメント。

 また、「イノベーションの追求と市場の要求を満たすというピレリの哲学は、本日発表するアイス・ゼロ・アシンメトリコに反映しています。タイヤに美しさを見いだせると思っていなかったですが、イタリアの製品はどこかに美しさが見いだせるのではないかと思います。アイス・ゼロ・アシンメトリコは日本でのニーズを検討しながらデザインされ、日本の冬の時期に最良のパフォーマンスを発揮します。クルマ、バイク、自転車メーカーとの確固たるパートナーシップのおかげで、このタイヤはテーラーメイドといえる優れた製品です。イタリア政府を代表し、ピレリのような国民として誇りに思っている会社を促進するというのは私たちの義務だと思っています」とアイス・ゼロ・アシンメトリコについてアピールした。

ピレリジャパン株式会社 代表取締役社長のフィリッポ・シブラリオ氏

 一方、ピレリジャパン 代表取締役社長のフィリッポ・シブラリオ氏は、ピレリが日本で40年以上にわたって事業を展開しており、同社にとって重要な市場であること、そのため優れた製品を展開することが必要だと説くとともに、「日本ではプレミアムタイヤのニーズが高まっており、われわれは最新の技術に基づき日本の冬特有の厳しい条件を考慮して開発された新しいウインタータイヤを設計しました。このウインター商品は氷上および雪上での高いブレーキ性能を持ちます」と製品の特徴について語った。

ピレリジャパン株式会社 プロダクトマネージャーの永嶋映氏

 アイス・ゼロ・アシンメトリコの具体的な概要については、プロダクトマネージャーの永嶋映氏が解説。永嶋氏は製品名について、これまでの同社のスタッドレスタイヤに使われてきたアイス・アシンメトリコを軸に、ハイパフォーマンスタイヤである「P ZERO」を掛け合わせたものであるとし、「アイス性能でトップレンジのタイヤ」と紹介。

 永嶋氏によると、ピレリは20年にわたって日本市場向けのスタッドレスタイヤを開発してきたといい、モデルチェンジごとに前作を上まわる性能を実現してきたことによって日本でも高い評価を得ていると報告。

 そして日本については、国土の約60%が積雪地・寒冷地であること、その約60%の国土に日本の約20%の人口が住んでいること、そして日本の積雪地・寒冷地の多くが世界の都市(オスロ、マンチェスター、ニューヨークなど)よりも累積降雪量が多い特殊な環境であるという。

 また、これまでユーザーは「スタッドレスタイヤ」「サマータイヤ」の2種類の選択肢しかなかったところ、近年は「オールシーズンタイヤ」が登場し、用途や環境に合わせて3種類のタイヤから選べるようになり、これによってトータルバランスに優れたタイヤはオールシーズンタイヤに任せ、スタッドレスタイヤは日本の消費者ニーズのもっとも高いアイス性能に注力することが可能になった。

 これらを前提に、アイス・ゼロ・アシンメトリコの開発の方向性は「アイスとスノーの性能におけるブレイクスルーと、それらを極限まで引き上げる」「既存製品で良好な、その他の性能は維持」「冬を知り尽くしたピレリの最新技術と手法で業界ナンバー1の性能を目指す」の3点に定められた。

ピレリのスタッドレスタイヤの歴史。日本の使用環境に合わせて常に改善を行なっているという
日本の国土の約60%が積雪地・寒冷地
その約60%の国土に日本の約20%の人口が住んでいる
近年は用途や環境に合わせて「スタッドレスタイヤ」「サマータイヤ」「オールシーズンタイヤ」からタイヤをチョイスできる
スタッドレスタイヤに求められる性能ランキングトップは「アイス性能」
アイス・ゼロ・アシンメトリコの開発の方向性

 本国チームとともに開発が進められたアイス・ゼロ・アシンメトリコでは、トレッドのデザインを一新するとともに、溝の面積を減らして接地部分を大きく増やすことによってアイス性能を向上。また、新3Dサイプを採用しつつ、2Dサイプを3Dサイプ間にレイアウトすることで接地面圧の向上とトレッド剛性を増加させ、結果として氷上でのブレーキング性能の向上およびドライ路面でのハンドリング性能に成功した。アイス・ゼロ・アシンメトリコにおいて、2Dサイプも混ぜ合わせた新3Dサイプがもっとも重要なテクノロジーになるという。

 さらに「ダブル・サイド・トゥ・サイド・グルーブ」と呼ばれるジグザクのグルーブを2本レイアウトし、これによってトレッドの接地圧が均等化され、スノー&ウェット性能を向上。また、スクエア形状のブロックをレイアウトし、ショルダー部の最適化との相乗効果による効果的な接地面を実現することでアイス性能を高めたという。加えて低温時でもタイヤがしっかり働く新コンパウンドも採用し、寿命末期まで性能が維持することをアピールした。

 これらの技術により、アイス・ゼロ・アシンメトリコは従来の「ICE ASIMMETRICO PLUS」から氷上ブレーキ性能を5%、氷上発進性能を12%それぞれ向上させることに成功しており、この結果をもって永嶋氏は「われわれ開発陣としても日本の皆さまにご満足いただけるアイス性能になったのではないかと考えている」とアピールした。

アイス・ゼロ・アシンメトリコのキーテクノロジー
2Dサイプも混ぜ合わせた新3Dサイプがもっとも重要なテクノロジーという
従来モデルとの性能比較イメージ
発売予定サイズレンジとターゲット