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4Dイメージングレーダーのバヤー、日本市場における事業戦略を発表
2022年6月16日 07:05
- 2022年6月15日 実施
Vayyar Imaging Japan(バヤーイメージングジャパン)は6月15日、事業戦略説明会を開催し、日本法人の代表に就任した田口倫彰氏が説明を行なった。自動運転を視野に入れた4Dレーダーを手掛け、日本での展開を本格的に開始し、自動車の分野では車室内モニター、車外センサーなどを展開する。
主な事業は高齢者介護と自動車で、2~3年後には自動車向けが主力に
バヤーは2011年にイスラエルのイェハッドにて設立されたイメージレーダーの会社。日本法人としてVayyar Imaging Japan合同会社を2022年1月に設立し、今回登壇した田口倫彰氏は4月に日本代表として就任した。
バヤーは乳がんを早期に発見し、女性の命を救いたいという考えからスタート。乳がんでは、非接触、短時間、無痛で見つけることを目標にしていた。「バヤー」という言葉は現地イスラエルの言葉で「見える、見る」という意味だという。
バヤーが言う「4D」は物体だけでなく時間の変異も計測することを意味し、半導体製品だけでなく、すぐに使用できるアンテナを含むハードウェアの基板や、データ処理のアルゴリズムを含むソフトウェアも提供する。
現在は主に高齢者介護と自動車という2つのマーケットに注力。高齢者介護では、イメージングレーダーを使うことで物体を検知し、動きまで把握することで室内での転倒を検知するなどの効果がある。レーダーはカメラと違ってプライバシーを守りながら、一般的なレーダーよりも高感度で物体を認識することができるという。
自動車では、車室内モニターソリューションとしてイメージングレーダーを使い、車室内のモニターは1つのセンサーで足下を含めて最大3列8席の乗員識別が可能。グローバルで問題解決に向けて動いている車内への幼児への置き去りの検知を可能にし、乗員の状態やシートベルト付け忘れの検知などを可能にする。
センサーは物体を高精度で検知できるため、室内にいる人間の位置や呼吸状態まで識別できる。そのため、シートベルトを付けたかどうかの判断だけでなく、シート上にいるのは人間なのか荷物なのかも判断でき、的確なシートベルトの付け忘れの警告ができる。
さらに、人間の体格なども検知し、事故の際のエアバック展開制御を最適化するといった応用も可能となる。その結果、自動車の安全のテストである「ユーロNCAP」では7.5ポイントのアップが可能になるという。
同時に、車室内の多数のセンサーをレーダー技術で簡素化し、電力消費やコストの削減に貢献するとしている。
車外センサーでは300m先までの長距離から短距離まで対応可能。駐車、ブラインドスポットモニター、緊急ブレーキ、衝突警告などに対応し、ユーロNCAPでは33ポイントの改善につなげられるとしている。
車外センサーの提供形式としては基板サイズが60~80mm角の中に最大72個のアンテナを入れ、AEC-Q100認定、ASIL-B準拠などの基準に合致している。
日本にオフィスを構えることが出発点
日本代表に就任した田口倫彰氏は、日本テキサス・インスツルメンツの社長などを歴任した人物。入社したきっかけは「技術で見えないものを見ることができたら、世の中を変えることができる」というバヤーの方針に賛同したため。
バヤーの日本での活動は日本法人を設立したことが出発点だとし、ビジネスの進め方は「これまでの半導体のビジネスのやり方は、半導体メーカーと1次サプライヤーで話を多くするのが通例。バヤーが取り組むのは直接、OEM(自動車メーカー)と話をすること。クルマの安全に関わる最先端の技術には、実はOEMも興味を持って聞いていただける。OEMから信頼を勝ち取っていきたい」と語った。
また、日本法人のスタッフは最初は営業担当者から採用したが、アプリケーションエンジニアの採用や、今後は量産に向けて品質関係のスタッフも充実させるという。
なお、日本法人の売上は高齢者介護の分野では今年後半から売上を見込んでいるが、自動車用のセンサーでは実際に採用されるまで時間がかかり、2024年度ごろから売上を見込んでいる。また、バヤーの事業規模では、現在、高齢者介護の分野が大半を占めているが、2~3年後には比率が逆転、自動車向けのセンサーが上回る予想で、日本でも同様の展開をする見込みだという。