ニュース

タイのトヨタ有力ディラー「トヨタサラブリ」、新型車「IMV 0」でピックアップの売上は10%程度上がる

タイにおけるトヨタの有力ディーラーであるトヨタサラブリを率いるMs.Siriwan boonvisuit(シリワン・ブンウィスット)社長(左)

タイでトップシェアを持つトヨタ、原動力は新興国向けのIMV

 タイ王国のバンコクで行なわれたトヨタ・モーター・タイランドの60周年記念式典の翌日、バンコクから100km程度離れたサラブリー県のトヨタ有力ディーラー「トヨタサラブリ」を訪れる機会があった。

 タイの人口は6617万人(2021年、タイ内務省)。伸びゆくアジアを象徴するASEAN(東南アジア諸国連合)の主要国として知られ、日本の製造メーカーも数多く進出している。日本との結びつきも強く、2022年4月にはスパッタナポン副首相兼エネルギー大臣が来日。11月には西村経済産業大臣がタイに訪問し、スパッタナポン副首相とLNG分野への共同での投資や緊急時協力を盛り込んだ協力覚書(MOC)に署名するなど、経済的な交流も活発だ。

今回訪ねたトヨタサラブリのディーラー。バンコクから北に100km程度の場所にある

 そのタイで、トヨタは33%のトップシェアを得るなど、タイの多くの人から支持を得ている。もちろんトヨタはグローバルに高い支持を得ているため世界トップクラスの自動車会社となっているのだが、タイにおける支持の一つに、タイで生産を行なうピックアップトラックなどのIMV(Innovative International Multi-purpose Vehicle)がある。

 このIMVは、新興国における地産地消を目指した車両で、現地生産の調達率を高くするとともに、現地の環境に向いた車両を一つのプラットフォームで生産していくというもの。現在は、5タイプのシリーズがありIMV-IピックアップB-cab(シングルタイプ)、IMV-IIピックアップC-cab(エクストラキャブ)、IMV-IIIピックアップD-cab(ダブルキャブ)、IMV-IV SUVタイプ、IMV-V ミニバンとして、3085mmのロングホイールベース、2750mmのショートホイールベース、2つのホイールベースで展開されている。

 このIMVの中で、ユーティリティに優れるピックアップ型(IMV-I/II/III)は、タイではハイラックス・ヴィーゴとして販売され大人気となっている。このピックアップ型のIMVは、IMVのローンチモデルとして当時アジア本部本部長であった豊田章男氏が陣頭指揮を執って立ち上げたモデルになる。

トヨタサラブリの店頭に飾ってあったハイラックス・ヴィーゴ。シングルキャブのIMV-IB-cabになる
こちらも店頭に飾ってあった「フォーチュナー」。IMV-IV SUVタイプになる

ピックアップ型のハイラックス・ヴィーゴが人気のトヨタサラブリ

店内は広く、多くのクルマが展示されていた

 バンコクの北に位置するサラブリー県に5店舗を展開するトヨタサラブリにとっても、「ピックアップ型のハイラックス・ヴィーゴは人気だ」と、トヨタサラブリ社長 Ms.Siriwan boonvisuit(シリワン・ブンウィスット)氏はいう。トヨタサラブリは、2019年まで販売台数を伸ばしてきたが、2020年、2021年とコロナ禍によって販売が減少。2022年は回復期にあたる。その回復期においてハイラックス・ヴィーゴは、B-cab、C-cab、D-cab合わせて56%の割合に達する。PC(パッセンジャーカー)が28%なので、倍の人気があることになる。

 これはピックアップタイプであれば、サラブリー県に多い農業従事者にとって便利な使い方ができ、乗り合いバスにすることもできる。また、荒れた道も多く、4WDタイプも人気とのこと。

 さらにそもそもピックアップが人気のため、そのカスタマイズもトレンドとなっており、人気カスタマイズショップで仕上げる人もいるし、トヨタサラブリでもアルミホイールなどを積極的に販売。ユーザー志向に合わせた展開をしているほか、カスタマイズトレンドを紹介しているという。

トヨタサラブリの概略
販売状況。コロナ禍からの回復期
各タイプのシェア。ピックアップが人気
ユーティリティ性に優れるピックアップ
乗り合いバスに改造されたもの
4WDタイプが人気
ピックアップをローフロアにしたカスタマイズ車。シャコタン文化?
一方こちらは車高を上げたハイフロアのカスタマイズ車
ハイフロアのデコレーションタイプ。右下の白黒はパンダタイプと呼ばれる塗り分けで人気だという
4WDのユーセージ
トヨタサラブリとして取り組んでいるアルミホイールによるドレスアップ
有力カスタムショップとのパートナーシップを展開
試乗会なども積極的に展開
トヨタサラブリの顧客満足度はタイの平均を超える

 日本では法規の問題からアルミホイールはともかく、さまざまなカスタマイズトレンドをディーラーが積極的に紹介することはあまりない。逆に言うと、トヨタサラブリでは、ユーザーへの啓蒙活動を積極的に行なうことで需要も作り出していることになる。

トヨタサラブリのサービスカウンター。料金も明瞭で受け付けスタッフも多い。人気のディーラーであることが分かる
ピット数の多さも印象的。24ピットがあるとのこと
こちらは人気のBセグ車「ヤリス ATIV」
「ヤリス」の前には「KINTO」の文字が。タイでも新しい販売方法に取り組んでいる
大家族に人気の小型ミニバン「VELOZ(ヴェロッツ)」。3列シートの7人乗り
ヴェロッツの3列シートは正直狭いが、現地ニーズである大家族もしくは家族+お手伝いさんという需要を背景に作られている。製造はダイハツインドネシアで、インドネシアからの輸入車になる
C-cabのハイラックス
搭載エンジンはディーゼルで人気とのこと

有力ディーラーの期待を集める「IMV 0コンセプト」

タイトヨタ60周年式典で初公開された「IMV 0コンセプト」(左)

 そんな需要を背景に持つトヨタサラブリ社長 シリワン・ブンウィスット氏にとって、トヨタタイ60周年式典で発表された、IMVの原点に戻るという「IMV 0コンセプト」はどう映ったのだろう。その点をシリワン・ブンウィスット社長に聞いてみた。

 シリワン・ブンウィスット社長は、まずサイズ感がよいという。サラブリー県においては工事従事者が多く、ピックアップ型はそんな工事従事者にとっても人気が高いとのこと。「新しい小型のトラックであれば小さいに道に入ることができる」とし、狭く細い道を進む必要がある工事においても活用範囲が広がると見ている。

 発表された「IMV 0コンセプト」では、荷台まわりのカスタマイズ性の高さを強調していたが、基本的には歓迎しつつも「コンバージョンについては、カスタマイズするときにどうカスタマイズしていくのかという問題が残っている」という。自由度が高いだけに、販売していく方向性については悩んでいるようだ。

 そのためのマーケット調査をする計画があると述べ、「このプロジェクトは12月から調査していく。現場に行ってお客さまの声を聞いていく」と、サラブリー県でもユーザーニーズを確認していくようだ。

 そんな大きな手応えを感じているIMV 0だが、販売への期待はどのくらいあるのだろう。その点については、「このピックアップトラックによって10%くらい売上が伸びるのではないかと考えている」とのこと。「タイの人たちが小型のピックアップを買えるようになることで、豊田章男氏が言ったように『タイの人たちの第一のクルマになりたい』という希望に沿ったものになる」と語り、従来よりも小型のIMVが市場投入されることで新しい市場が掘り起こされ、売上についても好影響であると捉えている。

 いずれにしろIMV0が市場投入されるのは1年以上先になる。しかしながら、タイで人気のハイラックス・ヴィーゴより小型のピックアップ、さらにカスタマイズ性に優れた車種の登場は、有力ディーラーの期待を集めていることになる。