SUPER GT第4戦 富士決勝、SC2回/赤旗1回の大混戦のなかGT500はダンプに強いミシュランを履く3号車 「Niterra MOTUL Z」が独走優勝、GT300はタイヤ交換ギャンブルに勝った11号車「GAINER TANAX GT-R」が優勝

SUPER GT 第4戦となる「2023 AUTOBACS SUPER GT Round4　FUJI GT 450km RACE」のGT500クラスを制した3号車「Niterra MOTUL Z」

　SUPER GT 第4戦となる「2023 AUTOBACS SUPER GT Round4　FUJI GT 450km RACE」が8月5日～6日に静岡県駿東郡小山町の富士スピードウェイで開催された。8月6日には決勝レースが、約450km（100周）で行なわれた。

　GT500は終盤に雨が降り出した環境で、ミシュランのウェットタイヤが強力なパフォーマンスを発揮して独走となった3号車 Niterra MOTUL Z（千代勝正/高星明誠組、MI）。2位は16号車 ARTA MUGEN NSX-GT（福住仁嶺/大津弘樹組、BS）、3位は100号車 STANLEY NSX-GT（山本尚貴/牧野任祐組、BS）。

　GT300は終盤にスリックタイヤに交換するギャンブルに成功した11号車 GAINER TANAX GT-R（富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介組、DL）が優勝し、2位もスリックタイヤへ交換した7号車 Studie BMW M4（荒聖治/柳田真孝組、MI）、3位は6号車 DOBOT Audi R8 LMS（片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也組、YH）となった。

レース直前に雨が降りウェットタイヤでスタート、序盤はミシュラン勢が威力を発揮

　8月6日は午前中から降雨となり、予定されていたエアレーサー室屋義秀選手のフライトパフォーマンスが中止になるなどの影響が出た。しかし、お昼からはその雨もあがり天気が維持されたままレースが行なわれるのかと思われた13時ごろ、グリッドウォークが始まる時間からグランドスタンドでもぽつり、ぽつりと雨が降り出してきて、スタート進行中に路面は完全にウェットになってしまった。

GT500クラスのスタートシーン

　その結果、通常のスタート手順ではなくSC（セーフティカー）の先導により2周の周回が行なわれ、3周目にSCがピットに戻り決勝レースが開始。ただし、スタートを前に雨はあがって、路面はどんどん乾いていく状況となった。

　レースが開始されるとまたたく間にトップに立ったのは4番グリッドからスタートした3号車 Niterra MOTUL Z（千代勝正/高星明誠組、MI）。ミシュランのウェットタイヤは、ちょっと濡れているような、いわゆるダンプに強く、高いパフォーマンスを発揮することで知られている。そのミシュランのウェットタイヤのアドバンテージを生かして3号車がトップに立ったのだ。

GT300クラスのスタートシーン

　しかし、徐々に路面が乾いていき、GT300車両を中心にスリックへの交換と給油などのピットストップ作業が行なわれた。GT500がピットに入り始めたのが12周目。そこから17周にかけてタイヤをスリックへと交換し、義務づけられている2回の給油を伴うピットストップのうち1回目を消化することになった。そして1回目のピット作業を終えるとトップに立っていたのは16号車 ARTA MUGEN NSX-GT（福住仁嶺/大津弘樹組、BS）だったが、まもなく14号車 ENEOS X PRIME GR Supra（大嶋和也/山下健太組、BS）がそれを抜きトップに立った。

　ところが、36周目にGT300車両が炎上するトラブルが発生し、SCが導入され、シャシー交換の5秒ピットストップのペナルティを序盤に消化しないといけなかった23号車 MOTUL AUTECH Z（松田次生/ロニー・クインタレッリ組、MI）を除く全車が同一周回で、トップとの差が一挙につまり、レースは振り出しに戻ることになった。

GT500クラスは、スリックではブリヂストン勢が前を走り、終盤のウェットになるとミシュラン＋日産Zが独走して優勝

GT500クラスを制した3号車 Niterra MOTUL Z（千代勝正/高星明誠組、MI）

　40周目にレースが再開されると、2位につけていた16号車 ARTA MUGEN NSX-GTを抜いてあがってきた39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supra（関口雄飛/中山雄一組、BS）が、その勢いのままトップの14号車 ENEOS X PRIME GR Supraを追いかけ始めた。

　しかし、47周目にトップを走っていた14号車 ENEOS X PRIME GR Supraが、ルーティンピットストップで給油、タイヤ交換、ドライバー交代を行なった。その翌周には、2位を走っていた39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supraが、それに反応してピットイン。これで両車は規定のピット作業を終えたことになり、このままゴールを目指すことに。その後60周までに全車規定のピットストップを完了した。

レース終了後に上位に違反が見つかりGT500クラス2位に繰り上がった64号車 Modulo NSX-GT（伊沢拓也/太田格之進組、DL）

　トップは引き続き14号車 ENEOS X PRIME GR Supraで、2位は39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supra、3位は37号車 Deloitte TOM'S GR Supra（笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組、BS）となっていたが、66周目にGT300の車両火災が再度発生し、1度はSCとなったものの、かなり激しい火災となったため、すぐに赤旗に切り替わり、レースは中断されることになった。

　その後、サーキットは再び降雨となり、さらに雷も確認されたため、1度はレース再開がアナウンスされたものの、再度レース再開は延期。しかし、最大延長時間となる17時30分に残り1時間となった16時30分にSC先導付きでレースが再開。これでGT500上位の差は再びなくなり、レースは残り1時間で振り出しに戻ることに。また、ウェットタイヤへの交換が許可されたため、レース再開時で全車がウェットタイヤを履いてレース再開に臨むことになった。

レース終了後に違反が見つかりGT500クラス3位となった16号車 ARTA MUGEN NSX-GT（福住仁嶺/大津弘樹組、BS）

　72周目にレースが再開されると、文字通り「水を得た魚」のように前のマシンを追いかけたのは3号車 Niterra MOTUL Z。スタート時と同じちょっと濡れている路面（ダンプ）で強さを見せ、すぐに3位にあがり、前にいる2台（14号車と39号車）に追い付き、あっという間に抜き去りトップに立ち、その後3号車は後続をぐんぐん引き離し、数周の間に10秒以上の差をつけて独走状態に。

　残り17周時点で、2位の14号車 ENEOS X PRIME GR Supraがピットに入り、給油とスリックタイヤへの交換を実施。14号車 ENEOS X PRIME GR Supraは48周目にピットストップしており、GT500でも早めにピットストップしていたため、予定通りのストップだと思われる。また、いち早くスリックへタイヤへ交換したことで、そのラップタイムに注目が集まったが、走り出して数周はウェットよりも遅いという状況で、ラップダウン（周回遅れ）となりレース終盤に追い上げたものの、ポイント圏外でレースを終えた。

終盤でスリックタイヤに交換したものの、なかなかタイムアップできず11位でゴールした14号車 ENEOS X PRIME GR Supra（大嶋和也/山下健太組、BS）

　結局レースは、ウェットタイヤで走りきった3号車 Niterra MOTUL Zが優勝し、ポイント20点を積み重ねてポイントリーダーへと浮上。2位は16号車 ARTA MUGEN NSX-GT、3位は100号車 STANLEY NSX-GT（山本尚貴/牧野任祐組、BS）。4位は64号車 Modulo NSX-GT（伊沢拓也/太田格之進組、DL）、5位はサクセスウェイト72kgでリストリクター2ダウンの36号車 au TOM'S GR Supra（坪井翔/宮田莉朋組、BS）が入り、さらにポイントを積み重ねて、シリーズトップからは陥落したものの、シリーズ2位の座を維持した。6位は今シーズン限りで引退を表明した立川祐路選手がドライブする38号車 ZENT CERUMO GR Supra（立川祐路/石浦宏明組、BS）となった。

　レース終了後に、16号車 ARTA MUGEN NSX-GTと100号車 STANLEY NSX-GTに「給油中のタイヤ交換」という違反があったことが判明し、改訂版の暫定結果で40秒のタイム加算のペナルティが出された。それにより、16号車は2位から3位に、100号車は3位から6位に下がり、4位だった64号車 Modulo NSX-GTが2位に、5位だった36号車 au TOM'S GR Supraが4位に、6位だった38号車 ZENT CERUMO GR Supraが5位に繰り上がった。

レース終了後に違反が発覚し、GT500クラス6位となった100号車 STANLEY NSX-GT（山本尚貴/牧野任祐組、BS）

GT300のレースは終盤にスリックタイヤに交換するギャンブルに成功したチームが表彰台に

GT300クラスを制した11号車 GAINER TANAX GT-R（富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介組、DL）

　GT300は、ポールからスタートした4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG（谷口信輝/片岡龍也組、YH）が、ウェットタイヤの温まりに問題があるのかなかなかタイムがあがらず、3番グリッドからスタートした11号車 GAINER TANAX GT-R（富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介組、DL）がダンロップタイヤの温まりのよさを生かしてトップに。

　しかし、その後タイヤが温まってくると、4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGが再びトップを奪い返して、トップを維持したまま周回を重ねた。まもなく路面が乾いてくると、10周目に入ったところで上位陣はピットに入り、給油とタイヤ交換などを行ないコースに復帰。

　今回のレースではGT500のレース展開でも説明した通り、GT300車両の2度の火災によりSCが2回出動し、2度目は火災が激しく赤旗に切り替わった。1度目（36周）のSCの原因となったのは、244号車 HACHI-ICHI GR Supra GT（佐藤公哉/三宅淳詞組、YH）が、最終コーナーで右側のエキゾーストが外れるというトラブルに見舞われ、その後1コーナーを回ったところで車両火災が発生して、コース脇にマシンを停めたことによるもの。

　また、2度目のSCの原因となったのは25号車 HOPPY Schatz GR Supra GT（菅波冬悟/野中誠太組、YH）で、今度はマシンの左リアから出火し、その後ガソリンタンクに引火したのか、かなり激しく燃えてマシンの後部はほぼ全焼という状況に。この25号車の火災により、レースは赤旗中断となった。

GT300クラス2位の7号車 Studie BMW M4（荒聖治/柳田真孝組、MI）、

　その後レース再開時点でのトップは4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGだったが、ゲイナーチームの2台、10号車 PONOS GAINER GT-R（安田裕信/大草りき組、DL）と、11号車 GAINER TANAX GT-Rの2台が、次々に4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGを抜いて1-2を奪取。

　しかし、路面が乾き始めると、今度は4号車 グッドスマイル 初音ミク AMGがスピードを取り戻し、まず10号車を抜かし、その数周後にトップを走っていた11号車に追い付き、各コーナーで激しいトップ争いを繰り広げた。11号車をドライブしていた富田選手の頑張りも83周目の1コーナーまでで、4号車を駆る谷口選手が1コーナーをアウトから入り、コカ・コーラ－コーナーでインに入ることで、トップに立った。

GT300クラス3位の6号車 DOBOT Audi R8 LMS（片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也組、YH）

　ところが、トップに立った4号車は残り約10周でスリックタイヤへの交換を決断。それを見て翌周には2位にあがっていた7号車 Studie BMW M4（荒聖治/柳田真孝組、MI）、3位にあがってきた88号車 JLOC ランボルギーニ GT3（小暮卓史/元嶋佑弥組、YH）もピットに入りスリックタイヤへと交換。ところが4号車はスリックに交換した直後にコースアウトを喫してしまい、大きく順位を下げてしまった。

　そんな中、ウェットタイヤのまま走りきる作戦を選択した61号車 SUBARU BRZ R＆D SPORT（井口卓人/山内英輝組、DL）がトップに立ったが、スリックにいち早く交換していた11号車 GAINER TANAX GT-Rが残り2周で逆転し、そのままチェッカーを受けた。

　注目の2位争いはウェットタイヤのままの61号車 SUBARU BRZ R＆D SPORTと60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GT（吉本大樹/河野駿佑組、DL）、さらにスリックタイヤに交換した7号車 Studie BMW M4の3台で争われたが、最終的にスリックに変えていた7号車が2位でゴールし、3位には同じく終盤にスリックに変えていた6号車 DOBOT Audi R8 LMS（片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也組、YH）が入った。

ウェットタイヤのままでの逃げ切りを試みるもラスト2周でスリックタイヤへ交換したマシン勢に抜かれてしまった61号車 SUBARU BRZ R＆D SPORT（井口卓人/山内英輝組、DL）

　61号車 SUBARU BRZ R＆D SPORT は60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GTと最終コーナーまで激しい順位争いをしたが、61号車 SUBARU BRZ R＆D SPORTがスピンアウトしてしまい7位に転落し、60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GTが4位、ポイントリーダーの56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R（ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平組、YH）はサクセスウェイト90kgを積みながらも5位、6位は前日の予選で規定違反があり最後尾（27位）からスタートした31号車 apr LC500h GT（嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生組、BS）となった。

　レース終了後、61号車に衝突したとして60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GTには40秒加算のペナルティが科され、4位から10位に下がり、4位以下が繰り上がることになった。