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SUPER GT第5戦鈴鹿、GTA坂東正明代表定例会見 猛暑対策は夏場にレースをしないか、レーススタートを遅らせるなど必要

GTA坂東正明代表

 SUPER GT 第5戦鈴鹿が、8月26日~27日の2日間にわたって鈴鹿サーキットで開催されている。決勝日となる28日昼にはSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下、GTA)の定例会見が実施され、GTA代表取締役 坂東正明氏から運営などに関する説明が行なわれた。

 坂東代表は「猛暑対策に関しては、7月~8月のような暑い時期を避けるか、レースのスタートを遅らせる、時間制にするなど取り組みを行なっていくことが必要だ。前者に対してはほかのシリーズとの合意が重要だし、後者に関してはサーキット側との合意が必要だ」と述べ、近年の夏場のレースで問題になっている、観客の暑さ対策に関して対策が必要だと指摘した。

GTA坂東正明代表

前戦の車両火災後の消火に関しては、問題はなかったと判断しているが、さらなる改善は可能だと表明

──それでは冒頭に坂東代表から説明を。

坂東代表:今回のレースは非常に暑い環境で行なわれている。レース中に雨は降らないとは思うが、前回のこともあるので(状況を注視している)。レースの時間帯に関しては、何かを考えていかないといけない。我々関係者にとってもそうだが、サーキットに来ていただいているお客さまの動きを見ていると、スタンドの上の方に上がっていっている。スタンドの下の方は日がずっとあたっているからだろう。

 こうした状況を見ていると、オーガナイザーと(レースを行なう時間帯を含めて)話していかないといけない。せっかく来ていただいたお客さまに、レースを楽しんでいただいて、また来年も来ていただけるような体験をしていただくことがGTAやオーガナイザーがやるべきことだからだ。

 もちろんレースそのものの面白さを伝えることも大事で、さまざまなメディアを通じてアピールしていきたい。

──前回の富士大会でアクシデントが起きて、レースの運営が難しかった。2台が発火して消化作業が必要になった。マーシャルとFROが活躍して、大惨事は避けられた。ファイヤステーションがどこにあるか、チームもファイヤステーションの場所を確認することを忘れていたり、チームも外からでは車両の確認ができなくて1周多く走ってしまったなどさまざまな課題があった。今後、見直すべきことは何か?

坂東代表:ファイヤステーションの認知を進めている。富士ではファイヤステーションを2箇所設定している。ドライバーミーティングでは、できるだけそこで止まってほしい、また可能ならドライバーは降りる前にキルスイッチを切ること、消火のスイッチを押せというのをお願いしてある。燃料の配管ラインが燃えている場合、スイッチが入っていると、燃料が供給され続けてしまう、その確認を再度お願いした。

 FROでは放水やCO2、泡、水をどのようにかけていくかの司令などは刻々と行なっており、極端に遅れたということはない。ただ、不幸にも燃える素材が多く、燃えてしまったということだと思う。

 今回に関してはサイレンサーの先端が取れてしまい、カーボンが燃えてしまったと聞いている。それが溶接の問題なのかどうかは分からないが、車両を製造しているapr側にも再度見直すように徹底をお願いしている。そうして見つかった課題を、GT300というカテゴリーの中で共有しながら改善していく必要がある。

 消火が早い遅いということはなかったと思うが、今後はブリーラムが導入していたような、トラック後部に消火用の設備を乗せた車両を導入するなどのことは検討していっていいかもしれない。富士スピードウェイの場合には比較的そうした設備が整っている方だが、サーキットによってはそうではない場合がある。そのために、サーキットのオフィシャルとも協力して、より早く消せるような取り組みが必要だ。

GTA広報:今年はGTAからの派遣役員として消防出身の方をセキュリティアドバイザーとして派遣しており、消防関連の知見を活かしてもらう体制を作っている。

──海外などでは地元の消防署が協力している事例があるが?

坂東代表:サーキットが立地自治体や消防署と協力してやっている場合もある。ただ、スタート前のパレードラップで白バイ隊に来ていただき交通安全キャンペーンをやっているが、交通安全週間のときなどにそれをやっていると、白バイがサーキットで遊んでいてよいのかという批判もあると聞いている。仮にサーキットに消防の方が来ていただいたときに火事が発生したときにどうするのかということも考えないといけないし、重要なことはオーガナイザーが自治体や消防署とどういうコミュニケーションを取るのかが大事ということで、そういう観点を持っていただきたいと思う。

 実際、前戦の富士でも、室屋氏の飛行機が飛べないような天候の中で、ドクターヘリが飛ぶことができず、地元のヘリにお願いしていた。富士はそうしたコミュニケーションを普段からしているため、そうしたことが可能になったという側面がある。ほかのサーキットに関しても同じような考え方を持ってもらって、普段から地元とのコミュニケーションを密にしておかなければいけないということだと思う。

──第4戦富士では25号車と244号車の2台が車両火災になった。244号車は撤退を表明し、25号車は車両が直るまで参戦しないという選択になった。25号車は手作りで車両を作り参戦するというのがコンセプトだが、車両の作成費は一説によれば片手×1000万円程度かかり、それを集めるのが大変だと言われている。それに対してGTA側で何か援助を検討したりなどは考えられないのか?

坂東代表:個人的には金利を払っていただけるなら貸せるけども(笑)。冗談はともかく、土屋エンジニアリングがメンテナンスを請け負っていた244号車の撤退に伴って、みんな仕事がなくなってしまうかどうかは契約の内容が分からないのでなんとも言いようがない。

 しかし、これからも活動を続けていくのであれば、待っているファンの人や後援者の気持ちに応えていきたいというのであれば、そういう方々とのコミュニケーションなどに関してエントラント協会(筆者注:GTE、SUPER GTのエントラント協会のこと)の枠の中でアドバイスできる。

 しかし、GTAとしては全てのエントラントに対して公平性を確保しないといけないので、直接的なサポートは難しい。個人的に土屋武士氏に対して、彼のやり方を応援する人を紹介するそういうことはできると思うし、みながそうしていると思う。

 ただ1つ言えることは、土屋武士氏は次は勝たないといけないし、結果を出さないといけない、そのつもりでがんばってほしい。GTAとしては、彼のために何秒のハンデをあげるなどというレギュレーションを変えるようなことはできないし、直接のサポートをするということはできないと考えている。

猛暑対策としては夏場にはレースのスケジュールを組まないか、レースのスタートを遅らせる、時間制にするなどを検討

──暑さの中でも足を運んでくれる人もいて、ファンが多くて嬉しい、ファンがあってのサーキットだ。スーパーフォーミュラでは、夏祭りイベントという形でサーキット向けの家族連れのお子さんは無料として、かなりの集客を得られている。今年はアプリとかオンボードとかさまざまな取り組みを行なって、人気が高まっているように見える。観客動員数に関しても百数十パーセントにアップしている。より多くのお客さまが来ていただくGTA+主催者の話し合いになると思うが、今考えていることを教えてほしい。

坂東代表:前年対比を簡単にアピールできるのはうらやましいと思う。我々ももちろん見習って増やしていきたいと思うが、例えば何か特別なイベントをやるためには、イベント広場にもっと空きがあればできるのだが……。

 野球などでも一人の単位まで正確な数字を最近公開するようにしているが、我々も可能であればそうした数字を出せるようにしていければいいなと思う。有料観客人数としてまっとうな数字を積み重ねていって、その上でモータースポーツファンを増やしていきたい。

 無料にするのは簡単なのだが、大事なことは継続することができるかどうか。オーガナイザーと利益を分け合って、投資家の方にも収益を出していかないといけない。NPO法人で、(は無料にしましたでいいかもしれないが、企業としてやあってきたものとしてはそこはちゃんとしないといけないと考えている。

 もちろんJRP(日本レースプロモーション、スーパーフォーミュラのプロモーター)の取り組みに関して、(アプリなど)DXに関する取り組みを見習わないといけものがあるし、お互いに協力できるものがあればコラボしていきたいと考えている。

 大事なことはスタンドを満員にしていくことで、イベントのコンテンツに魅力を感じてもらって、次も来てもらうという循環を作っていくことだ。オーガナイザーにもさまざまな姿勢があった。簡単に決められることではないが、新しいファンを増やしていくことはもちろん大事なので、学ぶべきことは学んでいきたい。

──各サーキットの主催者に聞くと、SGTの集客数はスーパーフォーミュラよりも多くそれが魅力と聞いている。

坂東代表:オーガナイザーにとって観客数を増やせばよいかと言えば、一口にそう簡単な話ではない。例えば、観客を増やすと駐車場を増やし、ガードマンを増やさないといけない。そうすると経費が増えてしまい。それを入場料の範囲内でペイするか、そういう議論になる。

 オーガナザーから見ると、収益を増やしたいというのであれば、より利益率の高いパドック側を訪れるVIP客を増やした方がいいという話になってしまう。しかし、そうしたVIPのお客さまも、スタンドに満員のお客さまが来ていただけるからサーキットまで来ていただけるのであって、パドック側だけを充実すればいいということではない。そのため、GTAはスタンドのお客さまを重視し、満員のお客さまに来ていただけることに注力している。

──お客さまの暑さ対策という側面では、どのような対策をしていく計画か?

坂東代表:究極の対策は暑い時期にはレースをしないということだし、もう1つは涼しくなるような時間を狙ってレースを開始する時刻を遅らせることだ。しかし、例えSUPER GTが休むことを決断したとしても、ほかのシリーズやテストが結局行なわれてしまい、意味がなくなってしまう。このため、仮に夏はレースをしないというのであれば、ほかのシリーズも含めてみんなでそうした合意を形成していかないといけないと考えている。例えば、野球であれば、7月8月はナイターという形で夜になっている。仮にドームにすれば管理はいいんだけど、サーキットではそれは難しい状況だ。もう1つの解決策として考えられるのは、時間制のレースにして、終わりの時刻を決めるという形だ。それであれば、来季に関してはゴールしてすぐに花火を見て涼しく思えるという形もありだろう。ただ、花火に関してはもう少し数を増やしてほしいと思っている、絶賛スポンサー募集中だ(笑)。

──最近のレースは13時とかにスタートですが、今回スタートが15時近いのはそうした事情を反映しているのか?

坂東代表:そうだ。今回も19時に花火が上がるという形になっているが、それも考えると、来年はこのレースを時間制にしたいなと思うのだが、それでいいか?(と鈴鹿サーキットの関係者を見る)。首振ってるので、今ここでいいとは言えないが……。

──すでに来年のカレンダーは出ているが、再来年以降は、7月、8月を空けるなどは検討していきたいか? 日本GPも春に移ったので、9月10月に余裕が出てきていると思われるが……。

坂東代表:みんなでそういう合意ができるのであればいいのだが、繰り返しになるが我々がそこにスケジュールを入れなくても、ほかのシリーズが入れてきてしまうので……結果意味がなくなってしまう。

 もちろんサーキットの収益を考えれば、その時期を使わないというのは別の問題もあるので、それに関しても考えていかないといけないと思う。

GTA広報:それでは最後に坂東代表から。

坂東代表:これから後半戦に入る。244号車の撤退などもあるけど、休会している人たちも来期に向けてスタートにしている。待っている人たちとの入れ替えも、検討されている。体制はオーガナイザーと1つ1つ整理しながらやっていく。暑いところでレースをするのはお客さまにとっても関係者にとっても大変だが、少しでもモータースポーツファンが増えるようによいレースをやってほしいと願っている。