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ジェンテックス、ドライバー&キャビンモニタリングシステムや車内でセルフィーし放題になるFDMなどを展示

LVCCの西館に設置されていたジェンテックスのブース

 バックミラーや電子機器などの部品を自動車メーカーに供給しているジェンテックス(Gentex)は、1月3日~1月7日にかけて米国ネバダ州ラスベガス市で開催されたCES 2022に出展し、同社の最新製品を展示した。

 今回ジェンテックスが展示したのは「ドライバー&キャビンモニタリングシステム」と呼ばれる、ドライバーや車室をモニタリングするシステム。ドライバーモニタリングはレベル2+以上の自動運転(ないしはADAS)に利用されるシステムで、自動運転時などにドライバーがいつでも運転を代われる状態にあるかどうかを監視し、システムによっては安全に運行できないと判断した場合には、安全に自動車を路側帯などに停車する仕組みになっている。

 キャビンモニタリングシステムは、例えばロボットタクシーのようにレベル5の自動運転車両などで、乗客の安全が確保されているかどうかをモニターし、乗用車でも後席にいる子供が安全かどうかなどをモニタリングするシステムとなる。

 また、ジェンテックスはFDM(フルディスプレーミラー)と呼ばれるバックミラー一体型のモニターソリューションを展示した。日本でも流行の兆しを見せているFDM一体型のドライブレコーダーや、バックミラーにつけられたカメラによるセルフィー機能などが紹介された。

より高度な自動運転の実現に備えて注目が集まるドライバーモニタリング、同時にキャビンもモニター可能なシステム

ジェンテックスの「ドライバー&キャビンモニタリングシステム」

 CESのジェンテックスブースでは、同社がOEM供給しているパーツを利用した車両が展示されていたほか、同社が「ドライバー&キャビンモニタリングシステム」と呼んでいるコンセプトモデルが展示された。

ドライバーやキャビンをモニタリングするセンサー、カメラで撮影した映像をAI推論で画像認識する

 ドライバー&キャビンモニタリングシステムとは、要するにドライバーと、乗客のそれぞれをモニタリングするシステム。特にドライバーモニタリングに関しては、注目が集まっており、レベル2+以上の自動運転システムを構築する上で重要なシステムになっている。というのも、例えばレベル4の自動運転では、制御が自動車側に渡され自動車が運転している場合でも、自動車のシステムがそれ以上運転を続けるのを難しいと判断した場合(例えばカメラに基づいた自動運転システムだが、霧が落ちてきて前が見えないなど)には自動車からドライバーへ制御権が引き渡される。例えばその時にドライバーがレベル4の自動運転だからと熟睡していた場合、いくら自動車が制御を渡すといってもドライバーが起きていなければ渡すことができない。そういう時に、車両はドライバーをモニターしておき、寝ているなどの反応がないことを認識して、制御権を渡せないと判断したら車両を自動で停止するなどの措置を取る。そうしたシステムを構築するために、ドライバーモニタリングは今後重要になると考えられており、各社とも開発に力を入れているところだ。

ドライバーモニタリングではドライバーの状態のほか、ドライバーが持っているものも判別できる。今はスマートフォンを持っていることを認識している
ポテトを食べていればポテトを判別

 今回ジェンテックスが展示したのも、そうしたドライバーモニタリングのシステムだが、同時にキャビンモニタリングの機能も兼ねている。ミラーの手前につけられたカメラで、ドライバーおよびパッセンジャーの動きを画像認識で捉え、検出した特徴点をコンピュータが追いかけることでドライバーの動きなどを判断する。例えば、ドライバーがずっと目を閉じていれば、目を閉じている時間を検出し、寝ているなどと判断する。また、物体認識も可能で、ドライバーが携帯電話を持っていれば、携帯電話を検出し、ポテトを食べていれば、ポテトを検出することも可能。

奥行きが分かる「深度センサー」も備えているので後席の子供の動きもチェックできる

 また、後席に子供がいる場合には、子供の動きなどをモニタリングすることができるので、例えば子供がチャイルドシートから降りてしまっているなどを検出すると、ドライバーに注意を促したりすることができるということだ。

バックミラーに取り付けられた一体型のカメラで簡単にセルフィーできるFDMなどが展示される

セルフィーカメラ内蔵のFDM。ミラーだけで車内にいる人のセルフィー(自撮り)が可能になる

 そのほか、ジェンテックスはFDM(フルディスプレーミラー)と呼ばれるバックミラー一体型のモニターソリューションなどを紹介した。FDMは何も映していないときには普通のバックミラーとして使えるが、モニターとしても使えるという2つの機能を持っていることが大きな特徴。日本でも最近流行の兆しを見せており、バックカメラの映像をバックミラーに映し出せる純正オプションや、最初から標準機能として新車に実装という例も増えている。また、アフターマーケットではバックミラーに後から装着する形の製品も出ているほか、最近ではドライブレコーダーが一体型になっているFDMも増加している。

一般的なバックカメラの映像を出力するFDM、最近では普及価格帯車両にもオプションとして用意されている

 今回ジェンテックスはドライブレコーダーと一体型のFDM、キャビンを映し出すカメラを用意することで、パッセンジャーが簡単にセルフィー(自撮り)できるようにしたセルフィーFDMなどを展示した。セルフィーFDMは、撮影した映像をスマホなどで確認が可能になっており、乗っている人が参加して簡単に自撮りしたいという特に東アジア(特に中国)のニーズに応えた製品だという。スマホのカメラで自撮りすればいいのではないかというツッコミはさておき、撮影だけはFDMだけでできるという手軽さが訴求ポイントになりそうだ。

セルフィーカムFDMで撮影した映像はスマホのアプリで確認できる

 このほかにも、車内の臭いを検出するソリューションの参考展示も行なわれていた。これは同社が買収したイスラエルの企業由来のユニークな製品で、臭いの元となる化学物質を検出して、現在キャビン内に異臭があるかを検出できるという。例えば、人間が乗らずに運行されているレベル5のロボタクシーで、ある乗客が持ち込んだ食事をひっくり返してしまったなどの事態が起きたときに、そのまま放置されて降りてしまったら、次の乗客がひどい目に遭うことになる。そうしたときにこうしたセンサーがあれば、清掃が必要だとロボタクシーが自分で判断し、メンテナンスへ行くなどの使い方が想定されるということだった。

買収したイスラエルスタートアップ企業が開発した臭いを検知するセンサー。さまざまな応用例が想定できる
光彩を利用したドライバー認証システム。今度はこうした生体認証がさまざま自動車にも採用されることになりそうだ