ニュース

SUPER GT坂東正明代表定例会見、KYBがSUPER GTシリーズスポンサーに 鈴鹿1000kmの復活についても考え方を示す

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

GTA坂東正明代表定例会見

 SUPER GT第4戦富士が8月5日~6日の2日間にわたって富士スピードウェイで開催されている。6日午後には決勝レースが行なわれる予定になっているが、それに先立つ午前にSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下、GTA)代表取締役 坂東正明氏による定例会見が実施された。

 坂東代表は、第3戦鈴鹿の決勝レースが大クラッシュの発生によりレースを中断し、一度は審査委員会が裁定した結果がチーム側の抗議によって覆った問題に対して「GTAの役割はレギュレーションの策定であり、レース中の裁定や判定は審査委員会やオフィシャルが行ない、そこには一切介入しない。今回レースではレギュレーションの明確化に課題があり、正式結果が出るまでに時間がかかった。そういうことを繰り返してはいけないので、スポーティングレギュレーションを明確化した」と述べた。レース中に2度の給油を伴うピットストップを消化するルールを明確化したことに関しての説明を行なった。

KYBがSUPER GTのシリーズスポンサーに

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏(左)、KYB株式会社 経営企画本部 モータースポーツ部 部長 桝本一憲氏(右)

 定例会見前には、KYB(カヤバ)がSUPER GTのシリーズスポンサーになることを発表した。会見にはKYB 経営企画本部 モータースポーツ部 部長 桝本一憲氏が同席し、「SUPER GTのスポンサーという機会をいただき感謝したい、今後は技術の提供も含めて、人材育成を実現して行くべく自動車業界の発展に努めていきたい」と述べ、SUPER GTへのスポンサーを契機にモータースポーツ産業、引いては自動車産業に貢献していきたいという思いを語った。

 坂東代表は、「KYBと言えば、子どものころから知っているブランドで、KYBのショックアブソーバーを装着して街も走ったし、レースでも走った。そうしたブランドがSUPER GTを核にして、日本のモータースポーツを作り上げようという取り組みにご参加いただけることはうれしい。GT500やGT300でもご協力いただいており、少しでも恩返しができるように一緒にモータースポーツを盛り上げていきたい」と述べ、感謝の意を表明した。

GTAの役割はレギュレーションを策定すること、第3戦では最終結果が出るまで時間がかかったのでルールを明確化

──それでは坂東代表から冒頭のあいさつを。

坂東代表:鈴鹿で大きな事故があって、車両の修復が終わり、ドライバーの怪我も治り、レースに戻ってきてよかった。

 レースは常に安全でなければいけない。そうした安全を作り上げる方法論はさまざまだが、鈴鹿の(23号車の事故では)58Gという衝撃でタイヤバリヤがクッションになってジャンプしている。昨年の(第2戦富士での3号車の)事故ではもっと大きな衝撃で、ガードレールにタイヤが挟まって起きてしまった。

 車両は(バラバラになって)壊れたが、モノコックを守る方向で、ドライバーは無事だった。これはロールゲージを含めての安全性を示しており、現行のGT500シャシーはツーリングカーの中では世界最強のモノコックだと言える。今後もそれを継続してできるようにしていく。継続しながら次世代のものもこれをメインに考えていきたい。それと同時に環境対応も進めていくが、基礎作りとしてはこれでいきたい。

 今回の富士での第4戦はシリーズでの折り返しになる。天気は土曜まではよかったが、今日になって雨が降ってきており、(雨の中で観客も大変になるので)レースまでには小降りになってほしい、できれば晴れてほしいと願っている。

──第3戦の結果が抗議などによって左右された。その経緯についてお話してほしい。レギュレーションの明確化も行なわれたが……。

坂東代表:去年の第2戦でも赤旗終了になり、75%を消化したかということが1つの前例、判例になった。その時に1人のドライバーが乗ったままで2人が走っていなくてもペナルティはなしという結果になっていた。審査委員会としてはそれを判例として、前回の第3戦では「裁定」を下したという結果となる。昨年の段階でもスポーティングレギュレーションに対して、細則として規則の明確化、文面化する必要があるかを議論して、昨年の時点では審査委員会に委ねるという話し合いの結果になった。

 そして、今年の第3戦では75%の状態で起きた時に過去の判例を採用したという形で、最初の審査委員会の「裁定」になった。仮にそれが判定であれば抗議は受け付けられない(広報による補足が入り、スポーティングレギュレーションの第14条4項により判定の場合は抗議ができないが、裁定は抗議が受け付けられる)が、その決定は裁定であったため、チーム側の権利として抗議が行なわれ、それを再度審議した結果新しい裁定となった(筆者注:最初の裁定では2回のピット作業/給油を終えていない3号車の優勝となったが、その後チームからの抗議が認められて1分加算と也、19号車の優勝となった)。

 そうした裁定を出すのは審査委員会の役割であり、レギュレーションを明確化し作っていくのはGTAの役割となるので、そうしたことを行なった形になる。そうしたレギュレーションを元に、白か黒かは審査委員会やオフィシャルが判断する部分であり、そこにGTAとしては関与しない。

 GTAがやるのは、レギュレーションに課題があってスムーズにレースが運営できないとすれば、それを変えていくということになる。見に来てくださっているお客さまに対して結果が出せないというのは困るからだ。

──FIAの評議会で、各シリーズからカレンダー申請が承諾されて来年のカレンダーが出た。F1が秋から4月に移っている。Formula Eが3月にということで、春先にグローバルなシリーズがある。国内のカレンダーについて、SUPER GTのカレンダーが発表された。その結果に対する気持ちと、来年においても海外ラウンドは入っていないが?

坂東代表:F1のスケジュール、ロジスティックス(荷物の輸送など)の問題でできあがったと思っている。Formula Eが3月末に東京にきて、翌週にF1、カテゴリーはそれぞれ別だけど2週続いて行なわれる、

 GTAがスケジュールを決めるときには白紙から決めるのが通常なので、Formula EとF1が入ってきたときには両方ともどうぞという形だった。あとは、スーパーフォーミュラとスーパー耐久の兼ね合いでさまざまなテストを行なっていく。SUPER GTの開幕戦は4月に岡山でということになるので、タイヤの準備の関係でその1か月前にタイヤテストを行ない、その翌週に富士でのタイヤテストとなる。

 スーパーフォーミュラとスーパー耐久と過密スケジュールになるので大変だという向きもあるが、モータースポーツ産業が発展しているということだから、チームがもっと人を雇用して解決すべき問題だと考えている。1人の人間が対応するとなると、それは確かに問題があるが、産業として成長しているのだから、もっと人を増やすことが重要で、その方向で解決していってほしいと考えている。

──海外戦に関しての展望は?

坂東代表:やりたいと言っているプロモーターと話をしている。強い意向を持っているのはマレーシアと中国だが、中国に関してはまだ話がかみあうにはほど遠い状態。現実的にはマレーシアとの話が進んでいるのだが、ロジスティックスのコストと主催権料の課題があり、模索を続けている段階だ。

 ただし、すでに24年の1月には(コロナ前に行なっていた海外での冬季テストを復活させて)マレーシアに行く予定を立てている。GT300はなしで、GT500に関しては1台ずつ程度で、行けないチームは代わりに国内で走れるようにする。

 それが24年に実現すれば、25年にはそれに続けてみんなでいって2月にレースができないかということを模索している。ただ、ロジスティックスのコストはコロナ前に比べて2倍になっており、それを解決しないといけない。

──24年はいろいろな産業で、トラックの運転手の就業規制問題が話題になっている、レース界の取り組みは?

坂東代表:そうした問題には継続的に取り組んでおり、本当は5月の末から6月、7月をみんなで休めるようにできないかと考えているが、なかなかそういう状況ではないことも事実だ(この時期はSUPER GTのレースはお休みだが、ほかのシリーズはレースがあることを指しているのだと考えられる)。

──ピットウインドウの設定の経緯、5周目からとなったのはなぜか?

坂東代表:服部(SUPER GTのレース・ダイレクター)が5という数字が好きなのでは?(笑)。燃料やタイヤの使い方に関してさまざまな選択肢が採れる方向で考えており、こうした変更はその一環だ。例えば、今の450kmのレースがもう少し長くするとどうなるかを考えている。例えば300マイルにすると、481kmとなり500kmよりも短く、450kmよりも長くなる。そうすると燃料の使い方に関してもう一度考えないといえない。あるいは3時間とかそういう時間とか選択肢もあるだろう。来年に関してはそうしたさまざまなフォーマットを考えており、同時にタイヤの持ち込み本数をワンセット減らす形になる、レースをやる方は大変かもしれないが、その布石として5周という規定を今回採り入れた。

 10でもよかったのかもしれないが、レースがだめになってしまうので、安全を見て5という数字にしたというのが現状だ。いずれにせよ来年に向けて距離のバリエーションとか時間とかさまざま検討中だ。

──第2戦の富士に比べるとスタンド入りなども若干減っているように見える。やはり暑さなどが影響しているのではないかと思うが、今後来年にむけて何か対策などは検討しているか?

坂東代表:チケットの売れ方を見ていると、スタンドの一階席はずっと日があたる想定で、そこが売れていないというのが現状だ。実際(日よけがある)2階席は完売しているし、日の傾きによって影がでてくる1階席の上の方は売れている。その意味では、1階席のお客さまはどこかに逃げていると思うのだが、炎天下で30℃を超えるような天気が予想されているなかでは、お客さまにとっても我慢を強いる形になっているので、そこはオーガナイザーとともに何かを考えていかないといけないと考えている。

──次戦鈴鹿での第5戦は、以前は鈴鹿1000kmというレースだったが、今後はそのフォーマットが復活する可能性はあるか?

坂東代表:お客さまに喜んでいただけるという裏付けが取れるようなら直ぐに復活させる。ただ、歴史的な経緯があって、鈴鹿1000kmレースだったものが、10時間になり、それが難しくなってということがあって、今になっているので、そこにはもう少し話し合いが必要だと考えている。

 ただ、1000kmというレースをやるには、二酸化炭素の排出が増えるという問題も考えないといけないし、本当に1000kmというフォーマットにしてお客さまがたくさん来ていただけるのかに関してはよく検討しないといけないとは思っている。例えば、鈴鹿のレースで言えば、最後に花火をあげたいということもあるだろうから、それに合わせて時間レースにするなども検討の余地がある。とにかく、お客さまにたくさん来ていただけるようなイベントをどのように作っていくかが重要なポイントになると考えている。