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その名は「Keisuke」、TRIが開発するAI自動運転ドリフトのスープラは700馬力チューニングエンジン搭載
2023年2月19日 09:55
トヨタ自動車の研究機関であるTRI(Toyota Research Institute、トヨタリサーチインスティチュート)は2月15日(現地時間)、研究成果を報告する「TRI Expo」を開催。かねてからTRIが開発してきた、AI自動運転でドリフトをするスープラを公開するとともに、その目的を説明した。
AIで自動運転ドリフト可能なこのスープラは、Human Interactive Driving部門で開発されている。Human Interactive Driving部門を率いるアヴィナッシュ・バランチャンドラン(Avinash Balachandran)ディレクターによると、ドリフトといったタイヤのグリップが失われているレベルまで自動運転領域を拡大することは、より安全なクルマの開発につながるという。
例として挙げていたのは、坂道を登り切った際に突然道路を塞ぐようにクルマがいた場合。これまでの自動運転ではタイヤのグリップがなくなるレベルでの急ハンドルができないが、TRIが開発しているAI自動運転では可能だという。このような卓越した運転能力をAIが身に着けることで、アクティブセーフティ力が向上することになる。
ちなみにこのAI自動運転スープラには、「Keisuke」という名前が付けられている。アヴィナッシュ氏の英語のプレゼンや説明の中に「Keisuke」「Keisuke」と日本人名らしきものが混じっており、聞き間違いかと思ったものの、プレゼン後に改めて確認してみたら「スープラの名前は『Keisuke』だよ」とのこと。
このKeisukeとは、マンガ「イニシャルD」の高橋啓介氏のこと。イニシャルDの中で華麗なるドリフトを披露しているほか、高橋涼介氏と兄弟であることが理由になっているという。「日本とアメリカで密接に開発していく意味を込めている」(アヴィナッシュ氏)と、兄弟キャラを選んだ理由を説明してくれた。さらに撮影のためにドアを開けたら、そこには「Takumi」のステッカーが。「どんだけ好きなの??」とある意味感動したしだいだ。
以降、AI自動運転ドリフト可能なスープラは文字的にも長いので、記事中ではKeisukeと記載させていただく。
人に寄り添う自動運転
このKeisukeのポイントは、一般的な自動運転と異なりドリフト領域といったタイヤのグリップ限界を超えたところでも自動運転制御を行なえていることになる。
アヴィナッシュ氏は、その開発領域を図示。縦軸にヨーレート(ラジアン)、横軸にサイドスリップ角(ラジアン)を取ったもので、一般的なABSがコントロールする領域が中央付近の平行四辺形のエリアに位置するのに対して、ドリフト領域は大きく外れた場所でのコントロールが要求される。AIにとっては、コントロールする面積が格段に広がることになり、より高度な開発が必要になってくる。
ただ、この領域のコンロールも手の内に入れることで、自動運転エリアの拡大を実施し、より安全な自動運転を実現していくことが可能になる。
実際、市販車ベースである号口レクサス車をベースにした自動運転車では、従来の自動運転ロジックでは避けることが不可能な状況においても、安全に走れることをテストしているという。ちなみにアヴィナッシュ氏にこのレクサス車の名前を聞いたところ、「Leia(レイア)」とのこと。スープラのKeisukeと同じく、レイアにもルークという兄弟がおり、兄弟・姉妹キャラクターの名前を付けることでTRIと日本のトヨタとの密接な開発関係を表わしているとのことだ。
ドリフト領域を研究しているのは安全に走るためであるが、アヴィナッシュ氏はその先の考え方にも言及。それがShaed Autonomyで、AI自動運転機能によって人間の運転をサポートしようというもの。その例としてドーナツターンを挙げ、人間がドーナツターンを行なおうとするときにAIがサポートしてターンを成功させてくれる。単に自動運転をするのではなく、ドライバーの意図を読み取って運転をサポートしてくれるのだ。
TRIの開発の方針として人に寄り添うAIがあり、このShaed Autonomyはそれを実現していくものになる。