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SUPER GT第4戦富士定例会見、「だろう運転による追突はしないプロの運転を」と坂東代表 クリーンな450kmレースを期待

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT第4戦富士が富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。8月7日には決勝レースが行なわれているが、決勝レースに先立ち、SUPER GTのプロモーターであるGTA(GTアソシエイション)の定例会見が実施された。定例会見では、GTA代表取締役 坂東正明氏によるSUPER GTの各種取り組みに対する説明が行なわれた。

 坂東代表は、カーボンニュートラルフューエル(以下、CNF)のテストを8月の鈴鹿戦から、11月のもてぎ戦後に変更することを明らかにしたほか、現在富士で行なわれている450kmレースに向け、ドライバーに「だろう運転による追突はしないでプロの運転を披露してほしい」と述べ、激しいバトルには期待するが、プロとしての高い技量を見せるバトルをとの期待を表明した。

CNFの実走テストは8月末の鈴鹿戦後から、11月のもてぎ戦後へと変更

──それでは冒頭に坂東代表よりあいさつを。

坂東代表:今回のレースは好天に恵まれて、素晴らしい環境での開催になっておりいいレースを期待している。東京都ではコロナの陽性者が3万人を超える日が続くような中ではあるが、我々のレースは演者とお客さまへの導線の引き方を注意して開催している。これだけ温度が上がってくると(正午の時点で29℃)熱中症対策もしっかりしないといけないので、チーム全体で検査の結果などで確認ができているなら、ピットの中ではマスクをとってもいい。それに対してチームの関係者ではない人と話すときなどにはマスクをしてほしいという指示を出している。

 そうした状況の中ではあるが、来ていただいたお客さまによいレースを見せたいと思っている。

──レース距離に関して質問したい。今回のレース(第4戦)も次の第5戦も450kmのレースになっている。以前の坂東代表からのコメントでレースの長距離化を図りたいということもあったが、来年に向けての構想は?

坂東代表:距離に関しては、カーボンニュートラルの実現に資するモノというのが基本的な方向性だ。タイヤ屋さんにはグリップを伸ばす方向ではなく距離を伸ばすタイヤ作りをお願いしており、エンジン屋さんには耐久性を伸ばす方向をお願いしており、今年は450kmで3つのレースをやることにした。

 来季に関してはタイヤの持ち込み本数を減らしていくし、カーボンニュートラルフューエルを導入していくという方向性を模索しており、次戦鈴鹿の450kmレースが終わった段階でタイヤメーカーとは詳細な話をする予定だ。グリップではなく長く使えるタイヤを作ってもらい、かつ持ち込み本数を減らすというのが今考えている方向性で、それをベースに話をしていきたい。

──450kmよりも長い距離のレースも考えているか? 例えば以前のような1000kmとか?

坂東代表:お客さまが面白いと言っていただけるのであれば検討していきたい。ただ、コストの問題もあるので、そこはきちっとメリットを見いださないといけないとは思っている。そういうことにきちんと結論が出ればあり得る話だと思う。

──カーボンニュートラルフューエル、今シーズンからテスト行なうという話だが、その進捗状況を教えてほしい。

坂東代表:ベンチテストに関してはトヨタ、日産、ホンダさんでやっていただいており、鈴鹿のテストではGT300にも入れて走らせている。また、JRP(日本レースプロモーション、スーパーフォーミュラのプロモーター)にも同じ燃料を入れてテストしてもらっており、そのデータの提供を受けている(JRPはGTA提供のCNFだけでなく、各種CNFをテストしている、その中の1つとしてGTA提供のCNFがテストされた)。

 テストの結果では出力的に2%(出力が)落ちるか落ちないかというレベルになっている。より燃料を多く噴くか、それとも全体が落ちるのならそれでいいとするかは考え方次第。エタノール5%ぐらいの状態で、燃料とオイルが混じるという状態(オイル浸食)が起きて燃圧が下がる。そのため暖気をしながらやっていく必要がある。そういう使い方の話をチームとしている

 GT3に関してはヨーロッパに送ってテストをしてもらっている状況。サプライヤーとしてはなるべく価格が上がらないような形で契約したいと考えている。

 本来は8月の鈴鹿のレース終わりの火曜日にテストを行なう予定にしていた。しかし、ウクライナ紛争の影響などもあり、船便で送られている燃料は、テスト前日に神戸の税関に入るという状況になってしまい8月末のテストは難しいと判断してキャンセルした。鈴鹿サーキットには無理言って埋まっているスケジュールを空けてもらって入れたのに、それを中止することになってしまい申し訳ないと思っている(坂東代表によれば鈴鹿サーキットからはキャンセル料の請求書が届いているそうだ……)。その代わりはモビリティリゾートもてぎの最終戦の後に行ないたいと考えている。

 (エンジンシールなどに利用されている)ゴムや燃料タンクの漏れなどもチェックしているが、燃料自体をJIS規格に落とし込みをしているので、数字だけを見るのであればなんとかなるかなと感じている。このCNFは化石燃料を一切使わないが、CO2は出るので、カーボンニュートラルの実現に向けた最初の一歩としてまず使ってみようというのが考え方だ。

 今年のレースと同じ総走行距離だと30万kLになっており、岡山の合同テストに向けてまずそれを使ってみて、さまざまな取り組みを行なっていく。最終的には国産でやりたいと思っているのが、そこに向けてはさまざまなハードルがあるので、ステップバイステップで取り組んでいきたい。

「だろう運転で追突はだめだ」と坂東代表、警察車両によるパレードラップも復活するレースでクリーンなバトルに期待

コロナ前における現地観戦で人気コンテンツだったサーキット・サファリが復活

──スーパー耐久で使っているバイオ燃料(バイオディーゼル燃料)はリッター1万円という話もあるが、SUPER GTのCNFはおいくらぐらいになるのだろうか?

坂東代表:リッター1万円という価格で買っていただけるなら、我々から提供したいぐらいだ(笑)。我々が想定しているのは、リッターあたり1000円前後で、それにスポンサーをつけてもう少し下げる形にしていきたい。我々のこのCNFに対する考え方は、自動車産業を支えるモータースポーツ業界が、カーボンニュートラルの先駆者としてやろうとしている、ということだ。トヨタ、日産、ホンダの3大マニファクチャラーにそれぞれ10%ずつ、オーガナイザーが10%、タイヤメーカーが10%、GTAが10%をそれぞれ負担し、残りの40%をチームがと考えている。そこに、CNFを提供するハルターマンのステッカーを貼ることで、供給価格を下げてもらう、そうしたことも検討していきたい。

 その結果現状の無鉛ハイオクが200円/リッター強といったところなので、チームの負担は400円程度ということになるだろう。大事なことはそうした取り組みは業界をあげてやっていくということにある。みんながてんでバラバラに動いても意味はない。

 なお、MFJ(2輪の統括団体)にも渡しており、オートバイメーカーでもベンチテストをしている。そのように取り組んでいくことで、みんなでコストを下げ、最終的には国産化を目指していきたい。

──コロナの亜種が増えてきていることが注目されている、今後対策の緩和などに関してGTAはどういう方針か?

坂東代表:われわれは今まで自分たちで考えてやってきた。対策は間違っていなかったという自負がある。今野球や相撲などでも演者が陽性になり興業ができなくなるということが話題になっている。我々はそうしたことが起きても、その演者さんにはご遠慮いただくという形で興業を成り立たせてきた。それぞれのチームが、もしチーム全体がそうなってしまったときには、チーム自体が撤退してもらうという覚悟をもって取り組んでもらっている。そうなればチーム側はポイントも、スポンサーからの費用もいただけないことになり大きな痛手になる。そのため、演者との導線の考え方、濃厚接触のチェックなどをチームには取り組んでもらっており、これからもそれを続けていく。

 もちろん国の方でそういう取り組みは必要ないということになれば、見直すことはあると思うが、SUPER GTのような巨大イベントは今後行なわれるWEC、そしてF1日本GPなどの1つの基準になっていくと考えており、おろそかにできることではない。

 昨日JAFとも話をして、今後JAF側でもそうした感染症対策へのガイドラインを出してほしいとお願いした。各カテゴリーがバラバラにやるよりは、みなで同じ方向を向いた方がいいと思うからだ。その上でより多くのお客さまをお呼びすることができるような状況になればいいと思っている。もう少しみなで我慢してやっていきたい。

──昨日はサーキット・サファリがコロナ禍になってから初めて復活し、お客さまが喜んでいた。GTAとしては今後も徐々に解除していく、そうした方針であると考えてよいか?

坂東代表:もちろん何も制限もなく、コロナ禍前のような取り組みも行なえるようになるのが望ましいのは言うまでもない。GTAとしてはお客さまによろこんでいただける取り組みは可能な範囲でできるだけ行なっていきたい。今回のレースではもう1つの取り組みとして、白バイ隊とパトカーにも来ていただき、パレードラップで走っていただく。

──最後に代表よりコメントを

坂東代表:今回の450kmレースは仕切り直しのレースだと考えている。FCYなどさまざまな状況があるが、後ろからの追突だけは絶対にダメだと思っている。プロのレースをお客さまにお見せしないといけない、

 その中で「こうなるだろう」という運転はダメだ。そうならないように、各ドライバーにはプロのレースを見せてほしいと思う。

パレードラップを先導する静岡県警の白バイ隊
静岡県警のパトカーも参加、白バイ隊に続く