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トヨタ 前田昌彦CTO、バッテリEV「bz4X」とスバル「ソルテラ」のハブボルトリコールについて語る

bz4Xのボルト締結構造と原因

bz4Xのハブボルト対策

 トヨタ自動車は10月6日、バッテリEVである「bz4X」と同社が生産するスバル「ソルテラ」のハブボルトに関するリコールを国土交通省に届け出るとともに対策を発表した。

 両車のハブボルトに関しては、6月23日にボルトが緩む問題によるリコールを同じく国交省に届け出。このリコールによる事故は起きていないが、生産を停止するとともに、販売なども休止していた。

 トヨタ自動車 取締役・執行役員 副社長であり技術のトップである前田昌彦CTO(Chief Technology Officer)は、このリコールに対する対策内容が国交省に受理された後、オンラインでリコール内容について語った。

 今回の問題は、「ディスクホイール取付部において、ホイールの加工およびハブボルトの仕様が不適切なため、ハブボルトの締結力が車両の走行性能に対して不足し、連続した急加速や急制動の繰返し等で、当該ボルトが緩むことがある。そのため、そのままの状態で走行を続けると、異音が発生し、最悪の場合、タイヤが脱落するおそれがある」と届けられている。

 具体的には、ブレーキローターの取り付け面と、ホイールの取り付け面をハブボルトによって締め付けているが、一部仕向地のホイール取り付け面の製造品質のブレによって、ハブボルトが緩んでしまう場合があるという。

 そのため、対策はハブボルトをワッシャー形状一体型から、ハブボルトとワッシャーをそれぞれ別部品とし、さらにOリング状のゴムを挟み込んでいるとのこと。同時にディスクホイールを全車両良品に交換。ハブボルト、ディスクホイールの両面から対策を施す。

 前田CTOは、このようなハブボルトの緩みが起きた原因について、ディスクホイールの製造品質のブレが想定よりも広かったことを挙げる。工業製品である限り、ある程度の品質揺らぎは製造上の理由で仕方がないが、設計想定値の範囲外のホイールが存在したこと。「ホイール側の面性状が規定どおりにできていないくて、滑りやすい状態にあった」(前田CTO)とし、規定トルクでハブボルトを締めたとしても、使われ方によって緩んでくる場合があるという。

 ホイール側の面性状として、加工の荒さがあったといい、適正に出ていなかった(適正に面が加工されていなかった)ため、「ホイールの加工方法を、適正な図面値が出るように見直した」(前田CTO)と説明した。

 6月に問題を把握しながら、原因の究明や対策の発表に10月上旬まで時間がかかったことについては、「なぜこれだけの時間がかかったのかということですけれども、設計仕様が大丈夫なのかという話と、製品品質が狙いどおり、製品品質どおりになっているのかということ、それから、推定されている原因に対して、評価で十部確認が取れるのか?ということ、最終的には量産のものをきちっと作って確認を取る必要があるということ」があるという。

 とくに評価については、曲がる、止まる、走るといういろいろな負荷のかかり方や力のかかり方に対して、さまざまな条件を設定して、「本当に大丈夫なのか?」という確認を取るのに正直時間がかかったとのことだ。

 一部仕向地については、「日本、北米、アジア、そしてちょっと細かいですがイスラエル」(前田CTO)。日本はリコールで発表されているとおり、全車両交換対象になる。

 このリコールの届け出・受理により、トヨタ自動車はトヨタ「bz4X」とスバル「ソルテラ」の対策品での生産を再開。リコールを進めるとともに、受注している顧客へ、対策品を装着した生産車を届けていく。KINTOでの受注再開は10月26日、そのほかの地域での販売については順次再開していくという。

 質問として多く出ていたのは、「電気自動車だからではないのか?」「モーターのトルクが大きいからではないのか?」という点。この点に関して前田CTOは、「そういうことではない」と説明。想定トルクに対して、適切な締め付けができない状況のホイールが存在してしまったことになる。

 本来、ホイールを対策品にすればよいのだが、ハブボルトから見直した対策品にしたのは、従来よりも高い安全率を見ていると思われる。ワッシャー付き対策ハブボルトは繰り返し使用可能とのことだが、締めすぎ(トルクのかけすぎ)によるワッシャーの降伏点超えなどを考えると、夏タイヤ、冬タイヤ交換などはディーラーにお任せすべきところだろう。

 前田CTOは、リコールの対応を進めるとともに、「まずはお待たせして、ご迷惑をかけているお客さまにクルマをお届けすることが最優先」であるとした。

トヨタ bz4X