ニュース

広島G7サミットの「G7広島首脳コミュニケ」全文掲載 エネルギー面で水素の利活用やルール作りについて言及

広島G7サミットで発出された「G7広島首脳コミュニケ」

 5月19日~21日にわたってG7広島サミットが開催された。このG7サミットでは、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランスの7か国に加えEUの首脳が参加し、さまざまな課題が話し合われた。最終日となる21日にはウクライナのゼレンスキー大統領が来日して対面参加し、大きな話題となった。

 G7広島サミットの初日となる5月19日には、「G7 Clean Energy Economy Action Plan(G7クリーン・エネルギー経済行動計画)」が発表され、2日目にはG7首脳によるG7広島首脳コミュニケを発出。ウクライナ問題や世界経済・金融・持続可能な開発についても共同で宣言されているほか、気候問題、エネルギー問題についても共同での宣言が記されている。

広島を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領(右)

 クリーン・エネルギー経済行動計画の上位文書にあたるため、同様の目標も多いが、エネルギー問題については水素に言及。「低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物」としているものの、水素の利活用や「炭素集約度に基づく取引可能性、透明性、信頼性及び持続可能性のための水素製造のGHG算定方法及び相互認証メカニズムを含む国際標準及び認証を開発する重要性を認識」と、ルール作りについても重要性が記録されている。

 合意事項が多岐にわたるため、以下にG7広島首脳コミュニケ(仮訳)を全文掲載する。

G7広島首脳コミュニケ(仮訳)

<前文>

1.我々G7首脳は、現在のグローバルな課題に対処し、より良い未来に向けた方針を定めるとの決意において、これまで以上に結束し、2023年5月19~21日に開催される年一回のサミットのため、広島で一堂に会した。我々の取組は、国際連合憲章の尊重及び国際的なパートナーシップに根ざしている。

我々は、次に掲げる具体的な措置を講じている。

・ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援する。
・全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界という究極の目標に向けて、軍縮・不拡散の取組を強化する。
・デカップリングではなく、多様化、パートナーシップの深化及びデリスキングに基づく経済的強靱性及び経済安全保障への我々のアプローチにおいて協調する。
・G7内及びその他の国々との協力を通じ、将来のクリーン・エネルギー経済への移行を推進する。
・今日及び将来に向けたニーズに対応するため、パートナー国と共に、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出する。
・「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を通じて質の高いインフラへの資金提供において最大6000億米ドルを動員するという我々の目標を実施する。

上記は、本コミュニケの参考文書に示されている。

 我々は、次のとおり協働し、また他の主体と共に取り組むことを決意している。

・自由で開かれたインド太平洋を支持し、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対する。
・強固で強靱な世界経済の回復を促進し、金融安定を維持し、雇用と持続可能な成長を促進する。
・貧困の削減並びに気候及び自然危機への取組は密接に関連を持っていることを認識し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速させる。
・国際開発金融機関(MDBs)改革を加速させる。
・アフリカ諸国とのパートナーシップを強化し、多国間フォーラムにおいてアフリカがより代表されるように支援する。
・我々のエネルギー部門の脱炭素化及び再生可能エネルギーの展開を加速させることで地球を保全し、プラスチック汚染をなくし海洋を保護する。
・「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)」、「気候クラブ」及び「森林・自然・気候の新カントリーパッケージ」を通じた協力を強化する。
・世界各地でのワクチン製造能力、パンデミック基金、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を通じて、国際保健に投資する。
・国際移住について協力し、人身取引及び密入国との闘いにおける我々共通の取組を強化する。
・我々が共有する民主的価値に沿った、信頼できる人工知能(AI)という共通のビジョンと目標を達成するために、包摂的なAIガバナンス及び相互運用性に関する国際的な議論を進める。

2.我々は、次のとおり国際的な原則及び共通の価値を擁護する。
・大小を問わず全ての国の利益のため、国連憲章を尊重しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化する。
・世界のいかなる場所においても、力又は威圧により、平穏に確立された領域の状況を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対し、武力の行使による領土の取得は禁止されていることを再確認する。
・普遍的人権、ジェンダー平等及び人間の尊厳を促進する。
・平和、安定及び繁栄を促進するための国連の役割を含む多国間主義及び国際協力の重要性を改めて表明する。
・ルールに基づく多角的貿易体制を強化し、デジタル技術の進化に歩調を合わせる。

3.我々は、誰一人取り残さず、人間中心で、包摂的で、強靱な世界を実現するために、我々の国際パートナーと協働していく。その精神から、我々は、豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、大韓民国、ベトナムの首脳の参加を歓迎した。

<ウクライナ>

4.我々は、国連憲章を含む国際法の深刻な違反を構成する、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を、改めて可能な限り最も強い言葉で非難する。ロシアによる残酷な侵略戦争は、国際社会の基本的な規範、規則及び原則に違反し、全世界に対する脅威である。我々は、包括的で、公正かつ永続的な平和をもたらすために必要とされる限りの我々の揺るぎないウクライナへの支持を再確認する。我々は、ウクライナに関するG7首脳声明を発出し、そこに示された明確な意図と具体的な行動により、ウクライナに対する我々の外交的、財政的、人道的及び軍事的支援を強化し、ロシア及びロシアによる戦争遂行を支援する者に対するコストを増大させ、世界の、とりわけ最も脆弱な人々に対する戦争の負の影響に対抗し続けることにコミットする。

<軍縮・不拡散>

5.我々は、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンと共に、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを採ることによる、核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを表明する。我々は、より安定し、より安全な世界を作るための軍縮・不拡散の取組の重要性を再確認する。核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎である。我々は、生物兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約の普遍化、効果的な履行、及び強化に引き続きコミットしている。我々は、急速な技術開発に対応した形で、軍事目的に使用され得る物質、技術及び研究に対する効果的かつ責任ある輸出管理を強化するためにとられた措置を歓迎するとともに、この点における多国間輸出管理レジームの中心的役割を認識する。

<インド太平洋>

6.我々は、自由で開かれたインド太平洋の重要性を改めて表明する。これは、包摂的で、繁栄し、安全で、法の支配に基づき、主権、領土の一体性、紛争の平和的解決を含む共有された原則、基本的自由及び人権を守るものである。この地域の重要性に鑑み、G7諸国及び我々のパートナーは、我々の関与を強化するために、それぞれのインド太平洋に係るイニシアティブを取っている。我々は、東南アジア諸国連合(ASEAN)及びその加盟国を含む地域のパートナーとの連携を強化するとの我々のコミットメントを強調する。我々は、ASEANの中心性・一体性に対する揺るぎない支持及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に沿った協力を促進するとの我々のコミットメントを再確認する。また、我々は、太平洋島嶼国とのパートナーシップを再確認し、太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」に従って、これらの国の優先事項及びニーズを支持する重要性を改めて表明する。我々は、自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献する民間企業、大学及びシンクタンクによる取組を歓迎し、更に奨励する。

<世界経済・金融・持続可能な開発>

7.世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争、関連するインフレ圧力などの複数のショックに対する強靱性を示した。しかしながら、我々は、世界経済の見通しについて不確実性が高まる中、引き続き警戒し、マクロ経済政策において機動的かつ柔軟である必要がある。強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長のために努力するに当たり、我々は、中期的な財政の持続可能性及び物価の安定を支援する、安定及び成長を志向するマクロ経済政策の組み合わせにコミットしている。インフレ率は引き続き高く、そして中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに引き続き強くコミットしている。一方、全体的な財政スタンスとしては、中期的な持続可能性を確保しつつ、財政政策は、引き続き、適切な場合には、生活費の上昇に苦しむ脆弱なグループに対して一時的なかつ的を絞った支援を提供し、グリーン及びデジタル・トランスフォーメーションに必要な投資を促進すべきである。我々はまた、G7の為替相場についての既存のコミットメントを再確認する。我々は、供給サイドの改革、特に労働供給を増やし生産性を高める改革の重要性を改めて強調する。我々はまた、包摂、多様性とイノベーションの促進を通じた、我々の経済の長期的な成功のための、女性及び十分に代表されていないグループの極めて重要な役割を強調する。我々は、民間部門の持続可能性及び強靱性を強化するための、「G20/経済協力開発機構(OECD)コーポレート・ガバナンス原則」の成功裏の見直しを期待する。我々は、我々の経済・社会構造がダイナミックかつ根本的な変容を遂げていることを認識しつつ、ウェルフェアの多元的な側面及びこれらの側面を実用的かつ効果的な方法で政策立案に組み込むべきであるということを強調する。このような取組は、G7の中核的価値観である民主主義と市場経済への信頼を維持することに資する。

8.我々は、金融セクターの動向を引き続き注意深く監視するとともに、金融安定及びグローバルな金融システムの強靭性を維持するために適切な行動をとる用意がある。我々は、2008年の世界金融危機後に実施された金融規制改革に支えられ、我々の金融システムが強靱であることを再確認する。我々は、ノンバンク金融仲介の強靱性の強化に関する金融安定理事会(FSB)及び基準設定主体の作業を強く支持する。我々は、通貨・金融システムの安定性、強靱性及び健全性に対する潜在的なリスクに対処しつつ、決済の効率性及び金融包摂のようなイノベーションの恩恵を活用するためのデジタル・マネーに関する政策検討を継続する。効果的なモニタリング、規制及び監視は、責任あるイノベーションを支援しつつ、暗号資産の活動及び市場がもたらす金融安定及び健全性のリスクに対処し、規制裁定を避けるために、極めて重要である。

9.我々は、OECD/G20包摂的枠組みによる経済のグローバル化及びデジタル化に伴う課税上の課題に対応し、より安定的で公正な国際課税制度を確立する二つの柱の解決策の迅速かつグローバルな実施に向けた我々の強い政治的コミットメントを再び強調する。我々は、第1の柱に関する多国間条約(MLC)の交渉における重要な進展を認識し、合意されたタイムライン内にMLCの署名ができる状態となるよう、交渉の迅速な完了に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、第2の柱の実施に向けた国内法制の進展を歓迎する。我々は、途上国に対して、二つの柱の解決策の実施に係る支援の重要性を強調しつつ、持続可能な税収源を築くための税に関する能力強化に対する支援を更に提供する。

10.我々は、2030年までの持続可能な開発目標の達成、貧困の削減、気候危機を含むグローバルな課題への対応及び低・中所得国における債務脆弱性への対処は、緊急であり、相互に関連し、かつ相互に強化し合うものであることを認識する。我々は、これらの課題に対処し、公正な移行を支援するために必要な民間資金及び公的資金を動員するために、自らの役割を果たす決意である。我々は、国際公共財を提供し保護することの重要性を認識しつつ、貧困を削減し繁栄の共有の促進のためのMDBsの取組に不可欠な要素として、強靱性、持続可能性及び包摂性の構築を組み込む取組を支援する。我々は、気候変動を含む脆弱性への対処を強化することにより、貧困をより効果的に削減するために、国際金融機関、二国間パートナー及び民間部門からの追加的な資金を動員するための開発資金ツールキットを強化するよう努める。我々は、6月22日~23日にパリで開催される国際開発金融の再活性化のためのサミットに始まり、ニューデリーでのG20サミット、ニューヨークでのSDGsサミット、マラケシュでの2023年世界銀行グループ・国際通貨基金(IMF)年次総会、ベルリンでのG20の「アフリカとのコンパクト」に関する会議及びアラブ首長国連邦(UAE)での国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)を通じてこのモメンタムを維持し、今後1年間の重要な局面において、パートナーと共にこの野心を実現し、この議題について具体的な進展を得るために協働する。

11.我々は、SDGs達成に向けた進捗の後退を反転させるために、主導的な役割を果たすことを決意する。我々は、2023年がSDGs達成に向けた折り返し地点であることを認識しつつ、9月のSDGサミットの重要性を強調し、成功に向け野心的に貢献する。我々は、国際協力を再活性化し、多国間主義を強化することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとアディスアベバ行動計画(AAAA)の実施を加速し、その実施に当たっては地域主導の開発を通じたものも含め、包括的かつジェンダー分野を変革するような方法で行う。我々はまた、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、新しい時代の人間の安全保障の概念を推進する。我々は、グローバルな課題に取り組む上で、開発協力と国際的なパートナーシップが果たす重要な役割や、国際的なパートナーとの連帯の必要性を強調する。我々はまた、持続可能な開発のための資金ギャップに対処するために、既存の資金の効率的な使用及び国内資金の更なる動員並びに民間金融資産の動員を求める。我々は、一部の国が採用している国民総所得(GNI)に対する政府開発援助(ODA)比0.7%目標などのそれぞれのコミットメントの重要性を認識し、革新的資金調達メカニズムを含むODAの増加とその触媒的な利用の拡大のための継続した取組の必要性を強調する。

12.我々は、債務持続可能性に対する深刻な課題がSDGs達成に向けた進捗を損なっており、低・中所得国がロシアによるウクライナに対する侵略戦争やより広範なグローバルな課題から偏って影響を受けていることを引き続き懸念する。我々は、こうした国々の債務脆弱性に対処する緊急性を再確認し、参加者に明確性を与えながら、予測可能かつ、適時に、秩序だった方法で連携した「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」の実施を改善するためのG20の取組を完全に支持する。我々は、IMF理事会による、ガーナに対するプログラムへの最近の承認を歓迎する。共通枠組を越えて、中所得国(MICs)の債務脆弱性は、多国間の協調によって対処されるべきである。この点において、我々は、フランス、インド及び日本の3か国の共同議長の下、スリランカのための債権国会合が立ち上げられたことを歓迎し、MICsの債務問題に対処するための将来の多国間の取組の成功モデルとして、迅速な解決を期待する。我々はまた、民間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、公平な負担を確保するために、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を強調する。我々は、気候変動の影響に直面する債務者に対するセーフティネットを強化するために、「気候変動に対する強じん性を取り入れた借入条項(CRDC)」の発展を歓迎する。我々は、この論点に関する我々の財務大臣による作業を歓迎し、より多くの債権者が融資契約にCRDCを組み込むことを奨励する。債務データの正確性と透明性を高めるため、我々は、全ての公的二国間債権者が、債務データの正確性の分野におけるG20のイニシアティブを更に前進させることを含め、債務データ突合のためのデータ共有の取組への参加を促す。

13.我々は、MDBs及び開発金融機関(DFIs)に対し、MDB改革の実施を通じたものを含め、民間資金を活用する能力を高めるための取組を加速させることを奨励する。この点で、我々は、貧困削減と繁栄の共有の達成に不可欠である、気候変動、パンデミック、脆弱性、紛争などの国境を越えた課題によりよく対処するために、ビジネス・モデルを見直し、変革するためのMDBsの改革に関する進行中の作業を強く支持し、加速させることを奨励する。この改革は、既存の資本の最も効率的な使用を伴わなければならない。この目的のため、我々は、G20の「MDBの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の勧告の実施に関する野心的なG20ロードマップの策定に貢献するとともに、MDBsに対し、その長期的な財政の持続可能性、強固な信用格付及び優先的に弁済を受ける地位を守りつつ、包括的な方法の下での更なる進展を求める。世界銀行グループにおける、今後10年間で最大500億米ドルのファイナンス能力を追加できる財務改革と、世界銀行グループのミッションと運用モデルに関する主要な改革を基礎として、我々は、野心的な改革が継続的に行われるよう、2023年の世界銀行グループ・IMF年次総会とそれ以降に向けた更なる進展を期待する。我々は、他のMDBsに対し、1つのシステムとしてのMDBsによる協調的な取組という観点からこのイニシアティブへの参加を奨励する。我々はまた、MDBsが、政策・知識面の支援を最大限に活用し、国内資金や民間資金の動員及び民間部門の関与を促進するための強化されたアプローチを模索することを求める。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通又は同等の貢献を通じて最も必要としている国々を支援するための共同の取組を更に前進させた。我々は、日本とフランスによる追加のプレッジが、我々のこれまでの貢献やコミットメントと合わせて、1,000億米ドルの世界的な野心を射程に入れたことを歓迎し、既存のプレッジの履行を求め、野心の達成のために全ての意欲ある、貢献可能な国からの更なるプレッジを要請する。我々は、IMFが、2023年の世界銀行グループ・IMF年次総会までに2021年に合意された資金調達目標を達成すること、そして、今後数年間で増大する低所得国のニーズを満たすことを目指して、低所得国を支援する貧困削減・成長トラスト(PRGT)を持続可能な基盤に据えるために、全ての利用可能な選択肢を特定することを支持する。我々は、国内の法的枠組みとSDRの準備資産としての性格と地位を保持する必要性を尊重しつつ、MDBsを通じたSDRの自発的な融通を可能にするため実行可能な選択肢をさらに模索する。

14.我々は、質の高いインフラへの資金提供、投資誘致に必要な政策改革を推進する取組の支援、国主導のパートナーシップの運用、案件形成支援を含む上流支援の促進等により、低・中所得のパートナー国のインフラ投資ギャップを縮小することの重要性を強調する。我々は、「G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」及び協働に向けた我々の共通のコミットメントを再確認し、2027年までに6,000億米ドルを動員することを目指す。我々は、持続可能で、包摂的で、強靭であり、質の高いインフラへの官民投資のためのグローバル・パートナーシップを、パートナー国と共に引き続き強化していく。我々は、この目的に向けた行動を加速するため民間部門を動員する。我々の提案は公正かつ透明であり、現地レベルでのインパクトの実現に焦点を当て、地球規模の持続可能な開発の加速を目指す。我々は、G7とパートナーが、持続的かつ前向きな影響を生み出し、持続可能な開発を推進する投資を促進する上で、どのように具体的な進展を遂げてきたかを示すPGIIに関するファクトシートを歓迎する。我々は、アフリカのビジネス環境を強化するための重要な枠組みとして、G20の「アフリカとのコンパクト」を改めて支持し、改革志向のパートナーにこのイニシアティブに参加し、これを強化することを求める。

15.我々は、透明で公正な開発金融を促進し、債務の透明性及び持続可能性、公正な審査、選択及び質の高いインフラ投資のための貸付慣行といった既存の原則の実施におけるギャップに対処するために協働するとの決意を共有した。この点、我々は、全ての主体に対し、質の高いインフラ投資に関するG20原則、G20持続可能な貸付に係る実務指針、OECD国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約、OECD多国籍企業行動指針を含む、国際ルール、スタンダード及び原則を遵守することを求める。これらのルール、スタンダード及び原則には、インフラ投資の健全性を保護するための措置も含まれている。

16.我々は、開発、人道、平和及び安全保障の問題に共に取り組むことの重要性に留意する。我々は、女性、女児、及び脆弱な状況にある人々に焦点を当てた、前例のない数の人道危機に対処することを決意する。この観点から、我々は、緊急の食料危機への対応を含め、悪化する人道危機に対処するために、今年、合計で210億米ドル以上を供与することにコミットする。我々は、小島嶼開発途上国を含む多くの国が災害に対して脆弱であることに留意しつつ、仙台防災枠組2015-2030及び国連防災機関(UNDRR)が指揮した中間レビューの成果に沿って国際防災協力を加速する。我々は、災害に関する事前の備え、及び「リスク移転」だけではなく「リスク削減」にも貢献し、結果として先行的行動の強化につながる、人的資本、物品及びインフラへの投資の重要性を強調する。我々は、開かれた透明性のある方法で、我々が行った約束について説明責任を果たすことに引き続きコミットする。この点、我々は、食料安全保障及び栄養並びに難民及び移住に関するG7の開発関連のコミットメントをフォローアップする2023広島進捗報告書を承認する。

17.我々は、持続可能な開発のあらゆる側面における推進力として、世界の都市の変革の力を強調する。我々は、持続可能な都市に関する協力を継続し、我々の関係閣僚に対し、カーボンニュートラルで、強靱で、包摂的な都市、及びデジタル化に関する原則の策定と都市のためのデータ及び技術の使用の促進を検討することを指示する。この作業は、気候変動に関連する最も大きな課題に直面している都市を持つグローバルなパートナーとの交流を支援する。

<気候>

18.我々の地球は、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの世界的危機並びに進行中の世界的なエネルギー危機からの未曾有の課題に直面している。我々は、この勝負の10年に行動を拡大することにより世界の気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続け、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させ、エネルギー安全保障を確保するとともに、これらの課題の相互依存性を認識し、シナジーを活用することで、パリ協定へのコミットメントを堅持する。ロシアによるウクライナに対する侵略戦争が世界のエネルギー市場とサプライチェーンに影響を与えているが、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)排出ネット・ゼロを達成するという我々の目標は揺るがない。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及びその第6次評価報告書(AR6)の最新の見解によって詳述された、気候変動の影響の加速化及び激甚化に対する我々の強い懸念を強調し、その最新の見解を踏まえ、世界のGHG排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに約60%削減することの緊急性が高まっていることを強調する。我々は、国が決定する貢献(NDC)目標の達成に向けた国内の緩和策を早急に実施し、例えば、セクター別目標の設定又は強化、二酸化炭素以外の温室効果ガスに係る副次的目標の策定、厳格な実施措置の採用によるものを含め、我々の野心を高めるために昨年エルマウで行ったコミットメントを再確認する。我々は、我々の指導的役割に留意しつつ、また、全てのG7諸国において排出量が既にピークを迎えたことに留意し、この勝負の10年及びその後数十年間における世界の気温上昇を抑える上で、全ての主要経済国が果たすべき重要な役割を認識する。この文脈で、我々は、全ての主要経済国が、パリ協定以降、NDCの野心を大幅に強化し、既にGHG排出量のピークを迎えたか、遅くとも2025年までに迎えることを示し、特にNDCにおいて全てのGHGを対象とする経済全体の排出削減目標を含めるべきであったことを強調する。この観点で、我々は、2030年NDC目標又は長期低GHG排出発展戦略(LTS)が摂氏1.5度の道筋及び遅くとも2050年までのネット・ゼロ目標に整合していない全ての締約国、特に主要経済国に対し、可及的速やかに、かつCOP28より十分に先立って2030年NDC目標を再検討及び強化し、LTSを公表又は更新し、遅くとも2050年までのネット・ゼロ目標にコミットするよう求める。さらに、我々は、全ての締約国に対し、COP28において、世界のGHG排出量を直ちに、かつ遅くとも2025年までにピークアウトすることにコミットするよう求める。我々は、「グローバル・メタン・プレッジ」へのコミットメントを再確認し、2030年までに世界全体の人為起源のメタン排出量を共同で2020年比で少なくとも30%削減するための取組を強化する。我々は、COP28における第1回グローバル・ストックテイク(GST)の最も野心的な成果物を確保するために積極的に貢献することにコミットし、その結果が、緩和、適応、実施手段と支援にまたがる強化された、即時かつ野心的な行動につながるべきである。我々は、全ての締約国に対し、COP30に十分に先立って、GSTの成果による情報提供を受け、全てのGHG、セクター、分類を含む経済全体の絶対削減目標及び摂氏1.5度の道筋に沿って大幅に強化された野心を反映し、次期NDC及びLTSを提出することを求める。これらは、摂氏1.5度の道筋に沿って大幅に強化された野心を反映するとともに、再検討され強化された2030年目標も含むべきである。

19.気候変動、生物多様性の損失、クリーン・エネルギーへの移行に関する行動の速度と規模を増加させる重要性に留意し、我々は、グリーン・トランスフォーメーションを世界的に推進及び促進し、遅くとも2050年までにGHG排出のネット・ゼロを達成するために我々の経済の変革の実現を目指して協働する。我々は、国の状況を考慮して、多様かつ現実的な道筋を通じた気候変動に強靭で、循環型で、ネイチャーポジティブな経済及びネット・ゼロGHG排出への移行を支援することを含め、排出削減を加速するために、開発途上国及び新興国に関与する。この目的のため、我々は、PGIIを含む協調行動により支援され得る、開発途上国の公正なエネルギー移行を支援することへの強いコミットメントを再確認する。我々は、南アフリカ、インドネシア及びベトナムにおけるJETPsで達成された進展を歓迎し、また、インド及びセネガルとの協議を継続する。我々は、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想」、「脱石炭同盟(PPCA)」、「2050パスウェイ・プラットフォーム、ネット・ゼロ・ワールド(NZW)」、「グローバル・カーボンプライシング・チャレンジ」など、クリーン・エネルギー移行を支援することを目的とした世界各国のイニシアティブに留意し、摂氏1.5度への道筋に整合したこれらのイニシアティブを通じた対応の重要性を強調する。我々は、供給側の措置について更なる行動を取るとともに、インフラや材料の使用の変更の促進、最終用途技術の採用、持続可能な消費者選択の促進など、需要側における更なる脱炭素化の取組の必要性を認識する。我々はまた、地域のニーズや環境条件に基づく気候・エネルギー行動を前進させるために、他のステークホルダーやパートナーと連携した地方政府の重要な役割を認識する。我々は、高い十全性のある炭素市場及び炭素の価格付けが、炭素の価格付けのための政策手段の最適な活用を通じ、費用効率の高い排出レベルの削減を促進し、イノベーションを推進し、ネット・ゼロへの転換を可能にする重要な役割を有することを再確認する。我々は、効果的に排出を削減する炭素価格付け、かかる価格付けによらないメカニズム及びインセンティブを含む適切な政策の組み合わせを支持し、これらは各国固有の状況を反映して変わり得ることに留意する。我々は、OECDの炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)を強く支持する。我々は、産業の脱炭素化を進めるために、開放的、協調的かつ包摂的な気候クラブを、国際的なパートナーと協力して進めることを期待する。我々は、民間事業者が信頼できるネット・ゼロ・プレッジ及び透明性のある実施戦略を通じて、バリューチェーン全体におけるGHGネット・ゼロ排出にコミットすることを奨励する。我々はまた、脱炭素ソリューションを通じ他の事業者の排出削減に貢献するイノベーションを促すための民間事業者の取組を奨励・促進する。我々は、鉄鋼生産及び製品の排出に関する新しい「グローバル・データ・コレクション・フレームワーク」の実施に向け作業を開始することを決定した産業脱炭素化アジェンダ(IDA)の進捗を歓迎する。我々は、2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットメントを再確認し、世界全体の保有車両からのGHG排出削減の重要性及び気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために必要な軌跡に沿ったこの目標に近づくための多様な道筋を認識する。我々は、2050年までに道路部門でネット・ゼロ排出を達成するという目標にコミットしている。この文脈で、我々は、2035年まで又は2035年以降に小型車の新車販売の100%又は大宗を排出ゼロ車両にすること、2035年までに乗用車の新車販売の100%を電動車とすること、関連するインフラ及び持続可能なバイオ燃料や合成燃料を含む持続可能なカーボンニュートラル燃料を促進することを目的とする国内政策を含め、我々のそれぞれが保有車両を脱炭素化するために取る様々な行動を強調する。我々は、これらの政策が、2030年までにグローバルに販売されるゼロ排出の小型車のシェアが50%以上へ進展していくことを含め、高度に脱炭素化された道路部門への貢献をもたらすという機会に留意する。国際エネルギー機関(IEA)の「エネルギー技術の展望2023」の調査結果を考慮し、我々はまた、ネット・ゼロ達成への中間点として、2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも2000年比で共同で50%削減し、また、その進捗を年単位で追跡する可能性に留意する。我々は、遅くとも2050年までに国際海運からのGHG排出をライフサイクル全体でゼロにすることを達成するための世界的な取組を強化することにコミットすることを再確認する。我々は、信頼できる一連の対策を通じ、産業革命以前の水準に比べて気温上昇を摂氏1.5度に抑えるための取組に沿って、国際海事機関(IMO)のGHG削減戦略の改定においてこの目標を支持し、2030年及び2040年の中間目標を導入することを支持することにコミットする。我々は、国際民間航空機関(ICAO)の国際航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA)を基礎として、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進、新技術の導入及び運航の向上への取組を行うことを含め、2050年までに国際航空からのCO2排出実質ゼロを目指すICAOの目標の達成に向けた世界的な取組を加速することにコミットする。

20.気候変動がもたらす脅威の増大に直面する中、気候変動に脆弱なグループの支援は、人間の安全保障を確保し、強靭で持続可能な開発を実現するために不可欠である。我々は、早期警戒システムに関連した「気候リスクに対するグローバル・シールド」及び他のイニシアティブや気候変動に対する強靭性を取り入れた借入条項の導入も含む、気候変動適応、気候災害リスク削減、応急対応、及び復旧・復興、及び早期警戒システムの強化を通じて、気候変動に脆弱なグループの強靭性を強化するための支援を増加・強化し続ける。我々は、意味のある緩和行動及び実施に関する透明性の文脈において、2020年から2025年にかけて年間1000億米ドルの気候資金を合同で動員するという先進締約国の目標に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、2023年にこの目標を完全に達成するために、他の先進締約国と協働する。我々は、GHG低排出であり、かつ気候に対して強靱な開発に向けた道筋に資金の流れを整合させることも含め、世界的な取組の一部として、官民を問わず、多様な資金源から、パリ協定の目標の達成に貢献する、野心的で目的に沿った新規合同気候資金数値目標(NCQG)に関する議論を歓迎する。我々は、G7の重要な役割及び先進締約国が気候資金の動員を主導すべきであることを認識し、能力を有するがまだ国際気候資金の現在の提供者ではない全ての国及びステークホルダーが、この世界的な取組に貢献する必要性を強調する。

21.我々は、パリ協定第2条1cに従って、温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靱である発展に向けた方針に資金の流れを適合させる我々自身の取組を加速することにコミットする。我々は、特に、クリーン技術や活動の更なる実施及び開発に焦点を当てた民間資金を含む資金を動員することの重要性を強調する。我々は、気候を含む持続可能性に関する情報の一貫性、比較可能性、及び信頼性のある情報開示へのコミットメントを強調する。我々は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、持続可能性に関する全般的な報告基準及び気候関連開示基準を最終化し、またグローバルに相互運用性のある持続可能性開示枠組の達成に向けて取り組むことを支持する。我々はまた、ISSBによる、その作業計画の市中協議に沿った、生物多様性及び人的資本に関する開示に係る将来の作業に期待する。我々は、「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」の実施及びモニタリングを支持することに引き続きコミットする。我々は、企業が信頼性のある気候移行計画に基づき、パリ協定の気温目標に沿ったネット・ゼロ移行を実行する必要性を強調する。我々はまた、摂氏1.5度の気温上昇目標を射程に入れ続けることと整合的で、カーボン・ロックインを回避し、効果的な排出削減に基づいているトランジション・ファイナンスが、経済全体の脱炭素化を推進する上で重要な役割を有することを強調する。我々は、緑の気候基金(GCF)の野心的で成功した第2次増資を期待するとともに、G7の強固なプレッジの必要性を再確認する。我々は、他の国々にも同様のプレッジを促すとともに、全ての潜在的な拠出者を奨励することによりGCFの拠出国ベースの拡大の必要性を強調する。我々は、規模を拡大した資金源からの供与において緩和と適応の間の均衡を達成するという文脈において、開発途上締約国に対する適応のための気候資金の供与を、2025年までに2019年の水準から共同で少なくとも2倍にすることを先進国に求めるグラスゴー気候合意の要請に対応するための取組を引き続き加速する。我々はまた、国際開発金融機関に対し、改定され強化された2025年予測を発表し、野心的な適応資金目標にコミットするよう求めるとともに、G7以外の国に対し、民間資金を含む適応資金の供与と動員の拡大を求める。我々は、資金動員におけるIFIsの重要な役割を強調し、それらの政策、投資、運営及びガバナンスにおいて気候及び環境問題を主流化することを求める。我々はまた、国際開発金融機関に対し、ネット・ゼロ移行を促進し、民間部門の投資を可能にするために、気候資金を含む国際公共財への資金を増やし、政策に連動する金融を通じて開発途上国の野心的な規制改革を支援するよう求める。更に、環境十全性を確保しつつ炭素市場の発展を促進させるため、我々は、カーボンクレジット市場における実施を促進するための「十全性(質)の高い炭素市場の原則」を支持する。我々は、気候変動の悪影響に伴い、既に生じている経済的及び非経済的な損失及び損害、及び世界的に特に最も脆弱な人々が感じている影響の規模について、強い懸念を強調する。我々は、世界的な気候変動の悪影響を警戒し、特に最も脆弱な国々に対して、損失と損害を回避し、最小化し、これらに対処するための行動と支援を増加させる。これには、パリ協定第8条の文脈で気候変動の悪影響に特に脆弱な開発途上国のための基金を含む、新たな資金面での措置を設立する国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)/パリ協定第4回締約国会合(CMA4)決定の実施や、「G7気候災害対策支援事例集」で特定された支援の提供が含まれる。

<環境>

22.我々は、持続可能で包摂的な経済成長及び発展を確保し、経済の強靱性を高めつつ、経済・社会システムをネット・ゼロで、循環型で、気候変動に強靭で、汚染のない、ネイチャーポジティブな経済へ転換すること、及び2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させることを統合的に実現することにコミットする。我々は、バリューチェーンにおける資源効率性及び循環性の向上が一次資源の使用量を削減し、気候変動やその他の環境目標の達成に貢献することを強調し、ステークホルダー、特に企業に対し、そうした行動を強化することを奨励する。したがって、我々は、循環経済・資源効率性原則(CEREP)を支持する。我々は、サプライチェーンにおける循環性を高めつつ、国内及び国際的な重要鉱物や原材料、その他の適用可能な原料の環境上適正で、持続可能かつ効率的な回収・リサイクルを増やす。我々は、水関連生態系の管理とガバナンスが地球上の全ての生命にとって不可欠であることを再確認する。我々は、本年成功裡に開催された国連水会議のフォローアップなど、関連する国際フォーラムに積極的に参加している。

23.我々は、G7オーシャンディールに基づき、クリーンで、健全かつ生産的な海洋の実現に向けて行動することにコミットする。我々は、違法・無報告・無規制(IUU)漁業を終わらせるという我々のコミットメントを再確認し、この現象にあらゆる側面から取り組むため、開発途上国への支援や我々の関連機関間の政策調整の強化を含めた更なる行動を取り、それらの関連機関に対し、本年末までこの問題に関する進捗の評価を指示する。特に、我々は、国連食糧農業機関(FAO)の違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の非締約国に対し、PSMAの更なる世界的な受容と効果的な実施のため、加入を奨励する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の下での、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する法的拘束力を有する国際文書の交渉が妥結したことを歓迎し、その迅速な発効と実施を呼びかける。我々は、UNCLOSの下で求められているとおり、国際海底機構(ISA)の下での深海底鉱物の開発に関して、当該活動から生じ得る有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を確保する規制の枠組みの策定に積極的に関与し続ける。我々は、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることにコミットしている。これを念頭に、我々は、包括的なライフサイクル・アプローチを踏まえ、我々の行動を継続し、発展させることを決意する。我々は、政府間交渉委員会(INC)のプロセスを支持し、2024年末までにプラスチックのライフサイクル全体をカバーする法的拘束力のある国際文書の作業を完了することを目的としたパリでの次回交渉に期待し、野心的な成果を求める。我々は、2025年に開催される国連海洋会議までに、これらの課題及び海洋保護に関するより幅広い議題について、できる限り進展させる。

24.我々は、人間の幸福、健全な地球及び経済の繁栄の基礎となる、生物多様性の損失を2030年までに止めて反転させるための歴史的な昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択を歓迎し、その迅速かつ完全な実施と各ゴール及びターゲットの達成にコミットする。この点で、生物多様性条約(CBD)締約国であるG7諸国は、GBFとそのゴール及びターゲットに沿った生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)を2023年内又は生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)に十分に先んじて、改定、更新及び提出し、又は、該当する場合は、GBFの全てのゴール及びターゲットを反映した国別目標を伝達することにコミットする。我々は、遅くとも2030年までに生物多様性の保全と持続可能な利用のための有益なインセンティブを拡大しつつ、2025年までに生物多様性に有害な補助金等のインセンティブを特定し、その方向転換又は廃止を図り、遅滞なく初期措置を講じる。我々は全ての署名者に対し、GBFの下での彼らのコミットメントを迅速に実施し、開発途上国に対して支援を提供できるよう用意することを求める。我々は、自然に対する国内及び国際的な資金を2025年までに大幅に増加させるというコミットメントを改めて表明する。我々は、我々の国際開発援助がGBFと整合することを確実にする。我々は、国際開発金融機関に対し、あらゆる資金源の活用や一連の手段の展開を通じ、生物多様性のための支援を増加させることを求める。我々は、GBFを実施するため、あらゆる資金源からの資金の水準を大幅かつ段階的に増加させ、全ての関連する財政及び資金の流れをGBFに整合させることをコミットし、他国にも同様のことを行うよう求める。我々は、地球環境ファシリティ(GEF)内におけるGBF基金の設立及び2023年8月のバンクーバーでのGEF総会におけるその立上げの成功を支援することにコミットし、この新しい基金へのあらゆる資金源からの拠出の重要性に留意する。我々は、自然を活用した解決策への資金拠出の増加を含む気候変動及び生物多様性のための資金の相乗効果を高めるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、「G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス」のようなG7間の知識の共有や情報ネットワークの構築を含め、ネイチャーポジティブ経済への移行を支援・促進することにコミットする。我々は、企業が漸進的に生物多様性への負の影響を削減し正の影響を増大させることを求める。我々は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の市場枠組みの発表を期待し、その開発を支援するよう市場参加者、政府及び当局に強く求める。我々は、保護地域や保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)の指定及び管理を通じ、各国の状況及びアプローチに応じて、2030年までに陸域及び内陸水域の少なくとも30%、海洋及び沿岸域の少なくとも30%を効果的に保全・管理するという目標(30by30)を国内及び世界で達成するとのコミットメントを強調する。我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、世界の海洋生物多様性を保全・保護し、その資源を持続的に利用することをコミットする。この文脈で、我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、東南極、ウェッデル海及び南極半島西岸において海洋保護区を設置する提案を緊急に採択するという南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の下での我々のコミットメントを再確認する。この点で、我々は、GBFの目標である30by30を達成するために、保護地域とOECMのベストプラクティスを共有することにより、他の国々を支援する。我々は、侵略的外来種対策について、国際協力を強化する。我々は、2030年までに森林の消失と土地の劣化を阻止し反転させるというコミットメントを改めて表明し、森林を始めとする陸域生態系の保全及びその回復を加速させるとともに、持続可能なバリューチェーン及びサプライチェーンを支援し、持続可能な森林経営と木材利用を促進することにコミットする。我々は、特に、炭素及び生物多様性の重大な貯蔵を有する国において、「森林、自然及び気候に関するカントリーパッケージ」を通じた我々の提案の調整などにより、まずは森林を中心として、炭素貯蔵量が多く生物多様性に富む生態系の保護、保全、回復を支援する統合的な解決策を提供するため、高い野心をもって協働する。我々は、関連商品の生産に関する森林減少や森林及び土地の劣化のリスクを低減し、この問題に対する様々なステークホルダーとの協力を強化する取組を継続することにコミットする。我々は、適切であれば、これを支援するための更なる規制の枠組み又は政策を策定する。

<エネルギー>

25.我々は、エネルギー安全保障、気候危機及び地政学的リスクに一体的に取り組むことにコミットする。我々は、ロシアのウクライナに対する侵略戦争による現在のエネルギー危機に対処し、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出という共通目標を達成し、同時に、エネルギー安全保障を高める手段の一つでもあるクリーン・エネルギー移行を加速することの現実的かつ緊急の必要性及び機会を強調する。我々は、各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、これらの道筋が遅くとも2050年までにネット・ゼロという共通目標につながることを強調する。この観点から、我々はIEAに対し、エネルギー及び重要鉱物の供給やクリーン・エネルギー製造をいかに多様化するかの選択肢について、本年内に提言を作成するよう招請する。これを通じて、我々はパートナーと共に、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出を達成し、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けるために、再生可能エネルギーのグローバルな利用拡大を含め、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体的に取り組むことを模索する。我々は、過去と現在のエネルギー危機への対処の経験を通じて、「第一の燃料」としての省エネルギー及びエネルギーの節減の強化並びに需要側のエネルギー政策の発展の重要性を強調する。我々はまた、再生可能エネルギーの導入や次世代技術の開発・実装を大幅に加速させる必要がある。G7は、2030年までに洋上風力の容量を各国の既存目標に基づき合計で150GW増加させ、太陽光発電の容量を、各国の既存目標や政策措置の手段を通じて、IEAや国際再生可能エネルギー機関(IRENA)で推計された2030年までに合計で1TW以上に増加させることも含め、再生可能エネルギーの世界的な導入拡大及びコスト引下げに貢献する。我々は、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにアンモニアなどのその派生物は、摂氏1.5度への道筋と整合する場合、産業及び運輸といった特に排出削減が困難なセクターにおいて、セクター及び産業全体の脱炭素化を進めるための効果的な排出削減ツールとして効果的な場合に、温室効果ガスであるN2Oと大気汚染物質であるNOxを回避しつつ、開発・使用されるべきであることを認識する。我々はまた、摂氏1.5度への道筋及び2035年までの電力セクターの完全又は大宗の脱炭素化という我々の全体的な目標と一致する場合、ゼロ・エミッション火力発電に向けて取り組むために、電力セクターで低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物の使用を検討している国があることにも留意する。我々は、環境及び社会的基準を遵守しつつ、信頼できる国際標準及び認証スキームに基づき、低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素のための、ルールに基づき透明性のあるグローバル市場とサプライチェーンを開発するための取組を強化する。我々は、炭素集約度に基づく取引可能性、透明性、信頼性及び持続可能性のための水素製造のGHG算定方法及び相互認証メカニズムを含む国際標準及び認証を開発する重要性を認識する。我々は、2035年までに電力セクターの完全又は大宗の脱炭素化の達成及び気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを射程に入れ続けることに整合した形で、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電のフェーズアウトを加速するという目標に向けた、具体的かつ適時の取組を重点的に行うというコミットメントを再確認し、他の国にも参画することを求める。我々は、IEAの2022年の「ネット・ゼロ移行における石炭」報告書において、IEAの2050年までのネット・ゼロシナリオに沿った主要な取組の一つとして特定された、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設終了に向けて取り組んでいく。我々は、公正な方法でクリーン・エネルギー移行を加速するため、排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所のプロジェクトを世界全体で可及的速やかに終了することを他国に呼びかけ、協働する。我々は、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年に終了したことを強調する。我々は、他の国、特に主要経済国が我々と同様にそれぞれのコミットメントを達成することを求める。我々は、二酸化炭素炭素回収・有効利用・貯蔵(CCUS)/カーボンリサイクル技術が、他の方法では回避できない産業由来の排出を削減するための脱炭素化解決策の幅広いポートフォリオの重要な要素となり得ること、また、強固な社会・環境面のセーフガードを備えた二酸化炭素除去(CDR)プロセスの導入が、完全な脱炭素化が困難なセクターにおける残余排出量を相殺する上で不可欠な役割を担っていることを認識する。我々は、世界規模での取組の一環として、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前の水準よりも摂氏1.5度に抑えるために必要な軌道に沿って、遅くとも2050年までにエネルギー・システムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して我々と共に同様の行動を取ることを呼びかける。我々は、非効率な化石燃料補助金を2025年又はそれ以前に廃止するというコミットメントを再確認し、全ての国々に同様に取り組むよう従前呼びかけたことを再確認する。摂氏1.5度への道筋に向けた変革において、ネット・ゼロ及び循環型産業サプライチェーンの新たな必要性の観点から、我々は、脱炭素化され、持続可能で、責任のある形で生産された非燃焼原料に関連する機会を認識し、この変革における、我々の労働者及びコミュニティへの支援にコミットする。我々はまた、国家安全保障及び地政学的利益の重要性を認識し、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する摂氏1.5度目標やパリ協定の目標に合致する限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の直接公的支援を2022年までに終了したことを強調する。クリーン・エネルギー移行を加速させることの主要な必要性を認識しつつ、パリ協定の我々のコミットメントに合致した形で、エネルギー節減及びガス需要の削減を通じたものを含め、ロシアのエネルギーへの依存からのフェーズアウトを加速すること、及びエネルギー供給、ガス価格及びインフレーション、並びに人々の生活へのロシアによる戦争の世界的な影響に対処することが必要である。この文脈において、我々は、液化天然ガス(LNG)の供給の増加が果たすことのできる重要な役割を強調するとともに、ガス部門への投資が、現下の危機及びこの危機により引き起こされ得る将来的なガス市場の不足に対応するために、適切であり得ることを認識する。ロシアのエネルギーへの依存のフェーズアウトを加速していくという例外的な状況において、明確に規定される国の状況に応じて、例えば低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素の開発のための国家戦略にプロジェクトが統合されることを確保すること等により、ロックイン効果を創出することなく、我々の気候目標と合致した形で実施されるならば、ガス部門への公的に支援された投資は、一時的な対応として適切であり得る。我々は、エネルギー市場の安定化を目的として、IEAなどの国際機関が提供する中立・公平な統計データを更に活用し、データ収集・分析機能を強化する。我々は、エネルギー市場の安定化及び気候目標に整合的な形での必要な投資の動員を目的として、生産国と消費国との間の対話と連携の場を強化することの重要性を強調する。

原子力エネルギーの使用を選択したG7諸国は、化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、気候危機に対処し、及びベースロード電源や系統の柔軟性の源泉として世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。これらの諸国は、現在のエネルギー危機に対処するため、安全な長期運転を推進することを含め、既存の原子炉の安全、確実、かつ効率的な最大限の活用にコミットする。これらの諸国はまた、国内及びパートナー国において、高度な安全システムを有する小型モジュール炉及びその他の革新炉などの原子炉の開発及び建設の支援、核燃料を含む強固で強靭な原子力サプライチェーンの構築並びに原子力技術及び人材の維持・強化にコミットする。これらの諸国は、ロシアへの依存を減らすため、志を同じくするパートナーと協働する。G7は、最高水準の原子力安全及び核セキュリティが、全ての国及びそれぞれの国民にとって重要であることを強調する。我々は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づき国際原子力機関(IAEA)とともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。

26.我々は、世界規模での取組の一環として、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前の水準よりも摂氏1.5度に抑えるために必要な軌道に沿って、遅くとも2050年までにエネルギー・システムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して我々と共に同様の行動を取ることを呼びかける。我々は、非効率な化石燃料補助金を2025年又はそれ以前に廃止するというコミットメントを再確認し、全ての国々に同様に取り組むよう従前呼びかけたことを再確認する。摂氏1.5度への道筋に向けた変革において、ネット・ゼロ及び循環型産業サプライチェーンの新たな必要性の観点から、我々は、脱炭素化され、持続可能で、責任のある形で生産された非燃焼原料に関連する機会を認識し、この変革における、我々の労働者及びコミュニティへの支援にコミットする。我々はまた、国家安全保障及び地政学的利益の重要性を認識し、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する摂氏1.5度目標やパリ協定の目標に合致する限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の直接公的支援を2022年までに終了したことを強調する。クリーン・エネルギー移行を加速させることの主要な必要性を認識しつつ、パリ協定の我々のコミットメントに合致した形で、エネルギー節減及びガス需要の削減を通じたものを含め、ロシアのエネルギーへの依存からのフェーズアウトを加速すること、及びエネルギー供給、ガス価格及びインフレーション、並びに人々の生活へのロシアによる戦争の世界的な影響に対処することが必要である。この文脈において、我々は、液化天然ガス(LNG)の供給の増加が果たすことのできる重要な役割を強調するとともに、ガス部門への投資が、現下の危機及びこの危機により引き起こされ得る将来的なガス市場の不足に対応するために、適切であり得ることを認識する。ロシアのエネルギーへの依存のフェーズアウトを加速していくという例外的な状況において、明確に規定される国の状況に応じて、例えば低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素の開発のための国家戦略にプロジェクトが統合されることを確保すること等により、ロックイン効果を創出することなく、我々の気候目標と合致した形で実施されるならば、ガス部門への公的に支援された投資は、一時的な対応として適切であり得る。我々は、エネルギー市場の安定化を目的として、IEAなどの国際機関が提供する中立・公平な統計データを更に活用し、データ収集・分析機能を強化する。我々は、エネルギー市場の安定化及び気候目標に整合的な形での必要な投資の動員を目的として、生産国と消費国との間の対話と連携の場を強化することの重要性を強調する。原子力エネルギーの使用を選択したG7諸国は、化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、気候危機に対処し、及びベースロード電源や系統の柔軟性の源泉として世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。これらの諸国は、現在のエネルギー危機に対処するため、安全な長期運転を推進することを含め、既存の原子炉の安全、確実、かつ効率的な最大限の活用にコミットする。これらの諸国はまた、国内及びパートナー国において、高度な安全システムを有する小型モジュール炉及びその他の革新炉などの原子炉の開発及び建設の支援、核燃料を含む強固で強靭な原子力サプライチェーンの構築並びに原子力技術及び人材の維持・強化にコミットする。これらの諸国は、ロシアへの依存を減らすため、志を同じくするパートナーと協働する。G7は、最高水準の原子力安全及び核セキュリティが、全ての国及びそれぞれの国民にとって重要であることを強調する。我々は、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展とともに、科学的根拠に基づき国際原子力機関(IAEA)とともに行われている日本の透明性のある取組を歓迎する。我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。

<クリーン・エネルギー経済>

27.世界的な気候・エネルギー危機は、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出実現に向けクリーン・エネルギー移行を加速させ、エネルギー・システムを変革させることが緊急に必要であることを浮き彫りにしていると強調しつつ、我々は、サプライチェーン等における経済的多様化及び変革の必要性を強調する。世界的規模でのクリーン・エネルギー移行を更に推進するため、我々は取組を強化し、特に、重要鉱物資源やクリーン・エネルギー技術を含む、安全で強靱な、廉価で持続可能なクリーン・エネルギーのサプライチェーンを追求することを決意する。また、エネルギー移行の実施にあたっては、市場の歪みを回避し、世界的に公平な競争条件を確保するために、協働して取り組むことの重要性を再確認する。我々は、クリーン・エネルギー経済を実現するため、クリーン・エネルギー経済行動計画に示された具体的な行動を通じて、引き続き国際的なパートナーと協力して取り組んでいく。

<経済的強靱性・経済安全保障>

28.経済的強靭性と経済安全保障をグローバルに確保することは、経済的な脆弱性の武器化に対する我々の最善の防御となり続ける。我々は、2022年G7エルマウ・サミットでのコミットメントを想起しつつ、構造的な脆弱性から保護するため、グローバルな経済的強靭性及び経済安全保障を強化する経済政策を推進していく。このため、我々は、G7内の、及び開発途上国との連携を含むG7以外の世界中のパートナーとの対話に関与し、協力的なアプローチをとっていく。その取組の中で、我々は、世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく多角的貿易体制に基づき、貿易を円滑化し、経済的強靱性を促進するため、国際的なルール及び規範を推進していく。我々の取組には、我々及び世界中のパートナーのサプライチェーンが、より強靭で持続可能で信頼性のあるものにするための行動をとることや、全ての人の繁栄を促進するための適切な措置が含まれる。また、基幹インフラにおける信頼性及び安全性を促進していく。我々は、戦略的依存関係及び構造的な脆弱性を悪化させ、労働者やビジネスに害を与え、国際的なルール及び規範を損ない得る非市場的政策及び慣行に対処するため、継続している連携を強化していく。世界の安全及び安定を損なうリスクに対処するため、警戒を高め、協力を強化するというエルマウにおける我々の決意を基に、我々は、経済的威圧に対する共同の評価、準備、抑止及び対応を強化するため、「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」を立ち上げ、連携を強化していくとともに、G7以外のパートナーとの協力を更に促進していく。我々は、デジタル領域における不当な影響力、スパイ行為、違法な知見の漏えい及び妨害行為からグローバルなサプライチェーンを保護するため、悪意ある慣行に対する戦略的対話を深めていく。我々は、我々が開発する最先端技術が、国際の平和及び安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために連携する共通の責任及び決意を確認する。この文脈で、我々は、ここに、「経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」を採択する。

29.我々は、様々な分野での、特にグローバルなクリーン・エネルギー移行における重要鉱物の重要性の高まり、並びに、脆弱なサプライチェーンに起因する経済及び安全保障上のリスクを管理する必要性を再確認する。我々は、開かれ、公正で、透明性のある、安全で、多様で、持続可能で、追跡可能な、ルール及び市場に基づく重要鉱物の取引を支持する。我々は、重要鉱物に関する市場歪曲的な行為及び独占的な政策に反対し、強靱かつ強固で、責任と透明性のある重要鉱物サプライチェーンの構築の必要性を再確認する。我々は、市場の混乱等の緊急事態に対する備えと強靱性を強化し、IEAによる「重要鉱物の自主的なセキュリティプログラム」への支持を含め、そのような混乱に共同で対処する方法を検討することにコミットする。我々は、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)等の、重要鉱物資源の精製及び加工を含むサプライチェーンの多様化のための取組における共同の進展を歓迎する。我々は、WTOルールに則った、重要鉱物サプライチェーンにおける地元での価値創造を支援する。我々は、開発途上国との協力の下、重要鉱物資源の国内外でのリサイクルを推進する。我々は、上流及び中流の環境にも十分配慮しつつ、堅固な環境、社会、ガバナンス(ESG)基準により、鉱物資源の埋蔵地域や精製及び加工工場の地元住民を含む地域社会への利益の確保、労働者の権利保護、透明性の促進を確認し、クリーン・エネルギー移行を更に促進するため、重要鉱物資源及びそれを用いて製造される製品の持続可能で強靭なサプライチェーンを確立する必要があることを改めて表明する。我々は、G7気候・エネルギー・環境大臣が採択した「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」を歓迎し、同計画を実施するよう同大臣に指示する。

<貿易>

30.我々は、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制の基本原則及び目的として、現在の地政学的環境においてこれまで以上に重要である、自由で公正な貿易に対する我々のコミットメントの下、連帯する。我々は、これらの基本原則を尊重することは、透明で、多様で、安全で、持続可能な、信頼できる、そして全ての者にとって公平で世界の市民のニーズに応える強靱なグローバル・サプライチェーンを構築するために不可欠であることを確認する。我々は、それぞれの政策において、透明性、協調性、WTOルールの尊重を重視することを確認する。この世界貿易体制は、包括的でなければならず、それがもたらす繁栄が伝統的に適切に代表されていない集団を含む全ての人に実感されるべきである。このため、我々は、G7外のパートナー、特に、サプライチェーンや世界貿易体制において不可欠なパートナーである開発途上国パートナーとの協力を継続する。第12回WTO閣僚会議(MC12)の成果を踏まえ、第13回WTO閣僚会議(MC13)を成功させることを見据え、我々は、2024年までに全ての加盟国が利用できる完全かつよく機能する紛争解決制度の実現を目的とした議論の実施や、世界の貿易政策の課題に対応するための審議を強化することを含め、WTO改革に向けて取り組むことの重要性を強調する。さらに、我々は、漁業補助金協定の迅速な発効を確保し、漁業補助金に関する包括的な合意を達成するであろう追加規定についての勧告及び共同声明イニシアティブ(JSI)を含む複数国によるイニシアティブに建設的に関与し、電子的送信に対する関税不賦課のモラトリアムを恒久化するために、全てのWTO加盟国が協力することを求める。我々は、WTOのJSIにおける電子商取引交渉を加速し、2023年末までに野心的な成果を妥結するために取り組むことにコミットする。その成果は、高水準で商業的に意味のあるものであるべきである。自由で公正な貿易の流れは、多角的貿易体制に対する我々のコミットメントに合致しており、グリーンで公正な移行において重要な役割を果たす。我々は、環境物品・サービス及び技術の貿易の円滑化・促進を含め、WTOにおける我々の協力を継続する。我々は、グローバルな競争、貿易及び投資を歪める非市場的政策及び慣行とそれらの問題のある展開に関する我々の共通の懸念を再確認する。我々は、既存の手段のより効果的な使用並びに適切な新しい手段の開発及びより強力な国際ルール及び規範を通じて、公平な競争条件を確保するための我々の取組を更に強化する。我々は、不公正な取引慣行への対応が、パートナーの産業に不必要な障壁を作らず、我々のWTOの約束に整合的であることを確保していく。我々は、輸出管理が、軍事用途にとり重要な技術並びに世界、地域及び国家の安全保障を脅かすその他の活動のための技術の転用がもたらす課題に対処するための基本的な政策手段であることを再確認する。我々は、悪意ある者による重要・新興技術の悪用や研究活動を通じた重要・新興技術の不適切な移転に対処するため、マイクロ・エレクトロニクスやサイバー監視システム等の重要・新興技術の輸出管理に関する協力の重要性を確認する。我々は、貿易担当大臣に対し、10月のG7貿易大臣会合に向けてこれらの議論を深め、経済的威圧を含む貿易関連の課題に対し、適切な場合にはG7内外で協調又は共同行動を模索することを求める。

<食料安全保障>

31.我々は、世界が一世代で最も高い飢饉のリスクに直面し、食料安全保障及び栄養の状況が継続的かつ悪化していることを深く懸念する。COVID-19のパンデミック、エネルギー価格の高騰、気候危機やショック、生物多様性の損失、土地の劣化、水の安全、武力紛争など複数の要因が、近年の食料システムとサプライチェーンの世界的な途絶と混乱、世界の食料安全保障の悪化に寄与している。特に、ロシアによるウクライナに対する違法な侵略戦争は、グローバルな食料安全保障の危機を劇的に悪化させた。我々は、達成された前向きな成果を基礎として、G7及び関連する国際機関により既に開始されているイニシアティブを含め、喫緊の問題に対処し、グローバルな食料安全保障を改善するための努力を継続することにコミットしている。我々は、2022年のG7エルマウ・サミットで発表された世界の食料安全保障に対する140億米ドルという共同コミットメントを超えたことを強調し、特にアフリカと中東において、現在の食料安全保障危機の影響を受ける脆弱な国や地域に対して、食料及び栄養関連分野における支援を継続する。また、これに関し、他の国際ドナーに対しても、貢献を強化するよう要請する。アフリカの角の至る所におけるニーズの規模から、我々は、エルマウ・サミットでのコミットメントを共同で満たし、同地域の歴史において最悪の干ばつの一つに対処するための支援を効果的に実施した。また、この点に関し、他の国際ドナーに対しても、貢献を強化するよう要請する。我々はさらに、ロシアに対して、ロシアの穀物や肥料の輸出を妨げる措置を解除するよう求める。ウクライナが世界への主要な食料輸出国として不可欠な役割を担っていることから、我々は、ロシアによる意図的なウクライナの農業部門の混乱が、最も脆弱な国々の食料安全保障に及ぼす現在及び将来の影響を深刻に懸念している。エルマウにおける我々のコミットメントを基礎として、我々は、穀物出荷の原産地の確認に使用できる穀物データベースの作成などを通じ、ロシアによるウクライナ産穀物の違法な収奪を特定し証明するための取組への支援を含め、ウクライナの農業部門の回復への支援を提供し続ける。我々は、EU・ウクライナの連帯レーン及びゼレンスキー大統領の「ウクライナからの穀物」イニシアティブの重要性を再確認する。我々は、ウクライナからの穀物輸出を更に促進し、必要としている人々への安定供給を可能にするために、国連及びトルコが仲介している黒海穀物イニシアティブ(BSGI)の継続かつ拡充した実施が極めて重要であることを再確認する。我々は、ロシアに対し、グローバルな食料供給を脅かすことを止め、BSGIが最大限の能力を発揮し、必要な期間にわたり活動できるようにすることを求める。我々は、食料・農業市場の開放を維持するために、ルールに基づく、開かれた、公正で、透明性のある、予測可能で無差別な貿易を確保し、不当な貿易制限的措置を回避する重要性を改めて表明し、我々のG20パートナーにも同様に行うことを求める。我々は、MC12で採択された、国連世界食糧計画(WFP)による食料購入の輸出禁止又は制限からの免除に関する閣僚宣言を歓迎し、完全な履行を求める。我々は、このような措置は、飢饉や深刻な食料不安のリスクがより高い国々に不均衡な影響を与えることを認識しつつ、農業生産国が課す輸出制限が世界の食料安全保障に与える影響に対処するため、より具体的な行動を求める。我々は、現在及び将来の食料危機への対応において、恣意的な措置や市場の変動を減らすために、市場の透明性と中立・公平なデータ及び分析に裏付けられた正確な情報の必要性を強調し、G20農業市場情報システム(AMIS)及びこれに関する国際機関による様々な取組の強化にコミットする。我々は、低・中所得国が、質の高い農業、市場及び食料安全保障に関するデータを収集、分析、利用し、データの質を維持する能力を強化することの重要性を強調する。我々はまた、危機対応に関する共通の理解を深めるための食料輸出国と輸入国との間の対話の価値を認識する。

32.我々は、人間一人ひとりに焦点を当て、各人が手頃な価格で、安全、十分かつ高栄養価の食料への安定的なアクセスを可能にすることが不可欠であるという見解を共有する。全ての人々が十分な食料への権利を漸進的に実現するために、我々は、短期的な食料危機への対応から食料システムを持続可能なものとするための中長期的な取組といった食料安全保障のあらゆる側面において、女性や子どもを含む最も脆弱な人々を保護、支援する必要性を確認する。また、栄養は、人間中心のアプローチの観点から基本的なものであり、我々は、学校給食プログラムを通じたものを含む健康的な食事へのアクセス改善の重要性を強調する。我々は、地方、地域、世界の食料サプライチェーンの強化、多様化、持続可能性の確保や、構造的ボトルネックの解消を通じた、包摂的で、強靱で持続可能な農業と食料システムの確立が急務であることを認識する。これには、既存の国内農業資源を活用し、貿易を促進することによる現地生産能力の向上、気候変動への適応と気候変動の緩和、生物多様性の保全を伴う持続可能な生産性向上、持続可能な食料消費などが含まれる。我々は、地域や環境、農業の条件に適し、小規模農家を含む全てのステークホルダーに利益をもたらす、幅広いイノベーションと技術を推進する。また、研究開発(R&D)や責任ある投資において、中小企業やスタートアップを含む民間セクターの役割を強調する。手頃な価格、アクセス可能性を維持し、サプライチェーンの混乱の影響を軽減するために生産を多様化し、適切かつ安全な肥料の使用を含む肥料の効率的で責任ある使用と土壌の健全性を促進する必要があると認識する。我々は、WTOルールに沿った形で、摂氏1.5度の温暖化抑制とパリ協定の目標と整合的に現地エネルギー源の活用を支援することを通じ、現地の肥料生産を含む肥料バリューチェーンを支援することの重要性を認識する。などを通じ、これらの取組についてより広範なパートナーシップを強化する。我々は、付属文書「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」に示された具体的な措置をパートナー国と共に取り組むことをコミットし、国際社会におけるより広範な協力を要請する。

<保健>

33.我々は、COVID-19のパンデミックが国際社会に前例のない影響を与えたことを認識し、パニックと無視の連鎖を断ち切るため、将来の公衆衛生上の緊急事態に備え、世界保健機関(WHO)を中核としつつ、グローバルヘルス・アーキテクチャー(GHA)を発展させ、強化することへの強いコミットメントを新たにする。この目的のために、我々は、WHOの主導的役割を強調しつつ、重複を回避し一貫性を確保するため、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書(WHOCA+)、国際保健規則(IHR)の部分改正及び2023年9月のパンデミックの予防・備え・対応(PPR)に関する国連総会ハイレベル会合を含む進行中の議論に留意しつつ、正当性、代表性、公平性及び有効性を確保する、保健分野の緊急事態のPPRのための、より協調的で持続的な首脳級のガバナンスに向けた政治的モメンタムを更に高めることにコミットする。我々はまた、国際保健においてWHOが主導的かつ調整のための役割を果たすために持続的に資金を確保することを見据え、予算案とともに改革の進捗を注視することの重要性を考慮しながら、分担金の割合を2022-2023年のWHOの基本予算の50%に引き上げることに向けて取り組むという第75回世界保健総会(WHA)における画期的な決定を称賛する。我々はまた、G20財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の継続中かつ不可欠な作業等を通じて、パンデミックのPPRのための財務・保健当局間の連携を強化するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、パンデミック基金(PF)の立ち上げを歓迎し、初回案件募集の成功裏の実施を期待し、より幅広いドナー層からのPFへの積極的な参加と貢献の増加を奨励する。我々はまた、2027年までの更なる5年間について2022年にコミットしたとおり、IHRで求められる中核的な能力の実施に当たり、少なくとも100の低・中所得国を支援するというG7の目標達成のために、作業計画の共有及び追跡、優先国の取組及び進捗の奨励などに共に取り組むことにコミットする。我々はまた、パンデミックへの対応のためのファイナンシングの強化の必要性を強調する。このため、我々は、既存の資金源をパンデミックへの対応に如何に活用できるかを包括的に評価すること、調整改善を通じて既存のメカニズムを補完し、未使用の資金を蓄積することなく、パンデミック発生時に必要な資金を迅速かつ効率的に供給できる、サージ・ファイナンスの枠組みを検討することにコミットする。この目的のため、我々はG7財務・保健大臣合同セッションにおいて承認された、財務・保健の連携強化及びPPRファイナンスに関するG7共通理解を歓迎する。我々は、パンデミックのPPRを強化するためには、公平性を指針として国際規範及び規則を強化することが不可欠であることを再確認しつつ、2024年5月までの採択を目指したWHOCA+の交渉及び国際保健規則を強化するための対象を絞った改正に関する交渉に、全てのステークホルダーと共に貢献し、そのモメンタムを維持するとのコミットメントを改めて表明する。さらに、我々は、「パンデミックへの備えに関するG7合意」に沿って、平時及び危機の双方において、新たな及び進行中の保健上の脅威の多分野にわたる統合サーベイランスのために、関連するデータ保護規則の尊重を確保しつつ、安全かつ確実な方法で、病原体、データ及び情報を適時に、透明性を持って体系的に共有することの重要性を改めて表明する。また、我々は、健康危機管理部隊の検討を含む公衆衛生及び健康危機時の人材などの、十分かつ質の高い保健医療人材を世界中で常に強化し、維持することの重要性を認識する。我々は、WHOアカデミーを始めとする専門家のグローバルネットワークや研修の更なる強化を支援し、同一労働同一賃金のディーセント・ワークを推進し、緊急時や紛争時等において医療従事者を保護する。我々は、脆弱な状況にある人々に手を差し伸べることを含め、市民社会が果たす不可欠な役割を認識し、全ての人にとって、より健康な未来のために協働することに改めてコミットする。

34.我々は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成し、SDGsの目標3への進捗を加速させることの重要性を強調しつつ、70年以上ぶりの世界的な平均寿命の低下を反転させることにコミットする。我々は、平時の保健システムを強化する取組の一環として、2025年末までにパンデミック前の水準より改善させることを達成するために、プライマリー・ヘルスケア(PHC)の支援、必須の保健サービスの発展及び回復を通じて、各国がUHCを達成できるよう、グローバルなパートナーと共に支援することに改めてコミットする。我々は、医療従事者の強化によるものを含め、各国がPHCの提供を強化することを支援することにコミットする。また、我々は、妊産婦,新生児及び乳幼児の死亡率の低減を含め、生存率をパンデミック以前のレベルよりも良い状態に、かつあらゆるSDGsの目標及び我々が同時に進捗を支援するUHC関連の指標と一致するように戻すことを支援することにコミットする。我々は、医療費によって人々が貧困に陥ることを防ぐために財政リスクから保護することの重要性を認識する。この目的のため、我々は、UHC行動アジェンダに関するG7グローバル・プランを承認し、関連する国際機関を支援し、財政、知見の管理、人材を含むUHCに関する世界的なハブ機能の重要性に留意する。我々は、人道的な状況における場合も含め、HIV/エイズ、結核、肝炎、マラリア、ポリオ、麻疹、コレラ、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症、薬剤耐性(AMR)、メンタルヘルス症状を含む非感染性疾患(NCDs)、全ての人の包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)の実現並びに定期予防接種、健康的な高齢化及び水と衛生(WASH)の促進といった、パンデミックによって大きく後退した様々な保健課題に対応する上で、UHCの不可欠な役割を再確認する。我々は、COVID-19感染後の症状の理解に焦点をあてたものも含め、この観点における研究の先頭に立つことにコミットしている。我々は、グローバルファンドの第7次増資の歴史的な成果に留意し、HIV/エイズ、結核及びマラリアの流行収束に向けたG7及びその他の国々からの財政支援を歓迎する。我々は、2026年までのポリオ撲滅を軌道に乗せるために、世界ポリオ根絶計画(GPEI)に対する継続的な支援を求める。我々は、栄養を改善するため、2024年のパリ栄養サミット(N4G)2024に向けて、2021年の東京栄養サミット(N4G)の成功を基礎とする。我々は、特に脆弱な状況にある妊産婦、新生児、乳幼児及び青少年を含む全ての人の包括的な性と生殖に関する健康と権利(SRHR)を更に推進することにコミットする。我々は、グローバルヘルス・イニシアティブとそのインターフェースを含む国際保健のパートナーシップの包摂的かつ制度レベルの調整と整合化の必要性が高まっていることを認識しつつ、国際保健におけるガバナンスを強化し、UHCの達成を支援する観点から、断片化及び重複を避け、説明責任を果たし、その効果を最大化し、各国のリーダーシップを強化するための共同の行動を取る。この観点から、我々は、「グローバルヘルス・イニシアティブの将来(FutureofGlobalHealthInitiatives)」の成果を期待する。我々は、UHC、結核及びパンデミックPPRPPRに関する次期国連総会ハイレベル会合を最大限に活用し、相乗効果を確保すること等を通じて、UHC達成に更に貢献する決意を改めて表明する。COVID-19後の時代に向けた国際保健に貢献するため、UHCの達成を支援し、PPRを強化する観点から、我々は、官民合わせて480億ドル以上の資金貢献を強調する。また、我々は、更なる国内資金動員及び既存の資金の効率的な活用を求める。我々は、インパクト投資も通じたものを含む、国際保健における持続可能な資金調達に向けた民間セクターの重要な役割を強調し、「グローバルヘルスのためのトリプルI(インパクト投資イニシアティブ)」を承認する。

35.我々は、デジタルヘルスに関するものを含む革新的な取組が、GHAの強化とUHCの達成の鍵となることを再確認する。我々は、イノベーションを促進し、100日ミッションで強調された安全で有効な、品質が保証され負担可能な感染症危機対応医薬品等(MCM)の研究開発を強化することが緊急に必要であることを改めて確認する。我々は、製造及びデリバリーに関する課題に対応することを通じたものを含め、MCMへの公平なアクセスを強化することにコミットする。この観点から、我々は、WHO、世界銀行、国連児童基金(UNICEF)、グローバルファンド、Gaviワクチン・アライアンス、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、革新的新規診断開発基金(FIND)、ユニットエイド及び医薬品特許プール、地域機関及び民間セクターを含む関連するパートナーと協力しつつ、WHOCA+に関して進行中の議論と整合し、かつMCM製造の多様化に積極的に貢献し、グローバルガバナンスの面も含めて、最も脆弱なパートナーのニーズと期待という優先事項に対処すべきである、エンド・ツー・エンドのMCMエコシステムに関するG20を含む進行中の議論に引き続き貢献する。このため、我々は「感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスのためのG7広島ビジョン」を発表し、公平性、包摂性、効率性、負担可能性、質、説明責任、機動性、迅速性といった原則に基づき、MCMへのより公平なアクセスとデリバリーに貢献するための「感染症危機対応医薬品等(MCM)に関するデリバリー・パートナーシップ(MCDP)」を立ち上げる。関連の機関が危機のより早い段階でMCMを調達し供給するための流動性を提供するための具体的な選択肢を今夏に特定する目的で、開発資金供与者間で協力することにコミットする。WHOと世界銀行が実施し、G20財務・保健合同タスクフォース及び国連ハイレベル会合で発表されるサージ・ファイナンスに関するマッピング演習を支援するものであり、WHOCA+に関する進行中の交渉に貢献するものである。我々はまた、統合的な取組を通じて、全体的なワンヘルスアプローチを適用することにより、気候変動、生物多様性の損失及び汚染によって悪化するものを含む国際保健上の脅威に対処することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、薬剤耐性(AMR)の世界的かつ急速な拡大を認識しつつ、2024年のAMRに関する国連総会ハイレベル会合に向けて、抗菌薬の研究開発を加速させるためのプッシュ型及びプル型のインセンティブを探求し、実施するとともに、抗菌薬へのアクセス及び抗菌薬を慎重かつ適切に使用するための管理を促進することに引き続きコミットしている。我々は、認知症を抱える人々をケアするための政策及び資金投入を推進し、アルツハイマー病を含む様々な種類の認知症に対する疾患修飾の可能性がある治療薬の開発を歓迎する。

<労働>

36.我々は、デジタル・トランスフォーメーション及びグリーン・トランスフォーメーション並びに出生率の低下などに起因し高齢化が進む社会を含む人口動態の変化などの構造変化に対応しつつ、公正な移行を確保するための人への投資の重要性を強調する。我々は、これらの変革を推進するために、適切な社会的保護と積極的労働市場政策の組み合わせとともに、リスキリングやアップスキリングの取組を通じて個人を支援することにコミットする。我々は、労働者がこれらの変化に適応することを支援するためのリスキリングやアップスキリングは、人への投資であり、コストと見なすべきではないため、職業訓練や生涯を通じた学びを含め、労働力の移行するニーズに対応するために必要かつ十分な投資を提供し続けなければならない。我々は、持続可能な成長と生産性に見合った実質賃金の上昇につながり、ひいては更なる人への投資に寄与する、労働者のウェル・ビーイングと社会経済の活力の好循環の実現に向けた取組にコミットする。我々は、結社の自由と団体交渉権が、ディーセント・ワークと賃金の上昇を促進する上で重要な役割を果たすことを強調する。我々は、労使やその他のステークホルダーと建設的に関わりながら、全ての人に働きがいのある人間らしい良質な仕事を保証し、特に、女性並びに障害者、高齢者及び若者を含む少数派のグループを誰一人取り残さない、包摂的な労働市場を構築することを決意する。我々はまた、質の高い雇用の創出、社会的保護への普遍的なアクセス、労働市場におけるジェンダー平等の更なる改善に向けて取り組む。我々は、有給・無給のケアワークや家事の不平等な分担など、根本的な差別的社会規範やジェンダー規範に取り組み、育児休暇を含む社会保障の促進と保護、インフラや長期ケアへのアクセスの促進を含む育児や他の分野のケアワークやケア経済への支援を提供することにコミットする。COVID-19のパンデミックは、女性及び女児に不均衡に影響を与え、有給・無給のケアワークが我々の社会と経済の機能において果たしている不可欠な役割を示しつつ、ケアワークの不平等な負担がジェンダー不平等の主要な原因となっていることを浮き彫りにした。特に、我々は、親が仕事並びに家庭及び私生活を両立させ、社会のあらゆる分野に積極的に貢献できるよう、親であることの保護を支援し促進する必要性を再確認する。我々はまた、ケアの需要を満たすために十分な仕事を創出しつつ、無償ケアを認識し、削減し、再分配すること、ケア労働者に公平に報酬を支払い、社会対話と団体交渉においてケア労働者に代表性を与えることの必要性を強調する。我々は、職場における安全及び健康とウェル・ビーイングの促進、職業上の安全及び健康衛生の確保、労働者の包摂的かつ公平なキャリア形成支援など、様々な施策を通じて、ワーク・エンゲージメントと労働者の定着の強化の重要性を認識する。グローバル・バリューチェーンにおける国際労働基準及び人権、特に国際労働機関(ILO)によって採択された基本条約の尊重を確保すること、また、技術協力によるものを含む、SDGsの目標8に沿ったディーセント・ワークの促進にコミットする。我々は、あらゆる形態の強制労働と児童労働の実効的な廃止へのコミットメントを改めて表明する。我々は、グローバル・サプライチェーンからあらゆる形態の強制労働を撤廃するために、我々の協力と共同の取組を強化するための措置を講じることを再確認する。我々は、法律、規制、インセンティブ及び企業へのガイダンスなどの、義務的及び自主的措置のスマートな組み合わせを通じて、グローバル・サプライチェーンにおいて、ディーセント・ワークを引き続き促進し、権利保有者を引き続き保護し、実行可能であり、かつ既存の政策的アプローチに付加価値を与えるような、国際的な合意に基づく法的拘束力のある措置に関するアイディアと選択肢を模索するため、全ての関連するステークホルダーと緊密に協議し、国連及びILOにおける議論に建設的に取り組むことにコミットする。我々は、労働雇用大臣が策定した「労働者のキャリア形成と構造変化に対応するレジリエンスを促進する行動計画」を支持する。

<教育>

37.我々は、職業教育を含め、包摂的で公平な質の高い教育の確保に向けて前進することにコミットし、強靱で生産的な社会を築くために、全ての人の生涯学習の機会を促進する。近年の危機は、子どもや若者、特に女児や最も社会的に疎外され脆弱な状況にある人々の教育へのアクセスの減少や学習機会の損失の増大につながっている。教育は全てのSDGsの目標を達成するための触媒であるため、我々は、特にCOVID-19のパンデミック以降において教育を堅持し、より強靱な教育システムを構築する重要性を再確認する。我々は、全ての学習者の教育機会を保護し、ジェンダー平等とあらゆる多様性をもつ全ての女性及び女児のエンパワーメントを、この点に関する世界の政府開発援助(ODA)を優先することを含め、教育において、また、教育を通じて推進するというG7のこれまでのコミットメントを堅持することを改めて表明する。我々は、2022年9月の国連事務総長による教育変革サミット(TES)を歓迎し、各国が最も疎外された子どもたちのために、より強固な教育システムを構築することを支援するための主要なパートナーである「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」や「教育を後回しにはできない基金(ECW)」、また、国連教育科学文化機関(UNESCO)や国連児童基金(UNICEF)を含む国連機関に対する継続的な支援を求める。我々はまた、教育が人権の一つであることに留意しつつ、基礎学習の重要性及び全ての学習者、特に子供たちが成長し、自らの福祉を増進するために必要な知識と技能を備えた質の高い学習機会を提供するため、G7がより公平かつ効率的な方法で人への投資を拡大する必要性を改めて表明する。我々は、より強靭で、包摂的で、かつジェンダー分野で変革的な教育のために、就学前教育から高等教育まで、ジェンダーに関連する障壁や根本的な差別的社会規範を引き続き打破する。我々は、若者間の国際交流、学生・研究者間の国際的な人材の移動及び循環、並びに高等教育機関や研究機関との間の協力を引き続き奨励する。我々は、教育を通じて経済成長を実現すると同時に、社会的課題の解決に貢献できる人材支援への投資の重要性を認識する。我々は、学校の指導・運営体制の整備も含め、全ての子どもが自らの可能性を発揮できる教育環境及び生涯学習の機会の整備に向けて努力する。これには、デジタル格差を拡大させないようにしつつ、少人数学級の推進、改善された情報コミュニケーション技術(ICT)環境の整備、教育・学習を支援するデジタル技術の効果的な活用を含み得る。

<デジタル>

38.我々は、急速な技術革新が社会と経済を強化してきた一方で、新しいデジタル技術の国際的なガバナンスが必ずしも追いついていないことを認識する。技術進化が加速する中、我々は、共通のガバナンスの課題に対処し、世界的な技術ガバナンスにおける潜在的なギャップや分断を特定することの重要性を確認する。人工知能(AI)、メタバースなどの没入型技術、量子情報科学技術、その他の新興技術などの分野において、デジタル経済のガバナンスは、我々が共有する民主的価値に沿って更新し続けられるべきである。これらは、公正性、説明責任、透明性、安全性、オンラインでのハラスメント、ヘイト、虐待からの保護、プライバシー及び人権の尊重、基本的自由、そして個人データの保護を含む。我々は、安全性及びセキュリティが優先されることや、各プラットフォームがそのプラットフォーム上で子どもの性的搾取や虐待の脅威に対処することを確保し、オンラインでの安全とプライバシーに対する子どもの権利を堅持しながら、テクノロジーの責任あるイノベーションと実装を推進するため、テクノロジー企業及び他の関連するステークホルダーと協働する。我々は引き続き、民主主義のために技術を進歩させるための方法について議論し、新興技術とその社会実装について協力し、OECDの技術に関するグローバルフォーラムを含む関連するフォーラムを通じて、インターネット・ガバナンスを含むデジタル課題に関する包括的なマルチステークホルダー間の対話を期待する。我々は、法的拘束力を有する枠組みを尊重しつつ、AIの標準の開発におけるマルチステークホルダーアプローチの更なる推進にコミットし、責任あるAIの推進のため、透明性、開放性、公正なプロセス、公平性、プライバシー及び包括性を推進する手続の重要性を認識する。我々は、信頼できるAIという共通のビジョンと目標を達成するためのアプローチと政策手段が、G7諸国間で異なり得ることを認識しつつも、AIガバナンスに関する国際的な議論とAIガバナンスの枠組み間の相互運用性の重要性を強調する。我々は、マルチステークホルダー型の国際機関を通じて、信頼できるAIのためのツール開発を支援し、マルチステークホルダープロセスを通じて、標準化機関における国際技術標準の開発及び採用を促す。我々は、国や分野を超えてますます顕著になっているAIの機会及び課題について直ちに評価する必要性を認識し、OECDなどの国際機関が政策展開の影響に関する分析を検討し、人工知能グローバルパートナーシップ(GPAI)が実践的なプロジェクトを実施することを奨励する。この観点から、我々は、関係閣僚に対し、生成AIに関する議論のために、包摂的な方法で、OECD及びGPAIと協力しつつ、G7の作業部会を通じた、広島AIプロセスを年内に創設するよう指示する。これらの議論は、ガバナンス、著作権を含む知的財産権の保護、透明性の促進、偽情報を含む外国からの情報操作への対応、これらの技術の責任ある活用といったテーマを含み得る。我々は、デジタル・技術大臣会合における「AIガバナンスの相互運用性を促進等するためのアクションプラン」を歓迎する。我々は、全ての産業及び社会部門において革新的な機会を提供し、持続可能性を促進し得るメタバースなどの没入型技術及び仮想空間の潜在性を認識する。我々は、OECDの支援を受けて、相互運用性、ポータビリティ及び標準を含め、この分野での共同のアプローチを検討するよう我々の関係閣僚に指示する。我々は、コンピューティング技術の研究開発におけるあり得べき協力に関心を表明する。我々はまた、関係閣僚に対し、デジタル貿易を更に促進するための方法を検討するよう指示する。

39.我々は、越境データ流通、情報、アイディア及び知識は、プライバシー、データ保護、知的財産保護、データ及びクラウドインフラに関するものを含む安全性に関連する課題を提起する一方で、より高い生産性、より大きなイノベーション、より良い持続可能な開発を生み出すことを再確認する。我々は、正当な公共の利益の追求にかかる政府の能力を維持しつつ、信頼できる越境データ流通を可能にし、デジタル経済全体を活性化するために、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を促進することの重要性を改めて表明する。我々は、この概念を具体化するという我々の意思及び、マルチステークホルダー・エンゲージメントの支援、技術の役割の活用、国内及び自治体の政策と適正手続きの明確化等を通じて、将来の相互運用性を促進するために、信頼性のあるデータの流通を可能にする既存の規制アプローチや手段の間の共通性、補完性及び収斂の要素の特定に向けた取組のためのG7内外の協力に対する我々の支持を強調する。我々は、デジタル・技術大臣会合における「DFFT具体化のためのG7ビジョン及びそのプライオリティに関する附属書」及び「DFFT具体化に向けたパートナーシップのためのアレンジメントの設立」を承認する。我々は関係閣僚に対し、実質的な成果を実現するための作業を継続し、その後、我々に報告するよう指示する。我々は、民主的価値及び法の支配にコミットした国家間の越境データ流通における信頼性を高めるための手段として、「OECDの民間が保有する民間部門が保有するデータへの政府のアクセスに関する宣言」を歓迎する。我々は、インターネットの分断と、人権を侵害するデジタル技術の使用への反対を強調する。の利益を達成するために実施される我々の措置とは区別される必要のある、データの自由な流通に対する、透明性を欠き、恣意的に運用される正当化できない障壁に対抗すべきである。我々はデジタル・エコシステム全体の信頼を高め、権威主義的アプローチの影響に対抗することを目指す。我々は、社会及び経済の基盤としての安全で強靭なデジタルインフラの重要性を認識する。我々は、海底ケーブルの安全なルートの延長などの手段により、ネットワークの強靱性を支援し強化するために、G7や同志国との協力を深化することにコミットする。我々は、ICTSサプライチェーンにおける供給者の多様化の取組を歓迎し、安全、強靭で確立された構成と共に、オープンで相互運用可能なアプローチに向けた市場動向について、技術的に中立な立場で引き続き議論する。G7日本議長国下でオープンな無線アクセスネットワーク(RAN)の初期の導入が進んでいることに鑑み、我々は、オープンな構成及びセキュリティに関連する側面と機会について意見交換を行った。我々は、デジタル分野の包摂性を促進し、都市の課題に対処するため、ジェンダー間のデジタル格差を含むデジタル格差を埋める必要性及びスマートシティ・イニシアティブなどのデータと技術を都市のために使用する取組の重要性を認識する。我々は、包摂的な開発を促進し、デジタル専門家のより大きな雇用と移動を可能にし、セキュリティ、相互運用性、個人データの保護及びジェンダー平等を含む人権の尊重がグローバルな連結性に組み込まれることを確保しつつ、公平性、普遍性及び廉価性の原則の下、デジタル・アクセスを拡大するために他の国々を支援するという我々のコミットメントを再確認する。

<科学技術>

40.我々は、グローバルな課題を解決し、次の段階の経済成長を可能にする、イノベーションを推進するための先端技術、研究インフラ及び高技能な人材ネットワークの開発を支援する。このため、国際的な人材の移動及び循環を促進する。G7は、FAIR原則(Findable(見つけられる)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(相互運用できる)、Reusable(再利用できる))に沿って、科学的知識並びに研究データ及び学術出版物を含む公的資金による研究成果の公平な普及による、オープン・サイエンスを推進する。これは、研究者や人々が恩恵を受けるとともに、グローバルな課題に対する知識、イノベーション及び解決策を創造することへの貢献を可能にする。我々はさらに、責任あるグローバルな科学技術協力と、先進的なコンピューティングやバイオテクノロジーなどの新興技術の利用を促進するため、研究とイノベーションにおいて共通の価値観と原則を共有するパートナーとの協力にコミットする。これには、気候変動を踏まえた海洋の更なる理解や、大規模研究インフラの活用が含まれる。我々は、研究セキュリティ及び研究インテグリティ並びにオープン・サイエンスの理念に基づく国際的な共同研究の分野を含め、多国間対話を通じて、研究及びイノベーションにおける価値観と原則の共通理解の推進並びに促進にコミットする。我々は、予定されているG7バーチャルアカデミーの立ち上げ並びに研究セキュリティ及び研究インテグリティのベストプラクティスの文書の公表を歓迎する。これらの取組は、安全保障、経済及び科学研究の交際領域において生じる様々な課題への対処に貢献する。

41.我々は、宇宙システムへの依存がますます高まっていることを踏まえ、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用を促進するとのコミットメントを改めて表明する。我々は、スペースデブリの問題に対処することの重要性を改めて表明し、国連宇宙空間平和利用委員会で採択された国際ガイドラインの実施を喫緊で必要なものとして強く支持する。我々は、スペースデブリの低減と改善のための更なる解決策及び軌道上デブリの低減と改善に関する技術の更なる研究開発を進展させる各国の取組を歓迎する。さらに、我々は、宇宙空間の安全、安定及び持続可能性を確保するため、破壊的な直接上昇型ミサイルによる衛星破壊実験を実施しないことにコミットし、他国が後に続くように促す。

<ジェンダー>

42.ジェンダー平等及びあらゆる女性及び女児のエンパワーメントの実現は、強靭で公正かつ豊かな社会のための基本である。我々は、あらゆる多様性をもつ女性及び女児、そしてLGBTQIA+の人々の政治、経済、教育及びその他社会のあらゆる分野への完全かつ平等で意義ある参加を確保し、全ての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させるため、社会のあらゆる層と共に協働していくことに努める。この観点から、我々は、長年にわたる構造的障壁を克服し、教育などの手段を通じて有害なジェンダー規範、固定観念、役割及び慣行に対処するための我々の努力を倍加させることにコミットし、多様性、人権及び尊厳が尊重され、促進され、守られ、あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する。我々は、ジェンダー平等アドバイザリー評議会(GEAC)の活動を歓迎し、その更なる強化に期待する。我々は、ジェンダー・ギャップに関するG7ダッシュボードの最初の改訂と、ジェンダー平等を前進させるための過去のG7のコミットメントを監視することを目的とする、最初の実施報告書の本年の公表を期待している。

43.我々は、特に危機的な状況下で女性及び女児の権利が後退することに強い懸念を表明し、世界中の女性及び女児並びにLGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する。我々はさらに、SRHRがジェンダー平等並びに女性及び女児のエンパワーメントにおいて、また、性的指向及び性自認を含む多様性を支援する上で果たす、不可欠かつ変革的な役割を認識する。我々は、安全で合法な中絶と中絶後のケアへのアクセスへの対応によるものを含む、全ての人の包括的なSRHRを達成することへの完全なコミットメントを再確認する。国内外において、ジェンダー平等及びあらゆる多様性をもつ女性及び女児の権利を擁護し、前進させ、守ることにコミットし、この分野における苦労して勝ち取った進展を損ない、覆そうとする試みを阻止するために協働する。この観点から、我々は、WPSフォーカル・ポイント・ネットワークとのパートナーシップ及び国家行動計画の策定への支援を通じて、防災への適用を含む「女性・平和・安全保障(WPS)」アジェンダの前進、実施及び強化並びに交差的アプローチの推進にコミットする。我々は、暴力的紛争の予防、救援・復興活動の提供、永続的な平和の構築における女性の主導的な役割を強調し、和平及び政治プロセスにおける女性の完全で、平等で、意義のある参加を支持することを誓う。我々は、紛争に関連した性的暴力及びジェンダーに基づく暴力を撲滅するための取組の強化及びサバイバー中心のアプローチを用いて、被害者・サバイバーに包括的な支援と意義のある参加を提供する重要性にコミットする。我々はさらに、あらゆる形態の、性的及びジェンダーに基づくオフライン及びオンラインにおけるハラスメントや虐待、援助に関連した性的搾取や虐待を撲滅することにコミットする。我々は、全ての人々への教育の権利確保にコミットし、安全でジェンダー分野で変革的な質の高い教育への公平なアクセスを促進するとともに、科学、技術、工学、数学(STEM)の分野、教育及びデジタルにおけるジェンダー格差を解消する措置を講じる重要性を強調する。我々は、これが、気候、自然及び開発の課題に対処するために不可欠の土台である女性の起業家精神を促進するための鍵であると考える。我々はまた、リスキリングと技能向上の促進、働きがいのある人間らしい労働条件の促進、あらゆる多様性をもつ女性の金融包摂の強化及びジェンダー間の賃金格差の解消にコミットする。我々はさらに、女性の完全なエンパワーメントと、指導的地位を含むあらゆるレベルの意思決定プロセスへの完全かつ平等な参加を促進するためのコミットメントを改めて表明する。我々は、質の高いケアは、我々の社会及び経済の機能において不可欠な役割を果たすが、そのジェンダー不平等な分配によりジェンダー不平等の主要な原因となっていることを認識する。

44.我々のコミットメントを前進させるために、我々は、統合への取組を強化し、我々の社会の実質的な変革のためのジェンダー主流化を深化させることにより、ジェンダー平等問題の断片化と疎外化を克服する必要性を強調する。
この観点から、我々は、政治と安全保障、経済と社会の領域を橋渡しする「ネクサス(nexus)」を作り出すことによって、ジェンダー平等を促進するための継続的で、全体的かつ包括的なアプローチを求め、多部門の政策及び政策実施における多様な次元にわたる我々の行動の効率と影響の最大化を提唱する。我々は、外交及び持続可能な開発政策並びにODAにおける、このようなネクサス・アプローチの重要性を強調し、ネクサスを支援するよう努める。我々は、今後数年間にわたり、ジェンダー平等並びに女性及び女児のエンパワーメントを促進する、我々の二国間で割当可能なODAの割合を共同で増加させるべくあらゆる努力をするという我々のコミットメントを再確認する。この観点から、我々は、専門家が作成した「ファクトシート:ネクサス・アプローチを通じたジェンダー主流化の促進」を歓迎し、この分野での更なる進展を期待する。

<人権、難民、移住及び民主主義>

45.我々は、世界人権宣言に示された全ての人の人権と尊厳を堅持し、誰もが社会に完全にかつ平等に参加できるようにするとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、人権侵害に対してしっかりと声を上げると同時に、対話と協力を通じて、人権を守り促進しようとする国々及び市民社会団体の声に耳を傾け、これを支援することにコミットする。我々は、G7内外においてビジネスと人権に関する議論を深める必要性を認識し、企業活動及びグローバル・サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の尊重の確保並びにビジネスのための強靱性、予見可能性及び確実性の更なる向上に向けて、情報交換の加速化を含む協力及び共同の取組を強化する意図を有しており、他者に対し、我々のこれらの取組に参加するよう呼びかける。我々は、難民を保護し、避難を強いられた人々や受入国及びコミュニティを支援し、難民及び避難民の人権及び基本的自由の完全な尊重を確保し、性的及びジェンダーに基づく暴力からの自由を含む紛争、危機及び避難により悪化した、脆弱な状況に直面する人々や疎外された人々の権利擁護と促進に対するコミットメントを再確認する。我々は、国際社会に対しても同様の対応を求める。我々は、記録の改善とともに、不処罰と闘うこと、及び、紛争に関連した性的暴力を含む、国際的な懸念事項である最も重大な犯罪の加害者の責任を追及することにコミットする。この観点から、我々は、将来の紛争に関連した性的暴力を防止するための国際的なアーキテクチャを強化する必要性を想起する。我々は、人道に対する犯罪の防止及び処罰に関する国際法委員会の条文草案の議論についての重要性を認識する。我々は、2023年12月の第2回グローバル難民フォーラムに向けて、国際社会との協力を継続する。我々は、人権及び基本的自由への完全な尊重を確保し、国際協力の精神に基づき、「難民に関するグローバル・コンパクト」並びに国内の政策、法制度及び状況に沿った形で、難民の包摂を支援するというコミットメントを再確認する。

46.我々は、世界における安全で、秩序ある、正規の移住を確保することへのコミットメントを再確認する。我々は、移民が我々の国にもたらし得る重要な経済的及び社会的利益を認識する。我々は、移民としての地位にかかわらず、人権及び基本的自由への最大限の尊重を確保することにコミットする。我々は、陸路や海路を含む、非正規かつしばしば非常に危険を伴う移住の防止にコミットしている。我々は、最も脆弱な人々から利益を得て、移民や庇護申請者の違法な移住及び危険な移動を助長する組織犯罪ネットワークに対処するための共同の取組にコミットする。我々は、人命を危険にさらし、G7パートナーの国内治安にリスクをもたらすこの冷酷な犯罪行為に対する断固たる対処を求める。この観点から、我々は、人身取引及び密入国に従事する者の犯罪・搾取活動を可能にするサプライチェーンを分断するための協力を含め、組織犯罪ネットワークのビジネス・モデルを破壊するための取組を強化する。この目的で、我々は、関係閣僚に対し、根本原因への我々の理解向上のためのパートナーシップを深化させ、この複雑な課題に対処するため、世界中のパートナーと協働するよう指示する。

47.我々は、民主主義が平和、繁栄、平等及び持続可能な開発を促進するための最も揺るぎない手段であるとの我々の共通の信念を再確認する。我々は、オンラインでのハラスメントや虐待、インターネットの遮断や分断からの保護を含む、メディアの自由及びオンラインの自由を支援し、民主的制度に対する信頼を損ない、国際社会における意見の対立を招く偽情報を含む外国からの情報操作及び干渉に対処することにより、情報環境を保護するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、ロシアが、ウクライナに対する侵略戦争への支持を得るため、また侵略の事実を曖昧にするために、情報操作や干渉を広く行っていることを強く非難する。G7即応メカニズム(RRM)を通じて、我々は、国際人権法、特に表現の自由を十分に尊重しつつ、情報操作を含む民主主義への脅威に対抗するための我々の共同の取組を強化する。我々は、事実に基づく、質の高い、信頼できる情報の普及が確保されるよう取り組み、デジタル・プラットフォームがこのアプローチを支援するよう呼びかける。我々は、情報と民主主義のためのパートナーシップといった関連する国際的イニシアティブ及び国連やOECD等による取組の支援を通じたものを含め、こうした情報へのアクセスを促進する決意を共有する全ての地域の政府及び非政府のパートナーとこれらの問題について協力を強化する。

<テロリズム、暴力的過激主義、国際的な組織犯罪への対応/法の支配の堅持/腐敗対策>

48.我々は、オンライン及びオフライン上におけるあらゆる形態のテロリズム及び暴力的過激主義、並びに薬物取引、人身取引、児童の性的虐待・搾取、腐敗、詐欺、知的財産の窃取、ランサムウェアの脅威、サイバー犯罪及び環境犯罪を含む国際組織犯罪、並びにマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に対して、全ての関係者と協力して、統一的、協調的、包摂的で、透明性のある、人権に基づきかつジェンダーに配慮した方法で取り組むという我々の強いコミットメントを改めて表明する。テロ目的のための新技術及び新興技術の悪用に対抗し、犯罪目的のための技術の悪用に対抗する上で、我々は、グローバルな協力及びデジタル対応能力の強化のための最大限の努力を継続する。この観点から、我々の協力及び「クライストチャーチ・コール」等の既存の枠組みを通じた取組を基礎とし、また、厳密に管理された合法的なアクセスの維持を含め、従前のコミットメントを想起しつつ、我々は、テロ及び暴力的過激主義コンテンツのオンライン上での拡散の問題への取組を強化し、セーフティ設計を優先し、特に、プラットフォーム上での児童の性的搾取及び虐待を阻止するよう民間部門に求める。我々は、効率的な国境を越えた協力の基礎を形成する刑事司法当局及びその他関連する当局による幅広い協力において、国際組織犯罪防止条約及び国連腐敗防止条約(UNCAC)並びにサイバー犯罪に関する条約(ブダペスト条約)等の欧州評議会における条約などの関連する国際約束に署名し批准するというパートナー国の取組を支持する。我々はまた、違法合成薬物の公衆衛生上及び安全保障上の重大な脅威を認識し、これに対処するため、他の意欲ある国及び民間部門との協力を強化する。

49.我々はまた、法律の制定及び実施のための各国への法制度整備支援の提供や、司法機関に関連する能力構築等の、法務・司法分野における二国間の、地域的な及び多国間の連携及び協力を強化する。我々が共有する多くの優先事項を前進させるため、引き続き、腐敗との闘いを強化し、グッドガバナンスを促進し、及び説明責任があり、透明性があり、公平で、コミュニティに根ざした法執行を強化する。腐敗及び関連する不正資金や犯罪収益は、公的資源を流出させ、しばしば組織犯罪を助長し得るとともに、収奪政治(クレプトクラシー)体制により市民を犠牲にして富と権力を集積し、民主的統治を弱体化させることが可能になることを認識する。国際的な腐敗対策の義務と基準を精力的に実施し、関連する地域及び国際機関を通じたものを含む法執行に関する協力を強化し、腐敗した当事者の責任を問うため、より強力で統一されたアプローチを追求する。我々は、民主的制度の健全性と透明性のために実質的支配者の透明性が重要であることを想起し、実質的支配者を登録する機関の設立及び強化においてアフリカのパートナーを支援する重要性を再確認する。

<地域情勢>

50.我々は、より安全で豊かな未来を築くために、中核となる外交政策及び安全保障上の課題に関して結束する。また、我々は、差し迫ったグローバルな課題に対処し、国際システムがこれらの課題に効果的に対応できることを確保するために、幅広いパートナーと共に取り組むという決意を再確認する。

51.我々は、G7のパートナーとして、それぞれの中国との関係を支える以下の要素について結束する。

・我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある。我々は、国益のために行動する。グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある。
・我々は、中国に対し、パリ協定及び昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿った気候及び生物多様性の危機への対処並びに天然資源の保全、脆弱な国々の債務持続可能性と資金需要への対処、国際保健並びにマクロ経済の安定などの分野について、国際場裏を含め、我々と関与することを求める。
・我々の政策方針は、中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩及び発展を妨げようともしていない。成長する中国が、国際的なルールに従って振る舞うことは、世界の関心事項である。我々は、デカップリング又は内向き志向にはならない。同時に、我々は、経済的強靱性にはデリスキング及び多様化が必要であることを認識する。我々は、自国の経済の活力に投資するため、個別に又は共同で措置をとる。我々は、重要なサプライチェーンにおける過度な依存を低減する。
・中国との持続可能な経済関係を可能にし、国際貿易体制を強化するため、我々は、我々の労働者及び企業のための公平な競争条件を求める。我々は、世界経済を歪める中国の非市場的政策及び慣行がもたらす課題に対処することを追求する。我々は、不当な技術移転やデータ開示などの悪意のある慣行に対抗する。我々は、経済的威圧に対する強靱性を促進する。我々はまた、国家安全保障を脅かすために使用され得る先端技術を、貿易及び投資を不当に制限することなく保護する必要性を認識する。
・我々は引き続き、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻に懸念している。我々は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。
・我々は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する。台湾に関するG7メンバーの基本的な立場(表明された「一つの中国政策」を含む)に変更はない。我々は、両岸問題の平和的解決を促す。
・我々は、強制労働が我々にとって大きな懸念事項となっているチベットや新疆ウイグルにおけるものを含め、中国の人権状況について懸念を表明し続ける。我々は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下での自らのコミットメントを果たすよう求める。
・我々は中国に対し、外交関係に関するウィーン条約及び領事関係に関するウィーン条約に基づく義務に従って行動するよう、また、我々のコミュニティの安全と安心、民主的制度の健全性及び経済的繁栄を損なうことを目的とした、干渉行為を実施しないよう求める。
・我々は、中国に対し、ロシアが軍事的侵略を停止し、即時に、完全に、かつ無条件に軍隊をウクライナから撤退させるよう圧力をかけることを求める。我々は、中国に対し、ウクライナとの直接対話を通じることも含め、領土一体性及び国連憲章の原則及び目的に基づく包括的、公正かつ永続的な平和を支持するよう促す。

52.南シナ海における中国の拡張的な海洋権益に関する主張には法的根拠がなく、我々はこの地域における中国の軍事化の活動に反対する。我々は、UNCLOSの普遍的かつ統一的な性格を強調し、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを規定する上でのUNCLOSの重要な役割を再確認する。我々は、2016年7月12日の仲裁裁判所による仲裁判断が、仲裁手続の当事者を法的に拘束する重要なマイルストーンであり、当事者間の紛争を平和的に解決するための有用な基礎であることを改めて表明する。

53.我々は、そのいずれもが複数の国連安保理決議(UNSCR)に違反している、北朝鮮による前例のない数の不法な弾道ミサイル発射を強く非難する。我々は、北朝鮮に対し、核実験又は弾道ミサイル技術を使用する発射を含め、不安定化をもたらす又はエスカレートさせるいかなるその他の行動をも自制するよう求める。これは、地域の安定を損ない、国際の平和及び安全に重大な脅威をもたらすものである。このような無謀な行動は、迅速で、結束した、力強い国際的な対応により対処されなければならない。これには、国連安全保障理事会により採られる更なる重大な措置が含まれる。我々は、関連する国連安保理決議に従った、核兵器及び既存の核計画、並びにその他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の、北朝鮮による完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な放棄という目標への揺るぎないコミットメントを改めて表明する。我々は、北朝鮮の人々の福祉よりも不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を優先するとの北朝鮮の選択を懸念する。

我々は、北朝鮮に対し、日本、米国及び韓国からのものを含め、繰り返し提示されてきた対話の申出に応じるよう求める。我々は、北朝鮮に対し、人権を尊重し、国際人道機関によるアクセスを容易にし、拉致問題を即時に解決するよう求める。

54.我々は、ミャンマーの治安、人道、人権及び政治状況の悪化を引き続き深く懸念し、ミャンマーの人々との連帯を表明する。我々は、ASEAN議長を務めるインドネシア及びミャンマー担当ASEAN特使を通じたものを含め、ミャンマーの全てのステークホルダーとの継続的な関与を含む5つのコンセンサスの実施のためのASEANの取組を引き続き支持する。我々は、ミャンマー国軍に対し、全ての暴力を即時に停止し、全ての政治犯及び恣意的に拘束された人々を解放し、包摂的で平和的な対話のための環境を作り出し、同国を真に民主的な道に戻すよう引き続き求める。我々は、全ての国に対し、ミャンマーへの武器流入を防止するよう改めて求める。我々はまた、全ての人々、特に最も脆弱な人々に対する、完全かつ安全で、阻害されない人道アクセスを求める。

55.我々は、アフガニスタンの安定に対する増大する脅威及び悲惨な人道・経済状況に重大な懸念を持って留意する。我々は、タリバーンに対し、テロ対策へのコミットメントを堅持し、アフガニスタンの領土がいかなる国に対する脅威や攻撃、テロ行為の計画や資金調達、テロリストの保護や訓練にも利用されないことを確保するよう求める。我々は、タリバーンによる人権と基本的自由に対する組織的な侵害に対して、最も強い反対を表明し、特に女性及び女児に対する容認できない決定の即時撤回を求める。全てのアフガニスタン人は、公的生活の全ての領域において、完全で、平等で、意義ある参加を享受し、人道支援及び基礎的サービスへのアクセスを持たなければならない。我々は、タリバーンに対し、国連安保理決議第2681号(2023年)及び第8条を含む国連憲章を尊重し、アフガニスタンにおける国連の制限のない活動を確保するよう求める。政治的包摂性と代表性の恒常的な欠如を改善するため、我々はタリバーンに対し、全てのアフガニスタン人が参加できる、信頼可能で、包摂的で、アフガニスタン人主導の国民対話に関与するための重要な措置を採るよう強く求める。我々は、その他の国際パートナーと連携して、タリバーンに統一されたメッセージを伝えることの必要性を認識する。

56.我々は、イランが決して核兵器を開発してはならないという我々の明確な決意を改めて表明する。我々は、引き続き、信頼に足る民生上の正当性がなく、実際の兵器関連の活動に危険なほど近づいているイランの核計画の継続したエスカレーションを深く懸念している。この問題を解決するためには、外交的解決が引き続き最善の方法である。この文脈において、包括的共同作業計画(JCPOA)は引き続き、有益で参考となるものである。我々は、イランに対し、核不拡散及び保障措置に関する義務を含む法的及び政治的コミットメントを履行するために、迅速かつ具体的な行動をとることを求める。我々は、フェミニストの民衆抗議活動に対する抑圧や、イラン内外で女性、女児、少数派グループ及びジャーナリストを含む個人を標的とすることを含め、イランによる組織的な人権侵害に対する深い懸念を改めて表明する。我々は、イランの指導者に対し、全ての不当で恣意的な拘束を終わらせるよう求める。

57.我々は、イランによる、国連安保理決議第2231号及び第2216号を含む国連安保理決議に違反した、国家及び非国家主体並びに代理団体に対する、ミサイル、無人航空機(UAV)及び関連技術の移転を含む、イランによる継続的な不安定化をもたらす活動について重大な懸念を表明する。イランは、ロシアのウクライナに対する侵略戦争への支援を止めなければならない。特に、我々は、イランに対し、ウクライナの重要なインフラを攻撃し、ウクライナの市民を殺害するために使用されている、武装化されたUAVの移転を止めるよう求める。我々は、イランとサウジアラビアの最近の関係正常化に関する合意を含む、二国間関係を改善し、地域の緊張を緩和するイニシアティブを歓迎する。我々は、中東の水路における海上安全保障を確保することの重要性を強調し、イランに対し、全ての船舶による航行の権利及び自由の合法的な行使を妨害しないよう求める。

58.我々は、イスラエル人及びパレスチナ人に対して、二国家解決の実現に向け、信頼を構築するための措置を採ることを求める。そのために、全ての当事者は、入植活動や暴力の扇動を含む一方的な行為を控えなければならない。我々は、歴史的なエルサレムにおける現状への我々の支持を改めて表明する。我々は、エジプト、イスラエル、ヨルダン、パレスチナ自治政府、及び米国との間の最近の諸会合を歓迎し、彼らのコミットメントが真摯に履行されることを期待する。我々は、パレスチナ人の経済的自立及び国連パレスチナ難民救済事業機関への支援を継続する。

59.我々は引き続き、シリアにおける、国連安保理決議第2254号と整合的な、包摂的で国連が仲介する政治プロセスに強くコミットしている。我々は、国際社会は政治的解決に向けた真正かつ揺るぎない進展があった後にのみ、正常化及び復興支援を検討すべきであるということを再確認する。我々は、化学兵器禁止機関(OPCW)の活動に対する継続的な支持を表明し、化学兵器の使用並びに適用可能な国際人道法及び国際人権法を含む国際法の違反に責任がある者の責任を追及することにコミットしている。我々は、特に、範囲や規模において代替の無い国連によるクロスボーダー支援を通じ、支援を必要とする全てのシリア人への完全で妨げられない人道アクセスを求める。我々は、シリア北東部に残る、ISISによる拘束者と避難民のための持続的な解決策を含む、ISISの永続的な壊滅に引き続きコミットする。

60.我々はさらに、中東及び北アフリカの他の地域における安定と繁栄を維持するための我々の支持を表明する。イエメンについて、我々は、全ての当事者に対し、国連の下で、持続的な停戦を確保し、イエメン人主導の包括的で、持続的で、包摂的な政治プロセスに向けて取り組むよう求める。我々は、チュニジア政府が自国民の民主主義への希求に応え、自国の経済状況に対処し、IMFとの合意に達することを促す。また、我々は、アフリカ連合及びアラブ連盟と連携した、国連仲介の下での、リビアの安定と結束を達成するための取組を支持する。我々は、リビアの全てのステークホルダーが、2023年末までに、自由で、公正で、包摂的な大統領選挙及び議会選挙を実施するために、政治プロセスに建設的に取り組むことを求める。

61.我々は、ロシアの侵略戦争の影響、アフガニスタン情勢による不安定化、食料及びエネルギー安全保障、テロ並びに気候変動の影響を含む様々な地域の課題に対処するために、中央アジア諸国に関与することを再確認する。我々は、「中央回廊」及び関連プロジェクトを含め、地域の繁栄と強靱性を高めるために、貿易・エネルギー関係、持続可能な連結性及び輸送を促進することを決意する。

62.我々は、アフリカ諸国及びアフリカ連合(AU)を含む地域機関とのパートナーシップを深めている。我々は、国際場裏、特にG20においてより大きな代表性を求めるアフリカの呼びかけへの支持をそれぞれ表明した。我々は、アフリカ全域におけるテロ、暴力的過激主義及び不安定の拡散につながる根本的な状況に国際法に整合的な形で取り組む地域の政府を支持するとの我々の強いコミットメントを改めて表明する。我々は、大陸におけるロシアに関連のあるワグナー・グループ部隊のプレゼンスの高まり並びにその不安定化させる影響及び人権侵害を深刻に懸念する。西アフリカ及びサヘル、アフリカの角並びに大湖地域の状況を念頭に置き、我々は、アフリカ大陸における平和、安定及び繁栄に関するアフリカ主導の取組を支援するため共に取り組む。この観点から、我々は、エチオピア政府とティグライ人民解放戦線との間の敵対行為の停止に関する合意から生じている前向きな進展を歓迎し、両当事者に対し、完全な履行に引き続きコミットするよう求める。我々はまた、ソマリア大統領の改革の優先事項とアル・シャバーブとの闘いに対する国際的な支援を求める。我々は、コンゴ民主共和国の主権、独立、統一性及び領土一体性に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は、3月に合意された敵対行為の停止を歓迎し、その完全な実施を求める。我々は、国連によって制裁を受けている3月23日運動(M23)武装集団の前進を非難し、アフリカの指導者たちと共に、M23が管理下に置いている全ての地域からから無条件で撤退するよう求める。我々はまた、西アフリカの沿岸国にテロの脅威及び活動が拡散していることを深刻に懸念し、これらの脅威に対処するための支援を行う用意がある。

63.我々は、スーダン国軍と即応支援部隊との間の進行中の戦闘を強く非難する。これは、市民の治安及び安全を脅かし、スーダンの民政移管の回復への取組を損なうとともに、地域の安定に影響を与える可能性がある。我々は、当事者に対して、即時かつ前提条件なしに敵対行為を終了させ、文民主導の民主的な政府への復帰を求める。我々は、全ての関係者に対して、暴力を放棄し緊張を低減させ、人道支援関係者を含む全ての人々の安全を確保するための積極的な措置を採るよう求める。紛争当事者は、国際人道法の下での義務を堅持し、人道支援関係者を含む全ての人々の安全を確保しつつ、命を救う支援の提供を阻害又は制限してはならない。我々は、スーダンで活動する人道支援機関の勇気と不屈の精神を称賛する。我々は、自国が重大な人道上の課題に直面しているにもかかわらず、増え続けるスーダン難民を受け入れているスーダンの近隣諸国の寛容さを認識する。我々は、スーダン及び東・北アフリカ全域並びにサヘル地域の難民と帰還民のための対応活動を支援することをコミットする。

64.我々は、共通の利益及び価値観を堅持するために、中南米の国々との協力を強化することの重要性を強調する。我々は、経済的課題、気候変動、生物多様性の損失、自然災害及びその他のグローバルな課題への対処のために地域のパートナーと共に取り組むことにコミットする。我々は、法の支配及び人権の尊重を促進し、この地域、特にベネズエラ、ハイチ及びニカラグアにおいて高まっている人道上及び安全上のニーズに応えるために、中南米のパートナー及びその他の主体との連携を強化するとの我々のコミットメントを改めて表明する。ハイチにおいて継続中の危機に関し、我々は、安定の回復のためにハイチ人主導の解決策に向けて取り組むことの重要性を強調し、暴力、汚職及び不安定を助長する者には責任を負わせる必要があることを強調する。

65.我々は、2月27日にブリュッセル及び3月18日にオフリドにおいて行われたEU仲介による対話でそれぞれ合意に至ったコソボとセルビアの間の関係正常化への道筋に関する合意とその実施附属書を歓迎する。コソボとセルビアの市民のために潜在力を最大限に引き出すべく、また西バルカン地域の近隣国との良好な関係を前進させるために、我々は両当事者に対し、適切かつ誠実にそれぞれの義務を履行するよう求める。

66.我々は、G7のエンゲージメント・グループとの交流及び同グループからのインプットに感謝する。我々はさらに、広島で我々と共に会合したIEA、IMF、OECD、UN、WB、WHO及びWTOの長からの貴重な貢献に感謝する。

参考文書
・核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン
・ウクライナに関するG7首脳声明
・G7クリーン・エネルギー経済行動計画
・経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明
・強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明
・G7グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)に関するファクトシート

(了)