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SUPER GT第3戦 鈴鹿 坂東代表定例会見 「カーボンニュートラル燃料の導入はGT300今季保留、GT500は引き続き取り組みを進める」

2023年6月4日 実施

定例記者会見を行なった株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT 第3戦「2023 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 450km RACE」が、6月3日~6月4日にの鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)にて開催されている。決勝レースが行なわれる6月4日には、SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション(以下GTA)が毎戦行なっている定例会見を開き、その中で今季GTAが導入を進めてきた植物由来の合成燃料=「カーボンニュートラル燃料(以下CNF)」に関する状況のアップデートを行なった。

 GTAの坂東代表は、CNFの導入に関しては、GT500に関してはマニファクチャラーの協力などにより開幕戦から導入を進め、今の所問題なく活用できている。GT300に関しては、カスタマーレーシングということで導入が追い付かない車両などもありこれまで導入を延期してきたが、ハイオクなどに比べて揮発性が低く、希釈などの技術的な課題が発生しており、カスタマーレーシングを提供するメーカー側から「もう少し技術的な課題を解決したい」という話を、チームを通じて得ている状況だ。このため「GT500に関しては引き続きCNFの利活用を進めていくが、GT300に関しては今季の導入は保留として、来季以降に技術的課題などを再検討して仕切り直していく」と説明した。

CNFの導入はGT500に関しては継続して取り組み、GT300に関しては今季は保留し来期以降に仕切り直し

──それでは代表から冒頭の挨拶を

坂東代表:台風の影響などは少し出ているが、前売りは2019年のレベルには戻っていないが前年度+αになっている。そうした中でも、450kmという新しいフォーマットによってレースの形が変わってくると思う。天候がいい中で、素晴らしいレースをお客さまに見せていきたい。

──今年からGTAが導入しているCNFについて、GT500、GT300は第3戦から利用する計画だったが、このレースでもGT300への導入は延期と発表されている。CNFの状況に関して教えて欲しい。

坂東代表:2021年からテストを始めて、2021年末にCNF導入を決めてやってきた。これまでもさまざまな技術的な課題を、特にGT500に関しては3つのマニファクチャラー(筆者注:トヨタ、ニッサン、ホンダのこと)に協力してもらい1つ1つ解決してきた。その中でも大きな問題になってきているのは揮発性の問題だ。ハイオク燃料などに比べて揮発性が低く、希釈が発生してしまう。具体的に言うと、エンジンオイルに混ざりやすくなってしまうという技術的な課題が発生する。

 すでに述べたとおり、GT500に関してはマニファクチャラーが協力してくれるため、そうした課題を1つ1つ解決してきた。例えばブローバイの吹き方やキャッチタンクを大きくする、エンジンオイルの温度を調整するなどの取り組みを行なってきた。しかし、GT300に関しては、多くのチームがマニファクチャラーにとってのカスタマーチームであり、そうした中で調整に時間がかかっているし、マニファクチャラー側からはチームを通じてもう少し対処するためにもう少し時間が必要という声も寄せられている。

 GTAもチーム側も、将来を見据えればCNFが必要だという基本姿勢は何も変わっていないが、技術課題を解決しないまま導入するのは難しいと考え、GT300に関しては今季に関しては保留とする。GT500に関しては、大きな問題はなくやれているのでこのまま継続する。

──GT500とGT300で多少違うものを使う可能性があるということか?

坂東代表:一緒がベストだと考えるが、そうではないものもあり得るということだ。SUPER GTがやろうとしているCNFは、WECやSROなどが欧州でやろうとしている合成燃料よりもレベルが高い合成燃料(筆者注:植物由来の100%合成燃料のこと、いわゆるE10やE20などは化石由来のガソリンにそうした合成燃料を混ぜたものとなる)に取り組んでいる。このため、いろいろなトラブルが起きることは承知の上で進めてきた。ただ、チームもGTAもこの方向性が大事だということは同じ方向を向いており、来季以降にどのような形で継続していけるかを検討している。

 ガソリンに関しては、夏用や冬用で微妙に違っていたり、冬用を使うと揮発性が変わったりする。そのあたりの調整も含めてやっていかないといけない。GT300には実に多くのエンジンがあり、自然吸気であればいけるかもしれないが、直噴やターボだと課題は少なくない。そうしたバラエティに富んでいるエンジンに対して、もう少し対応していく時間が必要だ。

「フォーメーションラップ」という新しい動画コンテンツの提供を開始

──富士の第2戦から今レースまでの間に、ミシュランが今季をもってGT500へのタイヤ供給を休止するという発表があった。そのことに対して坂東代表の感想をお願いしたい。

坂東代表:世界のレースを見まわしても、4社のタイヤメーカーが競争しているレースというのは他にない。タイヤメーカーが本気で競争している中で開発が行なわれているのがSUPER GTだ。そうした中でミシュランの役目は非常に大きく、フランスから飛行機で持ってくるという難しい環境の中で、これまでSUPER GTに大きく貢献してくれた存在だ。4社が競争している中で、日本に輸送する費用やWECにワンメイクで参加している費用などの費用対効果をはじめ、さまざまなことを検討した結果として向こうのボードメンバーはそうした結論を下されたのだと思う、正直に言えば「なぜ……」という気持ちもある。

 しかし、GTAの代表としてはミシュランには「今まで一緒にやってくれてありがとう」と、ブリヂストン、ダンロップ、横浜ゴムといった他のメーカーも含め、SUPER GTに参加してくれていることに感謝の気持ちを表明したい。そしてミシュランがまたSUPER GTに戻ってくるような状況になり「また参戦したい」ということになれば、大歓迎したいと思っている。

──SUPER GTのサポートレースになるFIA F4に関して、2024年から第2世代の車両が関わってくる。購入受け付けがいったん終了したと思うが、何台ぐらいの受註があったのか?

坂東代表:第2世代シャシーに関してはモノコックの方はすでに終わっていたが、そのほかの部分に関してはFIAの方からここの強度を治してほしいなどの要請があったりして、すべてが終わったのは先月末。そうした作業がすべて終わるまで生産はしていなかったので、今後東レカーボンマジックなどで製造を行なっていく。1つのラインでは終わらないので、2つのラインを行なう形になる。今の所30近いオーダーが入っているが、オーダーはまだ締め切った訳ではなく、引き続き受け付けている。

──非常に多くの台数がFIA F4には出走している現状だ。そうした活況は新型シャシー導入後も続くか?

坂東代表:あれだけの台数が走っているフォーミュラーのレースは他には見たことがない。活況なのはいいことだが、安全性はきちんと確保して欲しいとレースディレクター(SUPER GTのレースダイレクターを務めている服部尚貴氏が兼務)には言っている。ただ、自分でいうのもなんだが、ああしたジュニアフォーミュラとしてはかなり手厚いサポートは出てきると感じているし、実際FIAの査察が来たときにも、日本のシリーズのように活況なFIA F4は見たことがなくて凄いと言ってくれているぐらいだ。育成カテゴリーとして大事なシリーズなので、これからも力を入れてやっていきたい。

──第1世代のシャシーはどうするのか?

坂東代表:基本的には童夢の方でスクールカーとして転用できないかなどを検討しており、それはお願いしますという話をしている。GTAとしては新しい車両を作っているので、第1世代の車両に対して何かを言うことはできないと考えている。

──FIA GT3の車両などのCNF燃料への対応に関して、SROを捲きこんでできることはあるか?

坂東代表:基本的にはこちらの方がレベルの高いことをやろうとしている。実際欧州には「SUPER GTは難しいことをやろうとしている」と言われている。そのため、レベルを落としてやるのではなく、難しいことだけど勉強しながら取り組んでいこうと考えている。そして近い将来には国産化して、他のレースでも採用されるようなものにしていく。もちろん、SROがわれわれと一緒にやりたいと言うなら大歓迎だし、ADACやACOとも話をしている。

新たな動画コンテンツの提供を開始した

──SUPER GTの「公式動画チャンネル」では、ドキュメンタリー映像とストーリーで伝える“フォーメーションラップ”という新しい動画コンテンツの提供を始めているが、それについて坂東代表からコメントを。

坂東代表:シネマ方式の新しい動画になる。中身は賛否両論いろいろあるかもしれないが、ぜひ見ていただきご意見やご要望などもいただきたいと思っている。

FORMATION LAP: Episode 0 王座への渇望(12分48秒)