ニュース
VICS、トヨタ・日産・ホンダ・パイオニアのプローブ情報活用サービスの実証実験を全国拡大
2022年7月4日 17:38
- 2022年7月4日 開催
競争から協調へ、ビッグデータを活用
道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)は7月4日、さらなる渋滞緩和を目指し「いよいよ全国へ拡大! カーナビへのプローブ情報活用サービスの実証実験」と題した記者発表会を実施した。
今回、VICSセンターは日本道路交通情報センター(JARTIC)と共同で、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業の自動車メーカー3社とカーナビメーカーのパイオニアが持つプローブ情報を統合して、VICS情報としてカーナビに活用する「カーナビへのプローブ情報活用サービスの実証実験」を2022年7月4日より全国に拡大する。
記者発表会に登壇した道路交通情報通信システムセンター 常務理事の本郷俊昭氏は、これまでの活動内容や今回のエリア拡大までの経緯などを説明した。
VICSセンターは1995年に設立され、渋滞をはじめとする交通社会の課題解決を目指し、技術やサービスの改善を続けている組織。全国の都道府県警察や高速道路などの道路管理者から、日本道路交通情報センター(JARTIC)を経由して得られる「渋滞」「混雑」「順調」などの渋滞情報や、「速度規制」や「通行止め」などの交通規制情報をもとに、FM多重放送を利用してVICSを搭載しているカーナビに無償で届け、最適なルートを案内するなど常にドライバーをサポートしている。
情報は24時間365日提供されていて、カーナビでのルート案内や渋滞回避だけでなく、「大津波」などの特別警報や「ゲリラ豪雨」といった大雨エリア情報を提供することで、ドライバーの危険回避や災害対策にも貢献している。きっと今乗っているクルマのナビ画面に「VICS」という文字と最後に受信した時間が表示されているのを見たことがあると思う。
本郷氏によると、渋滞による経済損失は年間12兆円に上るほか、1人が100時間クルマに乗っていると仮定した場合、約40時間も渋滞に巻き込まれているという。また、走行速度が20km/hから60km/hに向上すれば、燃費が改善され、その結果CO2排出量が約40%低減するというデータもあるなど、渋滞緩和は日本経済にとっても個人にとっても、地球環境にとっても大きな損失を与えている社会問題であると提言する。
今回の発表は「プローブ情報活用した実証実験が全国に拡大される」のが大きなトピック。このプローブ情報とは、実際に自動車が走行した位置や車速などのデータのことで、VICSセンターはすでに2015年に東京都内のみだが、約1万台のタクシーのプローブ情報の活用をスタートさせている。また、各自動車メーカーも開発のために車両データを回収しているが、そこは次期車両のサービスや付加価値につながるため、外部に提供されることはなかった。
しかし2020年4月に、JARTIC、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業とパイオニアの協力が得られ、従来VICSセンターが提供してきた「道路に設置された感知器からの情報」に加え、トヨタ、日産、ホンダ、パイオニアが収集している「道路を走っている乗用車の情報」から生成したデータで補完・補強が実現。これにより感知器のない道路の交通情報も提供可能になり、技術的課題などを検証するために関東1都6県で実証実験が行なわれてきた。そして2022年1月から札幌エリア、愛知県、大阪府を追加、そして今回、全国に実証実験エリアが拡大されたという流れだ。
これまでの実証実験の対象地域では、プローブ情報の活用により「ルートの最適化」や「到着予想時刻のズレ改善」などの効果が確認されていて、全国エリアへ拡大することで、平均で従来比約2倍の道路の交通情報を提供することが可能となり、これまで提供されなかった道路の交通情報を利用することで、カーナビでのルート計算や到着予想時刻がより的確になることが期待されるとしている。
本郷氏にVICSの強みを聞くと「これまでエリア限定で実証実験を積み重ねてきましたが、今回のエリア拡大によって、さらなる渋滞緩和が期待できるほか、今後は他の自動車メーカーやカーナビメーカーの協力にも期待したい。VICSの強みはリアルに動いている乗用車のプローブ情報を活用できるだけでなく、気象や災害情報も反映できる点が強みです。今後もさらに精度と信頼度を高めていき、交通社会問題の解決に役立てていきたいですね」と語ってくれた。