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航空機の技術をクルマへ、ジェンテックスが「CES2023」で電子サンバイザー出展
2023年1月10日 11:31
航空機の技術をクルマへと転用するジェンテックス
自動防眩ミラーなどで知られるジェンテックスは、1月5日~8日までアメリカ ネバダ州ラスベガスで開催された技術見本市「CES2023」において、新たな電子サンバイザー(Dimmable Sun Visor)の展示を行なった。この電子サンバイザーでは、ボーイング 787や最新のエアバスで採用されているジェンテックスの技術を利用、最新旅客機の採用技術をクルマに応用した製品となる。
よく知られているように、ボーイングの最新世代旅客機となるボーイング 787では、窓のシェードを電気的に暗く(光の透過率を下げる)することができる。ボーイング 787は、ANA(全日本空輸)がローンチカスタマーとなり、JALとともに国内線・国際線で導入されていることから、すでに利用したことのある人も多いだろう。
この電子シェードは自動防眩ミラーなどで知られるジェンテックスの製品になる。担当者によるとすでにエアバスの最新旅客機への採用も決まり、ボーイングでは最新・最大の777Xへも採用されるとのことだ。
この電子シェード、旅客機のボーイング 787では窓枠下にある上下のボタンを押すことで電気信号を送り、明るさを制御していた。クルマに応用された、電子サンバイザーでは、透過率を電気的にコントロールできることからソフトウェアスライダーがIVI(In-Vehicle Infotainment)の部分に組み込まれていた。
電子サンバイザーの外観は、従来のサンバイザーが透明な板になったようなもので、取り付け方法なども従来のサンバイザーと変わらない。サンバイザーを下ろすと透明なサンバイザーが現われ航空機のHUD(Head Up Display)のようにも見える。
IVIのソフトウェアスライダーをスライドさせると、透明な電子サンバイザーが徐々に暗くなってくる。しばらくするとほとんど光を透過しなくなり、しっかりしたサンバイザー機能を発揮する。航空機であるボーイング 787の電子シェードと同じ技術を使っており、遮光率も同等のものという。
ジェンテックス・ジャパン 西嶋一彦マネージングディレクターによると、フェイルセーフの思想はきちんと入っており、万が一のときは透明に戻るという。また、同様の技術を前回のCESにおいてフロントウインドウに組み込んだものを展示したが、自動車メーカーへのインパクトがもうひとつだったものの、このサンバイザータイプは高い興味を持ってもらえているとのこと。すでに商談が開始されているようで、数年後には市販車への搭載も見られそうだ。
実際、電子サンバイザーの製品を見てみると、透明なものが徐々に黒く(濃紺に)変わっていくのは目新しい。さらに遮光率も自由に変更できるので、それほど日差しが強くないときは薄く遮光できるなどARグラスのような未来感がある。サンバイザータイプであるので、前方からの遮光のほか、90度動かせば側方からの遮光にも対応する。ものとしての魅力や使い勝手に優れた製品になっていた。さらに最新旅客機と同様の技術が使われているのは、製品としてのイメージもよいのは間違いないだろう。
電子サンバイザーに加え、電子サンルーフもデモ
同じデモ車ではサンルーフも同様の技術で電子遮光化されていた。ジェンテックスの提案としては、サンルーフガラスを4分割で電子遮光。好きな位置を、好きな割合で遮光できる。後方だけであるとか、助手席だけであるとか、すべてIVIのソフトウェアスイッチで制御できていた。
こちらも未来感たっぷりのアイテムで、非常に魅力的。ソフトウェアで制御できるため、車室内の温度センサーと組み合わせての自動化にも向くだろう。西嶋氏によると、機械的な部分がないのでコスト的にも従来のサンルーフと勝負になるとのことだ。
さらにメリットとして西嶋氏が挙げるのが、ユニットとしての厚みが通常のサンルーフユニットより薄いこと。近年のEVではバッテリを床下に配置するため、床下部分に厚みが必要でフロア高が上がってきている。それが室内高に影響するため、薄いサンルーフユニットに需要があるという。電子サンバイザーとともに、電子サンルーフはプレミアムカーから投入されていくのかもしれない。