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SUPER GT2023開幕戦 岡山 坂東代表定例会見「2019年シーズンと同じようなサーキットでの体験を実現する」

2023年4月16日 開催

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏(左)から株式会社オートバックスセブン 取締役会長 小林喜夫巳氏(右)へ花束が贈呈された

 4月15日~4月16日の2日間にわたって、SUPER GTの2023年シーズンの開幕戦「2023 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」が岡山県美作市にある岡山国際サーキットにおいて開催されている。4月16日には決勝レースが13時30分から行なわれるが、それに先だってSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下GTA)がレースの週末恒例になっている定例会見を行なった。

 会見には、1998年から四半世紀(25年)にわたってSUPER GTのタイトルスポンサーを務めてきたオートバックスセブン 取締役会長 小林喜夫巳氏、そして今シーズンからSUPER GTの1/43スケールモデルカーの製造・販売を独占的に行なうSparkブランドモデルカーの正規代理店となるSPARK JAPAN 代表取締役 矢島貴子氏の2人も出席して、SUPER GTとの協業に関して説明を行なった。

 また、定例会見においてGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「今シーズンの感染症対策はお客さまの自己判断になる」と述べ、国の政策変更に合わせて、すべてのレースで感染症対策を自己判断にする、つまり制約は設けずに2019年シーズンと同じようなサーキットでの体験を実現すると明らかにした。

オートバックスのタイトルスポンサー25周年を記念したセレモニーを実施

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏(左)と株式会社オートバックスセブン 取締役会長 小林喜夫巳氏(右)

 会見の冒頭では、「オートバックス」のブランドでタイトルスポンサーとして四半世紀(25年)にわたってSUPER GTを後援しているオートバックスセブン 取締役会長 小林喜夫巳氏が登壇し、今年オートバックスのタイトルスポンサーが25周年をむかえたことを、SGTと共に記念した会見に臨んだ。

8号車 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹組、BS)
16号車 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹組、BS)

 オートバックスは、タイヤやオイルなどの自動車パーツを販売する量販店として全国にオートバックスやスーパーオートバックスなどの複数のブランドでカー用品店を展開。SUPER GTのタイトルスポンサーを開始したのは1998年で、当時はSUPER GTではなく全日本GT選手権の名称でシリーズが展開されていた頃になる。

 よく知られているように、オートバックスのスポンサードはSUPER GT全体だけでなく、ARTA(AUTOBACS RACING TEAM AGURI)という元F1ドライバーでもある鈴木亜久里氏がチームオーナーを務めるレーシングチームのスポンサードも長年続けている。

 長い間、GT500クラスに1台、GT300クラスに1台という2台体制で参戦していたが、今年からはGT500クラスへ2台で参戦するチーム体制になっており、8号車 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹組、BS)、16号車 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹組、BS)という2台がオートバックスのロゴをつけてサーキットを走っている。そうしたチームへのスポンサードを含めて、SUPER GTシリーズへの貢献がもっとも高いスポンサー企業と言い切っても過言ではないだろう。

株式会社オートバックスセブン 取締役会長 小林喜夫巳氏

 オートバックスセブンの小林会長は「オートバックスがタイトルスポンサーを1998年に開始してから今年で25周年になる。去年からずっと取り組んでいるが開催サーキットの周囲の店舗で、ドライバーや車両に来てもらいお客さまに少しでもSUPER GTを理解していただけるような取り組みを行なっている。今年もそれを継続してバージョンアップして行なう予定。また、コロナの状況も終わりつつあり、今年はフルにリアルに開催されるシーズンになると期待しており、お客さまと一緒に楽しんでいきたい」と述べ、25周年を迎える今年もSUPER GTの振興に協力していきたいと意気込みを語った。

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「オートバックスセブン様には、四半世紀にわたりスポンサードしていただき、心より感謝し、お礼を申し上げたい。われわれのモータースポーツへの取り組みを理解しながら一緒にやっていただけるパートナーで、この3年間はウィズコロナという状況の中で、無観客のレースもあったがタイトルスポンサーとしてご支援いただいた。今回コロナ明けをむかえることもできたのは、オートバックスセブン様のご理解のお陰だと考えている。また、各店舗でのプロモーションにも協力していただき、サーキットに足を運んでもらうお客さまを増やすことに、タッグを組みながら一緒にやっていただけると確信している。SUPER GTをここまで育てていただいた恩返しではないが、お互いに協力しながらモータースポーツの発展に向けて、お互いウインウインとなるように努力していきたい」と述べ、小林会長に坂東代表から花束が贈呈され、オートバックスの長年の貢献に感謝し、同時に今後のさらなる協力への期待感を表明した。

今シーズンからSparkがSUPER GT参戦車両を全車モデル化して販売へ

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏(左)とSPARK JAPAN株式会社 代表取締役 矢島貴子氏(右)

 GTAは1月に「Spark(スパーク)」のブランドでモデルカーを製造・販売しているMINIMAX Import & Export Co., Ltd.(MINIMAX)およびその正規代理店となるSPARK JAPANと共同で報道発表を行ない、1/43スケールモデルカーの独占製作・販売ライセンス契約を結んだことを明らかにした。今回の会見にはSPARK JAPAN 代表取締役 矢島貴子氏が登壇し、Sparkが販売する1/43SUPER GTモデルカーは、基本的にSUPER GTに参戦する全車両を作成する計画であることを明らかにした。

SPARK JAPAN株式会社 代表取締役 矢島貴子氏

 SPARK JAPAN 矢島代表は「2023年シーズンに参加するSUPER GTの全車両をモデル化していく計画です。チャレンジではあるが、実現できるように頑張っていきたい。また、同時にわれわれの販路でSUPER GTの車両を世界に向けても発信していきたいし、全車両をすべてモデル化することで今シーズンを立体として記録に残す事に貢献していきたい。何よりもファンの方に喜んでいただけるように1つでも多くのモデルを作れるようにしていきたい」と述べ、23年シーズンに参戦する全車両をモデル化していく計画だと述べた。

 GTAの坂東代表は「1/43スケールモデルに関してはこれまでもやってきたが、この契約で世界に向けて発信できるという新しい取り組みができることと、新モデルを毎年作っていただけることで、モデルカーを通じてSUPER GTを知ってもらい、子供たちに遊んでもらえる、ファンの皆さまが大事にしてもらえるようなモデルを作っていただけると聞いており、今後とも一緒に取り組んで行きたい」と述べ、世界に向けて発信ができるという点がGTAにとっては今回の契約に至った重要な要素であることを示唆した。

CNFのGT300への導入が第3戦まで延期されたのはカスタマーレーシングカーの対応などに時間が必要だったため

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 そうした2社との協業に関する説明が終わった後に、通常のGTA 坂東代表による定例会見が行なわれ、GTAからカーボンニュートラルフューエル(CNF)への取り組みの現状や、海外戦復活に向けた状況、コロナ明けのサーキットでのお客さまの行動制限の廃止、24年シーズン以降の車両規定などに関しての説明が行なわれた。

坂東代表:本日は天候も安定して、2023年シーズンをこうして迎えることができたことを喜んでいる。コロナ明けということで、お客さまもたくさん来ていただいており、昨日は雨だったのに約110~120%の入りになっている。前売りに関しては雨の予報もあったので少し停滞していたが、今日はこうしていい天候の中で開幕戦をむかえることができて、なんとかこのままもってレースが終わってくれればと願っている。

──CNFに関して、開幕戦から行なわれる。4月3日に発行されたリリースでGT500クラスは予定通り導入する、GT300クラスは第3戦まで導入を延期すると発表された。GT300クラスでCNF導入が延期になった経緯を教えて欲しい。

坂東代表:CNFはこれまで各車両でテストをしてきた、オイルと混じり希釈が発生し、さらに揮発性の問題が残っている。GT500クラスに関してはベンチのレベルで調整して、点火のタイミングを調整して、希釈の問題もオイルの調合を見直すなどの取り組みをしてきて、問題なくスタートできるレベルになっている。

 それに対してGT300クラス、特にFIA-F3規定の車両に関しては、カスタマーサポートを受けるような形になるので(そうした取り組みを短期間でやるのは難しい)。トヨタのスープラや86、スバルのBRZ(などのGT300規定の車両)に関してもテストでやってきたが、オイルの粘度を変える、油圧などさまざまな点でエンジンを調整する必要がある。オイルキャッチタンクやエンジンオイルが希釈により増えるなど、エンジンオイルの粘度を調整するなどしてさまざまな調整を行なってもらっている。その調整にもう少し時間がかかるということで、第2戦が終わった後に、エントラント協会主催のGT300クラスのテストが5月8日~5月9日に予定されているので、そこまでに調整してもらって実際に走ってみて問題がないかどうかを確認することになる。

 今回のレースには(CNFのメーカーである)ハルターマン・カーレスからもスタッフが来ていて、トヨタ、ニッサン、ホンダのマニファクチャラーと調整している。今後もCNFに関してはさまざまな取り組みが必要と考えており、オクタン価をJIS規格に近づけていくことなどを行なっていく。ただ、完全にJIS規格に合致すると、希釈の問題が起こるので、JIS規格に近いところでやっていくことになる。今回も色や匂いなども以前のものとは変えており、実際ピットでその匂いなどを嗅いでいただいても違いが分かるレベルだと思う。1つ1つステップを踏みながらやっていきたい。

 ピットレーンでも合成燃料に対する否定的な意見はなく、進めるにあたり、プライベートチームのエンジンが壊れると困るのということだ。

──実際ピットエリアで仕事をしている人からも「公式合同テストとは異なるね」という話は多かった。

坂東代表:実際自分も嗅いでみたが、甘い匂いと表現すればいいのか、売っているハイオクガソリンよりは優しい匂いになっていると感じた。

──全日本スーパーフォーミュラ選手権は「ABEMA TV」で生配信すると発表している。第1戦の視聴者数は、13万人強が何らかの形で視聴したという報告もあった。GTAとしてはそうした日本レースプロモーション(JRP)の取り組みをどう見ているか?

坂東代表:スーパーフォーミュラの取り組みはいい取り組みだと評価している。ではGTの方ではどうかというと、われわれはJ-Sportsさんと契約しており、その中ではそうした形をとることはできない(筆者注:つまり独占的にJ-Sportsが配信する契約になっているという意味だと考えられる)が、新しい接触の機会を作るのは新しいモータースポーツがファンを増やす取り組みであり、組織は違うけれど、いいことだと考えている。

 GTAとしてはサーキットに来ていただけるお客さまを増やしたいと考えており、昨年から始めた「Grooview Multi」の取り組みなどもそうした考え方の延長線上で行なっている。サーキットに来ていただけるお客さまの満足度を向上し、サーキットに再び来ていただけるお客さまを増やすような取り組みを今後もおこなっていきたい。今後もさまざまなメディアやタッチポイントを活用して、モータースポーツへの理解、SUPER GTの認知度向上に対して取り組みを進めていきたいし、JRPとも協力できるところがあれば協力していきたい。

──ABEMAからGTAへのアプローチはあるのか?

坂東代表:うちには特にない。

2023年シーズンの感染症対策は観客の自己判断に、2019年シーズンと同じサーキット体験が復活へ

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

──海外ラウンドの復活可能性は?

坂東代表:各プロモーターからはやりたいと依頼はきているが、以前もお話しした通り問題はロジスティックス(筆者注:クルマや機材の輸送のこと)だ。60個のコンテナを運ぶコストが高止まりしており、それをどうにかしないと難しいという話をプロモーターとしている。また、(すでに国内で8戦あるので)スケジュールもそれを考えて組まないといけない。

 ただ、先週は上海から来年やりたいという話は来ているし、公式戦でなくてもいいからどうかという依頼もある。他にも(コロナ前に毎年開催していた)ブリーラム(タイ)もあるし、マレーシアからも、そしてインドネシアからも話がでている。いずれにせよ、ロジスティックスの課題が解決しない限りは難しいのが現状だ。

──タイとマレーシア以外にも話がでていたが、以前説明していたオフシーズンでのシリーズ戦という構想はまだ生きているのか?

坂東代表:自分はまだ生きていると思っている。

──すでにコロナ前と同じように、ピットウォークを待つお客さまの行列ができているなど、コロナ前の状況に戻っているように見える。GTAとしてそのあたり、今シーズンどうしていくのかについて方針を教えて欲しい

坂東代表:基本的には全ての自己管理でオープンであると解釈していただければと思う。マスクの装着有無に関しても自己の判断でとお願いしている。自分や他人を守る必要があればしていただければいいし、そうした判断はお客さまが各自それぞれで行なっていただければいいと考えている。今年は基本的にはすべて2019年シーズンのコロナ前の状況に戻る、そう考えていただいてよい。もちろん国の方でまた別の指針がでてくれば話は別で、それは考えないといけないが、そうでなければ今の所は何か制限を設けようとという考えはない。

──今回からお客さまもフルに入ることができるという環境が戻ってきますが、坂東代表の感想を教えて欲しい。

坂東代表:お客さまがいらっしゃらないと、寂しくてダメだっただというのが正直な感想だ。もちろんシリーズを維持するために必要な選択だったが、悲しかった。例えば、テレビ中継の方にもお願いしてできるだけお客さまがいらっしゃらないスタンドは映さないなどの対策はしたが、スポンサーの皆さまにもご協力をいただいてなんとか乗り切ったが、できればああいう姿はもうやりたくないというのが正直な気持ちだ。そうした想いを抱えながら、次のステップに向かって行きたいと考えている。

──次の富士、鈴鹿などに関してはお客さまがフルに入ってくるということか?

坂東代表:もうバンバン入っていただいて、入りきれなくなって富士(スピードウェイ)が困るような状態にまでもっていきたいと思っている(笑)。もうクルマ止めておけるところがなくなって、クルマの駐車が大変になって帰り帰るのが大変になるまでやっていきたい。サーキットからすればそうやって観客数や車両の数が増えると警備が大変とか、コストがかかるとか言ってくるが、そういう嬉しい悲鳴が出るようになるような程のお客さまに来ていただければと思っているので、ぜひお客さまには富士や鈴鹿のレースにお越しいただきたい。

──GT500クラスに関して、2024年に向けて新規車種を準備しているメーカーもあり、開発の凍結の期間が切れることになる。2024年の車両規則の変更はあるのか?

坂東代表:ない(笑)。2020年、2021年、2022年とやってきて、今シーズンの末にはモノコックのねじれなどに関して全車チェックする予定で2024年までこの車両を使う。2025年には新車の導入もあるが、モノコックは新規になるが、そのほかの設計に関しては今の所あまり変更点はない。2025年から2027年ないしは2028年までの4年使うなかで環境に対応したものを取り込んだ設計などが追加されるが、コストの問題もあるのでそのあたりと相談しながらになる。

 また、標準化されたパーツに関しても、ドイツ側とも相談しながらやっていく必要がある。もともとDTMと協力してそうしたパーツの導入を決めた経緯もあって、パーツ代金があがってきているなどの状況もある。そうした中で今後どういう選択をしていくのがよいか、マニファクチャラーとも相談して決めていく必要がある。

 そのあたりは(DTMを継承した)ADACと一緒に相談しながらやっていく。ADACとは将来の姿について話をしており、次世代のGT500クラスに関してどうしていくのか、そうしたキックオフをやっていきたいと考えており、2028年と2029年に関して向こうのマニファクチャラーと話をしながらやっていく必要がある。ADACはGT3の1つ上のクラスを考えている節があるので、そこからスタートできればと思っている。

──日本の3社とドイツ側のマニファクチャラーで話をするということか?

坂東代表:そうした話を始めていくことが大事だ。電動化やCNFの導入などレギュレーションに関してもさまざまな可能性が考えられる。まずはマニファクチャラーが1つのテーブルに集まって話をすることが大事だ。それが実現しなければ何も始まらないからだ。その先どのような話をしていくのかはそれが実現できてからの話だ。

シリーズチャンピオンのトロフィー